ハイッ!というわけでモノクマですよ!毎度毎度このコーナーでのふざけ方を考えるのもめんどくさくなってきてるんですけどもね! \\えーっ!?//
そんな感じで今日は5度目の裁判のおさらいをしていこうということなんですけども、流石に5回目ともなるとみんな疲れてるのか、それとも単純に残ったメンバーのコミュ力が低いせいなのか、いまいち盛り上がりに欠けてる節があるんじゃないかな?もっとこうさ!豹変したり突然の暴露したり狂っちゃったりブチ切れたりとか、そういう展開を望んでるわけだよボクとしちゃあ。それなのにあいつらったら、やれ恋愛沙汰だ、やれヤクザがなんだ、チープなんだよ!チープ、チーパー、チーペストなんだよ!だけどもだけど、ボクはそれを静観してるんです。なんでかって?うぷぷぷぷ♬それはね、その先に待っているおっきな絶望を、そしてにっくき希望がまさに絶望を生み出す様をありありと見ているからなんだよ!希望あるところに絶望あり、昔のえらい人は言いました。希えばいつか絶たれる、希望はいずれ絶望へと変わる。そんな感じ!
さてさて、では前回のおさらいだよ!今回殺されたのは“超高校級の彫師”こと極麗華サン!ぶっちゃけボクにとっちゃ、やたら暴力的だし、すごまれると怖いし、そのくせみんなをまとめて希望に導こうとしてる、邪魔くさい存在だったワケ!それがぶっ殺されちゃったわけだから、もう大喜びなの!だって虚戈サンの事件からそんなに日数経ってないんだよ?一番コロシアイに反対してた人がこうなるってことは、もうここまで来ちゃったらコロシアイからは逃れられないってことを象徴してるよね!いい気味いい気味!
極サンが死んだのはみんなで朝食を食べていた直後。みんなの目の前で突然苦しみだして死んじゃいました!その後の捜査では人が少ないこともあったから、ボクからちょっとだけ手助けをしてあげたんです。うぷぷ♬やっぱりみんなには仲良くコロシアイしてほしいからね!ボクって気が利くクマでしょ!納見クンとスニフクンだけが隠し持ってた診断書のリストを、みんなが見られる厨房に置いておいたわけです。ま、それがすぐに犯人に結びつくわけじゃないし、案の定クロは前回の裁判中に、1つ大きな嘘を吐いたからね!まあ、嘘と呼ぶのはちょっと微妙なんだけど。とにかくシロにはその嘘を見破るチャンスを、クロにはバレるかバレないかの緊張感を持ってもらわないといけないからさ!う〜〜ん!我ながらいい調整だ!ほれぼれしちゃう!
てなわけで、裁判の後編、スタートだぜ!
「レイカさんと・・・“
正地の口から飛び出した言葉に、全員が息を呑む。得体の知れないテロ集団である“超高校級の絶望”と、やくざ者との関わりがあるとはいえ、高校生でコロシアイを防ごうとしていた極が、関係あるという説は、にわかには信じがたく思えた。それは、その仮説を唱える正地自身も同じだった。
「私は・・・ただ、極さんが“超高校級の絶望”だって言うわけじゃなくて・・・でも、もしかしたら、このコロシアイと何か・・・そう、たとえばモノクマの正体とか・・・その誰かと、関係があったりするんじゃないかって・・・そう思うの」
「えらく持って回った言い方するじゃねえか。自信ねえんなら、なんで言った?」
「お、思い付いたからよ・・・。もしここが、このモノクマランドが本当に“超高校級の絶望”と関係してるんなら・・・極さんが殺されたことにも、何か意味があると思うの・・・」
「なんでもいいよ。今は手掛かりが欲しいんだ。思い付いたんなら言えばいいだろ」
下越と雷堂の真反対の意見に、正地は恐縮して口ごもる。それでも全員の注意を引き受けたこの状況では、引き下がることもできない。意を決して、正地は再び語り始める。
「まずね、“超高校級の絶望”に関する真相を得て、コロシアイを起こそうっていう気になる人って、二通りしかないと思うの」
「二通り?」
「1つは・・・“超高校級の絶望”に所属してる人。だけど、これはあり得ないわ。だって今はもう歴史になってるくらい昔の存在だったわけだし、私たちの中にそんな危険人物がいるなんて思えないもの」
「それはどうだかな。現に、今こうして裁判してんだぜ?」
「だけどお、その“絶望”の活動のピ〜クはずっと昔って事実は変わらないよねえ。何らかの思想である以上は100%の否定はできないけどお・・・まあ、可能性は低いよねえ」
「じゃあ、もう一通りってなに?」
真相ルーレットから得られた情報によれば、“超高校級の絶望”は既に未来機関によって無力化され、現在ではその出来事があったことを示す遺構が残る程度にまで衰退している。現時点で高校生である自分たちの中に、そのメンバーがいるとは到底考えられない。そして次の可能性を正地は示す。
「もう1つは・・・極さんを“超高校級の絶望”だと思った人。世界を滅ぼすようなテロ集団の一人なんだって思ったら・・・もしかしたら殺意を抱く人もいるかも知れない・・・。もしかしたらその人は、私たちのことを守るために極さんを殺したのかも知れない・・・」
「で、でも・・・!レイカさんそんなひどい人じゃないです!
「なんでスニフにそんなことが言えるんだよ。ここに来る前のことなんか、誰にも分からねえだろ」
「テ、テルジさん・・・!でも・・・!」
「落ち着いてスニフ君、下越君。正地さんが言いたいのは、今回のクロが、極さんが“超高校級の絶望”の一員だって思って犯行に及んだかも知れないってことだよ。極が本当に“超高校級の絶望”かどうかは問題じゃないんだ」
「・・・でも、分からないだろ」
今度は下越と雷堂の意見が噛み合う。極が“超高校級の絶望”の一員かそうでないか、問題の核はそこではないが、気懸かりなことでもある。考えても答えの出ないことに時間を割くよりも、今は目の前の問題を解決することが重要だ。
「そもそもどうして正地氏はあ、『犯人は極氏が“超高校級の絶望”の一員だと思って殺害した』っていう仮説を立てたんだい?それってえ、正地氏の中で極氏と“超高校級の絶望”が繋がってないと閃かない発想じゃあないかい?」
「ん・・・?え、なんだ?納見が何言ったか全然分からなかったぞ今」
「下越君、ちょっと静かにしててね」
「・・・極さんの“才能”の、彫師ってね。要は刺青を彫る人なんだけど・・・これって、本当は医師免許が必要なの。だから、そういう肩書きを持ってるっていうことがもうグレーゾーンっていうか・・・それだけじゃないんだけど──」
「まあ裏社会との繋がりもあるし、そういうことだよな」
「
「無免許でそういうことしたら、普通に犯罪なんだよね・・・」
「レイカさん、
「やっぱり、裏社会との繋がりって、そういうテロ組織との関わりもあるんじゃないかって思うの・・・私の勝手なイメージと言えばそれまでなんだけど・・・」
「それは俺たちに判断できることじゃないだろ。その手の話に詳しいヤツなんか、いないんだから」
あくまで仮説であり、その根拠も不確実なものであるが、裁判場全体では既に極と“超高校級の絶望”の繋がりが濃厚となっていた。どこまで突き詰めようとしても、結局は極の“才能”や『弱み』からのイメージになってしまう。何1つ確かなことが言えないこの状況では、議論もままならない。
「よ、よし!決めたぞ!」
「なんだよ」
「このままじゃ状況は変わらないんだ。一旦、極は“超高校級の絶望”と関係あったって考えて、話を進めてみたらどうだ?」
