DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

21 / 86
 更新が安定すると思ってたらグリズモンの戦闘描写を試行錯誤し続けて、Pixivで行っている企画の進行と両立しながら一番良い感じの戦闘を書けたかもと思っていたら、卒業式やら何やら行事が忙しくなり、ここまで遅くなってしまいました。

 この小説を楽しみになさっている方には、本当に申し訳が立たないです。

 そして、何より無念なのが今回は3000字程度しか文字数がございません。

 


電子世界にて――『対するは守護の灰色熊』

「………………」

 

 進化による大幅な身体情報の更新による影響なのか、左足に受けていた火傷の痛みは消え去っていた。

 

 四肢に力が漲り、痛みが無くなった影響からか思考がやけに冷静になる。

 

 先ほどまで脅威として映っていた敵が、今では恐れる必要も無い存在として視界に映る。

 

(……これが、進化……)

 

 少し前まで『成長期』のデジモンであるベアモンだった『成熟期』のデジモン――グリズモンは、進化に伴った自身の変化に対してそう呟くと、目を一度後ろの方へと向けた。

 

 彼の姿――と言うより『進化をした』という点について驚いているエレキモンと、背中に大きな火傷を負って倒れているギルモン――ユウキの姿が見え、その後改めて前を向くと、3メートル程離れた位置に襲撃者であるモノクロモンが熱の篭った息を荒立て、興奮しながら健在しているのが見える。

 

 進化をする直前には目前に居たのにも関わらず距離が離れているのは、進化の際に発生した膨大なエネルギーの繭によって弾き飛ばされたからだろう。

 

 突然目の前に現れたグリズモンの事を新たな敵として、それも一番の脅威として捉えているからなのか、警戒して自分の方から突っ込んで来るつもりは無いようだ。

 

(……この姿がどのぐらい維持出来るのかが分からない以上、モタモタしてる余裕は無い、か……)

 

 この状況でグリズモンにとって達成するべき勝利条件は二つ。

 

(……モノクロモンを戦闘不能にし、エレキモンもユウキもこれ以上は傷つけさせない)

 

 進化して一転、状況はただ好転しているわけでは無い。

 

 結局モノクロモンをグリズモンが倒せなければ、その時点で三人の命運が確定してしまうのだから。

 

 そして、その状況を理解しているからでこそ……グリズモンは、それ以上考えなかった。

 

「ヴォルケーノストライク!!」

 

 重戦車(モノクロモン)主砲(ひっさつわざ)が放たれる。

 

 グリズモンがその行動に対して起こした行動は、とても単純な事だった。

 

「ハアアアアアッ!!」

 

 赤色の防具が装備された両方の前足を縦に思いっきり振るい、火炎弾を真っ二つに両断したのだ。

 

 分断された火炎弾はグリズモンとその背後に居る二人の居る場所のすぐ横を通り過ぎ、水辺の向こう側にあった岩肌に当たる。

 

 赤熱されたそれを視認するまでも無く、グリズモンは攻撃と同時に地に付けた前足を使って四足歩行で駆ける。

 

 必殺技を放った反動からか、モノクロモンはグリズモンの接近に対して直ぐに対応する事は出来ず。

 

 迎撃しようと次の火炎弾を放とうとした頃には、既に森の武闘家(グリズモン)が自身の攻撃の有効射程内に辿り着いていた。

 

「フンッ!!」

 

 四足から二足歩行に転じたグリズモンの太く重い右前足が振り下ろされ、金属の鳴る音と共に、モノクロモンの顔面が顎から石だらけの地面に叩き付けられる。

 

 地に伏せるような体勢にされたモノクロモンは、反撃とでも言わんばかりにグリズモンの胴部目掛けてダイヤモンド並の硬度を持つ鼻先の角を突き立てるが、グリズモンは斜め後ろに半歩下がる事でそれをいなし、今度はアッパーカットのように左前足で顎を殴り上げ、右前足でもう一回同じ要領で打撃を加えた。

 

 すると、顎の下から突き上げる衝撃によってモノクロモンの上半身が宙に浮き、これまで狙う事が出来なかった部位が丸見えとなる。

 

 グリズモンは、そこで腰を深く落とす。

 

「……すぅ~っ」

 

 そして、狙い打つ。

 

 ベアモンの頃から愛用していた、必殺の正拳付きで。

 

樋熊(ひぐま)正拳(せいけん)()き!!」

 

 真っ直ぐ放たれた拳がモノクロモンの腹部へ突き刺さり、鈍い打撃音と共にモノクロモンの巨体が5メートル程先までブッ飛ばされる。

 

 重量級の体な故か、モノクロモンが着地した周辺の地が『ズゥン……!!』と響く。

 

「……すげぇ……」

 

 目の前の光景に、エレキモンはただ圧倒されていた。

 

「グゥォオオァァッ!! ガァッ!!」

 

 だが、渾身の一撃を加えて尚、モノクロモンは倒れない。

 

 今の連撃によって怒りが更に大きくなったのか、頭に血が上って更に荒々しくなっている。

 

 野生のデジモンが怒ると動きが荒々しくなる事はグリズモンも知っているが、彼からしてもこの怒りっぷりは異常と思える物として映っている。

 

(……やはり、これは普通じゃない……)

 

 だが、原因が分からない以上、戦う力を奪う事しか手段は無い。

 

 辺りの地を踏み鳴らしながら、堅き鎧の竜がこちらに向かって角を突き立てながら突進してくる。

 

 グリズモンはそれに対して真っ向から立ち塞がり、両方の前足で槍の如き角を受け止めた。

 

「……ぐっ……!!」

 

「グゥォオオオオオオ!!」

 

 事前に身構えていたにも関わらず、グリズモンの体が徐々に後ろの方へと押し出され始める。

 

 ザリッ、ジャリッ、と……少しずつ、自分の守りたいものが居る所へ。

 

 後ろ足で重心を支え必死に踏ん張るが、モノクロモンの重量と力は強大だ。

 

(負けるか……絶対にッ……!!)

