それは、まるで
「あらあらあら?なにみんな?今さら死体なんかにドン引きしてるの?それとも5回目だからさすがに飽きちゃったの?でも、おしおきじゃなく人が死ぬ瞬間を見るのなんて初めてじゃない?前回の虚戈サンのときは真っ暗だったから、その瞬間は見えなかったわけだし」
「あっ・・・!ああ・・・!!あああああああああああっ!!」
「・・・ざけんなよ」
「テンション低いままじゃ捜査もろくにできないよ!もう5回目なんだから勝手も分かってるでしょ!このままクロが裁判場素通りするような展開だけは避けてよね!はい!モノクマファイルもちゃんとあげるから──」
「誰が殺したッ!!」
「!」
びっくりするような大声に、ボクたちは全員体が小さくかたまった。声をあげたのは、今まで見たことないくらいこわいかおをしたテルジさんだった。
「・・・し、下越氏・・・?そんな急に・・・!」
「誰が殺したっつってんだろうが!!どいつだ!!そんなにオレらを裏切るのが面白えか!!オレらを殺すのが楽しいか!!この腐れ外道が!!」
「お、おち、落ち着けって下越・・・!気持ちは分かるけど・・・!」
「イヤ・・・!もうイヤぁ・・・!!」
「ま、正地さん・・・!」
「どうしてこんなことになるのよ・・・!コロシアイなんてもうイヤ・・・!捜査も裁判も処刑ももうたくさん!!もうやめてよ!!」
「あ、あわ・・・あうぅ・・・」
「あーあ、二人もぶっ壊れちゃった。これからまた捜査して裁判しておしおきもあるってのに。オマエラ結構弱っちいんだね。面倒臭いなあもう」
また
「いや・・・どうすンだよこれ・・・!やべェだろ・・・!」
「イヤ・・・イヤぁ・・・!!」
「お、落ち着いて正地さん。深呼吸して」
「そんじゃ面倒臭い絡みをされる前に、ボクはモノクマファイルだけあげてさっさとトンズラこきますよ!さすがにこのままじゃ心が痛むから、いつもより捜査時間は長めにとってあげる!じゃ、がんばってね〜!」
「おおい!そんな適当な感じで放っておかないでおくれよお!なんか方法はないのかい!」
「と、取りあえずスニフ!水持って来い!」
「R・・・
おこるテルジさんと泣いてるセーラさんをおちつかせるため、ボクはワタルさんに言われたとおり
「セーラさん。お、お水どうぞ」
「あっ・・・!ああ・・・!」
「おいスニフ!なんだそりゃ!毒でも入れてんじゃねえだろうな!どさくさに紛れて何考えてやがるんだ!」
「ど、毒・・・!?イヤッ!!」
「
「毒なんか入れるわけねェだろバカ!の、納見も下越おさえンの手伝えって!」
「よ、よしきたあ。どうどう」
テルジさんがらしくもないことを言って、それをきいたセーラさんが
「大丈夫だから・・・!正地さん!大丈夫・・・!」
「そ、そんなこと言って・・・!どうして極さんは死んだのよ・・・!どうして殺されたのよ・・・!誰かが殺したんでしょ!それがあなたじゃないって、どうして証明できるのよ!」
「セーラさん!この
「ハァ・・・ハァ・・・!」
ボクは
「うん、ありがとう正地さん。ゆっくり飲んで・・・落ち着いて」
「ハァ・・・ハァ・・・!ご、ごめんなさい・・・!」
なんとかセーラさんは
「あ、一つ言い忘れたことがあってね」
「
「な、なに!もうこれ以上私たちを苦しめるようなことするなら・・・!」
「お?研前サン戦っちゃう?仲間のために非戦闘員が前線に出てくるアツい展開?いやいや、コロシアイ生活において非戦闘員なんていないから!」
「言い忘れてたことってなんだよ!こっちはお前に構ってる余裕なんかないんだよ!」
