DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語 作:紅卵 由己
※ 色違いヒトカゲ H・A・B・S V おくびょう が無事に生まれたので無駄にはなりませんでしたが。黒いリザードンカッコいい。
そして、遅くなりましたが。
明けまして、おめデジとうございます!! (この挨拶流行らないかなぁ)
今年も『デジモンに成った人間の物語』の連載を頑張っていくつもりです。
では、新年最初の話は、デジタルワールド転移から三日目の朝から。
(……かなり早く目が覚めちゃったなぁ……)
一日前に怪我をしてしまったため、普段よりも早い時間から眠り始めていたベアモンの目覚めの感想は、そういう物であった。
外に見えるはずの日の光が微かにしか無い辺り、時刻は朝食を食べる時間としても少し早い朝らしい。
ベアモンの隣では、現在居候中のギルモンことユウキが眠っている。
よっぽど疲れているのか、試しにベアモンが
(……昨日は色々あったし、色々と疲れてたんだろうなぁ……)
彼は昨日、初めて感情のエネルギーによる『進化』という強大な力を使った。
森の中で襲い掛かってきたフライモンをその力で撃退し、その状態のまま自分とエレキモンを助けるために疾走している。
それだけの無茶をやった時の疲労がまだ残っているとするなら、この熟睡っぷりも頷ける。
もしくは、ただ単に安眠に対する欲求が高かったからかもしれないが。
(……にしても、進化……かぁ)
ベアモンは静かに体を起こし、最初に右肩に巻いてある包帯を外して怪我の様子を確認した。
(……痛みがほんの少し残ってるけど、傷自体はほぼ完全に塞がっている。自分で言うのもなんだけど、こうして見ると不思議だなぁ)
怪我の具合からも、活動に支障が出るレベルの物では無いと判断したベアモンは、部屋の隅っこの方に設置されているあまり本が収納されていない本棚から、一冊の本(借り物)を掴み取る。
その本の表紙には、デジモンの言語で『人間とデジモンの冒険物語』と書かれていた。
自分の読みたい部分のページまで一気に流し、あるページを開いたベアモンは眠っているユウキを起こさないように、口の中だけで静かに呟きだす。
(……人間の感情が生み出すエネルギーが、聖なるデバイスを通してパートナーであるデジモンに伝達され、『進化』が発動する、か。この理屈は僕たちデジモンが『感情のエネルギー』によって強くなるって事にも通じているけど、現実では人間や聖なるデバイスが存在していなくても『進化』は発動している)
だけど、とベアモンは一区切りして。
(……進化に至るまでの過程は、年月レベルで必要なはず。この物語や他の物語のように『やろうと思えば』出来るほど、簡単じゃない……)
だが実際、一度も戦闘を行っていないはずのユウキは、初めての戦闘で早速進化を行った。
まるで、書物に登場している架空の『
(……あの慣れていない感じの動きから考えても、ユウキは一度も命賭けの戦いを経験していないはず。だとしたら、やっぱりあの進化は『感情』だけで発生したと考えるべきかな……)
ベアモンは一度、自分が普段から使っている寝床に横になっているユウキの方を見てから、再度書物の方に書かれている絵を見るが、その姿は書物に書いてある『人間』のシルエットとはかけ離れている。
どう見てもデジモンの姿をしているのだから、当然と言えば当然なのだが。
(……考え過ぎなのかもしれない。けど、もし本当に、ユウキが人間だったのなら……)
ベアモンの思考に一つの疑問点が浮かぶ。
彼は手に持っている本を本棚へ横倒しになる形で戻すと、今度は別の本を取り出す。
(……もしこの書物に書いてある事が真実だとするんなら、人間がこの世界に来てもその姿を大きく変える事は無い。だとするなら……)
もしも本当に、ユウキが人間だったとするなら、彼は人間からデジモンに『成った』のでも『進化』したのでも無く。
(……誰かに『変えられた』?)
