DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

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更新に二週間もかかったのに物語は相変わらず全然進まないという……

多分この書き方はこれからも変えないと思いますが、書きたい話とかいろいろあるのもあってぐむむ。

いやぁ、小説内での一日が本当に長い←←


電子世界にて――『サポタージュな留守番係』

 フライモンから受けた傷と毒をパルモンの家である程度治療してから、三十分ほどの時間が過ぎた。

 

 右足の感覚が未だに麻痺している所為で、歩行が難しい様子のベアモンの手を掴んで支えながら、ユウキはエレキモンと街道を歩いている。

 

 向かおうとしている場所はベアモンの家では無く、これから働く予定である『ギルド』と言う組織の拠点である建物。

 

 その理由はベアモンから口である程度の説明は受けたものの、どういう組織なのかを見学しておいた方が良いとエレキモンが判断したからだ。

 

 移動の途中で、最初にベアモンが口を開く。

 

「それにしても、ユウキが僕等と一緒に『ギルド』に入ってくれると言ってくれて良かったよ。僕とエレキモンだけじゃ、まだ二人だから試験を受けられないし……」

 

「そういや今更聞くのもアレだけど、何で俺を誘ってくれたんだ? 実力を持った三人じゃないと駄目って言ってたが、それはあのパルモンも当てはまるんじゃないのか?」

 

「パルモンは『ギルド』の仕事に興味が無いらしいからな。俺等と一緒に『ギルド』に入るはずだった奴が、前まではこの町に居たんだが……な」

 

「……?」

 

 返答の途中で難しげな表情を見せたエレキモンと、それに連動するかのように暗い非常を薄っすらと見せたベアモンに対してユウキは疑問を覚えたが、事情を知らない自分が踏み入るような事では無いという事だけは理解した。

 

 そして、重そうな空気を変えるためにユウキは話題を切り替える事にした。

 

「ところでベアモン、お前大丈夫か?」

 

「右肩の事? それなら明日まで安静にしていれば治ると思うけど」

 

「違う違う。右足の痺れとかもそうだけど、飯の事だ」

 

「……あ」

 

 そういえば、とベアモンは思い出すように口をポカンと開けた。

 

 恐らく自分が考えている事が当たっているのだろうと確信付け、ユウキは言う。

 

「お前の家にはもう食料が無いんだろ? 保存してたと思う魚はお前の朝食で消費して、それでも足りなかったからなのか、または新しく保存出来る食料を探しに森に行ったのかもしれないけど……結局フライモンに襲われて、食べ物にありつく事が出来なかったじゃん」

 

「………………」

 

「ついでに言えば、俺は朝から何も食べてない。まだ昼間だから時間はあるが、だからと言ってまたあの森の方に調達しに行くわけにもいかないし、本当にどうするんだ?」

 

 言葉を聞いたベアモンの表情が、口を開けたまま固まる。

 

 おそらく、どう返答しようか頭の中で思考しているのだろうが、それは要するに『忘れていた』という事をわざわざバラしているも当然なリアクションだった。

 

 そんなワケで、この状況で頼れる唯一の頭脳要員をユウキは頼る事にした。

 

「……エレキモン、どうすればいい?」

 

「何でお前らの食事情に俺が手を貸してやらないといけないんだ。大体お前らは一食の量が多すぎなんだよ。少しは節約を意識しろ」

 

「そんなに食べてるつもりは無いんだけど。昨日はあんまり釣れなかった上に、ユウキの分にも食料を割り振ったから少し足りなくなったわけで……」

 

「そういうワケだ。自分の食料ぐらい自分で確保しろ。『働かざる者食うべからず』って言葉があるんだし、そこの馬鹿を見習って頑張れ」

 

「まぁ、確かにそこのクソ野郎の言う通りだと思う。あっ、食料調達するなら僕の分もよろしくね。昨日五匹も分けてあげたんだから、お返しには少し色を付けてよね」

 