つかれてさっきよりも大人しくなってきたけど、まだテルジさんはワタルさんとヤスイチさんにおさえつけられてる。モノクマにとびかかったりなんかしたら、
「いやね、やっぱりボクとしてはオマエラ全員が手を取り合って、同じ目線に立って学級裁判をするべきだと思うわけ。だから、一部の人が
「は?な、なんだよそれ?」
「ここに置いとくと捜査の邪魔になるだろうから、厨房に置いておいたからね!気になる人は探してみたら?そんじゃーねー!」
「あ!お、おい!」
いきなり出てきたとおもったら、そんなことを言ってモノクマはまたいなくなる。なんだか
「あんのバカクマ!なんのこっちゃ分かんねえけど妙なもん厨房に持ち込むんじゃねえよ!衛生ってもんがねえのかあいつの頭には!」
「し、下越・・・!?おい落ち着けってば!」
「おおう、すごい力だあ」
「離せよ!もうお前らのことなんか信用しねえ!オレはオレのやりてえようになるぞ!どこのどいつが極を殺したんだか知らねえけど、ぜってえ許さねえからな!」
「言いたいことは分かるけどお、だからって全員を敵に回すこたあないだろお?」
「全員同じだ!昨日の夜にルーレット回した裏切り者もいるんだろ!どいつが裏切ったか分からねえんだから、全員疑うしかねえじゃねえかよ!いいから離せっつってんだよ!」
「どあっ!?」
テルジさんが体をひねると、がんばっておさえてたワタルさんとヤスイチさんがまとめてなげられた。すごい[[rb:Power > tikara
]]だ。モノクマ
「ま、待てよ下越!」
「・・・いやはやあ、あんなに怒った下越氏は初めて見るよお」
「もう5度目だもん。イヤにもなるよ。下越君は特に、みんなのこと丸っきり信じてたし」
「下越くん・・・」
「さいしょにセーラさんやボクたちのこと
「信じてた反動ってヤツかねえ。取りあえず丁度良いからあ、あっちは雷堂氏に任せるとしようかあ。ともかく今は捜査をするしかないよお。極氏もお、何の手掛かりも得られないまま裁判に行くことは望んでないだろうからねえ」
わすれてた、わけじゃないけど、レイカさんが目の前で
「検死は・・・どうしよう」
「ボ、ボク分かんないです・・・モノクマファイルだけじゃ、ダメですか?」
「モノクマファイルはあくまでシロとクロを公平な立場にするためのものだからねえ。死体を調べて分かることもあるしい、それが手掛かりになるかもしれないだろお?とはいえねえ、おれも何をどう見たらいいのかよく分からないからねえ」
「私がやるわ」
「え・・・?正地さん・・・大丈夫?」
困るボクたちの中で、手をあげたのはセーラさんだった。今ここにいる人たちの中でいちばん
「荒川さんも極さんもいなくなって・・・今ここで、少しでも医療や生命に関わる“才能”を持ってるのは、私しかいないもの。二人ほど詳しいことは分からないけど・・・でも、今の私にはこれしかできないから・・・」
「無理することないよ正地さん?私が代わりに・・・」
「ありがとう、研前さん。でもいいの。今は少しでも、極さんの死の真相を解き明かすために意味のあることをしないと」
まだ
捜査開始
「あれ、納見君どこ行くの?」
「ちょっとねえ。みんなの疑問を解決する手掛かりでも見つけに行くんだよお」
「な、なにそれ?」
「極氏の“才能”研究室さあ」
それだけで、ヤスイチさんが何をしようとしてるのか分かった。だけど、
「う〜ん・・・やっぱり死因は書いてないし、死亡時刻は大して役に立たないね」
「はい。でも、
「すごく苦しそうにしてたけど、関係あるのかな?なんだか息できないみたいに胸を押さえてたよね。こうやって」