 

 だが、グリズモンの闘志は折れない。

 

 むしろ、絶望的な状況が感情を更に激しく昂らせ、どんどん四肢に力が漲らせていた。

 

 彼は、自身の体の負担の事など一切考えもせずに、モノクロモンの鼻先の角を掴んでいる両方の前足に力を込め続ける。

 

 そして。

 

 グリズモンは前足を、進化と共に手に入れた力を一気に解放するように振り上げた。

 

「グッ……ウオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 咆哮と共に、モノクロモンの巨体が宙に投げ上げられる。

 

「グオオオオオオオッ!?」

 

 モノクロモンは足掻きとして前足と後ろ足をバタバタと動かすが、当然その行動は状況に何の変化も与えない。

 

 グリズモンは重力に従って地に落ちてくるモノクロモンを見据え、拳を当てる部位に狙いを定めてから、最後の一撃とでも言わんばかりに敵、そして自分自身に対して宣告する。

 

必倒(ひっとう)……!!」

 

 言った直後。

 

 落下してくる角度と垂直に森の武闘家の拳がモノクロモンの顎に炸裂し、轟音が響いた。

 

 巨体が、重戦車の如き重量を含んだ竜の体が吹き飛び、仰向けの状態で地面に落ちると共に地が鳴る。

 

 グリズモンは突き出した拳の力を少しずつ緩めながら、最後に言う。

 

「……当身返し」

 

 必殺とも言える一撃をその身に受けたモノクロモンは、仰向けになった状態からそれ以上起き上がってくる事は無かった。

 

 そして、モノクロモンが戦闘不能になった事をグリズモンが確信したと共に、グリズモンの体が再度青い光に包まれ、そのシルエットが少しずつ小さくなり始める。

 

 僅か数秒が経ち、収縮と光が収まると、グリズモンは進化する前の姿であるベアモンに戻っていた。

 

「……っはぁ……はぁっ……!!」

 

 よほど無理を通した反動が大きかったのか、地に片膝を着いて苦しそうに息を荒げている。

 

 回数を重ねていくごとに電脳核が馴染んでいき、やがて自分の意志で操る事が出来る力だと言われているが、体力に自信のあるベアモンでも、その強大さを十分に理解出来るほどに疲労していた。

 

 普段は活発に動く体が、今では鉛のように重く感じられる。

 

 これが、感情によって発現される『進化』の力。

 

 あまりにも疲労が激しく、ベアモンの体が地面に崩れ落ちそうになる。

 

 その時だった。

 

「……ったく、大丈夫か?」

 

 崩れ落ちそうになったベアモンの体を、何者かが受け止めたのだ。

 

 後ろから背中を眺めていたエレキモンと受け止められたベアモンは、この場に現れた新たな来訪者の姿を見ると、予想外とでも言わんばかりに驚きの表情で名を口走る。

 

「「……ミケモン!?」」

 

「……ようお前ら、よく頑張ったな。見直したぜ」

 

 何故このような場所に、ギルドで留守番等をしているはずのミケモンが居るのか。

 

 そう疑問を浮かべるベアモンとエレキモンだが、当の本人であるミケモンは言葉を紡ぐ。

 

「とりあえず、そこのギルモンの応急措置が先だな。腹も減ってるみたいだし……これ、食うか?」

 

 そう言うミケモンの片手には、齧り立ての果実が一つ。

 

 休憩のつもりが戦闘になり、そしてまた休憩の時間を取る必要が出て来たようだった。

 




本日のNG。

「……あ、あっぢぃ……」

 体を呈して仲間を守ったのに関わらず、今回台詞が一言も無かった主人公が一人。

 NGその7「主人公って誰だっけ」

 ◆ ◆ ◆ ◆

 今回は前回の続きなのですが、普段の回と比べるとプロローグ以来結構少なめの文字数です。

 というのも、今回投稿する話はまだ未完成で、グリズモンの戦闘シーンとその後の展開のみという内容からも分かる通り、いつかの話と同じように『繋ぎ』の話に位置しております。

 まぁ、もしかしたら2000字ほど別視点の話を(思いついたら)入れて、一度修正する可能性があり、それも濃厚なわけですが……あしからず。

 でも、こんな出来でも読んでくれて、UAが6000に到達している所を見ると嬉しく思います。

 こっちのUAやお気に入り登録者数もそうですが、Pixivにて行っている【D・D・D】という企画も、予想以上に参加者が居てくれて嬉しいです。楽しんでもらってるようですし、発案した甲斐がありました。

 では、次回はそろそろ第一章の終盤に差し掛かってきた感じの会話イベントです。多分。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。