「少し前の仲間発言から一転して俺に味方が居なくなったんだが。大体ベアモン、お前のあの施しは無償じゃ無かったのかよ!?」

 

「そんな事を宣言した覚えは無いし、僕は聖者じゃないから食べ物を我慢出来るほど聡明でも無いよ。命を救ってくれたのは本当に感謝してるけど、それとこれは話が別だからそこの所よろしく」

 

「……おぅ……」

 

 この状況で唯一頼れる頭脳要員からは見捨てられ、更に少し前の時間で自分の味方をしていたはずのベアモンからケガをしている者としての特権を利用した断れない要求を投げ付けられたユウキは、一気に表情をげんなりとさせながら言葉を出していた。

 

 気持ちの落ち込みに連動してなのか、頭部に見える羽のような部位が垂れてもいる。

 

 そんな様子を見て、エレキモンは前足でユウキの左肩をポン、と叩く。

 

 慰めの言葉を掛けてくれるのか、と僅かながら期待したユウキだったが。

 

「いつか良い事あるって」

 

 そんな都合の良い言葉を掛けてくれるわけが無く、途端に別の意味で崩れ落ちそうになった。

 

 エレキモンの言葉が本当になるかは、結局ユウキ自身の努力と悪運次第なのかもしれない。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

発芽の町の住宅が多く建ち並ぶ道なりの中に存在する、一風変わった一軒の建造物。

 

 そこは町特有の木造で出来た、天井までの幅がおよそ7メートルはあるだろう広い空間の中に、カウンターや掲示板といった日曜的な物とは異なる家具が設置されている、普通の住宅とはそもそもの目的が違う印象を受ける建物で、主に『ギルド』と呼ばれる組織が活動の拠点としている場所だ。

 

 『ギルド』の主な活動内容は、第三者からの依頼を受け、それを遂行する事である。

 

 今日も依頼はそれなりの量が有り、掲示板には特殊な記号の文字が書かれた紙が複数貼られている。

 

 だが、それを受けようとするデジモン……否、受けられるデジモンは居ない。

 

 理由があるとすれば、それは人員不足の四文字に尽きる。

 

 この発芽の町に住むデジモンの数は『町』と言うには少ない150匹ほどで、のんびり平和に過ごしているデジモンも居れば、自らの手で作物を育てて食料もしくは物々交換の材料として扱うデジモンだって居る。

 

 だが、それらの仕事をギルドには決定的に違う所がある。

 

 『町』の『外』に。

 

 野生のデジモン達の縄張りを通って、この発芽の町とは違う別の『町』に向かわなければならない事だ。

 

 それには当然危険が伴うため、ほとんどのデジモンは好奇心よりも先に恐怖心を抱く事が多い。

 

 仮に好奇心によって『ギルド』に入ろうと考えるデジモンが居たとしても、『外』の世界で活動出来るほどの実力が無くては門前払いとなる。

 

 そして、この町には実力者のデジモンが少ない。

 

 不足している人員を少しでも補うために、この町の『ギルド』では構成員だけでは無く組織のリーダーすら依頼を受けて活動している事が多く、大抵の場合は建物の中に(おさ)のデジモンの姿が無い。

 

 それらの事情もあって、組織の中で留守番の役を任されている者が建物の中でずっと待機しているのだが、依頼をするデジモンが来るまでの間は特にやる事も無く待っているわけで。

 

「はぁ……ヒマだ。リーダー早く帰ってこねぇかな。ヒマなんだよ、退屈なんだよ、やる事がねぇんだよ。チクショー……」

 

 『ヒマだヒマだ超ヒマだ~』とでも言いたげな表情でカウンターの上に寝転がっている、三毛猫のような外見をした魔獣型のデジモンは、退屈を訴えるように独り言を呟いていた。

 

 現在、この建物の中には彼以外の姿は無い。

 

 留守番を任されている彼以外のメンバーが、この日も依頼を受注して活動を開始している所だからだ。

 

