DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語 作:紅卵 由己
随分と久しい更新となりましたが、何とかここまで来れて良かったです。あと二ヶ月半ぐらいでこの小説も連載から一年となりますが、それまでにこの『第一章』は終わらせておきたいです。
※ここから帰宅後の追加文章。
というか、まだぶっちゃけこの『第一章』はあくまでも『舞台作り』の一つに過ぎないわけでして、作者的に書きたい話はまだまだ先にあるわけで、登場させたいキャラの一人も二人もまだ出せていない状態です。いやぁ、23話も投稿しておきながらまだ序盤って、物語が本格的に動く(予定の)中盤までに何話かかるんでしょうね←←
いやぁ、まだ先は遠いなぁ(白目)。
ひと時の休息(と多少の電撃)を終え、三匹の成長期デジモンと一匹の成熟期デジモンは再び山を登り始めていた。
歩く獣道の傾斜もほんの僅かだが角度が広くなっているような気がして、ふと横目に見える川の水が流れる速度や音も、山を登るにつれて増しているように見える。
剥き出しの岩肌の上や緑の雑木林などに生息している、野生のデジモンの数は山の麓や中腹と比べてもそれなりに増えていて、土地の関係からか果実の成っている木の本数が多い事が理由なようだった。
無論、そもそもの目的が『食料の調達』にあったギルモンのユウキ、ベアモン、エレキモンの三人は、進行中に見つけた木に成っていた果実を取って食べながら歩いている。
それぞれが大自然の産物を吟味している中、ユウキは一人、黙々と思考を廻らせている。
それを見て不思議に思ったのか、ベアモンが声を掛ける。
「ユウキ、何考えてるの?」
「……ん。いや、進化の事を考えてた」
「進化の事?」
「ああ。さっきの闘いで、お前は進化をしていたよな。お前等の情報曰く、俺も昨日は進化を発動させていたらしいが、俺はその時の実感が無い。お前には自我があったけど、俺は進化した時に理性が無かったらしいからな……違いが分からん」
「あ~……なるほど。僕もその辺りは分からないんだけどね」
そこまで返事を返すと、先頭を歩いていたミケモンが唐突に話に割り込んで来た。
「進化の際に自意識が失われるってのは、そこまで珍しいもんでも無いぞ」
「? そうなの?」
ミケモンは、何やら人生(というかデジモン生)の先輩的なポジション的な立ち回りが出来る事を内心で嬉しがっているのか、それとも単に『ギルド』の留守番で退屈だったからなのか、まるで喋りたかったかのように良い機嫌で喋る。
「どんなデジモンにも、潜在的に色んな性質が
まるでよく吠える犬とあまり吠えない犬の違いみたいだな、なんて事を思って、他人事を聞いているような顔をしているユウキに対してミケモンは指を刺しながら。
「お前さんの種族はそういった『本能』の面が濃いんだよ。多分『感情』のエネルギーで進化したんだと思うが、念を押す意味でも言っておこう」
ミケモンは一泊置いて。
「『感情』のエネルギーによって発動する進化は、発動したデジモン自身に強い感情を抱きながらも平静を保とうとするだけの『意思』が無いと制御出来ず、その時に昂った『感情』に呑まれる可能性がある。お前さんが進化をした時に自我を失っていたのは、お前さんが進化を発動させた時に有ったのが感情『だけ』で、それを制御しようとする自分の『意志』を持ってなかったからさ」
「……感情『だけ』?」
ユウキが『う~ん……』と疑問に対して何らかの答えを出そうと言葉を作っていると、今度は彼の進化を間近で見ていたエレキモンが口を出してくる。
「要するに……あれか。あんまり考えずに突っ走った結果がアレって事か」
「一応『感情』を生み出す過程で何らかの『目的』と、それを果たすために必要な『方法』が頭の中にあったんじゃないか? そのギルモン――ユウキって奴が進化した時の状況をオイラは知らんけど」
「……言われてみれば」
