DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

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前回の更新から約一ヶ月ちょいの間が開いてしまいました。

Pixivの方でやっている企画の進行といった都合もあったとは言え、ここまで更新が遅れてしまった事は本当に申し訳がありません。

それにしても人間は『追い詰められると物凄いパワーを発揮する』と言われてますけど、本当に凄いですよね。三時間ほどぶっ続けで書いてたら3000字近く書き終えれてしまいましたよ。

何で普段からこのぐらい書けないんですかね俺は(憤慨)。

……まぁそれはともかく、始まります。


電子世界にて――『迫り来る重戦車の脅威』

 目の前から迫って来ていたモノクロモンは、ギルモンのユウキとベアモンとエレキモンの三人の姿を視認した事で、荒々しく地を踏み鳴らしていた四つの足を止めると共に威嚇の唸り声を上げた。

 

 普段は本当に大人しく、温厚な性格をしている(らしい)モノクロモンだが、今三人の目の前にいる個体は明らかに敵意を剥き出しにして、今にも襲い掛かって来そうなほどに興奮している。

 

 まるで、自分以外の存在が敵としか思えていないような目で。

 

「普段は僕とエレキモンが近くに寄っても何とも無かったのに……!?」

 

 何か理由があるのかと疑問に思うベアモンだったが、予想をするよりも前にモノクロモンの口が大きく開かれ、喉の奥に何か赤い物が見えた。

 

 それが何なのか、実際の体験として見るのが初めてのユウキにも理解する事が出来たが、既に左右へ分かれるように動いているベアモンとエレキモンよりも、ほんの僅か一秒だけ対応が遅れる。

 

「!!」

 

 焦りながら動こうとして、緊張と焦りから思わず足を躓いた直後。

 

 ユウキのすぐ後ろを、強大な熱を伴った火炎の球が通り過ぎた。

 

(げっ……!?)

 

 まるで少し前の水遊びで濡れた体が、一瞬で乾いたと錯覚するほどの熱気だった。

 

 ふと火炎弾が放たれた射線の先を覗き見てみると、先ほどまでユウキ達が居た位置よりも更に後ろの方に見えていた岩石が赤熱し、表面が少し融け始めていた。

 

 もしアレが自分の体に当っていたら、と想像するだけでも背筋に寒気が走る。

 

 昨日遭遇した大きく禍々しい翼を持つ毒虫とは、また違う『怖さ』を感じさせられた。

 

(……クソッ。昨日といい今日といい、成熟期のデジモンに立て続けにエンカウントするとか……!!)

 

 内心で忌々しく毒を吐きながらも、地に伏している体を両前足を使って起き上がらせる。

 

 だがその間にも、モノクロモンは今自分の視界に入っているデジモンを優先的に潰すつもりなのか、口から二発目の火炎を放とうとしていて。

 

「!!」

 

 立ち上がった時には、既に発射の準備は終わっていた。

 

 だが。

 

「スパークリングサンダー!!」

 

 モノクロモンの視界から消えていたエレキモンの電撃がモノクロモンの顔面に向かって放たれ、本能的にモノクロモンは攻撃をしてきたエレキモンの方を向き、ユウキへ放とうとしていた火炎をエレキモンの方に放った。

 

 エレキモンが余裕を保って避けると、火炎弾を放った直後の隙を突く形で、側面からベアモンがモノクロモンの懐に素早く潜り込み、腹部に向かって打ち上げる形で拳を捻じ込む。

 

「フンッ!!」

 

 硬質な物体に覆われていない部位を攻撃したからなのか、モノクロモンの苦痛の声が漏れる。

 

 反撃しようとモノクロモンはタックルで自分の体をベアモンに叩き付けようとするが、既にベアモンは後方に跳躍する事で攻撃の射程から退いていた。

 

「…………」

 

 それらの流れを、未熟者はただ傍観する事しか出来ない。

 

 今の自分に出来る事は何か、それすらも分からない状態で闇雲に介入した所で、足手纏いになって結局味方を傷付ける事になるかもしれない。

 

 そういった不安が、前に進もうとした足を留まらせる。

 

 仮に手伝おうにも、あのような怪物を相手にどういった攻撃をすれば有効なのかが分からない。

 

 ならむしろ、自分は引っ込んでいた方が良いのでは無いか。

 

 だが、ここで逃げたら昨日と同じように結局何も出来ていない事になる。

 

(……クソッたれが……)

 

 ユウキの目には考えている間にも、連携と身のこなしから一切の攻撃を受けずに自分達の攻撃だけを確実に当てているベアモンとエレキモンの姿が映っていた。

 