停滞した雰囲気を打破するため、雷堂が努めて明るく繕った声色でそう言う。内心の戸惑いが透けて見えるようなわざとらしい振る舞いに、今ひとつ全員賛同しかねる。
「話を進めるのには賛成だけどお、なんで関係がある方だと仮定するんだい?」
「関係ないってしたって何も進展しないだろ。違ったら違ったでいいことなんだから、関係あるって仮定しておいた方がいい気がしないか?」
「要はなんとなくってことね・・・」
「っしゃ!んじゃ、極はその“絶望”ってヤツと関わりがあったとしてだ、そんな極を殺したヤツってのはどこのどいつなんだ!?」
「う〜ん・・・」
「あ、あのぅ・・・ボクわからないです。レイカさんと“
「ん?それは・・・正地さんと一緒じゃない?極さんが裏社会の人たちと繋がってるって気付いて・・・」
「でもです!それって、まだ
「そりゃまあそうだろうけどお・・・うぅん、分かるわけないなあ」
雷堂の提案を取りあえず採用し、極が“超高校級の絶望”に何らかの関わりを持っていたと仮定する。そうだとしても、なぜ犯人がその事実を知り得たのか、どうやって殺害したかのヒントにはならない。前進しているようで同じところをぐるぐる回り続ける議論に、頭を悩ませる。
「・・・というか、これって自殺じゃねえの?」
「へ?」
「じ、自殺って、なんだよそれ。どっから出てきたその発想?」
ぽつり、と呟いた下越の言葉に、裁判場全体の空気が変わる。考えもしなかった可能性を示され、否定しようとしてもその根拠もない。下越は頭をかきながら、面倒臭いとでも言いたげな、なんとか知恵を絞り出したような、不確かな声色で続ける。
「その“絶望”ってのはさ、テロ集団なんだろ?世界を滅ぼすってくらいだから、とにかく誰でもいいからぶっ殺す的な・・・そんなやべーヤツらなんだよな?」
「はっきりとは分からないけど、たぶんそんな感じだとは思う。でなきゃ世界崩壊なんかできないだろうし」
「ってことは、極がその“絶望”ってヤツだった場合、オレらのことを殺してえと思っててもおかしくねえよな?」
「まあ・・・仮定が正しければ、そう言えなくもない・・・のかしら」
「よく考えてみたら、極が自殺じゃねえって保証はねえわけだし、もしオレらがこの中に殺したヤツがいると思ってたら、どうやったって間違った答えを出すわけだ。そしたら、全員モノクマに殺されんだろ」
「確かにねえ・・・」
「だから、極が“絶望”なんだったら、そうやってオレら全員殺そうとしたってこともあり得るんじゃねえ?」
「
さらっと毒を吐いたスニフの言葉には気付かず、下越は険しい表情のまま考え混む。“超高校級の絶望”についての知識はほとんどないが、常軌を逸した集団であるならばその行動も常軌を逸していると考えられる。ただ目の前にいるだけの者を殺害するために、自らの命を擲つことも、やりかねないのかも知れない。そんな考えが納得されてしまうくらいには、“超高校級の絶望”は歪に認識されていた。
「・・・でも、それってちょっと回りくどくない?」
「ん?」
「極さんの死因が毒なのは分かるんだけど、それが自殺だったとしたら・・・極さんは、その毒を自分で飲んで、私たちを罠に嵌めてモノクマに殺させようとしたってことになるよね?」
「んまあ、そうだな」
「だけどもし、それこそ今のこの状況みたいに、自分の計画がバレて極さんが自殺したってバレちゃったら、これって何の意味もないよね?そしたら極さんは、ただ自殺しただけになっちゃって・・・それって、意味ないんじゃない?」
「ん・・・あー、ホントだ。全然意味ねえ」
「テルジさんが
「スニフ氏はこの頃お、被ってた猫が逃げ出した感じがするねえ」
「
「その可能性を極が考えないわけないし、考えたらきっと対策はするよな。明らかに他殺な死に方を選ぶとか」
「そもそも私たちを殺すことだけが目的なんだったら、自分が毒を飲むよりも私たちの食べ物に毒を盛ればよかったんだよ。そこが私はいまいち納得いってなかったの」
「た、確かにそうね・・・。どうしてそんな単純なこと考えなかったのかしら・・・」
死人に口なし、証拠もない中、完全な憶測だけで推理を進める議論の不安定さは、一歩踏み出すごとに奈落の底への恐怖を煽られる暗闇を歩くようなものだった。その暗中模索の状況の中で、研前のシンプルかつ根本的な疑問は全員にとって見落としていたものだった。
「極さんだったらもっと確実な方法で私たちを騙しに来る、と思うんだ。そんな経験ないから分からないんだけど・・・」
「いやあ、分かるよお。極氏はそんなにギャンブル性の高いことはしそうにないよねえ。やるなら徹底的にやるタイプだろうねえ」
「え・・・ってことは、極が毒で自殺したっていう下越の案は?」
「理に適ってはいるけれどお、極氏に限ってそんなことあり得るかなあ、て感じだねえ」
「珍しく下越が活躍するかと思ったら・・・こうなんのか」
「あのな」
残念そうにため息を吐く雷堂。自分もさほど活躍していないことを棚に上げた態度に、下越だけでなくほとんどの者が呆れる。憶測の元で浮上した説は、極の性格という根拠と呼ぶのも心許ない憶測によって否定された。進みそうで進まない裁判に、心なしかモノヴィークルのエンジンも空回っているような気がしてくる。
「ダメだ。毒殺だってとこまでは分かるのに、そこからどう考えても進まない。やっぱ動機は関係なくて、極を狙ったんじゃなくて誰でも良かったんじゃないか?」
「誰でもよかったんならあ、それこそ食べ物に毒を仕込むよねえ。極氏がたまたま毒を引き当てたとしてえ、犯人はどうやって一人だけに狙いを絞ってえ、なぜ一人しか狙わなかったのかが謎のままだねえ」
「うん・・・毒殺、よね。だけど・・・」
「正地さん?どうしたの?」
何度経験しても、裁判中の膠着は不安を煽る。沈黙が続き、いつモノクマが飽きて裁判終了を宣言してもおかしくないのだ。まだ犯人像が全く絞り込めていない今のタイミングでの裁判終了は、ほぼ確実に犯人の勝利に繋がってしまう。そんな分かり切った展開はモノクマも望むところではないが、ないと言い切れないモノクマの気紛れに気が休まらない。
そんな中、未だ正地は一人難しい顔をしている。先ほど全員の前で話をしたが、まだ納得がいかないことがあるようだった。
「あのね・・・極さんの死因なんだけど・・・みんなは、毒殺っていうことで納得してる感じなのかしら?」
「どういうことだよ?」
「私ね、ちょっと気になることがあるの。極さんの死因は・・・もしかしたら毒殺じゃないかも知れない」
「え?」
議論開始
「極さんの死因ね・・・もしかしたら、毒殺じゃないかも知れないの」
「何言ってんだよ?飯の後に、突然苦しみだして死んだんだぞ。目立った外傷もないんだから、毒以外に何があるんだよ?」
「でも確かにい、毒だとしたらやり方が分からないんだよねえ。一人を狙うことはできたとしてもお、極氏を狙い撃ちにはできないはずだからねえ」
「だったらやっぱり極を狙ったんじゃなくて、テキトーに誰かを殺そうとして、たまたまそれが極だっただけじゃねえのか?」
「セーラさんは、レイカさんは
「そうだよね・・・目立った外傷もないし、何か薬を飲んだわけでもない・・・モノクマファイルにもそう書いてあるし、死因だけが分からないんだよね」
「その通りよ・・・!」
議論は堂々巡りを繰り返し、いつまでも終わらないと感じるほどの同じ意見が飛び交う。ただその中で、正地は気懸かりな点を指摘した。このぐるぐる回る永遠ループを抜け出すポイントを、正地が見出した。
