「パンパカパーーーーーン!!ブラボー!天晴れ!お見事ォ〜〜!!」
まっくらなモノクマランドに、モノクマの
「今回、“超高校級のクラウン”虚戈舞夢サンをあんな残虐な方法で殺したのは、“超高校級の錬金術師”荒川絵留莉さんだったのでしたぁ!!やっぱ根暗は何考えてるか分からなくて怖いねーッ!!犯罪予備軍は隔離しなくちゃいけないってことだね!!」
「残虐なものか」
「ほえ?」
ボクにはよくわからないけど、モノクマはきっとエルリさんのことを
そんなボクたちの中で、モノクマに
「ギロチンを用いて斬首された者は急激な血圧の変化で一瞬の内に気絶する。痛みに苦しむ前に意識を失うため、絞首と並び道徳的な処刑とされている。荒川、お前がそれを知らず、わざわざあんな装置を用いたとは思えない」
「・・・」
「先程の発言といい、敢えて斬首を選ぶ手法といい、犯行こそ明らかになったが、まだ真相は明らかになっていない。お前は、この期に及んで一体何を隠している?」
「隠してなどいない。お前の言う通りだ極。私は、殺したくなどなかった。
「な、何言ってるの・・・!?虚戈さんを殺さざるを得なかったって、そんなわけないじゃない・・・!!虚戈さんがあなたに何をしたのよ!なんで虚戈さんが殺されなくちゃいけなかったのよ!」
「・・・
かなしそうに、くるしそうに、目になみだをうかべてセーラさんがさけぶ。その声を、エルリさんはしずかにきいてた。その目は、どこまでも
「
「はあっ・・・!?」
「私が失楽園になるということは、私以外の全員が処刑されることを意味している。私は虚戈だけを殺す覚悟でいたのではない。お前たち全員の命を奪うことを覚悟していた」
「ふ、ふざけてんのかよ・・・!どういうつもりだ荒川!」
「結果的に私は大量殺人犯になってしまう。不可逆的な死という現象を、16人の人間に強いようとしたのだ。だがその誹りを受けてなお、その罪を背負ってなお、私は失楽園にならねばならなかった」
「意味が分からないよ・・・!」
そんなこと、言わなくたって分かる。もしボクたちが
「このコロシアイを終わらせる。それが私の目的だ」
「コロシアイを終わらせるってえ・・・そりゃ荒川氏が失楽園になるってことはあ、コロシアイが終わることを意味してるけどお」
「で、でも!そのためにマイムさんやボクたちを
「
「それですよ!」
「・・・お前たちは分かっていない。この“セカイ”の真実を」
「真実?」
「この“セカイ”は・・・!我々は・・・!」
「ストォ〜〜〜ップ!!ダメダメ!!ダメだよそんなの」
何か言おうとしたエルリさんのことばを、モノクマがものすごく大きなこえで止めた。おもわずボクたちは耳をふさいだ。それくらいおっきなこえだ。
「まだオマエラがそれを知るには早いんだよ!荒川さんは
「知るには早いって・・・どういうことだよ?」
「うるせー!それを知るのがまだ早いって言ってんでしょ!とにかく荒川さんはこれ以上の勝手な発言を禁止します!喋ったらおしおきだからね!」
「既に処刑が確定している私に、それが脅しになると本気で思っているのか?」
「むかっ!!だったらこうするもんね!!」
「!」
モノクマがそう言うと、
「むぐっ!?」
「お、おい!何をしている!」
「おしおきまではもうちょっと楽しみたいからね。その間、余計なことを喋れないようにお口チャックしてもらったよ。あ、ちなみにオマエラが荒川さんに触れたらおしおきだからね」
「そこまでしてまで処刑を先延ばしにしてえ、一体何をするつもりなんだい?」
「オマエラ気になってるでしょ?どうして虚戈サンが荒川サンに協力したのかさ!どうして虚戈サンが自分を殺す計画に乗ったのかさ!」
「そりゃ気になりますけど・・・」
