第6艦隊 〜チート艦隊のイレギュラーの物語〜 【投稿休止中】   作:ティルピッツ

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第39話

『おぉ、、、あれが、、、信濃か。』

『大きいです、、、。』

『大和型戦艦を改造した艦ですからね。竣工直後は扶桑最大の航空母艦でした。』

 

 

 

 

あの後、"信濃"の艦内視察が問題ない事を三笠に伝え、次の日に他の数人と共に訪ねる事となり、三笠を含めた5名は駆逐艦"白露"に乗り込み、"信濃"が仮停泊中の場所へと来ていた。

白露と三笠は見た事があったので、大して驚いてはいないが、他の4人はそうではないようだ。

 

 

 

 

『実際に見てみるとデカいな、、、、、、。』

『そうですね。私や飛龍なんかよりも。』

 

 

 

そう述べたのは二航戦司令官山口少将と艦娘蒼龍である。彼女の言う通り、"蒼龍"や"飛龍"の様な中型空母と大型空母である"信濃"は全長も全幅もかなりの差があった。

 

今回、"信濃"艦内視察に参加したのは二航戦司令官山口多聞少将、二航戦から 艦娘蒼龍、五航戦 からは艦娘翔鶴、一航戦からは艦娘加賀が参加していた。

南雲中将は一航艦(第一航空艦隊の略)の総司令官である為今回は来れず、艦娘赤城は旗艦としての雑務があり参加出来なかったので、二人の代わりに加賀が参加していた。

 

 

 

 

 

『ここからは内火艇に乗り換えます。両舷停止!』

『両舷停止!』

 

 

 

三笠達は"白露"の内火艇に乗り換え、"信濃"に向かった。白露は艦の方は副長に任せて、同行する事となっているので共に内火艇に乗り込んだ。

程なく、内火艇は"信濃"舷側に設けられたタラップを伝い、"信濃"に乗り込んだ。

 

 

 

 

 

『お待ちしておりました。当艦の艦長、信濃です。今回は私が艦内をご案内致します。』

 

 

 

 

 

三笠らを待っていたのは艦長である信濃だった。今回の案内役は艦長の信濃が行う事になっていた。最初は、他の者か、はつせに任せようかと思っていたのだが、艦内の立ち入り禁止場所(主に格納庫など)に入られては困るので、艦を把握している自分自身が安易した方が良いだろうと考えたのだ。

 

 

 

 

 

『まずは、飛行甲板に行きましょう。』

 

 

 

 

 

まず最初に案内したのは装甲化された大型の飛行甲板だ。"信濃"の飛行甲板は"建御雷"型には劣るものの、十分な幅と全長を持っている。

 

 

 

 

 

 

『鋼板か、、、これは。』

 

 

 

飛行甲板を軽く触った山口多聞少将が呟いた。

 

 

『はい、その通りです。この飛行甲板は特殊加工された鋼板によって装甲化されており、厚さは約500ミリ。500キロ爆弾にも耐える事が出来ます。』

『500ミリ!』

『戦艦並みの重装甲だな、、、。』

 

 

"信濃"の飛行甲板は厚さ500ミリの重装甲を施されており、装甲空母としてもダントツで分厚い。多くの装甲空母を有しているブリタニア海軍の艦でさえ、これ程の重装甲では無い。

 

一般的に空母は飛行甲板を装甲化すると、搭載機数が低下する。理由は至って簡単。そうならざるを得ないのだ。飛行甲板を装甲化すると、重心が高くなり安定性が悪くなる。安定性が悪いと、最悪転覆する恐れがある。空母は元々重心が高い艦なので、重装甲を飛行甲板に施すと、どうしても安定性が悪くなった。それを防ぐ方法はただ1つ。飛行甲板すぐ下の格納庫を縮小、つまり、小型化する事である。

たが、それだと格納庫が小さくなるので、搭載できる機体の数が減る。装甲空母の搭載機数が船体の割に少ないのはその為である。

 

ただ、何事も例外があり、リベリオン海軍の空母"ミッドウェー"級では十分な装甲が飛行甲板に施されつつも搭載機数100機とかなり多い。これは艦自体が大きい為とも言われている。