「死因が、分からないの。だけどみんなは毒殺だって確信してる。私も、ちょっと前までそう思ってた。だから毒殺じゃないと思うの」
「またわけ分かんなくなってきたぞ!どういうことだスニフ!説明してくれ!」
「ボ、ボクに言われても・・・」
「みんなが毒殺だと思ってるから毒殺じゃないかあ・・・言葉面だけとるとなんだか逆張りしてるだけのようにも聞こえるけどお?」
「そうじゃないの。みんなが毒殺だと思ったのって、極さんが亡くなったまさにその場を目撃したからでしょ?」
「ああ・・・死の直前の行動とか、そのときの状況から考えても、やっぱり毒殺しか考えられないはずだ」
「誰が見ても明らかな毒殺・・・それなのに、モノクマファイルには死因が書いてなかったの」
「そうだっけ?でも、死因が書いてないことなんて前にもあったよ」
「えっとえっと・・・ハイ!ボクおぼえてます!たまちゃんさんのとき、かいてなかったです!」
「さ、さすが天才少年・・・よく覚えてるなそんなこと」
「たまちゃんの死因は今も分かってないわ。検死をしたけど目立った外傷はなかったし、薬物摂取の痕跡もない。だから死因が明らかになることで、犯人にとって不利になる可能性があった・・・だからモノクマは死因を明らかにしなかった。そうよね?」
「はい!その通りです!っていうかそう言ったしね!そんな名探偵面されてもぉ」
「し、してないわよ・・・」
名探偵と言われて途端に気恥ずかしくなったのか、正地は少々顔を赤らめながら首を振る。
「えっと・・・だけどスニフくん。たまちゃん以外のモノクマファイルは死因、書いてあったわよね?」
「
「さすがに困っちゃったよ」
「思い出せスニフ!お前だったらなんとかなる!頑張れ!」
「下越氏はもう自分の力を諦めてるねえ」
「書いてあったはずだ。というか・・・野干玉以外は死因がはっきりしてるから、そもそも隠す必要が──あっ」
これまで発見された死体を思い返して、若干顔色を悪くしながら雷堂が呟く。そして、最後に思い至った。正地が言う、全員が共通の死因を考えているからこそそれが否定できる根拠に。
「そういうことか・・・」
「えつ、分かったの・・・あっ。えと・・・ら、雷堂君・・・」
「ん、あ、ああ。たぶん、正地が言いたいのはこういうことだと思う・・・。言ってもいいか?」
「うん」
正地の言いたいことを理解した雷堂に、思わず研前が反応する。まだ気まずそうに目線を逸らし合う二人だが、辛うじて会話らしい会話にはなった。その後、雷堂は正地に確認してから、推理した内容を話す。
「つまりな。モノクマファイルで死因を隠すっていうのは、それが明らかになると犯人にとって不利になるからなんだ。だから、誰が見ても死因は、どうやったって隠せないし、隠す必要もない」
「分かる分かる」
「だから、もし極の死因が毒殺なんだったら、俺たち全員がそう思ってるわけだし、あの状況下でそれ以外はあり得ない。なのにモノクマファイルには、極が毒殺されたとは書いてないんだ」
「明らかだったから省略したんじゃねえのか?」
「失礼な!ボクはそんな横着はしないよ!だいたいどこの世界に、明らかだからって死因や死亡推定時刻を省略する検死報告があるのさ!」
「真っ当なこと言うなよ!」
「なんで真っ当なこと言って怒られなきゃいけないんだコノヤロー!」
議論そっちのけでモノクマとケンカする下越。まだ雷堂の言っていることを理解しているのかどうか怪しいが、少なくともそれ以外の全員は意味を理解した。
「毒殺なら毒殺とモノクマファイルに書くはずだ。なのに書いてないっていうのは、毒殺であることを隠したい・・・それか、毒殺じゃないか」
「隠すもなにもお、普通あの場で思い当たるのは毒殺だしい、それで犯人が極端に不利になるとも思えないねえ」
「あン?ってことはだぞ?・・・極が毒で死んだんなら、そう書かれるんだよな。でも書いてない・・・」
「
「書いてないっつうことはアレだ。つまり・・・極が死んだのは毒じゃねえってことだな!」
「
「なんでスニフくんの方が喜んでるの?」
自力で追いついた下越に、スニフが思わずバンザイして喜ぶ。どうやら雷堂の推理も正地の推理と合致していたらしい。極の死因が毒殺ではないと決まれば、次の議題も決まっている。つまり、極の本当の死因はなんなのかだ。
「じゃあもう一度、モノクマファイルを読み直してみよっか。そこにヒントがあるかも知れないし」
研前の提案で、全員がモノモノウォッチを操作する。今回の事件で与えられたモノクマファイルには、極の死亡時の状況のみが書いてある。やはり死因は書いていない。そして特筆すべき点がもう一つある。
「この、特徴的な麻疹ってのはなんだ?全身の痙攣は、俺たちみんな見てたから分かるけどさ」
「確か正地氏と研前氏で検死したんだよねえ?この辺の記述についてはどうだったんだい?」
「書いてある通りよ。極さんの首元に蕁麻疹が出てたの。毒物で発疹が出ることはあるから特に気にしてはなかったんだけど・・・首以外の部分にも少しだけ免疫反応の痕跡があったわ。全身に毒が回るのには時間がかかるはずなの。ご飯を食べてからあれくらいの時間だと、ちょっと早いくらい。だから気になってたのよ」
「ん?ってことは、こりゃあ毒のせいじゃねえってことか?」
「意外とおれたちが気付いてなかっただけでえ、極氏がもともと罹ってたんじゃあないかい?」
「
「分からないのになんで入ってきた!?」
「ワタルさんなら分かるからです!」
「えっ、お、俺?」
「ワタルさん、
「ングッ」
臆面もなくそんなことを言うスニフに、雷堂が息を詰まらせた。全員が思い起こす。まだ虚戈が殺害される前、女子が企画したプールでバーベキューのときに、雷堂とスニフが誤って極が着替え中の更衣室に入り、プールに突き落とされた事件。スニフはそのとき雷堂の陰になっていて見えていなかったが、雷堂ははっきりと極の一糸纏わぬ姿を見たのだった。
「そ、そんなこと今言わなくたっていいだろ・・・い、言っとくけどあれは事故だからな!」
「分かってるよそんなの」
「スニフくん。今は必要だったからいいけど、あんまりそういうこと人前で言っちゃダメよ。恥ずかしいから」
「
「でえ、雷堂氏はそのとき極氏の体に蕁麻疹とか皮膚病の気なんかは見たのかい?」
「ええ・・・い、いやあ、なかった、と思う。うん。むしろシミ1つないキレイな肌だったと・・・なんだよその目は!」
「雷堂お前さてはむっつりスケベだな!むつ堂だな!」
「小学生かよ・・・変なあだ名付けようとすンな」
「とにかく雷堂氏の言うことが正しいんならあ、極氏の蕁麻疹は生来のものじゃあないってことだねえ」
「その結論を出すまですごく遠回りしたような気がする」
顔を真っ赤にしていることから、雷堂はおそらくそのとき網膜に焼き付けた光景を思い出しているのだろう。心なしか俯いているのは目のやり場に困っているからだろうか。
そしてその証言を信じるのならば、極の首に出ていた蕁麻疹はもともと極が持っていたものではなく、殺害の影響によって現れたと結論付けられる。そのことが、極の真の死因の解明に繋がっていくのだった。
「うん、そうね。だとしたらやっぱり・・・極さんの死因は、毒殺なんかじゃない。いえ、毒殺とも言えるし、そうじゃないとも言える。ものすごく特殊な方法を使ったんだわ」