「だから、録音を聞かせて上げようと思ったんだよ!このままじゃ消化不良だし気持ち悪いでしょ?」
「荒川の処刑を先延ばしにする意味はどこにある」
「うぷぷぷぷ♬荒川サンにも色々言いたいことがあると思うからね。まだ終わらせるわけにはいかないんだよ」
「ンーッ!!」
口をふさがれたエルリさんが、体をよじらせながらうなる。ボクたちはエルリさんを
「どしたの?エルリがマイムにお話なんて珍しいねー♡」
「・・・」
「あっ!もしかしてこの前のこと怒られるのかな・・・やだよー×」
「単刀直入に言おう。虚戈、私の計画に協力してほしい。お前にしか頼めないことだ」
「計画ってなあに?ナイショのイタズラだったらマイム大得意だよ☆エルリもお茶目なところあるんだね♡」
「失楽園計画だ」
「ほえ?失楽園?それってん〜っとぉ・・・ああ!コロシアイして誰かが裁判に勝つことだ!エルリがそうなるってこと?」
「そうだ。そして裁判を起こすためにはコロシアイが必要だ。その被害者として・・・虚戈、お前に協力してほしい」
「うん?う〜ん?うぬぬ〜〜ん♢それってマイムに、死ね、って言ってるってこと?」
「端的に言えばな」
「やだ♡」
「もちろん、お前にも人並みに命に執着はあろう。それが普通だ。だから、
「ううううん?エルリが何言ってるか全然分かんないよ♣マイムの知らないマイムの話ってなに?」
「これを見ろ」
「なにこれー?」
「モノクマから配られた新たな動機だ」
「えーっ!?ダメだよエルリ♠マイムは動機見ないよってテルジと約束したんだよ!うっかり見ちゃったよ!」
「この写真に見覚えや心当たりはあるか?お前が、サーカステントでパフォーマンスをしている写真だ」
「知らないよそんなの♣マイムはこの前はじめてサーカステントに行ったんだし、ハイドもいよもここが開放されたときにはもう死んじゃってたじゃん♬」
「ではこの写真はモノクマの捏造か?」
「・・・そうでもないのかも♡」
はっきりしないマイムさんの
「決して冗談ではない。このコロシアイはッ─────ッている。ッ───────ッによって」
「どういうことなの?」
「モノクマから二つ目の動機として与えられたのは、各々の“才能”にまつわる研究がなされている研究部屋だった。そこでこれを見つけた。紛れもなく、私の研究だ」
「なにこれ?ッ──ッ?」
「ッ───ッを元にッ──────ッ命とッ──ッ的に全ッ──────────ッすッ──ッ・・・絵空事と思っていたが、これを見る限り、どうやら
「エルリってそんなの研究してたんだ♬なんかこわーい♡」
「いいや。むしろ私はこういったものには否定的立場をとっていたつもりだ。ッ──ッを科学的に生み出すなどまさに神の所業。失楽園となるには十分過ぎる大罪だ。皮肉にもな」
「ううん?ちょっと待ってね♡それじゃあエルリが言いたいのは、ッ───────────────ッ」
「!」
びっくりした。マイムさんのことばは、らんぼうで大きな
もうそのときには、マイムさんはボクたちのしってるマイムさんじゃなくなってた。
「ふーん♢それじゃしょーがないね♡分かったよ♡エルリに協力してあげる♬」
「・・・すまない」
「エルリは謝らなくていいんだよ♬悪いのはエルリのッ──────ッを勝手に使ってる黒幕なんだからね♠」
「それでも、私はお前以外の全員を騙すことになる。お前の命を奪い、他全員をも見殺しにすることになる。他に手段がないとはいえ、これは私の矜恃に反する。多のために少を切り捨てるなど・・・況してや、それが人の命となるなど・・・」
「それでも一番辛いのはエルリでしょ♬マイムはもうすぐいなくなっちゃうし、マイム以外のみんなはエルリのことをわる〜い殺人鬼だと思って死んでっちゃうんだから♡
「ああ。それで、早速で悪いが、殺害トリックについてなんだが」
