DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語 作:紅卵 由己
そして、今回の話もストーリー的にはあまり進行する事の無い話……
要するに、繋ぎの話です。それ以上でもそれ以下でも大気圏突破でもありませんが、早く書きたい話の所まで更新したい所。というかここまでの話数があるのにリメイク前で言うと三話程度しか進行していないってどういうことなの……
グラウモンが発芽の町への進行を始めてから、早くも数時間の時が過ぎた。
町に戻るまでの距離は、体長がギルモンだった頃に比べて遥かに大きくなり歩幅が広くなったからか、それともドスドスと地面に鳴る音のテンポが速いからか、視界が前へと進む速さも普通に歩く事と比べるとかなり速かった。
ベアモンは出血と毒が残っているが意識を保っており、生きる事をまったく諦めていない。
相変わらずタフな野郎だ、と呟くエレキモンの視界には、自分達の住む町の入り口が見えて来ている。
一方で、グラウモンの口からは言葉としての意味を持たない唸り声しか出ない。
獰猛な獣のように瞳孔が縦になっていて、理性はまったくと言っていいほどに感じられず、少しでも敵意を向けられれば直ぐにでも牙を剥くような殺気染みた雰囲気を纏っている。
そんなデジモンの頭の上、正確に言えば髪の毛にしがみ付いているエレキモンの心情は、そんな雰囲気に当てられていても何処か安心感を得られていた。
コミュニケーションを取れない事は問題だが、このグラウモンが自分とベアモンを襲ってくる事は無い。
そう確信していたと言うより、エレキモンはそう思いたかった。
自分の敵わなかった相手を瞬殺したデジモンが、自分やベアモンを襲ってくる事など考えたくも無いからだ。
そんなエレキモンの疑問は、現状一点に絞られている。
(コイツ、元に戻れんのか?)
本来、デジモンの『進化』とは存在の核である
進化の引き金となる要因は『経験』か『感情』のどちらかである事が多い。
『経験』による進化はデジモンの『成長』そのものであり、一度それを遂げると滅多な事が無い限り、進化後の姿から進化前の姿に戻る事は無い。
進化の要因となる経験は、生活の仕方や住まう環境の違いに戦闘経験など様々だ。
その一方で『感情』による進化は特に戦闘の経験が無くとも可能だが、その消耗は激しく、進化後の姿を長時間維持する事はそれに見合う経験を積んでいないと難しい。
何故なら『感情』を引き金とした進化は、本来なら戦闘経験などによって成長するという過程を無視して、デジモンのポテンシャルを今以上に発揮させるという手段だからだ。
それ故に『感情』による進化は一時的な物でしか無く、成長とは呼べないイレギュラーな進化である。
エレキモンの知る限りでは、ユウキは会ってから一度も戦闘を経験した事が無い。
そのユウキが初の戦闘で進化を遂げ、今に至るまで進化は解除されていない。
(まさかだけど、コイツ実はかなり戦闘を重ねてたり……してないよな。あんなビビリな奴が戦闘をしてたら、命がいくつあっても足りやしねぇ。何か別の理由があんのか……?)