「おい!もったいぶった言い方はやめろ!分からなくなるだろ!」
「勘弁してあげてくれないかなあ、正地氏」
「そ、そうね。あのね、極さんは、ショック死したんだと思うの」
「
「一般的にはね。だけど、極さんの場合はそうじゃなかったの。あのね、彼女の死因はきっと・・・アナフィラキシーショックによるものよ」
「ああっ!?んだとっ!?」
正地の口から飛び出した言葉に、最も強く反応したのは下越だった。意外なリアクションに、それ以外の全員はアナフィラキシーショックという言葉よりも、下越の反応に注目した。
「アナフィラキシーだと!?んなバカな話があるかよ!」
「ど、どうしたの下越君・・・?」
「オレはずっとお前たちの飯作ってきたんだぞ!アレルギーなんて一番最初に気を付けるところだろうが!そうでなくたって、避けてる食材があれば気付くくらいの目はあらあ!今朝の料理にはぜってえにアレルゲンなんて入ってねえ!“超高校級の美食家”の肩書き懸けたっていいぞ!」
「お、落ち着けよ下越!別にお前の料理が原因なんて言ってないだろ!お前が俺たちの食事に気を遣ってるのはみんな分かってるから!」
「あの、ボクその、
「アナフィラキシーショック。要するに強烈なアレルギー反応で、呼吸困難や全身の痙攣、嘔吐などを引き起こして、最悪の場合は・・・死亡することもあるわ」
思いもしなかった可能性に、研前や下越は戸惑う。納見は頭をかきながら視線を空に向け、雷堂は顎に手を当てて何かを考える。スニフはアナフィラキシーショックというものを理解するのに少々時間がかかっている。
「その、アナフィラキシーで極は殺されたってことか?そんなことできんのかよ?」
「・・・アレルゲンってのはその辺に当たり前にあるような物質なんだよ。牛乳とかそば粉とか、オレらが普通に食べられるもんが食べられねえヤツだっているんだ。死ぬくらい強烈な抗体持ってるヤツだったら、そいつにだけ効く毒を混ぜられたのとおんなじだ」
「テルジさんのIQがとっても
「アレルギーのせいでせっかくの料理を台無しにされたらたまんねえからな!あと命に関わることだからめちゃくちゃ気ぃ遣うんだよ!」
「立派だねえ」
次から次へと、普段の様子からは想像できないほど知的な発言が飛び出す下越だが、今回ばかりは全員素直にその話に聞き入っていた。極がアレルギーを持っていたということが飲み込めたら、次に話すべきは1つだ。
「つまりい、極氏はそれくらい強いアレルギーを持ってたってことかい?」
「そんなの・・・全然知らなかった。だって、今までそんな話聞いたことないし、食事だって普通に摂ってたよ?」
「だけど、心当たりはあるわ。アナフィラキシーを引き起こすもので最も一般的なもの・・・みんな思い出してみて」
すなわち、一体何が極にアナフィラキシーを引き起こさせたかだ。
「例えば、いつかの朝ごはんのとき、スニフくんがはちみつを欲しがったときに、極さんはわざわざ雷堂くんに渡させてたわ」
「そんなこともあったな。単純に雷堂をパシってるもんだとばかり」
「あのな・・・」
「それから極さんは言ってたわよね。蜂が怖いって」
「そうですね。レイカさん
「今にして思えばそりゃあ、蜂に刺されることじゃあなくてえ、そっちの心配をしてたってことかあ」
「そうよ、つまり私が思うに、極さんにアレルギー反応を引き起こしたのは──」
「蜂毒だったってことよ・・・!」
妙な静けさが裁判場を包む。正地の推理を信じるのなら、極は蜂毒によってアレルギー反応を引き起こされ死亡したということだ。
「で、でも、死んじゃうくらいの蜂毒なんて食べ物に混ぜたら、私たちみんな死んじゃうんじゃないの・・・?」
「蜂に刺されたことによる死亡事故のほとんどは、アナフィラキシーショックによるものなの。毒そのものでの強力だし多量に摂取したら無事では済まないけど・・・極さんのアナフィラキシーのことを知っていて、狙い撃ちにするだけなら、そこまでの量は必要じゃないわ」
「ってちょっと待てよ!犯人が料理に極のアレルギーになるようなもん混ぜたとは決まってねえだろ!」
「ううん、むしろその逆よ」
「逆、っていうと?」
「アレルギー反応っていうのは、アレルゲンを摂取してから体の中の抗体と反応して、それがアレルギー反応を引き起こして症状が表れるの。つまり、 時間がかかるのよ」
「・・・っていうことは、朝飯の中に蜂毒を混ぜても、あんなに早く効果が現れるのはおかしいってことか?」
「ええ。だから極さんが蜂毒を摂取したのは、朝ごはんよりももっと前の時間のはずよ」
限られた証拠から、次々と正地は極の死の真相を明らかにしていく。死因だけでなく、極が蜂毒を摂取した大まかな時間までも特定する。犯人にとっては犯行が明らかになっていくことは、それだけで大きなプレッシャーになる。停滞していた裁判場の風向きが少しだけ変わってきた。
「朝飯の前っていったら・・・スニフと俺と下越と極で、農耕エリアに朝飯の材料を収穫しに行ってたな」
「も、もしかしてそのときに
「ううん。このモノクマランドには私たち以外に生物はいないはずだよ。だから・・・誰かが極さんに蜂毒を摂取させたんだよ・・・!」
「つまり極氏が蜂毒を摂取したのは今朝の収穫のときい・・・まあ普通に考えて一緒に行ってたメンバーが怪しいよねえ」
「でも極は普通に野菜収穫してたし、どのタイミングで蜂毒なんか摂らせるんだよ?」
「っていうか、農耕エリアで何かを飲み食いしたヤツなんかいなかっただろ。それよりもっと前じゃねえか?」
「そんな・・・もっと頑張って思い出してよ。何かおかしなこととかなかった?いつもと違うとか、気になることがあったとか、なんでもいいよ」
ようやく議論が進み、極の死の真相が明らかになる道が示され始めている。なんとかしてこの可能性を途切れさせまいと、研前が雷堂たちに語りかける。だが、その時はまだこの後に殺人が起きるなど考えてもみなかったとき。残っている記憶は曖昧なものばかりだが、1つ確実に言えることだけはあった。
証拠提出
A.【下越の証言)
B.【正地の証言)
C.【モノクマランドの『掟』)
「ハイ!テルジさん!」
「ん?なんだよ」
「
「えっ、そ、そうなのか?」
「あ〜そういや言ったな。いやでも、ただの気のせいかも知れねえぞ?宛にされても困るっつうくらいのモンだぞ」
「なんでもいいよ」
「いいみたいです!」
「じゃあ言うけどよ、あんま期待すんなよ?あのな、今朝農耕エリアに入ったときに、なんかいつもと違う雰囲気っつうか、感覚が違ったんだよ。なんつうかこう、いつも空気の味とか臭いが違うような・・・」
「思ってた以上に曖昧だな。気のせいじゃないのか?」
「だからそう言ってんじゃんか」
「でもそれ、いつかんじましたか?」
「エリアに入る直前だな。それまでは特に感じてなかった」
「
「どういうことだい?」
要領を得ない下越の話だが、その内容を再確認したスニフは何かを掴んだようだ。モノヴィークルから身を乗り出して説明する。
「
「ああ、そうだな。やたらとあそこだけ厳重だった」
「ボクしってます。あの
「スニフは顔面がちょうど噴射口の高さだからな。モロに食らっていつも苦い顔してるよな」
「だから、
「消毒用のアルコールってこと?でも、それは下越くんだっていつも浴びてるじゃない」
「
「ああ〜、なるほどねえ」
「つまり、
「じゃ、じゃあ、極は朝に農耕エリアに入った時点で・・・もう死ぬしかなかったってことかよ・・・!?」