モノクマが
「このような形で考えている」
「う〜ん・・・なんで
「私の目的は殺人ではない。刺殺や撲殺で痛みを与えたり、毒殺で無駄に苦しませたりなどは主義に反する。一方、絞首は人道的処刑法として確立されている。これは、私の意志表示だ。これはあくまで殺戮ではない、というな」
「・・・あはっ☆エルリってば中途半端だね♬」
「ちゅっ・・・なに?」
「エルリはマイムを殺すんだよ?人道的とか意志表示とか難しいこと言ってるけど、マイムの命を奪うことには変わりないんだよ?それなのに首吊りにして自分は殺人犯じゃないって言い訳がしたいだけでしょ?そんな人にマイムは命懸けられないよ♬そんな逃げ方、許さないよ♡」
「ん・・・なら、どうする・・・?」
「うーん、でもマイムも痛いのとか苦しいのはイヤだもんなあ♣でもマイム知ってるよ☆首切っちゃえばいいんだよ♬」
「首を切る!?斬首か・・・!?バカな・・・!!」
「絶対切っちゃった方がいいよ♬マイム聞いたことあるもん☆斬首ってすっごく気持ちいいんでしょ♡」
「血圧の低下で意識を失うから痛みはないと思うが・・・即死するという点ではある意味人道的とも言える。市民革命では大量の刑死者を出したというが・・・」
「それにね♡マイムの血汁ブッシャーすれば偽の証拠も残せるよ♡マイムの桃色の脳細胞がフル稼働してるのだ☆」
「・・・お前は一体なんなんだ」
「マイムはマイムだよ♡」
そこでとぎれた。ボクたちは、何をきいてるのか分からなくなった。どうしてマイムさんはエルリさんに
ようやくボクたちは
「なんなんだよこれ・・・!!なんなんだよお前らはよォッ!!」
「テルジさん・・・!」
「荒川が虚戈を殺したんじゃねえのかよ!なんで虚戈が殺し方だの偽の証拠だの言ってんだよ!そこまでして・・・何がしてえんだよテメエらは!!」
「んぐっ・・・!むっ・・・!」
「お、落ち着け下越!荒川に触ったら処刑だぞ!」
「・・・ッ!」
「ちっ」
エルリさんにつかみかかりそうないきおいのテルジさんを、あぶないところでワタルさんが止めた。ざんねんそうにモノクマが
「どうして・・・?どうして虚戈さんはそうなの・・・?自分を殺すためのトリックなんて、どうして笑って提案できるの・・・!?」
「虚戈氏の異常さなんて今に始まったことじゃあないよお。問題はあ、死にたくないと言っていたはずの虚戈氏にそれを言わせた荒川氏の方・・・もっと言えばあ、荒川氏が虚戈氏に伝えた内容だねえ」
「・・・荒川さん。あなたは何を言ったの?何を・・・知ってるの?」
「ンンッ・・・!!」
「おいモノクマ!荒川の拘束を解け!このままでは何も話せないだろう!」
「何言ってんの?解くわけないじゃん!だっていま荒川サンを解放したら、何言い出すか分かんないでしょ!もしかしたら4回目の事件にしてもう最終展開に入っちゃうかも知れないじゃん!それはいくらなんでも認められないなあ!」
「な・・・なんだよそれ?なんだよ最終展開って?ゲームかなんかみたいに・・・」
「それでもまあ、このままじゃオマエラも気持ち悪いから教えておいてあげるけど、荒川サンはある事実に気付いちゃっただけだよ!命が尊いとか言っておいて、たった一つ何かを知ったら手の平グルングルンなんだから、人って分からないもんだねー!」
「フーッ!フーッ!」
「うぷぷぷぷ♬さぁーて、そんじゃあいっちゃいましょうか!恒例のボクのお楽しみ!」
「ッ!」
「うぅ・・・ま、また・・・処刑が始まるの・・・!?」
「ぐぐっ・・・!!ああクソ!!ちくしょうが!!おい雷堂!!極!!どうにかなんねえのかよ!!」
「ど、どうにかって・・・!?」
「このままでいいのかよ!オレらは何にも知らねえまんま!荒川に触ることもできねえまま、処刑されるのを黙って見てるしかねえのかよ!どうにかして荒川に喋らせたりできねえのかよ!」