「あばれるから
こなたさんの言うとおり、レイカさんはすごく苦しそうにあばれ回ってた。いつものレイカさんからは
「テルジさんも言ってました。もしかしてレイカさん、
「だけど、今日の朝ご飯は大皿料理だったよ。もしあれに毒が入ってたんだったら・・・極さんだけが死んじゃうのはおかしいよね」
「あ〜・・・そうですね。そしたら、
「え!じゃあスニフ君、それ触っちゃダメだよ!ガラスが割れてるのもあるし、危ないから近付かないの!」
「わわっ」
ちょっとしたおもいつきだったのに、こなたさんはボクのこと
「えっと・・・極さんが使ってたのってどの食器かな?」
「このへんのじゃないですか?ボクのはこっちの
「どれも一緒だから分かんないね。これじゃあ毒が塗ってあるかどうかも調べられないよ」
こなたさんが気を付けながらちらかった
「毒って・・・さっき下越くんも言ってたけど、ホントにそうなのかしら?」
「そうじゃないですか?レイカさん、
「でも毒なんか仕込む暇あったかな?私たち、ほとんど同時に食堂に来たんだよ」
「
こなたさんやセーラさんもいっしょに考えてみるけど、レイカさんを
「ふぅ。二人ともいい?検死・・・一応やってみたわ」
「お疲れ様、正地さん。どうだった?」
「うん・・・やっぱりモノクマファイルに載ってることほぼそのままで、目立った傷もないし、麻疹もあるわね」
「それって、普通はないものなの?」
「そうね。毒殺されたんだったらそういう反応が出ることもあるかも知れないけれど・・・どんな毒を使ったのかにもよるわ。それにただの麻疹とも違うと思う。ウイルス性なら私たちの誰にもそれらしい兆候が出ないのはおかしいもの。特にスニフくんは」
「ボクですか?」
「子供は新陳代謝のサイクルが早いから、そういう反応が出やすいのよ」
ボクはちっともそんな
「毒性物質で麻疹を起こすものも・・・ないことはない、はず・・・だけど。ごめんなさい。曖昧で思い出せないわ」
「
「そこから何か手掛かりとか、出て来ないかな?」
「もうちょっとよく調べてみないと分からないわね。これ以上詳しくしようとしたら・・・いくら検死とはいえ、ここじゃあんまりね・・・。スニフくんもいるし、厨房には下越くんと雷堂くんもいるし・・・」
「
「スニフ君、厨房行って二人をこっち来ないようにしてね」
「???」
なんでボクやテルジさんやワタルさんがここにいちゃいけないのかよく分からないけど、セーラさんとこなたさんでレイカさんの
獲得コトダマ
【モノクマファイル⑥)
被害者は“超高校級の彫師”極麗華。死亡推定時刻はたった今。
目立った外傷はないが、特徴的な麻疹がある。死亡直前に全身の痙攣が見られた。
【正地の証言)
極の死体には目立った外傷などはないが、首元に発疹がある。
毒に対して麻疹が出ることはあるが、全身に毒性物質が回るのには時間がかかる。
「テルジさん?だいじょぶですか?」
「・・・ああ。わりぃ。今は話せる気分じゃねえんだ」
「あ、あのう・・・ボク、言わなきゃいけないことあります」
「なんだよ?」
「今あっちでセーラさんとこなたさんが
「は?なんでだよ。オレが犯人だって疑ってるってことかよ?」
「え、えと・・・ちがいます!ボクもダメって言われました!だから、ワタルさんもテルジさんもダメなんです!」
「よく分かんねーな。まあいい。分かった」
テルジさんはすごく
「テルジさん・・・ごめんなさい」
「ん?なんでスニフが謝ってんだよ?」
「レイカさんが
「どういうことだよ」
「
「・・・さあな。そりゃわからねえよ」
「うぅ・・・」