「・・・」
極と一緒に農耕エリアに入った下越は、その推理になんとも言えないやるせなさを感じた。あのときの違和感にもっと敏感になっていれば、適切な処置をしていれば、極は助かったかも知れない。コロシアイを防ぐことができたかも知れない。それに気付くことができたのは、吹きかけられたアルコールの微妙な味の変化に気付くことができる味覚を持っている自分だけだった。
「下越くんが責任を感じることないわ」
「えっ・・・」
「だってそうでしょ?極さんが蜂毒アレルギーだってことも、アルコールに蜂毒が混ざってたことも、極さんが死んじゃうっていうことも・・・その時には知りようがなかったんだもの」
「そ、そりゃそうだけどよ・・・」
「もちろん、犯人じゃないっていう前提の話よ。残念だけど、まだ誰が犯人なのか分からない以上は、落ち込んでる場合じゃないの。犯人じゃないなら、全力で推理をするしかないの」
「・・・ああ、そうだな。わりい」
暗くなる下越を、正地が温かくも厳しく励ます。既に下越が犯人だとは正地は考えていないが、それを示す証拠はない。客観的に断言できない以上は、予断を許さない慎重な議論が必要になる。そして、再び裁判場は回りだす。
「ここまでのことをまとめるとお、つまりそのアルコールの中に蜂毒を混ぜた人が犯人ってことでいいかい?」
「そんなことできるのかい?あのアルコ〜ルってどこから持って来てるんだろうねえ?」
「モノクマが補充してるところを見たぞ。地面にカムフラ〜ジュされて見えないようになってたけど」
「当たり前でしょ!ああいう裏の部分ってのは見せないように、どうしても見えるときは夢を壊さないようにするのがテーマパークの基本だよ!」
「あんな重労働させるテーマパークがあってたまるか」
「ってことはそれを知ってるヤツが犯人ってことになるな。それ知ってたヤツは?」
「俺と極と下越は見たぞ」
「
「私も見たことある」
納見と正地以外の全員が挙手した。モノクマは結構な頻度で消毒用アルコールを補充しているらしい。この人数では、まだ犯人を絞り込むのには不十分だ。それでも、体質的に農耕エリアでまともな活動ができない納見以外にひとり、可能性を消すことができたのは収穫だった。さらに他の手掛かりが必要だ。
「じゃあ次はどのタイミングで蜂毒をアルコ〜ルの中に仕込んだかだねえ」
「昨日の時点では極は普通に通ってたけど・・・これ症状が出るまで1日以上かかることとかあるのか?」
「いいえ、アナフィラキシーは長くても6時間くらいよ。短いと1時間もしないけど」
「っていうことは、昨日の時点ではまだ仕掛けられてなかったってことだよね?」
「じゃ、
「夜のうちかあ。まあそりゃあそうだろうねえ。誰もアリバイがないしい、人目に付きづらいしい」
「ていうか、蜂毒なんてどこから調達したんだ?夜中で時間があるったって、探してから仕掛けたんじゃ見つかる可能性高くなるだろ」
「農耕エリアの奥にあった、あの小屋だと思うわ。毒って名前はついてるけど、蜂毒の成分を利用した化粧品なんかもあるのよ。きっとあの小屋にもあったはずよ」
「一から十まで農耕エリアに収まってるじゃんか!どういうこった!」
蜂毒の出所が分かっても、犯人が蜂毒を仕掛けた時間帯が分かっても、それは犯人の正体に繋がらない。頭をかいたり腕を組んで思案したり、ため息を吐いたり頭を抱えたり、各々が近付かない犯人像への焦りを隠しきれない。そうしている中の一人だけが、これ以上犯行が明らかにされないよう次の策を練っていると思うと、もはや隣にいる誰も信じることができなくなってくる。
「いい加減に具体的な犯人の手掛かりが欲しいねえ・・・」
「・・・手掛かりなら・・・あ、あるんじゃないのか?」
「え?」
弱々しく、だが確信を持った声色で、雷堂が呟いた。その視線は、口調は、表情は、明らかに狙いを定めていた。それがどんな根拠に依るものなのか、どんな意図の基にあるのか、続く言葉を全員が待った。
「だってそうだろ?あんな殺し方できるの、蜂毒アレルギーのことを知ってないとできないじゃんか」
「そうね。食べ物みたいにたまたま当たるなんてこともないだろうし」
「だったら、事前のそのことを知ってたヤツが犯人ってことになるんじゃないのか?たとえば・・・正地とか、アナフィラキシーとかに詳しいんだろ?」
「わ、私!?そりゃアナフィラキシーのことは知ってたけど、それはあくまで知識としてで・・・極さんのアレルギーなんて知らなかったわ!検死結果とモノクマファイルからそう推理しただけで・・・!」
「まあ、そこ疑うのはさすがに可哀想だねえ」
「食べ物といえば、極さんはハチミツも避けてたよね。っていうことは、下越君は極さんからアレルギーのこと聞いてたりしてないの?」
「いんにゃ。なんとなく嫌いなんだな、くらいには思ってたけど、アレルギーとはな。それにしたってハチミツまで避けるなんつうのは行きすぎだと思うぜ」
「そういう雷堂氏はどうなんだい?極氏とは懇意にしてたようじゃあないかあ。『弱み』を打ち明け合うくらいだったんだろお?」
「よ、『弱み』のときはそれ以上の話はしてない。それに俺と極は別に懇意にしてたわけじゃない。たまたま一緒にいることが多かっただけだ」
極のアレルギーについて、三者三様に容疑をかけられ、また否定する。知識を持っていても極がアレルギーを持っていたとは知らない正地。極がハチミツを避けていることに気付いていながらそれ以上を察してはいなかった下越。極の『弱み』を知ってはいたがそれ以上のことは知らない雷堂。いずれも犯行に及ぶには情報量が不十分だった。
「みなさんレイカさんの
「なんだよ。結局何も分からねえじゃんか」
「いや、俺たち以外にも、極の体のことを知ることができたヤツはいるはずだ」
「そんな人いるの?」
「ああ。
「やい!もったいぶるなっつってんだろうが!それってなんだよ!」
今はまだ確実なことは何も言えない可能性の段階。それでも雷堂はある程度の確信を持って推理を述べていた。
証拠提出
A.【診断書の束)
B.【『真相No.5 未来機関』)
C.【モノクマファイル⑥)
D.【極の『弱み』)
「これだ」
雷堂が取り出して見せたのは、17枚一束の書類。ダブルクリップでまとめられたその紙は、極の顔写真とともにいくつもの数字や図が並び、一目でただならぬものだと感じられた。それを見た瞬間、スニフは嫌な予感がした。事件前の段階でその存在を知っていたのは、自分と、もう一人しかいなかったからだ。
「なあにそれ?」
「捜査時間が始まるときに、モノクマが言ってただろ。俺たちの中の誰かが隠し持ってた情報を、俺たちに公開するって。それがこれだ」
「その内容を聞いてるんだよ。なんなの?」
「これは・・・簡単に言えば診断書みたいなもんだ。俺たち全員の体のことについて、ありとあらゆるデータがこの紙に書いてある。身長とか体重とかはもちろん、アレルギーだってな」
「え゛っ・・・!?ちょ、ちょっと待って雷堂君・・・!?あの、まさかだけどそれ・・・私たちのもあったりする・・・?」
「ああ。17人全員の分がある」
「見た?」
「一応誰のがあるかは確認したから、顔写真くらいは」
「今すぐしまって!お願いだから!」
「はっ?な、なんだよ・・・?これ結構重要な証拠なんだけど・・・」
「いいから!間違っても私の見たりしないで!」
「お、おい・・・研前のヤツどうしたんだ?」