"信濃"は元々が"大和"型戦艦だったので、船体が大きく飛行甲板に分厚く装甲を施す事が出来た。

 

因みに、世界で初めて装甲空母を作ったブリタニア海軍の場合は、格納庫が小さくなり搭載機数が少なくなるという点に目を瞑り、装甲空母を多数建造した。いかにもブリタニア人らしい考え方と言える。その為、ブリタニア海軍の装甲空母はガチガチの重装甲となっており、防御力はかなり高かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あれは何ですか?』

『どれですか?』

『艦首の方にある細長い溝です。』

 

 

 

 

翔鶴が言う細長い溝に全員が注目する。

その質問に信濃が答える。

 

 

 

『あぁ、蒸気射出機ですね。』

『蒸気射出機?』

『もしや、、、、、、カタパルトか?』

『ええ、蒸気式の艦載機発艦用カタパルトです。』

 

 

翔鶴が気になった細長い溝は、艦載機発艦用の蒸気式カタパルトだった。"信濃"には全部で4基装備されており、全て艦前部に集中している。また、カタパルトのある場所には噴射後留熱防壁と呼ばれる物が装備されていた。これも全部で4基装備されている。

 

 

 

 

『カタパルトか、、、、。しかし、何故蒸気式なのかね?油圧式じゃダメなのか?』

『確かにカタパルトは油圧式でも構いませんが、油圧式カタパルトは軽空母や護衛空母などの比較的小型の空母で装備される事が多いです。正規空母は専ら蒸気式カタパルトですね。』

 

 

 

 

 

空母用のカタパルトを開発したのはブリタニア海軍で、空母"アーク・ロイヤル"(初代)やイラストリアス級空母に装備された。方式は蒸気式では無く油圧式であった。

その後、リベリオン海軍にカタパルトの技術が供与されている。

リベリオン海軍は空母"ラングレー"に試作型の火薬式カタパルトが装備され、世界で初めて空母からカタパルトで発艦する事に成功した。ただし、空母用カタパルトとしては実用的な物では無かった為、同艦からは撤去されてしまっている。

実用的な空母用カタパルトが装備されたのはブリタニアから油圧式カタパルトの技術供与を受けてからで、新鋭空母"エセックス"級から改良型のカタパルトが装備された。

正式採用されたカタパルトはリベリオン海軍の全ての正規空母に装備され、"インディペンデンス"級軽空母や"ボーグ"級護衛空母、"サンガモン"級護衛空母等の小型空母の全艦にも装備された。その結果、正規空母に比べ遥かに小型の空母でも大型の新型機を扱えた。

 

 

扶桑海軍の場合は欧州に派遣されてきた軽空母"鳳翔"がブリタニア製の油圧式カタパルトを装備した。同艦が扶桑本国に戻った際に、ブリタニア製カタパルトを参考にした空母用カタパルトの開発が始まり、試作型のカタパルトが同艦に装備され、試験が行われた。

試験の結果、更に改良が加えられ、ようやく扶桑製空母用油圧式カタパルトが開発された。最初はカタパルトを装備したのは"天城"型空母のネームシップ"天城"である。

"天城"で問題なく扱えた為、姉妹艦の"赤城"、"愛宕"、"愛鷹"。"蒼龍"型、"翔鶴"型と扶桑海軍の全空母に装備される事になった。

 

油圧式カタパルトを開発したのはブリタニア海軍だったが、蒸気式カタパルトを開発したのはリベリオン海軍である。世界初の蒸気式カタパルトは最新鋭大型空母"ミッドウェー"に装備され、姉妹艦にも装備された。後に、扶桑海軍も開発し、"信濃"に装備された。

 

 

 

話が逸れたので戻そう。山口少将の抱いた疑問、何故油圧式カタパルトではダメなのか?