「それにオレはお前が犯人かどうか分からねえ。だから泣こうが謝ろうが何もしてやれねえけど・・・もしお前が犯人じゃねえんなら、そんなこと気にする必要はねえぞ」
「え・・・そ、そうなんですか?」
「そりゃそうだろ。極を殺したのは犯人なんだ。どんな言い訳しようが、どんな理由があろうが、そいつはオレらを裏切ったんだ。だったら悪いのはそいつだろ。お前がルーレット回してようが関係ねえ。実際、オレはお前がルーレット回してもコロシアイなんてしようと思ってねえしな」
いつもニコニコしてておっきい声のテルジさんが、こんなふうに小さい声で、でもしっかり目を合わせてはなしてくれたときを、ボクはしってた。モノクマランドにつれてこられて、アクトさんが
「正直、お前みたいな子供に殺しなんてできると思ってねえ。けど、もう何が起きてもおかしくねえところまで来てんだ。もう裏切られんのはたくさんだ。スニフのことも信じてえけど信じられねえ。だからこれしか言えねえ。お前が犯人じゃねえんなら、そんなこと気にすんな。お前は悪くねえ」
「テルジさん・・・」
「ただ、お前が犯人なんだったら・・・オレはお前を許さねえ。そのときは覚悟しとけ」
「うっ・・・!」
おもわず体がふるえた。こんなにこわいテルジさんははじめてだった。さっきの
「わ、わかりました・・・」
「なんだ下越。落ち着いたか?」
「ん・・・まあスニフに話したらちょっとな。悪いな雷堂。付き合わせちまって」
「まあいいよ。モノクマが置いてったこれも気になるしな」
「あっ」
ボクとテルジさんにはなしかけてきたワタルさんは、手にもった
「まったく気味が悪い話だよ。俺らの身体のことが全部載ってるんだぜこれ」
「あ?なんだよこれ。オレは希望ヶ峰学園で健康診断なんか受けた覚えねえぞ」
「これ・・・」
ボクは言おうかどうしようかまよった。これを見つけて、もってたのはヤスイチさんだ。だからここでボクがそれを知ってたことを言っちゃったら、ヤスイチさんが
「
「ああ。俺たち全員の分があるぞ。もう死んじまったヤツの分もあるし。これを隠し持ってたヤツがいるってことは、そいつは俺たちのなんなんだろうな」
あたまをポリポリかきながらワタルさんが言うけど、ボクはおどろいてた。だって、ヤスイチさんが見せてくれた
「それ、どこありましたか?」
「厨房の真ん中に置いてあった。読んでくれって言わんばかりだな。モノクマはこんなもの見せて、どういうつもりだ?」
「分かんねーよ、そんなこと。それより雷堂、オレはお前に聞きてえことがある」
「な、なんだよ改まって」
うでを組んだまま、テルジさんがワタルさんをにらんで言う。もしかしたらケンカになっちゃうかも、なんてボクはちょっとこわくなる。
「お前、極の『弱み』聞いたよな?それって、極が殺されたことと何か関係あるんじゃねえのか?」
「よ、『弱み』か・・・?確かに聞いたけど・・・そ、それって俺が犯人って疑ってるってことかよ!」
「違えよ。オレはな、なんで極が殺されたのかが分からねえんだ。明らかに殺しやすそうなヤツらじゃなく、極みたいに用心深くて腕っ節の強いヤツを狙うなんておかしいだろ?」
「そうです!こなたさんとセーラさんもそれ言ってました!」
「だったら極が狙われた理由ってのが分かれば、犯人も分かるんじゃねえかと思ったんだ。だからその手掛かりに、あいつの『弱み』を聞いとこうと思ったんだよ」
「お・・・おう。下越」
「なんだ」
「お前、そんなに深いこと考えられるようになったのか。この短期間でめちゃくちゃ頭良くなったな」
「テルジさんすごいです!