「雷堂氏は本当に女心が分かってないねえ」
「
焦る研前に戸惑うばかりの雷堂。この鈍感なところのせいで研前と気まずい雰囲気になってしまったというのに、何も学んでいない雷堂に一同が呆れ返る。だが少なくとも今はそんなことは二の次で、その診断書の束が存在するということが何よりも重要なことだった。
「で、その診断書がなんだってんだよ?」
「こいつは、俺たちの中の誰かが隠し持ってたんだ。これさえあれば、極に聞かなくたって、アレルギーのことは知れるだろ」
「なんでそんなものが・・・それに、極さんはアレルギーのことを誰にも言ってないはずでしょ?なんでそこには書いてあるのよ・・・?」
「そんなの俺が分かるわけないだろ。でも、確かにこれはあるんだ。そして・・・これを隠し持ってたヤツも分かってる」
「
「それは・・・!」
徐々に眉間に皺が寄っていき、険しい表情になっていく雷堂。スニフには、雷堂が誰のことを示すかが誰か分かっていた。何度経験しても、誰かが誰かを糾弾するこの瞬間は、スニフにとって最も心が痛む瞬間だった。たとえ糾弾する者も糾弾される者も、どちらも自分でなかったとしても。
そして雷堂は、視線を一切逸らすことなく、そのまま一点を見つめ続けていた。
『診断書を隠し持っていたのは?』
人物指名
スニフ・L・マクドナルド
研前こなた
須磨倉陽人
納見康市
相模いよ
皆桐亜駆斗
正地聖羅
野干玉蓪
星砂這渡
雷堂航
鉄祭九郎
荒川絵留莉
下越輝司
城之内大輔
極麗華
虚戈舞夢
茅ヶ崎真波
▶納見康市
「おれだねえ」
他人に指摘されるより先に、納見は自ら挙手した。ずっと雷堂の鋭い視線に晒されており、スニフとは診断書の存在を共有していた。言い逃れも弁明も一切が無駄なこの状況で、不要に足掻くほど愚かではなかった。だが、それで自らを犯人とする雷堂の推理を受け入れるほど素直でもなかった。
「確かにその診断書はおれが持ってたよお。詳しく言うとお、前回の裁判の翌日に見つけたんだあ。荒川氏に導かれてねえ」
「あ、荒川さん・・・?どういうこと・・・?」
「荒川氏のモノヴィ〜クルがひとりでに動き出してるのを見つけてねえ。不自然だったから後を付けてみたらあ、行った先にこれがあったんだあ。こっそりつけたつもりだったんだけどお、スニフ氏には見つかってしまってねえ」
「だからスニフは、これを納見が持ってたって知ってたんだな」
「は、はあ・・・」
「それでえ?雷堂氏はそれを根拠にしておれを犯人にしたいわけかあ」
「したいっていうか、それが答えだろ。極の体のことをこんなに詳しく知れるんだ。それも、この前の裁判の次の日にはもう手に入れてたんだろ?準備期間だってたっぷりあったじゃんか」
「確かにねえ。だけどもお、おれにはさっきみんなで推理したようなやり方で極氏を殺すなんてできっこないのさあ」
犯人だと追及されても納見はいつもの間延びした調子を崩さずに切り返す。それは、その追及を論理的に否定することができるという自信の表れでもあった。納見が農耕エリアの消毒液タンクに蜂毒を仕込んだことを否定する根拠は、全員の脳裏に浮かんでいた。
「
「ウエスタンエリアでは酒場の空気だけで酔っ払って意味もなくロデオしてたし、農耕エリアでも粗相してたものね」
「それが演技ってこたあねえか?こういうこともあろうかとよ」
「その診断書を見つけたのは全部のエリアが開放された後だしい、そんな時からこんな状況を想定するなんてえ、それこそ無理だよお」
「・・・じゃあ、この診断書のことはどう説明つけるんだよ。俺たちに隠してたのは事実なんだろ」
「隠してたことは否定しないよお。ただ考えてみなよお。これを見つけたのはあ、荒川氏のモノヴィ〜クルに導かれてだよお?荒川氏がおれたちに遺したメッセ〜ジを忘れたわけじゃあないだろお?これを見せることがコロシアイを誘発するんだとしたらあ、隠すのは当然の処置じゃあないかい?」
「んん・・・それは、尤もだと思うな」
「はあ。なんだよ。せっかくの手掛かりなのに、結局納見には犯行は無理だってことかよ。じゃあ何の意味もねえじゃんか」
「・・・やっぱ、簡単にはボロ出さないか。カマかけたつもりだったけど、上手くいかないもんだな」
「へ?」
農耕エリアが開放されたときの納見の痴態を目の当たりにした全員にとって、あの全てが演技で、本当は冷静に振る舞えた納見が犯行に及んだとは考えられなかった。診断書を持っていたことを認めながらも、犯行が立証できない以上はそれ以上の追及は無意味だ。再び停滞しそうになる議論を、雷堂は全く文脈から逸れた言葉で繋げた。
「診断書の話になったら何か引き出せると思ったんだけどな」
「ど、どういうこと・・・?雷堂くん。カマかけたって、何のこと?」
「この診断書のことを知ってたのは、納見だけじゃない。そいつは俺たちが今こうやって納見に疑いを向けてた間、自分も知ってたことには一言も触れずに、納見が犯人だっていう議論に便乗したんだ。なあ、そうだろ?」
雷堂の心臓は、破裂しそうなほど激しく脈打っていた。納見から逸らした視線を裁判場全体に振り、狙いを定めて言葉を撃ち出す。緊張と敵意と祈りを以て発した言葉で、目の前にいる敵を撃ち抜こうと力強く。
『納見の他に、診断書の存在を知っていたのは?』
人物指名
スニフ・L・マクドナルド
研前こなた
須磨倉陽人
納見康市
相模いよ
皆桐亜駆斗
正地聖羅
野干玉蓪
星砂這渡
雷堂航
鉄祭九郎
荒川絵留莉
下越輝司
城之内大輔
極麗華
虚戈舞夢
茅ヶ崎真波
▶スニフ・L・マクドナルド
「お前、知ってたんだよな?スニフ」
「・・・ッ!」
強い敵意のこもった視線を向けられて、スニフは身を強張らせた。自分の名前が呼ばれることを予想していなかったわけではない。それでも、誰かに殺人の容疑を向けられて平静でいられるほど、今のスニフには余裕がなかった。
「スニフ君が・・・?」
「捜査時間のときに俺にそう言ったし、下越も聞いてたよな?もっと言えば、納見が見つけたときに一緒にいたんだろ?なんで今まで言わなかった?」
「隠してたわけじゃあないだろお?隠すつもりなら捜査時間中に君たちに話すわけがないしい、おれのことも真っ先に殺しにくるだろうからねえ」
「ボ、ボク・・・
「それは答えになってないぞ」
納見はスニフをフォローしているつもりだろうが、その表情は冷ややかだった。
「でもボク・・・ヤスイチさんに見せてもらったとき、レイカさんの見てません・・・!そのときもう
「確かにい、そのときはまだ生きてた極氏のも含めてえ、ここにいるおれたちの分は見せてないよお」
「なんでだよ?」
「こうなることを防ぐためにさあ。万が一そこに載ってる情報で殺人を企てられたら困るからねえ」
「けど現状はこうだ。スニフが極の診断書を見て、犯行計画を立てたんじゃないのか」
「ちょ、ちょっと待って!今の話だったら、スニフくんは極さんの診断書の存在は知らなかったんじゃないの?」
「はい!ボクしらなかったです!」
「知らなくても想像はできるだろ。むしろ、都合良くそのときまでに死んでったヤツの分しかないなんて状況の方が不自然だ。17人全員分が存在してて、残りを納見が持ってるっていう予想くらい、スニフの頭があればできるだろ」
「それは・・・確かにそうかも。でも、存在を知らなかったってことは、納見君がどこかに隠してたってことだよね?モノクマもそう言ってたし」