「そりゃあ最近は物騒な噂っつ~か、実際に野生のデジモンは荒れてっしなぁ。外に出ても力の無い奴は死ぬ確立の方が(たけ)ぇし、リーダーの判断も間違っちゃあいねぇと思うけどよ……雑用係ぐらいはスカウトした方がいいんじゃねぇかなぁ?」

 

 一人で言ってて空しくなるが、持ち場を離れるわけにもいかない。

 

 誰かが尋ねてくる可能性がある以上は、退屈だろうが待っていなければならない。

 

「……ったく、何かヒマを潰せる物を今度作ってみたほうがいいのかねぇ」

 

 ふと彼は建物の入り口から見える町の風景に顔を向ける。

 

 町に住んでいるデジモンが雑談をしてたり、道を真っ直ぐに歩いているのが見える。

 

 彼は思う。

 

(ほのぼのしてて平和だねえ。よく『大昔は戦争があった』だとか『世界が滅亡しかけた』とか、そういう出来事が過去にあったと言われてっけど、こういうのを見てると実際はどうなのか疑いたくなる)

 

 この世界(デジタルワールド)には様々な言い伝えがあるが、その目で見て確かめない限り真実なのか偽りなのかを理解する事は出来ない。

 

 大袈裟(おおげさ)に解釈された作り話の可能性もあれば、実際に起きた事実の可能性だってある。

 

(……ま、昔がどうあれ……今は平和なんだ。深く考える必要はねぇな)

 

 彼は内心で呟いてから眠そうに欠伸を出すと、一度頭を掻いてから起き上がる。

 

(……にしても暇だな。いっその事サボって、魚釣りにでも出かけるか?)

 

 そんな、後で絶対に怒られそうな事を考えている時だった。

 

「……ん」

 

 入り口の向こう側から、三匹の成長期と思われるデジモンの姿が見えたのだ。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 ユウキはエレキモンに連れられて、とある建物の入り口前に到着した。

 

「これが『ギルド』の拠点なのか……思ってたのとちょっと違うな」

 

「何を想像していたのかは知らねぇけど、その通りだ。でかい建物だろ?」

 

「……まぁ、確かに『ここに来てから見た』建物の中では、かなり大きい方だな」

 

 そこは人間界で見てきたゲームやアニメに出てくる『集会所』を思わせる様々な内装があり、入り口には何処かで見た事があるような、(しずく)の中に二重の丸が書かれた紋章のような物が彫られた看板が飾られていて、やはり木造で作られていた建物だった。

 

 エレキモンやベアモンにとってはこの大きさでも『でかい建物』の判定に含まれるらしいが、人間界に存在するビルやマンションを知っているユウキからすれば、この程度の大きさの建物はそこまで大きな物に感じられなかった。

 

(この二人に『都市』の風景を見せたら、どんな顔をするんだろうな)

 

 先導して中に入ったエレキモンに続く形で、ベアモンの補助をしながらユウキは建物の中に入る。

 

 最初に目に入ったのは三毛猫のような外見をした獣型と思われるデジモンの姿だった。

 

「いらっしゃい。依頼は現在受けられる奴が居ないが、まぁゆっくりしていけ」

 

 そのデジモンはカウンターの上に体を横に倒した状態で、ユウキを含めた三人に対して言葉を放っている。

 

 体勢や口調などから、人間の世界ではよく見る40台ほどの年齢の男性を思い浮かべるユウキだったが、ベアモンからすれば特に気にする事が無いらしく。

 

「ミケモン久しぶり~」

 

「おう久しぶり……その右腕大丈夫か?」

 

「ちょっと色々あってね。治療したおかげで大丈夫だから気にしないで」

 

 ベアモンとエレキモンの知り合いの一人と思われるデジモン――ミケモンはベアモンの右肩に巻かれた包帯を見て一瞬目を細めたが、無事を確認すると『そっか。完治するまでは無理すんなよ』とだけ言っていた。

 