 攻撃は通用しているにも関わらず、モノクロモンの瞳は一切力を失っていない。

 

(……このままじゃ、いずれ消耗して……)

 

 戦闘不能になるまでのダメージを与えるための攻撃力が、足りない。

 

 それを想像する事は、デジモンの事をよく知るユウキにとって難しい事では無かった。

 

 モノクロモンの体には硬質な物質が鎧のように張り付いており、エレキモンの電撃もその鎧が付いていない場所にしか効いてはいない。

 

 ベアモンの拳は効果的なダメージを与えられているようだが、エレキモンと違ってベアモンという種族は飛び道具を使う事が出来ないため、危険性は遥かに高い。

 

 もしこのまま何の策も用いずに戦えば、モノクロモンが倒れる前に二人が倒れる。

 

「………………」

 

 逃げる事は当然考えた。

 

 だが、モノクロモンは四足歩行の骨格を持ったデジモンであるため、その頑丈そうな外見に見合わず走行速度は速い。

 

 少なくとも、逃げる三人を追いかけて追いつける程度には。

 

 茂みなどに隠れる事でやり過ごそうにも、今立っている場所からは少し距離が離れている。

 

(……クソッ、やってやる……)

 

 この状況では、もう戦う以外に生き残れる道は無いと思える。

 

 もしかしたらエレキモンもベアモンも、自分が今考えている事を既に理解していたからでこそ、素早い対応が出来たのかもしれない。

 

(やるしか……無いってんだろ!!)

 

 右前足の爪で不出来な握り拳を作ると、ユウキはモノクロモンが居る方に向かって走り出す。

 

 モノクロモンはベアモンとエレキモンの方を向いている所為か、ユウキの接近には意識が向いていないようだった。

 

 気付かれないように忍び足などやっている余裕は無い。

 

 一気に走り込み、ベアモンと同じように硬質な物質による鎧が存在していない部位を、思いっきり殴る。

 

 ドスッ、と手ごたえを感じさせる乾いた音が炸裂した。

 

「……ッ!!」

 

 だが、その攻撃でモノクロモンは標的を二人からユウキを変えたようで、怒りを感じさせる吠え声と共に尻尾で自身の周囲を薙ぎ払って来た。

 

 ユウキはそれを、ベアモンと同じように後ろに向かって跳ぶ事で避けようとしたが、運動性能と経験の差からなのか、避けられる距離に到達する直前にモノクロモンの尻尾がユウキの体を打ち飛ばした。

 

「が……っ!?」

 

「ユウキ!?」

 

 喉の奥から吸っていた空気が一気に抜き出て、打ち飛ばされた体は地面の上を摩擦音と共に滑り、膝に擦り傷が出来た時よりも激しい痛みが背中を駆け抜ける。

 

 その際ベアモンが心配するような声を上げていたが、ベアモン自身もそちらに意識を向けている場合でも無い。

 

 何故なら、息つく暇も無く、次の攻撃が襲い掛かろうとしているのだから。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

「!!」

 

 尻尾での攻撃から間髪入れずに、モノクロモンは火炎弾を放っていた。

 

 ちょうどモノクロモンの顔面に向かって拳を叩き込むために走っていて、途中で吹っ飛ばされる仲間の姿を見て、迂闊にも余所見をしてしまったベアモンの方に向かって。

 

「ベアモン!!」

 

 一瞬遅れて反応したベアモンは走行の勢いを踵で殺し、右側――ギルモンのユウキが吹っ飛ばされた方向に跳躍しようとした。

 

「……っぁ……!?」

 

 だが避け切る事が出来ず、放たれた火炎弾はベアモンの左足を掠る。

 

 膨大な熱量を含んだ火炎弾は、直撃をさせずとも火傷を負わせるだけの効果があって、ベアモンの左足には黒く焦げ付いたような痕が残っていた。

 

「ぐ……!!」

 

 足から伝わる激痛に歯を食いしばって耐えながら、両手の力で立ち上がろうとするベアモンだったが、そんな都合の悪い時に敵が待っていてくれるわけも無く、モノクロモンは左の前足でベアモンを踏み潰そうとする。

 

 それを横に転がる事で回避するベアモンだが、今度は右の前足が振り下ろされる。

 

「くっ……!!」

 

 だがベアモンはもう一度同じ方向に転がる事で避け、その回転の勢いを止めずに数メートルほど距離を離した後に右の膝を地に着けた状態で立ち、体勢を立て直した。

 