疑問を解決したくて問い正そうとしても、その問いに対する返事は当然返ってこない。
そして、頭の中に色々な疑問を浮かべていると、突然グラウモンの足が止まった。
エレキモンが何事かと思いグラウモンの目線の先を見てみると、既に町の入り口へ到着している事が分かった。
ベアモンの体を蝕んでいる毒も、まだ手遅れな領域にまで進行してはいない。
これなら、まだ間に合う。
そう、エレキモンが思ったその時だった。
「ん、なんだ……!?」
突然グラウモンの体が赤く輝き出すと、地に倒れこみながらその体が小さくなり始める。
まるで巨大な風船から空気が抜けていくように縮んでいき、五秒も経たない内にグラウモンの姿がギルモンの姿へと戻った。
当然ながらグラウモンの頭の上に居たエレキモンは、ギルモンの姿に戻ったユウキの頭の上に馬乗りになっていて、ベアモンは背中合わせに倒れこんでいる。
ユウキは瞳を閉じたまま気を失っていて、それを確認したエレキモンは呆れるように言う。
「……やっぱり、無理を通してたのか」
予想通りと言わんばかりの出来事に、エレキモンは深くため息を吐く。
それと同時に、町の方から自分達の事を心配に思ったのか、一部のデジモン達が駆け寄って来る。
「だけど、今回ばかりは本当に……ありがとな」
気絶し、指一本も動かせないユウキに対して、エレキモンは感謝の言葉を伝える。
まだ昼間の発芽の町は、三匹の成長期デジモンを治療するために早くも大忙しだった。
◆ ◆ ◆ ◆
それから数時間後。
「……つまり、そういう事があってアンタ達はボロボロな状態で発見されたってワケね」
「まぁ、つまる所そういう事だな」
発芽の町にある一軒の家の中にてエレキモンは、黄緑色の体をしており、頭の上には南国の島を思わせる花が咲いていて、外見的にはどちらかと言うと爬虫類的に進化をしている植物型デジモン――パルモンに事情聴取をされていた。
家の中には一部の箇所に、パルモンの趣味であるガーデニングによって植えられた色取り取りな花が咲いていて、椅子やテーブルといった家具の姿は見えていない。
天井の一部分からは太陽の光が差し込めるように大きめの穴が空けられていて、何気にかなり工夫が成されているのが伺えた。
エレキモンはそれらの何度か見た事のある風景には特に反応を見せず、パルモンとの話を続ける。
「アンタ達は運が良いのか悪いのか……野生のフライモンから逃げて、生きて町まで帰ってくるなんてね」
「まったくだ。最近の野生のデジモンが、やけに凶暴化しているって話はマジだったなんてな……」
「アンタ達が何か手を出したって事は無いわよね?」
「馬鹿を言うなよ。たかだか成長期のデジモンでしかない俺が、成熟期のデジモンに自分から喧嘩をふっかけると思うのか?」
「そうね。思わないけど……」
パルモンはそう言って、部屋の隅っこで死んだように眠っているギルモンを指刺すと、質問の内容を変える。
「それよりもそこで眠っている赤色のデジモンはいったい誰なワケ? ここらでは見ない顔だけど」
「ギルモンっていうデジモンらしい。昨日、海で釣った」
「ごめん、状況が全然理解出来ないわ。その子明らかに海で見るような外見をしてないもの。何か隠しているわね?」
「隠している事があるのは事実だが、大した事でも無いし、コイツは野生のデジモンじゃあない」
その『大した事でも無い事』と言うのは、ユウキが実は人間(なのかもしれないの)だと言う事だったりするのだが、その事に気付いているはずの無いパルモンは怪しい物を見るような目でエレキモンを見ている。
「突然地鳴りの音が聞こえたと思ったら、森の方から見慣れない大きなデジモンが来ていて、みんな驚いてたわよ? で。入り口まで来たら急に退化したし」
「一時的な進化だったみたいだからな。エネルギー切れって事だろ……そもそも初進化っぽいのに五分近くも進化を維持出来てた事が既に驚きだ」
「五分!? それは凄いわね……普通なら、二分も保てないはずなのに」
ちなみに、数時間前の時には右肩部分に大きめの痛々しい刺し傷が刻まれ、右半身が麻酔にかかったように動けなかったはずのベアモンはと言えば。