「アンタは相変わらず暇してるんだなぁ。朝とかは結構忙しいんだと思うけど」

 

「特に重要な物があるってワケじゃないと思うが、留守番係は必要だろ? チビ共にこういう役回りの奴の苦労は分からんだろうさ。あと少しで依頼に向かった連中が2チームぐらいは帰ってくると思うけどな」

 

 どうやらこのミケモンは、この『ギルド』で留守番係をしているデジモンらしい。

 

(『あのデジモン』に似てると思ったらミケモンだったか。記憶が正しければ頭が良くて、もの静かで大人しいデジモンだったような気がするけど……見ただけじゃとてもそうは見えないな。あんな体勢でさっきから寝転がってるし……)

 

「おいそこの赤色。初対面の相手に対して挨拶も無しか? 別に構わないけど」

 

 ユウキが内心で呟いていると、ミケモンは指差ししながら声を掛けて来る。

 

 言われてまだ一言も喋っていない事に気付いたユウキは、とりあえず怪しまれないように挨拶と自己紹介を行う事にした。

 

「俺の種族名はギルモン。色々と複雑な事情があって、今はそこのベアモンの家に居候させてもらってる」

 

「ふ~ん。その『複雑な事情』ってのが気になるけど、聞くだけ無駄だろうしいいか」

 

 そう言ってミケモンは体を起き上がらせて、グローブのような物がついている右手で頭を掻きながら自己紹介をする。

 

「オイラの種族名はミケモン。個体名(コードネーム)はレッサーだ。得意分野は情報収集と睡眠。よろしくな」

 

(得意分野が前者はともかく睡眠って……何?)

 

 互いに自己紹介を終えると、次に口を開いたのはミケモンだった。

 

「で。お前等は何でここに来たんだ? 依頼をしに来たようには見えんけど」

 

 その質問に対して、エレキモンは回りくどい言い方もせずに返答する。

 

「いや、ようやく『チーム』に最低限必要な頭の数が揃ったからな。そこのギルモンにこの建物の見学と、ベアモンのケガが治ったら俺等で試験を受けたいんだけど、良いか?」

 

「……なるほどな。分かった、リーダーには伝えておく」

 

 ミケモンはそう言うとベアモン、エレキモン、ユウキことギルモンの三体をそれぞれ見て。

 

「それにしても、中々面白いチームになりそうだな。こりゃあ楽しみだ」

 

 その後、ユウキはギルドの内装に一通り目を通してから、同行者二人と一緒に建物の外に出た。

 

 見学と言う目的が達成できた以上、いつまでもあの建物の中に居る必要は無いからだ。

 

 建物を出たユウキが次に成すべき事は、自分自身とベアモンに対する食料の確保。

 

 そして、その前にベアモンを家に送る事だ。

 

(……問題は山積みだな)

 

 ユウキはそう内心で呟いていたが、不思議とそこまで嫌な気持ちにはならなかったのだとか。

 

 空が夜の闇に包まれるまで、まだ時間は残っている。




 本日のNG。

「それにしても、中々面白いチームになりそうだな。こりゃあ楽しみだ」

「あと二人、黄色と青色のデジモンが加われば戦隊みたいになるね!!」

「その場合、主人公格であるレッドは誰がやるんだ?」

「どう考えても実力的に俺だろ。トカゲは引っ込んでな」

「ハッ!! 知ってるか? 俺の種族はとある物語じゃあ主人公格のデジモンなんだ。お前とは扱いの差ってのが明確に出ているんだよ!!」

「じゃあお前『ぎるるる~♪』とか『わ~いわ~いぎるもんぱ~ん!!』とか可愛らしく言ってみろ」

「なん……だと……ッ!?」

 エレキモンの台詞の意図を理解したユウキには、そんな事を言って自分の世界(キャラ的な意味)を壊す勇気は無かったらしい。

 NGその4「たった一つのネタのために自分のキャラを崩壊させる勇気はあるか?」
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