 火傷の痛みに耐え、少し前まで遊びで入っていた場所の方を向きながら、ベアモンは内心で呟く。

 

(……火傷なら、水辺で応急処置は出来る。昨日と違って痛みを我慢さえすれば歩けるはずだし……問題なのは、この状況をどうやって切り抜けるかなんだ……まさかあのモノクロモンが、ここまでしてくるなんて……)

 

 ただ単に殴っているだけで、強力な鎧竜型デジモンであるモノクロモンに戦闘不能になるまでのダメージを与えられるとは思えない。

 

 エレキモンの電撃で神経を麻痺させて行動不能にする事も手段の一つだが、ただ普通に当てるだけで気絶させる事は難しいだろう。

 

(……水辺を利用してやろうにも、どうやって? あの巨体をどうやって川に誘き出せば……あの重量級のデジモンを投げ飛ばす事なんて今の僕にはとても無理だし……)

 

 考えても、好ましい結果を得られる打開策は浮かんできてくれない。

 

 一つだけ、たった一つだけこの状況を簡単に打破出来る可能性があるとすれば。

 

(……今、この場でユウキが先日行ったように『進化』を行う事)

 

 ユウキの種族であるギルモンが進化したデジモン――グラウモンのパワーがどれほどの物かを、ベアモンはあまり詳しくは知らない。

 

 モノクロモンの体表にある硬い物質は、ダイアモンドと呼ばれる鉱物と同じ硬さを持っているらしいのだが、森育ちのベアモンは銅とか銀とかの鉱物に関心を持った事が無いため、とりあえず『もの凄く硬い石』と認識している。

 

 故にベアモンの考えは、モノクロモンの体表に存在する硬い物質は熱にも強そうだが、進化前のギルモンの前足にある爪は、岩石すら砕く事が出来る(と言われている)から、成熟期に進化したらそれが更に強くなって太刀打ちが出来るだろう、といった物だった。

 

 だが、結局その可能性は前提条件として『ユウキが自発的に進化を出来る』事が必要となる。

 

 それに、その可能性を思考に浮かべたベアモン自身、それをあっさり肯定しようとは思わなかった。

 

(……また、ユウキにも無理をさせるわけにはいかない)

 

 それは単なる正義感からか、出会って二日程度の友達に対して向けている、傍から見ればちっぽけな友情からか。

 

 ベアモン自身も何故こういう場面に自分の身を考慮しないのか、とエレキモンに怒鳴られた事があったりした覚えがあり、それに対する返答もエレキモンからは『納得出来ない』と返されている。

 

(……僕が、守らないと)

 

 そう内心で呟いた時、電気のバチバチと鳴る音と共に、モノクロモンの視界の外からオレンジ色の電撃がモノクロモンの尻尾に直撃し、明らかに怒りの感情が混じった吠え声が響いた。

 

 モノクロモンの視界が、ベアモンの居る場所とは違う方向を向いた。

 

 先ほどからモノクロモン自身を一番攻撃している敵――エレキモンが居る方向を。

 

 エレキモンもそれに気付き、九つの尻尾を広げて威嚇をしながら安い挑発を送る。

 

「ほらほら!! かかってこいよデカブツ!!」

 

 案の定、モノクロモンはエレキモンの居る方目掛けて火炎弾を放ったが、エレキモンは四つの足で駆けて射線から外れる。

 

 火炎弾が当らない事に苛立ちでも感じたのか、モノクロモンはただ単に火炎弾を撃っているだけの攻撃パターンを中断し、四つの足を荒々しく動かしてエレキモンを追い駆け始めた。

 

 負傷しているベアモンを放置したまま。

 

(まさか……囮!?)

 

 エレキモンの行動の意図は簡単に掴めたが、それはベアモンからすれば一番受け入れ難い案だった。

 

 確かにエレキモンが逃げ続け、その間にユウキを連れて逃げる事が出来れば、ひとまずベアモンとユウキだけは助かる可能性が高い。

 

 だが、囮役のエレキモンがもしも逃げ延びる事が出来なければ……それはベアモンにとって、自分の願いを裏切られるも当然の結果になる。

 

(駄目だ……こんな時、どうすれば……!?)