「バカにされてる気がする」
いつもとちがうのは
「いや・・・いくらもう死んじまったとは言え、他人の『弱み』をバラすのはちょっとな・・・」
「そんくらい言いにくい秘密ってことか?」
「そういうわけじゃないんだけど、あいつがどうしても隠したがってたことだから、言うのが憚られるっていうか・・・裁判のときに言うよ。どうせ言うんだったら、全員が集まってるところできっぱり言う」
「・・・まあ、そんでもいいけどよ」
もう死んじゃったレイカさんの
「そうだ!テルジさんは何かおかしなこととか、分かんないこととか、
「オレか?んん・・・関係ねえことでもいいなら、ちょっと気になったことはある」
「なんでもいいよ。聞かせてくれ」
「今朝、農耕エリア行っただろ。その時なんとなくなんだけど・・・いつもと違う感じがしたんだよな。なんつうか、空気が違うっつうか」
「フ
「そんな感じだな。あの消毒通路くぐったくらいで感じたんだけど・・・お前らなんともなかったか?」
「いや、俺は別に」
「ボクもです」
獲得コトダマ
【診断書の束)
コロシアイ参加メンバーそれぞれの健康診断書の束。
元々は荒川の研究室にあったものだが、事件後にモノクマによって公開された。
当人すら知らない身体についての情報がつぶさにに記述されている。
【極の『弱み』)
3つ目の動機として与えられた極が隠したがっていること。
極から雷堂に明かされたが、雷堂は極の尊厳のために裁判まで黙秘している。
【農耕エリア)
第四の事件の後に開放された、農作物を栽培している広大なエリア。
生物由来の薬品類を保管する小屋と、他のエリアに繋がるゲート前にはアルコールによる消毒がされる通路がある。
【下越の証言)
事件当日の朝、農耕エリアに収穫に行ったときに普段と異なる違和感を覚えた。
具体的なことは分からないらしい。
「ここと厨房と・・・事件に関係ありそうなところと言ったらそれくらいしかないんじゃないかしら?他にあったとしても、今は分からないわ」
「そういえば納見君が、極さんの“才能”研究室を調べに行ったよね。私たちも極さんの個室を捜査してみたら、何か分かることがあるかも知れないよ」
「だけど・・・ここを離れてもいいのかしら?犯人が極さんに何かしたら・・・」
「私と正地さんで検死したから大丈夫だよ。だいたいのことは分かったし、何かしたらすぐ分かるもん」
「じゃ、ボクはヤスイチさんのおてつだいしてきます!」
「うん、お願いね」
もうセーラさんとこなたさんがレイカさんをとことん
「ヤスイチさーん、ちゃんとしらべれてますかー?」
「おお?その声はスニフ氏かい?よく来たねえ。ちゃんと捜査してるよお」
レイカさんの
中に入ってみると、ほとんど
「食堂や厨房の捜査はもういいのかい?下越氏と雷堂氏が心配だけどもお?」
「あっ、そうなんですヤスイチさん!ボクびっくりしました!」
「何がだい?」
ボクは、
「ああ、そうなのかあ。いや実はねえ、コロシアイ祈念館でおれがあの資料を発見したときにはあ、17人分が揃ってたんだよお」
「
「黙ってて悪かったねえ。スニフ氏を信じてないわけじゃあないんだけどお、余計な情報で混乱しないようにと思ってねえ。あれはおれの部屋にしまっておいたはずなんだけどお?」
「・・・わかりました。ボク、ヤスイチさんの言いたいこと、わかります。ワタルさんがもってたの、ボク見ました。
「元々荒川氏の研究室にあったものなのにい、今になっておれたち全員に共有する意味ってなんなんだろうねえ?もし荒川氏が研究室を開放するより先に死んでたらどうするつもりだったんだろお?」
「こわいこと言わないでください。それより、
「スニフ氏さあ、おれに若干当たりキツくないかい?」
なんのことか分かんないけど、ボクはヤスイチさんだってワタルさんやテルジさんとおなじくらい
「ひとまずここに来た目的としてえ、昨日の夜にルーレットが回った原因を調べに来たんだよねえ」
「そうでした!それ分かりましたか!?」
「ルーレットが固まってるあの辺りで見つかったものは二つあるよお。一つはこれさあ」
「それは・・・
「タトゥーニードル。要はタトゥーを彫るのに使う針さあ」
「