だが、仮にそうだとするなら、ユウキと言う名の人間をデジモンに変えた目的は何なのだろうか。
(ぶっちゃけ、そんな事をする理由が分からないんだよねぇ。そもそも人間の世界があったとして、そこからどうやってこの世界に来る事が出来たんだろ。物語に書いてあるように、聖なるデバイスの力で世界の壁を越えるとかそういう奴じゃないと思うし……)
仮に、ある日突然『この世界とは違う世界から来ました!!』と言われても、実感が沸く事はまず無い。
だがユウキが嘘を吐いている可能性に関しては、まず出会った時の
そうベアモンは考えるが、当然ながら答えなど見つかるはずが無い。
やがて、ベアモンは溜め息を吐いた。
(……これはユウキの問題だし、僕が興味本位に首を突っ込む事は間違ってるかもしれないよね)
本を閉じ、元の場所に戻す。
気持ちを切り替えるために、一度両手を大きく上げて背伸びをする。
結局の所、今の彼に出来る事、知れる事など
ふとベアモンは、視線を部屋の隅の方へと向ける。
(……とりあえず、せっかくだし食べさせてもらおうかな)
部屋の隅に置いてあった一個のバケツの中には、ベアモンもよく食べている魚が数匹分入っていた。
それは現在も眠っている居候が、先日頑張って夕方頃から釣ってくれた物で、その中にはベアモンの好物である種類の魚もある。
ベアモンは眠っているユウキの方へと笑顔を向けた後、バケツの中に手を突っ込んで魚を取り出す。
昨日あまり食べ物を口にする事が出来なかった所為で、朝っぱらからベアモンは空腹だった。
それもあってか、バケツの中に入っていた食料は五分もしない内に全て無くなった。
(ふぅ、生き返った気分)
腹を満たし終え、口元に付いた食べかす(赤)を手で拭った後、再び本棚の前に立って一つの本を取り出す。
そしてベアモンは、眠っているユウキが起きるまでの間、静かに黙読を開始する。
(……もし仮に、ユウキをデジモンに変えてこの世界に送り込んだ奴が、下らない理由で僕の友達を巻き込み、傷付けたら……その時は)
同時に、一人の運命を歪めた相手に対して、内心で言葉を唱え。
「……
誰にも聞こえないほどに小さく冷たい声で、そんな事を呟いていた。
◆ ◆ ◆ ◆
時間が経ち、太陽の光が街を明るくさせた頃。
ようやくユウキが目を覚まし、友達であるエレキモンもいつものように家へとやって来た。
「なぁベアモン。本当に怪我は大丈夫なのか?」
ベアモンの右肩に、昨日から巻かれていたはずの包帯が無い事に気付いたエレキモンは、率直な質問をぶつけた。
対するベアモンは、世間話でもするかのような声調で返事を返す。
「戦闘と日常生活に支障が出る事が無いぐらいには大丈夫。それより昨日、僕考えたんだけどさ……」
「何だ? お前が考え事なんて、今日は雨でも降るのか?」
エレキモンがそう言った直後、ベアモンは無言で清々しい笑顔をエレキモンに向け、両拳からポキポキと生々しい音を鳴らさせた。
ベアモンは、エレキモンが弁解の言葉を述べる前に言う。
「次余計な事を言ったら、顔面を歪めるよ~? 物理的に」
「やめろ!! お前のパンチは冗談抜きでそうなりそうだから!!」
下らない事でリアルファイトに突入するのはエレキモンも嫌なので、ベアモンの注意(脅し文句とも言う)を聞いた直後に謝罪した。
(……いやぁ、この二人はホントに仲が良いなぁ……)
ユウキがそんな二人を他人事のように眺めながら欠伸を出すと、ベアモンはひとまず話を進めるために話題を仕切り直しした。
「昨日考えたんだけど、やっぱり現状だとユウキは足手まといなんだよね。今の状態で『ギルド』の試験を受けても、失敗しそうな気がするんだ」
「まぁ、今更自分が弱い事を否定したりはしないけど。それで?」
「一回、ユウキの実力を確かめたいからさ、僕と模擬戦をしてくれないかな?」
ベアモンにそう言われ、ユウキは思わず聞き返す。
「いや、あのさ……模擬とは言え、怪我してるデジモンを相手にするのは……」
「さっきも言ったけど、もう戦闘や日常生活に支障が出ないぐらいには治ってるんだって。それに、飛び道具を主に使うエレキモンを相手にして、ユウキには自分が『勝てる』と思えるの?」
ベアモンの率直な質問に、ユウキは一度エレキモンの方を見て戦った時の場面を想像したが。
「無理」
「即答かよ。まぁ俺も、お前に負けるとは微塵に思っていないけど」
「それに、僕とユウキの種族は『格闘戦が主体』っていう共通点があるでしょ? だから、僕が相手になった方が、ユウキがどのぐらいの実力を持っているのか分かるし」
それでようやく納得出来たのか、ユウキは『仕方ないか』と一言呟くと、ベアモンに対して返事を返す。
「分かった。それじゃあ、その模擬戦は何処でやるんだ?」
「……そうだね。とりあえず、街から少しだけ離れた草原にしようか。下手して何かを壊したらマズイし」