「無茶を言うな下越・・・!私も雷堂も、お前と同じ立場だ。止められるものなら止めている」
「だってこんなバカなことねえだろ!少なくともオレぁ納見に虚戈が動機を見たこと言われるまでは、虚戈のことを信じてたんだ!あんな殺し方したヤツをぜってえ見つけてやるんだって思ってたんだよ!なのにフタ開けてみりゃ、虚戈と荒川の共犯で・・・しかも虚戈は自分が殺されるってのにあんなにヘラヘラしてて!しまいにゃ荒川から何にも聞き出せずに死に際だけ見届けろってよぉ!!だったらこの裁判はなんだったんだよ!!オレは・・・なんのために・・・!!」
そこから先は、テルジさんは何もはなせなくなった。どんどん
「くっ・・・!お、おいモノクマ!ホントにこの事件のクロは荒川なのかよ!?だって、トリックを考えたのは虚戈なんだろ!?そりゃ話を持ちかけたのは荒川だけど・・・直接殺したあの仕掛けを動かしたのは、ホントに荒川なのかよ!?」
「はあ?なにそれ、雷堂クン。キミさあ、考えなしに勢いで喋るのよしなよ。荒川サンがクロじゃなかったら、今度はオマエラ全員が処刑されるんだよ?分かってんの?」
「うぐっ・・・!」
「それに、このモノクマランドのありとあらゆる場所に仕掛けられた監視カメラを通して、ボクはここで起きたことは全てお見通しなんだよ!間違いなくこの仕掛けを作動させたのは、つまり火を点けた人は、荒川サンだよ!文句言うんじゃねーよ!」
「やめておけ雷堂。我々はヤツの決めたルールに則って裁判をし、投票した。処刑を止めることはできない。荒川もその覚悟で、虚戈の殺害を決めたのだろうしな」
「なんで・・・そんな冷静なことが言えるのよ・・・!荒川さんが、処刑されちゃうのよ・・・!?」
どこまでも、ひどいくらいに
「うぷぷぷぷ♬全く面白いことしてくれるよね!たった一人殺して、たった一人処刑されるってだけで、こんなにあっさりオマエラの絆なんてものは崩れ去るんだ!気分が良くなっちゃった♬それに、荒川サンも色々伝えたいことがあるだろうしね!ボクも少しだけサービスしてあげようかな!」
「な、なにする気ですか・・・!まだエルリさんのこと・・・!」
「さぁーて、何をするかは、何かしてからのお楽しみだよ!」
モノクマが
「ではでは!今回は!“超高校級の錬金術師”、荒川絵留莉サンのために!スペシャルな!おしおきを!用意しました!」
おなかをかかえてモノクマがわらう。
「ンンーーーッ!!!」
「それでは、張り切っていきましょーぅ!!おしおきターイムッ!!」
エルリさんのすがたが見えなくなったとき、
ゴージャスな装飾と、無数の馬や車のオブジェたち。荒川絵留莉は向かってくるそれらに相対するように、天地を貫く棒に鎖で繋がれていた。相変わらず口は塞がれているが、体の自由はいくらかきく。モノクマが言っていた
荘厳な開始音とともにメリーゴーランドは輝きを放つ。メルヘンな音楽に乗せて動き出す馬と車の群れは、ただただ荒川を通り過ぎていく。そして二周目。馬の上には兵装束のモノクマが刀を手に、車にはスーツ姿のモノクマがバットを手に、不適な笑みを浮かべていた。
「ン゛ン゛ン゛ッ!!」
自由が利くと言っても、鎖に繋がれている以上動ける範囲は限られている。音楽に合わせて接近してきた車から、モノクマがバットを振るう。とっさに避けた荒川の右膝を、金属バットが襲う。骨が砕ける感触とともに、荒川はその場に倒れる。
こうして痛めつけて殺していくつもりか、荒川は冷静に考える。そのとき、モノモノウォッチが音を鳴らす。画面を覗き込んだ荒川は、全てを察した。モノクマが言っていた
