DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語 作:紅卵 由己
Pixivでやっている企画に、某大規模戦オンラインゲームに……やりたい事が増えすぎると、一つの事に集中出来なくなるんですよねぇ。両立って言葉で言うと簡単だけど、実際にやるのはとても難しいと思います。
そんなこんなで、もうそろそろ第一章も終わりに近づいてきました。
少なくとも、連載から一年経つまでには第一章を終わらせたいです(切実)。
時は少し
自身の所属する組織『ギルド』のリーダーであるデジモン――レオモンの命令を受け、
「……こっちも特に異常は無しっと」
周囲の木々や生息しているデジモンの様子を見てミケモンはそう呟き、通り縋った際に木に成っている所を見つけた黄色い果実を齧りながら、獣道を坦々と歩く。
歩いている最中に見られる風景は木々や草花といった自然界の産物のみで、特に異常を感じさせるような物体は見えない。
野生のデジモン達も、特にいがみ合ったりなどの問題を起こさずに平和を満喫しているように見える。
ここ最近は『凶暴化』だとか『崩壊』だとか、物騒な情報をよく耳にするが、とてもその情報が本当とは思えないほどに自然で平和な風景だとミケモンは思っていた。
「……ん?」
少なくとも、前方の遠い地点から平和とは程遠い印象がある荒々しさを感じさせる吠え声を聞き取り、それによって生じた音の発生源を察知するまでは、特に疑問を抱く事も無くそう思えた。
ミケモンのような、ネコ科の動物に似た一部の獣型デジモンの耳の形状は頭の上から立つ形のものであり、両方の耳を前方に向ける事で高い指向性を発揮する事が出来る。
ただ歩いているだけでも周囲の音声情報を細かく取り入れる事が出来るため、ミケモンは自分の居る位置から遠い位置に居る標的との距離と方向を知る事が出来た。
声の性質から判別して、何らかの竜型のデジモン。
更に足音から判別して、重量級のデジモン。
「……?」
そして、よく聞くとその荒々しい声を漏らしているデジモンの近くからは、三体ほどのデジモンの危機感の
最近会った事のある、自分自身が期待している三人組の声のように聞こえた。
「……マジかよ」
思わずぼやくと、ミケモンは
耳で得た情報を元にして素早く移動を続けていると、ミケモンの目は遠方にて3対1の戦闘を繰り広げているのデジモン達の姿を視界に捉えた。
三体ほどのデジモンの正体は昨日『ギルド』の本部へ訪問して来た、ベアモン・エレキモン、初対面の何故か
(……げっ!?)
来た時には、既にその3対1の戦闘が終結しそうになっている時だった。
ベアモンは左足に、ギルモンは背中に大きな火傷を負っており、唯一目立つほどの怪我が見えないエレキモンも、少し前に転倒でもしてしまったのか、直ぐに体勢を立て直せるような状態では無かった。
そして今、襲撃者(と思われる)モノクロモンは、自身の角を前に突き出した状態で襲い掛かろうとしている。
それからギルモンとエレキモンの二体を守ろうと、ベアモンが盾になるように立ち塞がる。
(この距離じゃ間に合わねぇ……!!)
目に見えていても、ミケモンが走って間に合う距離では無かった。
モノクロモンの角がベアモンの体を貫く
「!!」
しかしその時、ベアモンの体から蒼い色の光が溢れた。
突進して来たモノクロモンを弾き飛ばしたその光は、デジモンなら誰もが知っている現象の合図。
(進化……か?)