(……やっぱりあのクネモン達に攻撃したのが原因なんだろうなぁ……)
刺し傷のあった部位には薬草から作られた薬が塗られ、その上に包帯を巻き付けており、今は安静にするために家の隅っこで横になっていた。
よく見ると、口元に何かを飲んだ跡が残っている。
(結果的に助かったからいいけど、二人には申し訳の無い事をしちゃったな……今度、何か詫びを入れないと)
今に至るまでの過程を内心で呟いていたが、普段から口数は多い方であるベアモンが喋れる状態なのにも関わらず、口数が少なくなっている事に対して不思議に思ったエレキモンは、とりあえずベアモンに声を掛ける事にした。
「おいベアモン。珍しく無言になってるけど、どうかしたのか?」
「何でもないよ。ちょっと考え事をしてただけ」
「珍しいな。お前にも考えるという行動は出来たのか」
「君は僕の事を何だと思ってるのさ……一応、真面目な事を考えてたのに」
体をエレキモンの方へ向けながら、呆れて不満そうにベアモンは返事を返すが、エレキモンは二秒も経たない内に早口で即答する。
「頭の中が青空とお花畑で、寝返りに見せかけて俺の毛皮でモフッとする事を狙っているド変態デジモン」
普段のベアモンの生活を見ていたエレキモンからすれば、ベアモンに対してそういう印象を持ってしまっても仕方が無いのだが、その言葉を聞いたベアモンは途端に『ピキッ!!』と青筋を立てる。
「とりあえず僕はフザけた事をほざいている君を割りと本気で泣かせたいんだけど良いよね。というか今泣かせる絶対泣かせたる」
そう言って左腕の力だけで強引に体を起こすと、麻痺して動かせない右腕の事は気にも留めず、器用にも左手からパキパキと音を鳴らし出す。
その一方で、発言者のエレキモンはベアモンの明らかにまだ痺れが取れていない右足を見て、こう言った。
「へッ!! たかだか片腕しか使えない今のお前じゃあ、俺を捕まえるなんて一週間かけても無理だっつ~の」
「残念だけど、右腕が動かしにくくても右足は何とか使えるんだよね。というわけで逃がさないから大人しくさっきの発言を撤回してもらおうかな」
「やなこった」
「アンタ達さ、アタシの家で暴れようとしないでくれないかしら」
パルモンの言葉を無視して、二匹はドタドタと走り回り出した。
綺麗な花があちこちに植えてある、草原のような家の中を。
「………………」
家の持ち主の額に青筋が立った数秒後。
「「ぎぃゃぁあああああああああああああああああ!?」」
パルモンの家の中から凄まじい臭気と共に、まるでバトル漫画の悪役の断末魔のような悲鳴が響いた。
そして、それから更に数分後。
「……ぅう……?」
騒音に堪らず意識を取り戻し、気だるそうに欠伸を出しながら、目を開けたユウキが見た物は。
(……は? てか、クサッ!? 学校のマトモに掃除されていないトイレが可愛く思えるぐらいにクセェッ!!)
白目を向き、口から白い泡を吹き出し、瀕死の昆虫のようにビクビクと悶絶している、ベアモンとエレキモンの姿だった。
状況を飲み込めず、両手で鼻を摘みながら内心で『訳が分からない……』と呟いていると、現在進行形で家に充満している空気を換気しているパルモンが、ユウキに対して話しかけてくる。
「やっと目を覚ましたね。調子はどうだい?」
「………………」
現在の状況と、今の心境を掛け合わせ、初見の相手に対してユウキは発言する。
「凄まじく最悪な気分だよ……」
元人間のデジモンがこの
本日のNG。
ベアモンに『君は僕の事を何だと思っているのさ』と質問されたエレキモンは、少し思考すると回答する。
「頭の中が青空お花畑で【放送禁止】で、自分に向かって来た敵を【放送禁止】して【描写禁止】する、まぁ要するに外見によらず大魔王な奴だな」
「ちょっ……そんな事を冗談でも言わないでお願いだから。泣いちゃうよ? 割と本気で泣いちゃうよ? う、うぅぅぅ……」
いや、ひょっとしたら、その可愛いマスコットキャラの顔の裏側には……? と思うエレキモンであった。
NGその3「可愛いマスコットキャラクター?」