「これがルーレットがしまってあるあのテーブルの近くに転がってたのさあ」
よく見ると
「それともう一個気になるのがあ、ルーレットをしまってある机の方なんだけどお。スニフ氏じゃあギリギリだねえ」
「むっ。
ちょっとだけ高くなってる
「水かわいたときのあとですよね?」
「その通りだよお。水がここに溜まっててそれが乾いたってことまでは分かるよねえ。けど問題はその先さあ。それが一体何を意味するのかが分からなくて困ってるってわけだよお」
「
なんでそんなとこに水のあとがあるのか分からない。この
「
「ふえーん」
「おやあ、素直に出てきたねえ。なんで泣いてるんだい?」
「いやね、ボクはある意味、諦めてる部分はあるんだよ。立場が立場だし?オマエラがボクを恨んだり憎んだりするのは理解できるわけ。その辺に理解あるクマだからさ」
「
「なのにスニフクンのボクに対する扱いが特に辛辣で・・・まるで口も悪けりゃ頭も性格も意地も姿勢も目付きも悪いどこぞの無能みたいに・・・」
「何の話だい?」
「それで泣いて登場してみたという次第ですハイ。で、スニフクンはボクに何の用?」
「
「掃除なんかしてないよ。っていうかそもそもだよ!ボクは掃除係じゃないんだぞコノヤロー!極さんが、ボクがせっかく凶器に使えそうなものを用意してあげてたのに処分しようとするから、元に戻してあげてただけなんだからね!高価なものなんだから!」
「高価なものを人殺しに使わせようとしてるのは自分じゃあないかあ」
「じゃあなんであそこに水のあとありますか」
「そんなもん自分たちで考えろっての!ボクはシロとクロが公平になるようにバランス取ることはするけども、どっちかに肩入れすることはないんだからね!勘違いしないでよね!」
「さっき凶器になりそうなものを極氏に提供してたって言ってたじゃあないかあ」
「それはもともと極サンの“才能”がそっち系だったっていうだけのことだからね。ルールに背くことはボクは絶対にしないよ。もしそうなったときは、ボクだっておしおきされるんだからね。この“セカイ”では掟が第一なの」
「ふぅん。それじゃあまるでえ、モノクマさえも誰かに監視されてるような言い方じゃあないかい?」
「そりゃ・・・おっとっと!危うく喋りそうになっちゃった!納見クンったら最近は油断も隙もあったもんじゃないね!独占しておきたかった情報をバラされてちょっとイラついてる?」
「別にそういうわけじゃあないよお。いずれ話そうとは思ってたけどお、タイミングが分からなくてねえ。こうなったらこうなったでえ、きちんと説明するだけさあ」
「う〜ん、この暖簾に腕押し感!つまんねーヤツ!」
「あっ」
ヤスイチさんとちょっとした
「スニフ氏。今は裁判に集中するんだよお。極氏を殺した犯人はおれたちの中にいるらしいからねえ。それを外したらモノクマの正体を暴くどころの騒ぎじゃあなくなってくるんだよお」
「は、はい・・・!あ、えっと、ヤスイチさんは・・・ボクのこと、
「そりゃ分からないけどお、けど他の人よりは信じられるかなあ。捜査を頑張ってるみたいだしい?」
「ありがとござます・・・だけど・・・」
「だけどお、完全に信じてるかっていうとちょっと微妙かなあ。やっぱりどこかで疑う気持ちはあるよお。そりゃ誰でも誰に対しても同じだと思うからあ、悪く思わないでおくれよお」
「わ、わるくなんて思わないです!その・・・テルジさんが、ボクたちのことしんじないって言ってて・・・」
「まあそりゃそうだろうねえ。食堂での雰囲気もそんな感じだったしい。仕方ないよお。裁判の場で論理的に説明すればいいのさあ。信じる信じない以前にい、疑いようのない事実を人は疑わないからねえ」
「・・・?」
なんだか
「まあ、スニフ氏も過度な信頼は禁物だよお。少なくとも誰かは極氏を殺してるしい、最悪もう一人の裏切り者もいるからねえ」
「
「昨日の夜に真相ルーレットを回した誰かさあ。おかげでスニフ氏が回したのと合わせて色んなことが分かったと言えばそうだけどねえ」
獲得コトダマ
【タトゥーニードル)
極の“才能”研究室にしまわれていた真相ルーレットの近くに落ちていた入れ墨用の器具。
研究室に元々備わっていたものであり、絵筆のように先端が広がっている。
【水の乾いた跡)