 

「ヴォルケーノストライク!!」

 

 重戦車(モノクロモン)は走りながら口から火炎弾を放ち、駆けている子鼠(エレキモン)を仕留めんとする。

 

「ヴォルケーノストライク!!」

 

 ただしそれはそれまでの火炎弾と違い、種族としての必殺技の名を言いながら放たれた、一回り大きな火炎弾だった。

 

 それを避けようとしたエレキモンだったが、火炎弾はエレキモンのすぐ後ろの地面に着弾。

 

 爆発した。

 

「どわああああああ!?」

 

 直撃こそしなかったもののバランスを崩し、転倒するエレキモン。

 

 追撃とでも言わんばかりに、モノクロモンは倒れたエレキモンに対してもう一回火炎弾を放とうとする。

 

「ドジった……!!」

 

 今の状態では、あの大きな火炎弾を避け切る事が出来ない。

 

「エレキモンッ!!」

 

 ベアモンは左足から電流のように走る火傷の痛みにも構わず走り、手を伸ばすがそれが届く事は無い。

 

 どんなに早く走ったとしても、もう遅い。

 

「やめろおおおおおおおおおおおおッ!!」

 

「ヴォルケーノストライク!!」

 

 そして残酷にも、必殺の技の名と共に火炎弾は放たれた。

 

 エレキモンは自身に迫り来る死に対し反射的に目を瞑り、ベアモンの脳裏には最悪の未来図が脳裏に過ぎる。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 だが。

 

 来るはずだった死は、訪れなかった。

 

 火炎弾はエレキモンに直撃する前、射線上に割り込んで来た別のデジモンに直撃していた。

 

「………………」

 

 ベアモンにはそれが誰なのかを理解する事は出来たが、それをすぐに声として出す事は出来なかった。

 

 そして、自身に訪れるはずだった死が来ない事に疑問を抱いているエレキモンは目を開け、その姿を確認する。

 

「……ユウキ!?」

 

 つい先ほど、モノクロモンの尻尾に打ち飛ばされ倒れていたはずのデジモンだった。

 

 彼はモノクロモンの必殺技からエレキモンを身を挺して守れた事を確認すると、苦しそうな声で言葉を呟く。

 

「……だい、じょうぶ……か……?」

 

「大丈夫って、お前の方こそ大丈夫かよ……!?」

 

 だが、互いの安否を確認する間も無く、モノクロモンの角が迫る。

 

「!!」

 

 ベアモンはそれに気付くと、ユウキがそうしたように二人の盾となるように立ち塞がる。

 

(死なせてたまるか……!!)

 

 偶然にも先日、フライモンの奇襲から仲間を守った時と状況は似ていた。

 

 抱いている感情も、言葉だけで言えば同じ物。

 

(こんな所でッ……)

 

 死んでほしく無いから。

 

 願いはただ、それだけ。

 

(死なせて……)

     

 絶対に、守る。

 

 そのためなら自分の命を賭ける事に躊躇はしない。

 

 心に抱く願いと、それを叶える原動力となる意思は、ベアモンの電脳核を急激に回転させ、奇跡を起こす。

 

「たまる……かあああああああああッ!!」

 

 モノクロモンの角がベアモンに当たる直前。

 

 ベアモンの体を軸に、青空のように青いエネルギーの繭が形成され、モノクロモンの進行を防いだ。

 

 そしてその繭の中で、ベアモンの体は強く、逞しく成熟していく。

 

「まさか……ベアモンも……?」

 

 エレキモンの呟きと共に繭は内部から切り裂かれ、内部から一体のデジモンが現れる。

 

 青みがかった黒い毛皮に覆われた逞しき躯。

 

 殺傷能力を秘めた鋭い牙や爪。

 

 額には白く三日月のような模様が描かれ、両前足に『熊爪』を装備したデジモン。

 

「ベアモン進化…………」

 

 その名は。

 

「グリズモンッ!!」

 




 この状況でNGなんて書けるわけが無いッ……!!

 というわけで、今回はデジモンサイドの主人公ことベアモンの進化回でした。

 物語中ではあまり日数は経っていないのですが、この辺りで進化させてちょうど良いと判断したための進化回……なのですが、実を言うと当初の予定では『三体の成長期で成熟期を協力して倒す』って感じの話にする予定で、作者である俺自身がそれに至るための過程を描く事も出来なかった(当初はユウキとベアモンの渾身の同時攻撃で川に落としてから、エレキモンの必殺技で気絶させるって流れの予定でした)ので、ある意味俺自身の諦めという形で進化の回になったわけです。

 書いた後だと『ちょうど良かったかな』と思っているのですが、それでも書いてみたかったなぁ……ユウキとかユウキとかユウキが足を引っ張らなければそれも可能だったのに←←

 最近忙しいのもあって、ルビ等を振る余裕もありませんでした。

 次回はモノクロモンとの戦闘の決着になりますが、もうじき第一章は終わります。てか終わってほしいです(切実)。
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