「だな。平地でなら格闘戦もやりやすいだろうし、誰の邪魔も入らないだろ」
「オーケー分かった。別に勝負ってわけじゃないけど、怪我人相手に負けるほど俺は弱くないから覚悟しろよ」
その会話で活動を決め終わり、三人のデジモンは目的の場所に向かって歩き出した。
そして、十分後。
パシッ!!(ベアモンが
ゴスッ!!(ベアモンがもう片方の手で
ドスッ!!(技を受け止めた体制のまま一本背負いで地面に叩き付けた音)
ドグシャァ!!(倒れたユウキに対して拳を振り下ろした音)
「ごふっ」
「勝負あり、でいいね?」
「……お前、身内にも容赦無いねぇ」
ユウキとベアモンの
数分前にご大層な台詞を吐いていたユウキに対して、ベアモンは可哀想な人を見るような目を向けながら言い放つ。
「……あのさ、いくら何でもあんな見え見えな攻撃で来るのはどうかと思うんだけど」
「いや、確かに今思えばそうだけど!! だからって、冷静にカウンターで腹パンチと一本背負いと追撃の拳をお見舞いするのはどうかと思うんだが!? 背中と腹が凄く痛むし!!」
「その痛みを教訓に、今度はもっとマシな攻撃をしてくる事だね」
一方で、倒れたユウキを物語に登場する『やられ役』のキャラを見るような目で眺めていたエレキモンは、こんな事を言った。
「……とりあえず、また食料でも調達しにいかねぇか?」
残りの食料が底を尽きているベアモンにも、元々この日の分の食料を持ち合わせていないユウキにも、その言葉に対して異を唱える理由は無かった。
早速ベアモンは街に戻り、釣り竿を取りに行こうとしたが、それを何故かエレキモンが静止させる。
「いつも魚とかばっかりだと飽きるし、たまには果実とかを食いに別の所に行かねぇか? 危険じゃなさそうな所に、特訓も兼ねて」
「えっ、昨日フライモンに襲われた直後なのに、何でだ?」
「流石にあの森には行かねぇよ。また襲われたらたまんねぇし」
「じゃあ何処に? 色々と候補はあるけど、食料とか危険性とかを考慮したら……」
記憶にある地域を頭に浮かべ、ベアモンは言う。
「山か、湖がある小さな林?」
「前者は疲れるけど視界を広く確保出来るし、後者は到着まで時間はかかるけど色んな果実が手に入るな。どっちにするかは、結局まだ決めてないわけだが……」
エレキモンは、そこで一度言葉を区切った。
「どうせ三人で行くんだし、多数決で決めないか? 昨日は相手が悪かったってのもあるんだし、少なくとも今回行く場所は両方ともそこまで危険なデジモンが居ない。約一名が足を引っ張らない限り、逃げる事は可能だ」
「なるほどね。じゃあ、エレキモンは何処に行きたいの?」
「俺は山かな。木に生っている肉リンゴを久しぶりに食いたいし」
「僕は林の方で。あっちの方には、オレンジバナナとか超電磁レモンとかがあるし」
見事に意見が分かれ、残るユウキの意見に全てが託される。
(多数決ってことは、俺がどちらを選ぶかによってどちらに行くかが変わるのか……)
ユウキにとっては、二人が言っている地域はどちらも未開の地。
二人の視線が、悩むユウキに向けられる。
「…………」
ユウキにとっては食料の種類は『食べられる物ならば』なんでも良いため、悩む理由は地域に生息している野生のデジモンの種族だったりする。
どちらも安全は確保されていると言っているが、万が一襲われた時は状況次第で戦う事になるのだろう。
エレキモンもベアモンも、それを既に理解している上で言っている。
「……じゃあ、俺は……」
そして迷った末に、ユウキは選択した。
◆ ◆ ◆ ◆
目的地に向かう途中、ベアモンは少し気になった事をエレキモンに聞いた。
「それにしてもエレキモン、何で突然あんな事を言ったの?」
「森に行かなくなってから、食事のほとんどが海の食料だろ?」
「うん」
「海水ごと持ち帰っているから、その所為で家の中が魚とかで生臭い」
「……もしかして、それが本音だったりする?」
新年早々ですが、今回はNGはありません。
活動報告にてアンケートを設ける予定なので『ヒマだから一票入れてやんよ』的な寛大なお方がいたら、そちらの方にてご協力願います。
間違っても感想の方でアンケートに答えたりはしませんようにお願いします。
……それにしても、第一章が予想以上に長くなってる……
これ、現状考えてる物語の全体図で考えたら、完結まで100話は普通に超えそうなのですが……
そして、デジモン小説なのに進化が全く出ない件について。
出切る限りご都合な要素を無しにするために、自分でそうしている事は分かっているのですが、やはり読者の皆様からすれば退屈な話なのでしょうか。
もしそうでしたら『すいません』としか言えないです。申し訳無い。
では、次回の話も頑張って書いていきます。
感想・質問などなど、いつでもお待ちしております。