「そうだねえ。絶対に他人に見られちゃあいけないからあ、おれの研究室にしまっておいたよお。あそこならおれ以外は入れないからねえ」
「じゃあスニフ君にも見ることは不可能だったんじゃないかな?」
「いや、分からないぞ。こっそり納見の後をつけて、隙を見て極の分だけ盗み見たとか。それに、たとえば納見は、事件が起こるまでに診断書が全部揃ってるか確認したか?」
「うん?いやしてないねえ。研究室の棚にしまってそれっきりだよお」
「ってことは、もしそこから一枚くらい抜かれてても気付かなかったってことだ。モノクマはこの診断書を、誰かが隠し持ってたってだけで、一人が持ってたとは言ってないし、一箇所にあったとも言ってない。突き詰めればもとは荒川の研究室にあった1セットのものだしな」
納見はスニフに生存者の診断書のことは隠していた。モノクマによって公開されるまでは自分の研究室に隠していた。それでも、現状で唯一、極のアレルギー体質を知っていた可能性があるという点で、スニフへの疑いは全員の心に根を張った。
「で、でも・・・ですけど、
「それはアリバイにはならないだろ。昨日の夜中なんて、誰にもアリバイがないんだ」
「っつうか、別に夜中じゃなくたっていいよな。スニフはいつも早起きしてたし、早朝に仕掛けてからホテルまで戻ってくるってのもない話じゃねえだろ」
「だけど、農耕エリアまではモノヴィークルで行けるとしても、そこから先は?」
「先?」
「エリア内の小屋まで行って、蜂毒を含んだ薬品を持って来て、タンクに仕掛けて、また小屋に戻って薬品を戻して・・・って、スニフ君の足でできるのか?」
「時間さえあれば無理じゃないだろ。俺たちより時間がかかるったって、何時間もかかるわけじゃない。下越が言うように、早朝にだって間に合う」
「あうぅ・・・!!ち、ちがいますって・・・!!」
ここまで、全員で論理的に議論してきた。憶測に基づくものもあったが、それなりの根拠を持った憶測をしてきた。そして今回の犯行は誰も気付かないうちに行われ、全員の目の前で極は死んだ。犯行方法が明らかになった今でも、誰にでも可能で誰にでも犯人の可能性があることが否定できない。
だからこそ、スニフは雷堂の追及に反論できないでいた。自分が犯人でないことを説明したくても、物的証拠も状況証拠も、これまでの推理との矛盾も犯行不可能性もアリバイも、ありとあらゆる反論の手立てが封じられていた。何か反論の余地を見つけても、それは全員について同じことが言えるから。
「ワ、ワタルさんが言ってるの、ぜんぶ
「けど他に可能性の高い納見には無理なんだ。もし仮に診断書を見てなくたって、普段の極の様子から体質のことに気付くことだってできたかも知れないだろ」
「そ、そんな・・・雷堂君、それはさすがに無茶苦茶だよ」
「無茶苦茶でもなんでも、そう考えるしかないだろ。それにもし蜂毒が極に効かなかったとしても、結局は誰にも気付かれないまま犯行が失敗するだけだ。そういうリスクの低さも計算に入れてやったんじゃないのか?」
推理と呼ぶにはあまりに足下の覚束ない雷堂の追及は、しかし矛先を喪って宙ぶらりんになっていた疑惑の目を一箇所に向けさせるには十分な程度の論理性はあった。否定しようにも否定の材料がないスニフは、その追及と同じくらい不確かで曖昧な反論をすることしかできない。だがそれは、悪足掻きにしか映らない。
「なあ・・・スニフ。そんなに否定するなら教えてくれよ。誰が犯人だってンだ?」
「そ、それは・・・」
「雷堂君。ちょっと待って。これじゃ、もしスニフ君が犯人だったとしてもおかしいよ」
「は?おかしい?何がおかしいんだよ。犯行と犯人の正体を暴くのが学級裁判だろ?スニフが犯人なんだったら何にも間違ってないだろ」
「そんなの、たまたま犯人を当てただけなのと一緒だよ。こんなの推理でもなんでもない。ただの弱い者いじめだよ!」
「おいおい何言ってんだよ研前?確かにスニフがやったって物的証拠はないかも知れないけど、状況的にそれ以外に可能性が──」
「冷静になって・・・!お願いだから・・・!」
反論ショーダウン
「極の体質を知るチャンスのあったヤツは何人かいる。俺だってその一人だ。だけど、俺も正地も下越も、極の体のことを正確には理解してなかった」
「けど荒川が遺したこの診断書があれば、極の体のことが隅々まで分かる。これを見た納見とスニフになら、それができたんだ」
「だけど納見は農耕エリアのアルコール通路を突破できない。だから犯行は不可能なんだ」
「そこまでの推理にはだいたい賛成だよ。だけど、スニフ君が診断書を見たなんて証拠はどこにもないでしょ?」
「一番肝心なところが推測に頼ってるんじゃ、信じたくても信じられないよ!」
「どうしてそんな無茶苦茶な推理をするの?強引にスニフ君を犯人だってして、何が分かるの!?」
「お前こそどうしたんだよ研前?なんで根拠もないのにスニフを庇うんだ?
「雷堂君が根拠もないのに疑ってるからだよ」
「根拠なら今説明しただろ?」
「説明になっていないってば!」
「スニフ以外には不可能だった。だからスニフが犯人だ!これのどこが説明になってないってンだよ!」
「だったら私はどうなの!?スニフ君以外に不可能だって言うなら、私には不可能だって理由を説明してよ!」
「お前、自分が何言ってンのか分かってンのか?バカなこと言ってんじゃねェよ!」
「だっておかしいでしょ!説明してよ!」
「実際に犯行可能で、しかも極がアレルギー持ってるってことを知る可能性があったのはスニフしかいねェだろォが!!」
「──ッ!!」
続く研前の言葉は遮られた。それは雷堂の言葉ではなく、他の誰かの言葉でもなく、モノクマでもない。ごく単純で短い、聞き慣れた電子音によって。
「・・・・・・は?」
全員が、自分のモノモノウォッチを見る。電子音がする箇所など、この場ではそれしかない。そこに表示されたモノが意味することは。理解できた。だからこそ意味が分からない。なぜ今、
モノモノウォッチの画面に浮かぶ、セグメントで表された数字。これが意味することは1つ。たった今、誰かの『弱み』が告白されたことを意味していた。
「・・・今、鳴ったよな?」
「な、なんで?なんで今鳴ったの?」
「そりゃあ、誰かが言ったんだろお?誰かの『弱み』をさあ」
「え・・・でもいま、ワタルさんとこなたさんしかしゃべってなかったですけど・・・」
「だったらあ、その二人のどちらかが言ったってことにい、なるよねえ?」
「・・・ッ!」
『弱みを告白したのは?』
人物指名
スニフ・L・マクドナルド
研前こなた
須磨倉陽人
納見康市
相模いよ
皆桐亜駆斗
正地聖羅
野干玉蓪
星砂這渡
雷堂航
鉄祭九郎
荒川絵留莉
下越輝司
城之内大輔
極麗華
虚戈舞夢
茅ヶ崎真波
▶雷堂航
「ワタルさん・・・ですよね?」
「発言的に、雷堂くんとしか思えないけど・・・どの部分が『弱み』だったの・・・?」
「お、おい雷堂!いま言ったこと、そのまま繰り返してみろ!」
「えっ・・・!?い、いや・・・!」
「・・・ら、雷堂君・・・?ウ、ウソでしょ・・・!?」
「・・・!」
突き刺さるような視線を浴びていることに気付き、雷堂は言葉に詰まる。抑え込みたくても勝手に汗は噴き出し、こめかみから顎先へ伝う。
「どうしたの雷堂くん・・・?今言ったことを繰り返して。それだけでいいのよ・・・!」
「できないのかい?」
