DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

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最近、タイトルが適当気味になっている感じが否めないです。

第一章は間違い無く終盤に差し掛かっているのですが……今月中に終わる気がしない。

ちなみに今回の話には、にじファン時代の話を知っている人にはピンと来る要素が入っています。

そして、珍しく文字数が6000字に到達した話でもあります。




電子世界にて――『水音流るる山道にて』

 

 発芽の街を出て、広大な緑色のカーペットが広がる草原を歩き、およそ一時間と半の距離に存在する山。

 

 そこは森林ほど緑に溢れているわけでは無い物の、ごく一般的にある普通の樹木が獣道に幾つか見え、一部の木の根元には熟した果実が落ちていたり、その落ちた果実を確保するために、色んな獣型デジモンが姿を現す事がある場所や、透明で綺麗な水が斜面をなぞるような形で形成された川から、水棲生物型のデジモンがひょっこりと顔を出す場所があり、凶暴な性格を持ったデジモンは居ないと言っても過言では無い場所だ。

 

 ギルモンのユウキとベアモンとエレキモンの三人は、周囲を見渡して食料を探しながら獣道の上を歩いていた。

 

「……エレキモン、本当に見つかるのか? その……肉リンゴって果実」

 

「何回もこの山には来た事があるし、その度に何個か食べた事がある。野生のデジモンによっぽど食い荒らされでもされてない限り、見つからないなんて事は無いと思うぞ」

 

「この辺りの野生のデジモンは、こっちの方から仕掛けない限りは襲ってくる事も無いんだよね。だからユウキ、昨日の件があったから緊張するのは分かるんだけど、警戒心は解いてくれないかな? 逆効果だから」

 

 言われてユウキは、辺りの風景を見渡し確かめてみた。

 

 確かに、道を歩いている間に見た野生のデジモンは皆、敵意や殺意などといった物騒な要素とはかけ離れた印象しか持っていないように見える。

 

 ユウキ自身、自分の視界が捉えているデジモンの姿を見て危険だとは思っていない。

 

「……お前の言う通り、解く事が出来るのなら気も楽なんだろうけどな」

 

 ならば何故、警戒心を強めて余計に安心感を遠ざけているのか。

 

 ユウキ自身、理由が分かっていてもどうしようも無い事だった。

 

(クソッ、今でも頭の中に嫌なイメージだけが浮かびやがる……)

 

「ひょっとしてユウキ、ビビってる?」

 

「……そういうわけじゃないけど」

 

「昨日の一件みたいに突然敵の襲撃に遭うのが怖いから、警戒心を強め、いつ襲撃に遭っても大丈夫なように心構えしてんだろ。まぁ、その考え自体は悪い事じゃないんだがよ……通常の会話でもピリピリしてんのはどうかと思うぞ」

 

 エレキモンにそう言われるが、それでも今のユウキに改善は出来ない。

 

 そして、ユウキが一向に警戒心を解く気が無いように見えたベアモンは、顔を向けて念を押すように言った。

 

「とりあえずユウキ、先に言っておくけど、野生のデジモンと遭遇しても手を出さないでね。一部を除いてこちらから仕掛けない限り、場合によっては襲ってこない確立の方がず~っと高いんだから」

 

「流石に自分から敵を作るような真似はしないって。大体、俺は別にビビってるわけじゃ……」

 

 ユウキがベアモンに対してそう言った直後。

 

 三人が立っている所の近くで、ガサガサッ、と茂みが揺れる音がした。

 

「!!」

 

 それとほぼ同時に、ユウキはボクシングでもするかのように両手を構え出す。

 

 だが、茂みの方からはそんな彼の緊張感をブチ壊しにするかのように、球状の体で犬や猫といった小動物を早期させる姿をした幼年期のデジモン――ワニャモンが通りすがるだけだった。

 

 たったそれだけでユウキの警戒心が恥ずかしさに変換され、ただでさえ紅い顔を更に赤くしてしまう。

 

「……幼、年、期……?」

 

「……ぷっ」

 

「くっ……くくく……!!」

 

「何笑ってんだ殴るぞ」

 

 思わず口から失礼な言葉を吹き出しそうになるベアモンとエレキモンと、全身を恥ずかしさで震わせながら威嚇するユウキ。

 

 何だかんだ言って、無意識に彼等はこの状況を楽しんでいるのかもしれない。

 