言っている間に光の繭は内部から切り裂かれ、中からベアモンよりも大きな獣型のデジモン――グリズモンが現れる。
モノクロモンはグリズモンに対して必殺技である
モノクロモンは角を突き立て必死の抵抗を心見たが、グリズモンはそれを軽くいなすとそこから更に連続で打撃を加え、シメに正拳突きを叩き込んだ。
(……あの格闘のキレ具合といい、身を挺してでも仲間を守ろうとする姿勢といい、やっぱり俺の知るあのベアモンか)
グリズモンに殴り飛ばされたモノクロモンは更に気性を荒々しくさせ、再度グリズモンに向かって角を突き立てながら突進する。
(……にしても、あのモノクロモン……『狂暴化』してやがるな。何が原因なんだか……)
辺りの地を鳴らしながら突進してくるモノクロモンの角を、グリズモンは両前足で掴む事によって受け止めるが、勢いと重量を殺しきる事が出来ていないのか徐々に後ろへと下がっている。
だが。
(……勝ったな)
グリズモンは四肢に力を命一杯注ぎ込み、重量級デジモンであるモノクロモンの巨躯を投げ上げた。
空中で前足と後ろ足をバタバタと動かすモノクロモンの姿は、最早何の抵抗も出来ない事を示しているようでもあって、グリズモンは浮いて落下して来るモノクロモンにトドメを刺すために構えている。
そして、決着は着いた。
グリズモンの右前足による一撃がモノクロモンの顎へと炸裂し、轟音と共にモノクロモンの巨躯が吹き飛ばさせ、仰向けの状態となって倒れる。
その喉からは、先程まで聞こえていた荒々しい竜の声など聞こえてはいなかった。
(最後まで諦めない意思……『感情』の力が、欠けたパズルのピースを埋め合わせるように、『進化』が発動するのに足りない『経験』を補う。あの小僧に、まさかここまでのポテンシャルがあったとはなぁ)
命の危機にでも瀕する逆境に出くわさない限り、
だが、だからと言って、何の『経験』も積まずにただ『感情』だけを昂らせただけでは進化は発動しない。
本当の意味で『
(オイラの目に狂いは無かった。アイツ等は、鍛えれば十二分に面白い奴等になりそうだ)
そんな思考をして、口に咥えていた果実を一口齧るミケモンだったが、目の前でグリズモンの体が光に包まれるのを見て、齧っていた果実を再び咥えながら疾走していた。
そして、現在に至る。
◆ ◆ ◆ ◆
「……まぁ、こんな感じだ」
「ふ~ん……なるほど。レオモンさんの命令で来たんだ」
ミケモンからこの場に現れた経緯を聞いて、ベアモンは納得したようにそう言葉を返した。
「まぁ、この辺りは『ギルド』の情報でも安全と聞いてたんだがな。まさかこんな所で、暴走してるモノクロモンを目にするとは思わなんだ」
「僕も、何でなのか分からないんだけど……何で、モノクロモンが暴走して突然襲って来たんだろう」
「さぁな。少なくとも、お前等が悪いわけじゃないって事は確かだろ」
「さぁなって……まぁ、いつかは分かるかもしれないからいいけどさ。『ギルド』の情報網では分かってないの?」
「まだ、完全にはな」
ミケモンはそう言ってから、聞き耳を川の方へと立てる。
透明な水が心地良い音と共に流れる川の方では、先ほどの戦闘で背中に大きな火傷を負ったギルモン――ユウキが、エレキモンの手によって火傷の応急処置を行わされていた。
「痛っ!! 水かけぐらいもうちょっと優しく出来ないのかよ!?」
「つべこべ言うな。これ意外に治療法が無いんだし、その程度の火傷で済んだだけ良かったと思え」
「俺の種族は炎の属性に耐性を持ってるからな……っていうか、せっかく助けてやったんだから、もうちょっと愛想良く接せないのか?」
「……まぁ、確かに助けてくれた事には感謝してやるさ」
「おいおい、何だよそのツンの要素しか無い台詞。対して可愛げも無いお前がやってもちっとも価値無いし、普通に誠意ある言葉でほら、言ってみろよ」
「………………」
「何無言になって……痛ってぇ!? 何だよデレの一つも無しで常時ヤンかよせっかく体張ったのにィャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
何やら『ばしゃばしゃーっ!!』と水の弾けるような音と共に、
二体の赤いデジモンの喧嘩を余所に、彼等は話を続ける。
「完全にって事は、何か分かっている事はあったりするの?」
「ここ最近の異変が、何らかの『ウィルス』によって引き起こされている物って事ぐらいだ。黒幕が居るのか、自然発生した産物なのか、そこまではまだ明確になってねぇ」
「そうなんだ……あんなのが自然発生してたら、町とかにも被害があると思うんだけど」
「だから、高い確立で黒幕が居ると俺達も見ている。だが、可能性は複数用意しておくに越した事は無いだろ」
確かに、とベアモンは素直に思えた。