 

別に油圧式でも悪くは無いのだが、蒸気式の方が使い易いのである。

蒸気式カタパルトは油圧式より高速で作動し、遥かに重い航空機も運用できる等の利点がある。ただ、配管が複雑になる等の欠点もある。

つまり、油圧式よりも蒸気式の方が使い易く、空母での運用に向いているのである。

では、蒸気式が軽空母などに装備されていない理由だが、、、、、

 

軽空母や護衛空母は正規空母よりも小型で、運用できる航空機は30〜40機程度である。正規空母が80〜100機ほど運用出来るので、それに比べるとかなり少ない。これは船体が小さく、飛行甲板や格納庫が小さく狭い為だ。蒸気式カタパルトを必要とする航空機はかなりの大型機であり、軽空母等では運用出来ない。それに蒸気式カタパルトは専用の装備を持たないと、満足に運用が出来ない。

 

正規空母ならば十分可能だが、小型空母では難しい。それに軽空母は正規空母の補助的な役割であるし、護衛空母は船団護衛用である。大型機を運用する必要が無い。油圧式カタパルトで十分である為、蒸気式を装備しないのだ。

 

 

 

 

『ふむ、、、、、、。』

『対空火器はどの程度あるのかしら?』

 

 

 

次の質問は一航戦所属の空母艦娘加賀からだった。これだけの巨艦なのだから、対空火器も多いのではないかと思ったようだ。

 

 

 

 

 

『では、兵装を見て頂きましょう。』

 

 

 

 

 

 

信濃はそう言うと、山口達を次の場所に案内した。

 

 

 

 

 

『これは、、、主砲、、、ですか?』

『5インチ、、、いや、6インチ砲か?』

『本艦の主砲 15センチ成層圏高角砲です。』

 

 

 

まず、信濃が見せた兵装は艦橋の前後に背負い式で2基ずつ装備されている涼式72口径15センチ成層圏連装高角砲である。

 

 

 

『これで高角砲?』

『どう見ても高角砲の大きさじゃないだろう、、、。』

 

 

 

 

二人の言う通り、15センチ成層圏高角砲は 高角砲とは言っているが、見た目は15センチ砲そのままで、とても高角砲には見えない。とはいえ、仰角はそれなりにあり、75度まで砲身を上げることが出来る。また、発射速度にも優れ、対空砲としてはかなり優秀である。

扶桑皇国海軍では、10センチ、12.7センチ両高角砲と共に主力防空砲として多くの艦艇に搭載された。

 

 

 

 

『これは先程私がお話した防空巡"鞍馬"型、"九頭龍"型の主砲としても搭載されています。』

『空母だから不自然だけど、巡洋艦級の主砲なら自然かもね。』

 

 

 

はつせの言う通り、15センチ成層圏高角砲は"鞍馬"型、"九頭龍"型防空巡洋艦の主砲としても採用されている。その他には、戦艦級が多数搭載している。

 

 

 

 

『こちらの主砲群は射撃管制レーダーによって集中統制される為、効果的な弾幕を張ることが可能です。』

『使用する砲弾は対空用か?』

『はい。扶桑海軍独自の対空用砲弾"五式弾"を使用します。』

『五式弾?』

 

 

 

 

 

 

五式弾とは扶桑海軍が開発した対空弾で、FS信管装備の砲弾である。これは後にリベリオン海軍が実用化するVT信管と同じ原理を利用しており、効果的な対空弾幕を張ることが出来る。扶桑海軍では、空母や戦艦などの大型艦は勿論、巡洋艦や駆逐艦などにも広く使用されていた。

因みに"FS"とは、開発者である2人のある人物の頭文字をとっている。

 

 

 

 

 

『次は、これとは別の高角砲ですね。』

 

 

 

次に案内したのは、主に使用される高角砲で、飛行甲板脇に装備されている冬式甲型70口径10センチ高角砲だ。こちらは元々"秋月"型防空駆逐艦用に開発された新型高角砲で、口径は10センチだが、砲身長が70口径と大幅に強化されている。

 

 

 

 

『砲身が長い、、、、、、。』

『長10センチ高角砲だな。』

『本艦には8基16門を装備しております。こちらも五式弾を使用可能です。』

『機銃はどの様な物が?』

『対空機銃は、40ミリ、25ミリ、20ミリの三種類を装備しています。』

『三種類か、、、。25ミリは我が軍でも多く使用されているが、40ミリと20ミリはあまり無いな。』

『40ミリは私達白露型駆逐艦が使ってます。』

『そうでしたね。ただ、私の艦の40ミリ機銃は白露さん達の40ミリとは違うものです。』

『え、そうなんですか?』

『ええ。白露さん達のはQF2ポンド砲のライセンス生産品ですね。』

 