ユニコーンに跨がった兵装束のモノクマが長い刀を振るう。首を狙った太刀筋を見極めて体を翻す。その動きを見越していたのか、武装した馬の棘で両耳を削がれた。激痛で意識が飛びそうになり視界が眩む。またモノモノウォッチが鳴った。まだまだ始まったばかりだ。
馬車を引く馬に跨がるモノクマがすれ違い様に鞭を振るう。しなる鞭は不規則な動きで荒川の左腕に巻き付き、文字通り凄まじい馬力で引く。華奢な荒川の細腕は呆気なく折れ曲がった。制御を失った腕が無造作に解放され、体に打ち当たる。三度目の音がした。
完全に動きが止まった荒川に追い討ちをかけるように、馬と車はまだまだ襲いかかる。投げ出された左脚を馬が踏みにじり、車輪が骨を砕く。痛みに仰け反った荒川を狙い澄まし、槍を持ったモノクマは顔面を狙う。しかしそれは命を奪うためではなく、両の頬を貫通する一撃を見舞うためだった。歯を削り、舌を貫き、もはや呻き声を上げることすらかなわない。ライフル銃を持ったモノクマが倒れた荒川の右肩を撃ち抜く。三回連続で音が鳴った。
両腕両脚を奪われ顔には横一文字に槍が刺さった凄惨な姿。それでも荒川の目は死なない。死んでなるものかとモノクマを睨む。生にしがみつく。まだ、終わらせない。
「ふふーんっ!!」
その荒川の目に刺激されたのか、鉈を振り回すモノクマが突撃してくる。素早く振られた鉈の白い光を最後に、荒川の視力は奪われた。両目から激しく血が噴き出す。目を閉じても痛みは荒川を逃がさない。完全に視界を失った荒川は、見えない追撃に恐怖する。そんな荒川を嘲笑うように、モノクマが槍を投擲する。大きく開いた下腹部に真っ直ぐ飛び、体を貫いた。
「!!」
視力の次に何を奪ったのか、荒川は痛みで理解する。もはや呼吸すらままならない中、気力だけで意識を手放さない。最後の仕上げとばかりに、車からモノクマがスコープを覗く。引き金に指をかけ、発砲した。一瞬の衝撃。もはや枯れたと思っていた血が、荒川の心臓から流れ出す。
朦朧とする意識。もはや気力も何も意味はない。この思考を止めた時、自分の命が尽きるとはっきり理解した。まだだ。あと少し。
打っても、刺しても、砕いても潰しても貫いても斬っても死なない荒川に痺れを切らしたモノクマが、メリーゴーランドの回転数を上げる。刀や鉈や槍を持ったモノクマたちは、ただその刃を真横に突き出す。激しく回転する機械。モーターが唸りをあげ色が混ざり荒川の姿が見えなくなる。高鳴るモーター音が限界まで達した時、メリーゴーランドは爆音とともに煙を噴き出した。
徐々に減速するメリーゴーランドに、荒川の姿はない。ただ、柱に繋がった鎖のそばに、血のような色の石が一つだけ転がっている。
ボクはとちゅうから、見ていられなかった。あんなにひどいやり方で、エルリさんは
「〜ッア!エックストリィーーームッ!!いや〜あんな細っこいのでも結構しぶとく生きるもんだね!びっくりしちゃったや。やっぱりボクの粋な計らいで生存欲出ちゃったかな?」
「くぅっ・・・!ちくしょう・・・!ちくしょう!」
「無茶苦茶過ぎる・・・!荒川はなんでそこまで生き延びたかったんだよ・・・!『失楽園』させてくれとか、おしおきに反抗したりとか・・・」
「結局荒川氏には何も喋らせてもらえなかったねえ。となると荒川氏はあ、本当に
「うぷぷぷ!さあどうだろうね!でもボクはちゃんとサービスしてあげたよ!だから荒川サンはあんなに頑張ったんだからね!」
「ど、どういうこと?」
「本当ならこんなことせずに普通に荒川サンのことおしおきしちゃってもよかったんだけどね!でもさすがにそれだと、ボクが荒川サンをむりやり黙らせたみたいで不公平だからさ!」
「むりやり黙らせたんだろ・・・!その上、あんなムゴいことしやがって・・・!」
「うぷぷぷ♬錬金術の大原則は、等価交換でしょ?だから荒川サンにも等価交換してもらったのさ!