「・・・おっ・・・おいおい・・・!お前らそんな怖い顔して・・・早とちり、してんのか?落ち着けよ」
「何、言ってるの・・・?」
「俺が『弱み』を打ち明けたって、なんで言い切れるんだよ・・・?研前が言ったのかも知れないじゃんか・・・?」
「なら、こなたさん、さっき言ったこと、
「え・・・。わ、私に犯行が不可能だったことを説明して。説明できないの?って言ったけど・・・」
「う〜ん、『弱み』っぽい部分はないように聞──」
「何言ってんだ?」
スニフに頼まれて、困惑しながらも研前は言われた通りに、自分の発言を繰り返す。その言葉はいずれも雷堂に向けられたもので、誰かの『弱み』となるような内容も言い回しもない。それを確認しようとする納見の言葉を、雷堂が強い語気で遮った。
「極の『弱み』だったらさっきみんなに教えただろ?忘れたのかよ?」
自分にかかる容疑をなんとも思っていない軽薄な笑みにも見える。動揺を悟られまいと取り繕うぎこちない作り笑いにも見える。困惑している周りに冷静さを取り戻させようと安心させる微笑みにも見える。曖昧な色の笑顔のまま、雷堂が言う。
「その時にだって電子音が鳴ってたじゃんか。だったら俺が『弱み』を打ち明けたのはそのタイミングで間違いないだろ?」
「なぁ雷堂」
「何かの間違いだって。誰か無意識に、ヘンなとこ触ったりしたんじゃないか?」
「いま誰も、打ち明けられたのが極の『弱み』だなんて言ってねえだろ」
短く、しかし突き刺すような下越の言葉に、雷堂の表情が引き攣る。しかしまたすぐにさっきまでの表情に戻る。
「・・・ははっ。下越、なんだそれ?俺のこと追い詰めてるつもりか?自分がついさっき何て言ったかくらい覚えてるに決まってンだろ。自分の発言振り返ってみたら、極の『弱み』打ち明けてるような言い方になってたって、反省っつうか、そう感じただけだよ」
「ワ、ワタルさん・・・そんなんじゃ、ボク
「黙ってろよスニフ。分かってンのか?いまお前が一番怪しいんだからな?」
「・・・
「?」
「いま、一番あやしいのは・・・ワタルさんです」
スニフの言葉を聞いて、雷堂は改めて裁判場を見渡す。もはや今、疑いの視線を向けられているのは自分一人だった。研前ですら、どうすればいいか分からず困ったような顔で雷堂を見ている。スニフの容疑が晴れたと同時に、誰かに強い容疑がかかる。素直に受け入れるには残酷過ぎる事実に、俯きたくなるのは研前だけではなかった。
「ワタルさんが言ってる、レイカさんの『
───────────────
「極の『弱み』は・・・さっき、えっと、と、研前が言ったように・・・やくざと深い繋がりがあるってことだ」
「やっぱりそうかあ。ふぅん、いざ確定してもお、極氏が危険人物とは思えないねえ」
「俺だってそう思ってたし、今だってそうだ。だけどあの荒川や虚戈が殺人を犯したり、それを唆すようなことをしてたんだぞ・・・!誰が何考えてるかなんて分からないじゃんか・・・!だから、このことを知って極も危険だって判断するのも、分からなくはないって・・・思う」
───────────────
「・・・ワタルさん」
その時の雷堂や、それを聞いた他の人物の言葉やリアクションを思いだしながら説明するスニフ。そして、発言内容を一通り浚ったところで、スニフは遠慮がちに問う。
「このとき、ワタルさんがボクたちに言った『
「・・・ッ!!」
「こ、虚戈?なんで虚戈の名前が出てくるんだ?」
「ボクの
「ああ、なるほどねえ。『あの荒川や“虚戈が殺人を犯した”り』って部分にい、虚戈氏の『弱み』を紛れ込ませてるって言いたいわけかあ」
「だけど・・・な、なんでそんなことを?」
「・・・ワタルさんが、レイカさんのホントの『
「本当の『弱み』・・・それって、もしかして・・・?」
「
先程までと立場がまるで逆転してしまった。強い言葉でスニフを糾弾していた雷堂は、いま拙い言葉でスニフに糾弾されている。そこに反論の余地はなく、異論を挟む余裕もない。固く口を結んで、鋭い視線をスニフに飛ばす。
「そりゃつまり・・・雷堂は極のアレルギーのことを知ってたってことか?」
「はい。レイカさんの『
「・・・ははっ。バレちまったか」
意を決して雷堂に直接声をかけたスニフだが、雷堂のリアクションは思いの外あっさりしている。それどころか、緊張の色を帯ながらも、スニフの推理を軽く笑ってさえいた。
「まあそういう目されても仕方ないよな。ああ、スニフの言う通りだ」
「・・・だったらなんでそんなに軽々しいのよ」
「極のアレルギーの話になったときに、ちょっと迷ったんだ。正直に俺の知ってる『弱み』を伝えるべきかって。その時も言ったけど、極への後ろめたさとかもあるし。だからつい誤魔化しちまって、そのあと
「そんなこと言わないでよ・・・」
「良いことじゃないってのは認めるけど、まさかそれだけで犯人扱いなんかしないよな?自分が不利になるって分かってて正直に全部話すなんてこと、普通できねェって。誤魔化すのが人間だろ。俺はスニフや星砂みたいに自分の潔白を証明するような論理を作ってから正直に話すなんて、そんな器用なマネできねェからさ」
「もう、しゃべらないでよ・・・!」
「そもそも極のアレルギーのことを知ってたとしたって、実際に俺がやったって証拠はないじゃんか。さっきまで言ってたみたいにスニフにだってそのことを知るチャンスはあったわけだし、もっと言えば納見もアルコールさえクリアすりゃァ犯行は可能だろ?」
「自分が言ってること、無茶苦茶だって分からないの・・・?アレルギーの話をしたのは極さんの『弱み』の話の後だったんだよ?消毒用通路を避けて農耕エリアには入れないんだよ?お願いだから・・・これ以上、幻滅させないでよ・・・!」
か細い、泣きそうな声で研前が言う。不埒な笑みを浮かべながら長々と薄っぺらい自己弁護を垂れ流す雷堂は、その反論に対しては何も応えない。それでも、そこで発言が止まったところを見るに、今の研前の一言は決定的なものになったようだ。
「でも・・・スニフも同じだろ」
「少なくともスニフ君は『弱み』に関して嘘を吐いてないよ・・・」
研前が潤んだ目でスニフに目配せする。雷堂はもう何もせず、何も言わない。これは合図だった。たった1つの発言、たった1つの失敗によって覆しようがなくなった疑惑。否定する根拠もなく、物的証拠もない。だがもはやそんなものが必要ないほどに、雷堂の犯行は明白だった。
それを改めて明らかに、突きつけてやろうと、スニフは裁判の全てを思い返す。暗闇の中を手探りで歩くような先の見えない裁判に、ケリを付ける。
クライマックス推理
Act.1
Act.2
レイカさんの
Act.3
レイカさんはいつも
だから・・・どうかこれで
ワタルさん・・・!
今にも消え入りそうな、それでも確信を持って話すスニフに、誰一人反応を示さない。全てを突きつけるように頼んだ研前も、糾弾されている雷堂も、それ以外の誰も。それでも裁判場の雰囲気はほぼ既に、スニフの推理に賛同することで確定していた。それを感じ取っていた雷堂は、何を思うのか足下を見つめていた。誰ともその視線を合わせないまま、空を見上げる。
「・・・いいんだ」
「え」
「テメェら全員、死んじまえばいいんだ」
コロシアイ・エンターテインメント
生き残り:6人
いや〜長くなってしまいましたねえ〜。
結構前に書き上がってたんですが、スチル書くのが遅くなってしまったんです。
例の如くトレスですが、工夫はしてみました。