 まるで遠足にでも行っているような雰囲気のまま、彼等は目当ての食料を手に入れるために山を上っていく。

 

 日も完全に昇り、周りがよく見える時間の出来事だった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 早朝、発芽の街にある『ギルド』の拠点にて。

 

「……んぁ……朝かぁ?」

 

 この建物で留守番係を担っているミケモンのレッサーが、変な声を漏らしながら目を覚ました。

 

 喉の奥から欠伸を吐き出し、目元に出る涙を拭い、外の明るさから日が変わっている事を理解する。

 

 今の時間、建物の中には静寂のみが存在しているが、数時間程度経った頃にはこの建物に『依頼』を受注させに来る者、受注しに来る者が立ち寄る事になるだろう。

 

 留守番係であるレッサーは、組織の長が居ない時にそういった『依頼』を管理する立場でもある。

 

 彼は客が来るのを待つため、受付用のカウンターの上で体を横に倒した。

 

「おい」

 

 その動作と同時に、後ろから声が掛けられた。

 

 その声が、自分がよく知っている者の声である事を認識した直後、レッサーは倒していた体を起こして声がした方を向く。

 

 そこに居たのは、気高き金色の鬣を持った獣人型デジモン――レオモンだった。

 

 レッサーはその姿を視野に捉え、一度後頭部を右手の爪で掻いてから言う。

 

「……あ、帰って来てたのかリーダー」

 

「ああ……お前が眠っている間にな。随分と退屈そうな顔をしていたな」

 

「そりゃあな。やる事も話し相手も居ない時に、真剣な顔で留守番なんて出来るわけねぇだろ」

 

「……ふむ。まぁ予想通りだったが、仕事はこなしたのだろうな?」

 

「一応」

 

 一言でそう答え、今度はレッサーの方からレオモンに聞く。

 

「それより、リーダーの方はどうだったんだ?」

 

「当然、全て無事に終わっている。だが、ある噂を聞いたな」

 

「何だそりゃ?」

 

 そう聞くレッサーだったが、あまり良い噂では無い事だけはレオモンの表情から察する事は出来ている。

 

 このレオモンは何時(いつ)も真面目そうな表情を浮かべているが、嫌気の刺す話をする時だけは口元が微かに歪むクセがあるからだ。

 

 そしてその予想通り、質問に対する回答はロクな内容では無かった。

 

「レッサー。お前は『木の葉の里』については知っているか?」

 

「『木の葉の里』? 確か、このサーバ大陸で東方に位置する、隠密行動や刀剣の技術に長けたデジモン達を育成している里の事だったっけ? 聞いた話ぐらいしか知らねぇけど……」

 

「ああ。私も昔一度だけ、その里に行った事があってな。」

 

「……で、その里がどうかしたのか? まさか、内乱でも起きたとか?」

 

「その程度なら、ある意味マシだったのかもしれないがな」

 

「?」

 

 レッサーの頭の上に疑問符を浮かぶ。

 

 内乱という大規模な出来事(イベント)が『その程度』と言えるレベルで、更にロクでもない出来事《イベント》があるとすれば、よっぽどの事だろう。

 

 だが、当の発言者であるレオモンは言いづらいのか、口を噤んでしまった。

 

 そんなレオモンに対して、レッサーは『途中で終わらせんなよ』とでも言うような顔で睨みつけると、ようやくレオモンはその重々しい口を開いた。

 

 

 

 

 

「……壊滅した」

 

「……はぁ?」

 

「一夜の内に、あるデジモンの襲撃で里の全体が壊滅。住人のほとんどは命を奪われ、数少ない生き残った者達は散り散りとなって放浪しているらしい。あくまで聞いた話だから確信は持てないが、もし事実ならばとても悲しい事だ……」

 

「ちょっと待て」

 

 思わずレッサーは起き上がり、一度話を止めさせる。

 

 詳しい事情を知ってなくとも、レオモンが言った事はそれだけの衝撃を含んでいた。

 

 だが、同時に単純な疑問点も浮かぶ。

 

「俺はその里に行った事も無いから知らないけど、そこには一つの里を構成するだけの数のデジモンと、その数多いデジモン達を治める長が居たんだろ? この街の長老みたいに、かなり強いデジモンが……」

 

「ああ。私も一度手合わせさせてもらった事がある。カラテンモンと言う種族名のデジモンで、当時の私には一撃を与える事すら出来なかった。故に、この噂が本当とは思えん。あの里には長以外にも、強者の忍者デジモンが数多く居るからな」