極の“才能”研究室の机に残されていた白い痕跡。
事件前には見られなかったもので、この日はモノクマの清掃も行われていない。
【モノクマランドの『掟』)
モノクマランドにはコロシアイ生活を送る上で様々な掟が定められている。
その拘束力は強く、モノクマでさえそれを無視しては行動できない。
【『真相No.2 超高校級の絶望』)
かつて存在したと言われる、全世界規模のテロリスト及びテロ組織。“超高校級の絶望”そのものである江ノ島盾子を首魁とし、多くの人々が洗脳されテロ行為に加担したと言われている。
世界は一度絶望によって壊滅したが、希望ヶ峰学園で行われたコロシアイ学園生活内での江ノ島盾子の死亡及び残党の分裂や希望による掃討により、徐々にその影響は少なくなっていった。現在では歴史上の出来事として位置付けられており、当時の資料や大規模破壊の痕跡が文化遺産として遺るのみである。これらについて懐疑的な見方をする立場もあり、未来機関による各国への政治介入を正当化するための情報操作だという噂が実しやかに囁かれている。
しかし、絶望は消えていない。世界に人が、光が、希望がある限り、絶望は際限なく生まれる。そして江ノ島盾子の絶望を受け継ぐ者が、世界のどこかに潜んでいる。未来機関はその捜索、そして殲滅に全力を注いでいる。
【『真相No.5 未来機関』)
希望ヶ峰学園の卒業生及び教員(現役を含む)で構成された国際機関。政治、経済、教育、金融、軍事など各分野において専門家を配し、加盟国政府へ指導や援助、制裁などを行なっている。かつて存在した多様な国際組織を統合したような役割を果たし、その過剰な集権性を危惧する声もある。
この機関の発足には、『超高校級の絶望による人類史上最大最悪の絶望的事件』が関わっている。超高校級の絶望の中心人物であった江ノ島盾子が起こしたと言われるこの事件により壊滅状態に陥った世界を絶望から復興させることを目的として、希望ヶ峰学園卒業生の宗方京助を中心に組織された。その後、江ノ島盾子をコロシアイ生活にて処刑した英雄、苗木誠に代表されるように、絶望の殲滅及び世界の復興において多大な功績を残した人物を多く輩出した。
現在は、世界に残る“超高校級の絶望”の殲滅及び未だ復興途中の地域への援助と並行し、新たな絶望の兆しを生まないように世界を管理下に置く計画が進行中である。
『人の言うことと書いて信じると読み、虚ろなものを口にすると書いて嘘と読む。それじゃあ疑うという字は?なんかごちゃごちゃしててよく分からないね。説明しようとしても難しいね。疑うってのは難しいんだよ。信じるより嘘を吐くよりも、疑うことが一番難しいんだ。何を信じて何を信じないのか、何に疑問を感じて何を突き詰めるのか。その選択の一つ一つがオマエラの運命を握ってるんだ。僅かな綻びさえも、それが連鎖して全てが瓦解するきっかけになるかも知れない。何よりオマエラの中には裏切り者がいる!うぷぷぷぷ!この緊張感!この絶望感!どこで道を踏み外すのか、外したことさえ気付かない展望の中で、果たして真実を掴み取ることはできるのか!それともとうとうクロの勝利なんてマサカーな展開になったりするのか!いつもの裁判場広場に集まってください!そこでケリをつけようじゃないの!オマエラの薄っぺらい絆のさ!』
モノクマの
「スニフ氏、行くよお」
「・・・ヤスイチさん、こわくないですか?」
「まあ心穏やかじゃあいられないよお。やっぱり命懸けだからねえ」
「そう見えないですけど」
「これは性分さあ」
いっしょにいるとなんとなく
「ガチガチに緊張するよりはいいよお。おれみたいなシロが穏やかにしてた方が
「そうなんでしょうか」
「揃ったね!うぷぷ!うぷぷぷぷ!」
「何笑ってんだよ」
「いや〜、上手くできたもんだと思ってね!」
なんのことか分からないけど、モノクマはまた
「それじゃ、始めようか!」
また、はじまる。ボクたちのいのちをかけた、
コロシアイ・エンターテインメント
生き残り:6人
とても人数減ってきたなあって感じます。
あと、スニフに喋らせるとルビ振り作業がクソほどめんどくさい。
自動翻訳機能をモノモノウォッチに付けようか真面目に検討中。
でも今更不自然だよねー