 

 

 

"信濃"が装備する機銃は冬1型40ミリ対空機銃、涼1型25ミリ対空機銃、冬涼式乙型20ミリ対空機銃の3種類である。

冬1型は、リベリオン海軍が運用していた ボフォース40ミリ対空機銃のライセンス生産品の改良型。冬涼式はエリコン20ミリ対空機銃のライセンス生産品の改良型である。涼1型は既に運用されていた25ミリ対空機銃の改良型だ。

 

"白露"型駆逐艦が装備している40ミリ対空機銃は QF2ポンド砲 通称ポンポン砲のライセンス生産品だ。はつせ達の世界でも威力が中途半端な25ミリの代わりとして装備されかけていたが、故障が多く、使い勝手が悪かった上にボフォース40ミリの方が使い易かった為、"白露"型駆逐艦からも全て撤去されている。

 

 

因みにポンポン砲は開発した張本人たるブリタニア海軍でもあまり評判は良くなかったりする。口径40ミリとそこそこなのだが、構造上の問題なのか頻繁に故障するのだ。具体例を挙げると、ブリタニア海軍の高速戦艦"インフレキシブル"に搭載されていた八連装ポンポン砲2基が、射撃を初めて数分足らずで2基とも故障してしまい、結局使えなくなってしまったという事があったらしい。

 

余談だが、地上配備型のポンポン砲は対空よりも対戦車戦で多く使用されたとか。下手な戦車砲よりは強いからだそうだ。

 

 

 

 

 

『対空機銃の総数は?』

『そうですね、、、、、、ざっと100門は超えますかね。』

『100門以上?!!』

『別にそれくらいは珍しくないですよ。他の国の艦は最も多かったりしますから。』

 

 

これは主にリベリオン海軍の艦艇の事を言っている。戦艦や空母クラスの大型艦では簡単に100門を越す。どちらも船体が大きく対空火器を増強するスペースが広く取れる為でもある。

また、対ネウロイ戦闘を考慮しての結果でもあり、より濃密で強力な弾幕が張れるように機銃等が増強されたのだ。

 

 

 

 

 

『電探系はどうなってる?』

『電探系は対空、対水上、射撃管制、航空管制などを搭載しております。』

『航空管制用のがあるんですか?』

『はい。本艦以外の空母にも装備されていました。』

『へぇ、、、、、、。』

『格納庫は見れないのか?』

『申し訳ありません。航空機格納庫は機密保持の為、お見せすることは出来ません。』

『機密保持?』

『はい。』

『ふむ、、、それならば仕方無いな。』

 

 

信濃が機密保持の為、格納庫は見せる事が出来ないと言うと、山口少将は納得したのか、それ以上は言わなかった。

はつせ達が機密保持の為と航空機格納庫を見せないのは、搭載している機体が関係する。

 

 

"信濃"が搭載している艦載機はほぼ全機が噴進機で、どれもこの時代では桁外れの性能を持つ機体である。無闇矢鱈に見せて、技術が漏れては大変困るし、量産化されるのも宜しくない。最も、量産化以前に全く同じ性能の機体を作れるかどうか怪しいが、、、。

 

 

 

 

『もしかして、艦橋とかも見れませんか?』

『残念ですが、そちらも、、、。』

『そうですか、、、。』

 

 

艦橋も同じ理由で見せる事は出来ない。

 

 

 

『本艦の案内はこれで以上となります。』

『ふむ‥‥良いものを見せてもらったよ、ありがとう。』

 

 

 

 

 

山口少将は信濃にそう礼を言った。

そして続けてこうも言った。

 

 

 

『いつかこの艦と共同作戦をしてみたいものだ。もっとも‥叶わない夢かもしれないがな。』

 

 

 

 

彼はそう言うと、飛龍らと共に内火挺に戻っていった。


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