 

「忍者って事は、闇の中で活動する事が得意なんだろ? だったら、尚更その噂って変じゃね?」

 

「ああ。だから妙な噂だと言った。どうせちょっとした(ガセ)だとは思うのだが、今思えば『ギルド』を立ち上げてからあの里に向かった事は一度も無くてな。その里へ、いつか遠征に向かおうと思っただけだ」

 

「……要するに、気になってるわけか?」

 

「それもあるが、出来るならあの里とは『連合(ユニオン)』を結びたい。彼等の情報収集能力は、とても頼りになるからな」

 

「なるほどな。じゃあその内、遠征に向かう事になんのか?」

 

「それが可能な物資と、そこに行く気があるデジモンが居ればな」

 

 そこで『噂』に関する話題は、レオモンの方から強引に切った。

 

 真偽の分からない暗い話をしている事に、自分で馬鹿らしく思った故の事だった。

 

 何より、今やるべき事は別にある。

 

「……さて、この話はここで終わりだ。お前には昨日留守番してもらった分、やってもらわないといけない事が山ほどあるのだからな」

 

「えっ、リーダーは?」

 

「今日は私が留守番を担おう。色々と手に入れた資料(じょうほう)を纏めなくてはならんし、お前は……やはり外で活動させた方が良さそうだ」

 

 そう言ってレオモンは、外出時の所得品(しょとくひん)収納用(しゅうのうよう)のリュックサックから、自分で書いた文章を記述している書物を取り出してカウンターの上に乗せる。

 

 同時に、ドサッと重い物を置いた時によく聞く音が聞こえたが、そちらの方には特に意識を向けずにレッサーは聞く。

 

「おっ、じゃあ今日は俺が依頼を受けるのか?」

 

「まだ、こんな時間に依頼は来ていないだろう? 今日はひとまず調査だ。『滝登りの山』に行ってこい」

 

「……あそこって、調査する要素あるか?」

 

「その『調査する要素』は、事前情報が無ければ調査の中で見つける物だろう? いつも通り、些細な事でも怪しいと思ったら報告しろ」

 

「へいへい。分かったよっと……」

 

 そう言ってレッサーはカウンターの上から降り、建物の出口に向かって歩き始める。

 

 そんな時、ふとレッサーは、一度レオモンの方を振り向いてこう言う。

 

「サボんなよ~?」

 

「……お前にだけは言われたく無いのだが?」

 

 溜め息を吐くような調子で、そんな言葉がレオモンから返って来ていた。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 山を登りだしてから、一時間近くの時間が経った頃。

 

 ベアモン達一行はエレキモンの提案で、少し離れた場所に多くの木々が見え、地面は大量の湿った石で形成された川原にて休憩している所だった。

 

 この場所は仮に襲撃を受けたとしても、身を隠せる木々や茂みから距離が離れているため、姿を現した敵に対して身構える事も、逃げる事も出来る。

 

 故に安心出来る空間のはずなのだが、ユウキだけは複雑そうな表情で川の方を見つめている。

 

 エレキモンが道端で拾った胡桃(くるみ)のような形の木の実を齧っている一方で、ベアモンはそんなユウキの方に近づいて話しかける。

 

「川を見つめてどうしたの? そんなに珍しい物でも無いと思うんだけど」

 

「……あ、いや。人間だった頃にこういうのを直接見た事が無かったからさ、新鮮だって思って……」

 

「ふ~ん……」

 

 ベアモンは意外そうな声を漏らした後、こう言った。

 

「もしかしてユウキって、こういう山に来るのは初めて?」

 

「初めてってわけじゃない。まだ小さかった頃に、ちょっとした遠足(イベント)で言った事はある」

 

「小さかった頃って、幼年期の事?」

 

「デジモンじゃないけど、ある意味で合ってはいる。年齢で言えば、人間だった頃の今の俺は成長期だけど」

 

「じゃあその『小さかった頃』に会ってたら、ユウキの姿は幼年期のデジモンだったのかな?」

 

「……可能性として無くは無いけど」

 

 ユウキがそう言った直後、突然ベアモンは少し何かを考えるような仕草を見せ、ユウキに背を向けた。

 

「……? 何だ、突然黙って……?」

 

 ユウキの方からそう話しかけると、ベアモンは振り向き、怪しい手草と何やら芝居臭い調子で口を開いた。

 

