第6艦隊 〜チート艦隊のイレギュラーの物語〜 【投稿休止中】 作:ティルピッツ
事態が急変したのは、遡る事5分前の事
『副長、阿武隈さんは付いてきますか?』
『はい、比叡艦長。遅れること無く付いてきます。』
比叡は、それを聞くと艦長席を立つと艦橋横の見張り所に出た。見張妖精と共に双眼鏡を持つと、妖精達と共に水面の監視を始めた。
元々、『比叡』と『阿武隈』は、姉妹艦の『金剛』、長門型戦艦の『長門』。最新鋭艦大和型戦艦の『大和』。護衛の駆逐艦『吹雪』『白雪』『初雪』『磯波』で呉鎮守府を出航した。
だが、途中のルソン島付近で『比叡』の機関が故障を起こしてしまった。一刻も早くトラックへ向かいたい艦隊は、『金剛』『長門』『大和』を護衛の駆逐艦4隻と共に先にトラックへ向かわせる事とし、『比叡』の護衛に軽巡『阿武隈』が残った。
本来なら、1隻ではなくもう少し着くべきであろうが最新鋭艦である『大和』を少しでも傷付けたくないと考えた比叡は、自身は機関の修理が終わり次第、全速でパラオに向かってから、トラックに向かうと告げた。
彼女の姉である金剛は、自分も残ると言っても中々聞かなかった。
『お姉様、心配いりません。パラオで機関の修理を終えてからあとを追います。』
『なら私も一緒に行きマース!』
『それはダメです。お姉様は長門さんと大和さんと一緒に行ってください。』
『何故ですカ?』
『いいですか、お姉様。私と金剛お姉様の役目は、長門さんと大和さんをトラックまで無事に向かわせる事です。お姉様まで離れたら、誰が先導するんですか?』
『そ、それハ………』
『そういう事です。安心して下さい、私も直ぐにトラックに行きます。』
『……分かりマシタ。約束ですからね!』
『はい!金剛お姉様!』
結局、護衛無しというは流石にいかんという事で、阿武隈さんが付いてくれました。
機関の修理も終わり、今はパラオに向けて航行中。今は、阿武隈さんが居るとはいえ、ほぼ丸裸の状態です。最近パラオ近海での深海棲艦の潜水部隊が遊弋しているという情報を事前に聞きました。
ですが、パラオの哨戒圏内に入れば心配入らないでしょう。
艦橋内に戻ろうとしたその時…………
『左舷、雷跡!!』
熟練見張り員妖精が叫んだ。
同時に、『阿武隈』が雷跡発見を知らせる警笛を鳴らした。
『取舵いっぱい!機関全速!!』
副長が咄嗟にそう叫ぶが、それでは間に合わないと判断した比叡は、素早く自らの力で艦を操作した。
『取舵!間に合って!!』
だが、排水量3万トンを超える巨体はそう簡単には曲がらない。最初僅か横に滑る。徐々に艦が傾斜して、ようやく舵が効き始める。
『大丈夫!!躱せる!!』
そう思った瞬間、凄まじい爆音と艦橋を超える水柱が上がる。『比叡』の艦首左舷と2番煙突下に被弾したのだ。被弾の衝撃で船体の部品が飛び散る。被弾箇所付近にいた数名の兵員妖精の姿が見えない。
『くっ!』
左足と脇腹に赤く血が染みる。痛みのあまり、比叡はその場に座り込んだ。
直ぐに副長や、航海長が駆け寄ってくる。
『艦長!』
『大丈夫ですか?!』
比叡は、襲い来る痛みに耐えながら副長達の手を借りて、艦長席に辿り着いた。
『艦長!手当を!軍医だ!軍医を呼べ!』
そう叫ぶ副長を、比叡は止めた。
『私は大丈夫…………私より被弾箇所付近の……負傷者の手当を…優先!それから……被害報告!』
『しかし艦長!』
『この程度で……戦艦が沈むもんですか……!』
心配する副長を、比叡は鋭い目で睨んだ。
と、その時艦橋に応急修理妖精が飛び込んで来た。
『報告します!左舷艦首及び2番煙突下に被弾!艦首破孔、防水隔壁の一部に破損あり!浸水止まりません!』
『缶室の一部に浸水あり!』
『(バイタルパートを抜かれたか………。)班長に、全力で浸水を止めるように伝えて!』
『はい!艦長!』
『"比叡さん!大丈夫ですか?!"』
いつの間にか、後ろにいた筈の『阿武隈』が左舷に並走している。
『2本貰ったわ………………しかもバイタルパートを抜かれた。』
『"!それじゃあ!"』
『大丈夫………仮にも超ド級戦艦………魚雷の2本程度で沈んだりしない………。』
内心、比叡は焦っていた。
破損した艦首部分と第2煙突下の破孔は、走行の水圧で徐々に広がっていた。それに伴い、比叡自身の肉体的な傷も少しずつ増えていたのだ。
ここで砲戦、対空戦のどれをとっても致命傷になりかねない。
いや、1番怖いのは浸水が止まらない事だ。
戦艦といっても、『金剛型』は元は装甲の薄い巡洋戦艦。改修で戦艦並みの装甲になったとはいえ、他の戦艦に比べれば厚くはない。
だが、もっと悪い知らせが続く。
『"艦長、電探妖精です。21号電探に反応。距離約100、方位080に反応ありです"』
『数は!』
『"多数としか…………"』
『…………………………………。』
『艦長、恐らく敵通商破壊艦隊に配備されている軽空母ヌ級からと思われます。』
『……………そうでしょうね。先程雷撃してきた潜水艦が通報したんでしょう。』
『艦長………………。』
『……総員対空戦闘用意!』
『総員対空戦闘よーい!』
副長が凛と命じ、艦内に対空戦闘の号令ラッパが響いた。
ラッパが鳴り止むと、砲術長は艦長席に座る比叡に
『艦長。艦内に浸水している今主砲を撃つのは危険です。三式弾が使えないのは痛いですが、これ以上船体にダメージを与える訳には……………。』
『………………使えるのは高角砲と機銃だけですか……。』
『はい。』
正直、三式弾が使えないのは痛い。だが、比叡は知っていた。対空戦の要である三式弾が本当はあまり役に立たない事を。
対象の敵航空機が集団で纏まってくるならば効果はあるだろう。だが、最近は敵が三式弾を警戒してか分散して攻撃してくる。散開して来られると、効果が薄いのだ。