「・・・暴利どころじゃあないねえ。てことはあ、荒川氏があんなにしぶとく生きようとしたのはあ、そこまでしておれたちに伝えることがあったってことだねえ」
「うぷぷ!そう!その通りだよ!さあとくと見よ!荒川サンからの最期のメッセージを!」
「ッ!?」
ボクたちはただ、
コロシアイ・エンターテインメント
生き残り:7人
おしおき編です。
謎を残しつつある程度ケリをつけるのは難しいけど面白いですね。混乱してくださいね。
第四章 おしおき解説
このおしおきを解説するにあたって、前提知識がいくつか必要です。要するにハガレンです。
錬金術という魔法じみた技術が存在する世界で、右腕と左足を失った兄エドワード・エルリックと全身を失った弟アルフォンス・エルリックが、元の身体に戻る術を求めて旅をする物語です。
この解説で重要なキーワードは、錬金術、等価交換の原則、賢者の石です。
錬金術とは、科学に基づき確立された技術で、ある物質を異なる物質に変換したり、それを応用して造形したり現象を起こしたりと様々に使われています。荒川の才能であるところの錬金術とは意味合いが異なりますが、元ネタといえば元ネタですね。
次に等価交換の原則です。読んで字のごとく、等しい価値での交換です。これは錬金術の大原則で、何かを得るにはそれと等価な何かを代償に支払わなければならないということです。兄エドワードと弟アルフォンスは、死んだ母親を造りだそうとして身体を支払わされたのです。これが今回のおしおきのキモです。
最後に賢者の石です。ハリーうんたらとのやつです。錬金術は等価交換の原則に基づいていますが、この石があるとそれを超越して錬金術が使えます。チートアイテムです。伝承では血のような色の石だったり、不定形の半液状物質だったりします。伝説の物質とされていますが、ハガレン内では人の魂を変換してできる物質とされていました。つまり人一人を犠牲にして作られるということです。怖いね。これは今回おしおきのオチです。
では本題に入りましょう。
まずおしおきタイトル『Merry Equivalent Round』は、処刑装置にもなっているメリーゴーランドと、等価を意味する英単語の合成です。むりやり和訳するなら、『等価な回転木馬』でしょうか。そしてこのメリーゴーランドは、等価交換の原則に従っています。
荒川はその中で痛めつけられ、まず右脚を斬られます。右脚を失います。それにより、『生き残りメンバーに伝えられる言葉』か1文字増えました。身体の部位や機能と、文字の交換です。荒川は右脚を失った時点でその仕掛けに気付き、伝える言葉と、あと自分がどれだけ失えるか、を考えたのです。もちろん最後には命を取られるわけですから、この時点で2文字は確定です。なので残りの8文字分の拷問に耐えると覚悟を決めたのです。
両腕、両脚、耳で5つ。目を潰されたことで視力を、下腹部を貫かれたことで生殖機能を奪われました。そしてラストに心臓を奪われましたが、この時点で9つです。あと一つは、最後にメリーゴーランドが荒川をミキサーした分、つまり荒川の肉体全てです。最後に残ったのは、荒川でできた賢者の石です。人一人を犠牲にしてようやく完成です。
これで10個の文字の代償が判明しましたね。犯人指名スチルといい、荒川はとことんハガレンに絡めていきました。ホントはもっとパロディとかしたかったけど難しかったのさ。
ちなみに、おしおきで荒川が奪われた部位は、ハガレン内で真理の扉を開いたキャラたちが奪われたものをオマージュしてます。エドワードの右腕と左脚、師匠の生殖機能、マスタング大佐の視力、アルフォンスの全身と。