 

 

「……お~、よちよち、かわいい子でちゅね~♪ ぼくはきみのおにいちゃんでちゅよ~?」

 

「俺は赤ん坊じゃねぇッ!!」

 

 

 

 その一瞬で、額に青筋を立てるユウキ。

 

 まぁ、精神年齢が既に十五歳を超えている元人間(しかも血の繋がりは無い)に対してそんな事を言えば、よっぽど煽り耐性が無い限りは喧嘩(リアルファイト)に物事が派生してしまうのも仕方が無いのかもしれない。

 

 だが、この日の早朝に行った模擬戦でベアモンに完膚なきまでに敗北したユウキに、真正面から殴り合おうとする気が起きるわけも無いわけで。

 

「てか、俺からすれば赤ん坊っぽいのはお前の方なんだが!?」

 

「えっ!? 僕の何処が幼年期っぽいのさ!?」

 

「のほほんとした性格とか、呑気なその言動とか、とにかく色々だ!!」

 

「なんて事を言うの!? 赤ん坊じゃなくて、せめて純粋な子供って言ってよ!!」

 

 ただの会話から、口喧嘩(みにくいあらそい)に発展していく様を適当に眺めているエレキモンは、ふと内心で呟いた。

 

(……ぶっちゃけ、あんな風に感情を出してる時にはどっちもガキだよなぁ……)。

 

 あんな風に喧嘩をしても、よっぽど確執を作るキーワードを口に出さない限りは問題無いのだから、エレキモンの判断は間違っていなかったりする。

 

 実際、言う言葉が尽きる頃には二人の口喧嘩は終わり、先ほどまでの空気は何処へやら、川の方に足を踏み入れて水浴びをしていた。

 

 エレキモンは手元に残っていた木の実を飲み込んだ後、現在進行形で水遊びをしている(水を掛けている)ベアモンと(水を掛けられている)ユウキの方に声を掛ける。

 

「お~い、そろそろ休憩は終わりにしねぇか~?」

 

「え~? もうちょっと遊んでいこうよ~。真水は久しぶりなんだからさ~。ねぇユウキ?」

 

「いや、もう行こう……」

 

「え~?」

 

「いいから。十分水浴びは出来たから。とっとと行くぞ……」

 

 そう言って、ベアモンの手を三つの爪で引きながら、全身ずぶ濡れ状態のユウキは戻って来ようとする。

 

 そんな時だった。

 

「……ん?」

 

「どうしたベアモン?」

 

「何か、大きな足音が聞こえない? それと、何か変な感じが……」

 

「え……?」

 

 茂みの向こう側から、重々しい足音がどんどん近づいて来る。

 

 それが、野生のデジモンの物だと理解するのに時間は掛からなかった。

 

「……どうする?」

 

「どうするって言われても……この辺りに居る重量級のデジモンって、確か……」

 

 ベアモンが覚えのあるデジモンの名を思い出す前に、そのデジモンは姿を現した。

 

 四足歩行に適した竜の骨格をしており、鼻先からはサイのようなツノを生やしていて、そのツノを含めた体の半分が硬質な物質に覆われているデジモン。

 

 その姿を見て、ようやく思い出したベアモンは安心しながらデジモンの名を言う。

 

「あぁ、そうだった。モノクロモンだね。草食系で、おとなしい性格をしているデジモンだよ。怒らせない限りは襲ってこないから、安心してね」

 

 ベアモンはそう言って、少しだけ警戒心を解いたが。

 

「……何か、こっちに向かって来てね?」

 

「へっ?」

 

 離れた距離から、どんどんモノクロモンは三人に向かって突撃して来ている。

 

 それも、やけに興奮した状態で。

 

 目からも、ベアモンが言っていた『大人しい』性格の要素は見受けられない。

 

 迫り来る脅威に、選択肢は二つ。

 

 逃げるか、闘うか。




 
 NGは今回ありません。

 投稿時のUAが5000を突破していた……他にも素晴らしい小説があるのに、この小説を選んで読んでくれている方には頭が上がりません。本当にありがとうございます。

 まだ本格的な話にも突入していないこの小説ですが、いつか盛り上れるような展開を入れるつもりなので、これからも応援してくださると嬉しいです。

 でも、仮に記念の話とかをオーダーされても何も思いつかないので、その辺りはご了承ください。
 
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