この数日、自分の事を『人間』だと名乗る不思議なデジモンを釣り上げたり、お腹が空いたという理由で外出した先で命を奪われかけたり、そこで一度も戦闘を経験していないはずのデジモンが『進化』を発動させたり、そして今日、また命を失いかけた実経験を持つベアモンにとって、こういったトラブルに対する心構えは常に用意しておくべきだという事は嫌と言うほどに理解している。
そうでなければ、様々な状況に応じて仲間を守る事など出来はしない。
野生の世界では、泣いて叫ぶ者を命賭けで助けてくれるような
ベアモンはそう思った所で、ミケモンに対してこう言った。
「ところでミケモン。僕等はこの後、食料調達を再会するわけなんだけど、そっちはどうするの?」
「どうするっつってもなぁ。オイラはお前等の戦闘する音を聞いて来たってだけで、やってた事はただの
メモリアルステラ。
デジタルワールドの各地形や環境といったデータの流れを、永続的に記録する一種の巨大な
ここ最近の異変に関係があるとするなら、確かに調べるのは得策だろう。
もっとも、環境そのものに変化は見受けられないし、そんな変化があれば『ギルド』の情報網が既に情報を掴んでいるはずなので、何らかの情報が得られるとも思えない。
だが。
「ねぇミケモン。もし良かったら、僕等もミケモンに着いて行っていい?」
「? 別にオイラは構わないが、何か理由でもあんのか?」
「ユウキに『メモリアルステラ』の事を見せてあげたいんだ。彼、色々と知識不足だから」
「……このデジタルワールドに生きていながら、アレの存在を知らないって事は無いと思うが……」
ミケモンは当然と言わんばかりの反応を見せたが、発案者であるベアモンは普段通りの口調を崩さないままこう言った。
「彼、実は『記憶喪失』なんだ。自分の名前以外の事を覚えてなくて、デジタルワールドの常識にも乏しいんだ。だから、この機会に見せておきたくてね」
「……あぁ、前にあのギルモンが言ってた『複雑な事情』って、そういう事か」
ベアモンの発言(大嘘)で合点がいったのか、気の抜けた声と共にミケモンはそう返す。
「大方、記憶が無くて行き場も無いから、お前の家に居候でもさせてもらったんだろ。それなら、まぁ納得がいく。オイラとしてもお前等が近くに居るってだけで守りやすいし、構わないぜ」
「ホント? 何から何まで、ありがとうね」
どうやら、理由に納得する事が出来たらしい。
ベアモンが言った事は当然その場で作った嘘に過ぎないが、事実ユウキには『デジタルワールドでの記憶』がほぼ無いに等しいため、半分は嘘では無い。
ミケモンの『見回り』に同行する事が決まり、ベアモンは何だか静かになった川の方を向く。
視線の先では話題にも上がっていたギルモンのユウキが、何故か川の上でうつ伏せのような体勢になっていた。
よく見ると、何らかの電撃を受けてガクガクと痺れているのが分かる。
わざわざ原因を調べるために考える必要も無かったので、ベアモンは漫画なら『ダッ!!』という擬音が付きそうなぐらいに素早い動きでユウキを川から引き戻し、言う。
「ちょっとおおおおおおお!? エレキモン、お前何してくれてんの!?」
「うん。ちょっとムカっと来たから、命に関わらないレベルの電撃を浴びせてやった。背中に水を当てる度にうるさい台詞を吐きやがるもんだから、多少は静かになって応急処置が楽になって良かったと思ってる」
「いや何冷静に、清々しいほどの笑顔でそんな事言ってんの!? ほら見てよ、ユウキの口から白い泡が漏れてるんだけど!! てかお前、さっきユウキに助けられたのに何でこんな事してるんだよ!?」
「……誰だったかなぁ。こんな言葉を言っていたデジモンが居たんだ」
「何? ってかそんなのどうでもいいから、水を吐き出させるのを手伝ってよ!?」
「……あぁ、思い出した……『昨日の友は今日の敵』」
「逆だからね!? あと別に昨日も今日も敵じゃなかったからね!?」
「少なくとも俺はそいつの事を完全に信頼してるわけじゃないから、あと友達って認めてるわけでも無いから、つい」
「『つい』!? 昨日あんな出来事があったのに、エレキモンとユウキの信頼関係は豆腐と同じぐらいに脆かったのか~!!」
そんな二人の言葉の応酬を傍から見ているミケモンは、呟くようにこんな事を言っていた。
「……やっぱ、こいつ等……面白いな」
本日のNG。
「ところで、どうして僕が進化して戦っている時に加勢してくれなかったの?」
「まぁ、オイラ単独でも止めようと思えば止められたんだがよ。あの状況で横槍入れても逆効果だろ?」
「……とか言ってるが、実は単に敵わなさそうだったんじゃねぇのか?」
NGその8「Q『体格の差を覆すには?』A『頚動脈を裂けばいいと思うよ』」
◆ ◆ ◆ ◆
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