当時、フライモンとの闘いの際にユウキは進化を発動させて、成長期のギルモンから成熟期のグラウモンに成っていたが、その時のグラウモンには理性が感じられなかった。
だが実際、理性が無いにも関わらず、グラウモンはフライモンを撃退した後にベアモンとエレキモンを背に乗せるという行動を起こし、更に間違う事も無く町に向かって走り出していた。
最終的に町へ到達する目前でエネルギー切れを起こしたが、その行動には何らかの理性が宿っていたとしか思えない。
理性の無い竜に明確な目的を与えたのは何か、考えると意外と簡単な事が分かっていく。
当時、ベアモンを助ける方法を求めていたユウキに対してエレキモンはこう言っていた。
『町に行けば、解毒方法ぐらい簡単に見つかる』
『だから今は急いで戻る事だけを考えろ!!』
この言葉で、進化が発動する前のユウキ――ギルモンの電脳核に、目的を達成するための『方法』が入力されたのだとして、その後にユウキを『進化』に至らせる要因となった『感情』は何か。
つい最近の事でありながらおぼろげな記憶をなんとか掘り返し、ユウキは呟く。
「……『悲しみ』と『悔しさ』だ。多分、あの時に俺が抱いていた感情を表現するんなら、それが適切だと思う」
「どっちも処理の難しい感情だな……ウィルス種であるお前の
念を押すように、刃物なんて比では無い危険な兵器の使い方を教えるように、ミケモンは言う。
「その『目的』が別の何か――例えば『敵の殲滅』とかになって、お前さんが『感情』を制御出来なかった場合、お前さんを止めに掛かった仲間すら『邪魔』と認識して傷を付けかねない。それどころか、殺しちまう可能性だって高いな」
「な……」
「言っておくが冗談じゃねぇぞ。過去にもそういった理由で、敵味方構わず皆殺しにしたデジモンが居るって情報はそう少なくない。ウィルス種のデジモンだと得にな」
思わず絶句した。
ユウキ自身、自分の成っている種族の危険性ぐらいは他の三人よりも理解しているつもりだった。
一歩間違えれば、自分は核弾頭一発分に相当する破壊を何回も撒き散らす化け物に変貌してしまう可能性についても、別に考えてなかったわけでも無い。
だが、それはあくまで『
デジモンに成っている今、ミケモンから伝えられた事実は人間だった頃と変わらない『現実』で感じた物と同じ物として受け入れられ、そこから伝わる責任感や恐怖心は紛れも無く本心だ。
まるで、見知らぬ誰かに重々しい火器を渡され、その引き金に指を掛けさせられているような錯覚すら覚える。
銃口を向ける相手を間違え、引き金に込める力が一線を越えた瞬間、取り返しの付かない事態に成りかねないのだ。
ユウキが自分自身で想像していた以上の恐怖心を抱いている一方で、ミケモンの言葉に何となく不安を覚えたベアモンが、思考に浮かんだ言葉をそのまま述べた。
「さっき僕も進化したけど、自我はちゃんとあったよ? 暴走なんてしてなかったし」
「そりゃあ、お前が抱いていた感情はそいつと明らかに違う物だっただろうし、そもそもお前みたいなワクチン種のデジモンは『負』の感情よりも『正義』の感情に同調しやすいからな。余程の事が無い限りは危険な事にもなり難いし、あとは単純に精神面での違いだろう」
聞いて、またもやベアモンとの実力の差を実感し、溜め息を吐きながらユウキは言う。
「精神面……かぁ。俺って、そっちの面でもお前に負けてるのな」
「ふっふ~ん。君と違って、僕はそれなりに鍛えられているからね!!」
誰かに勝っている部分がある事がよっぽど嬉しいのか、『えっへん!!』とでも言うように上機嫌で威張るベアモン。
そんな彼を放っておいて、エレキモンはミケモンにこんな事を言った。
「随分と『感情』の『進化』について詳しいが、その知識はアンタ自身の経験からか?」
「いや? 当然、オイラ自身も『進化』の事に関してハッキリとまでは分かってない。今言ってた事も、所詮はヒマな時とかに読んだ書物とかからの引用が殆どだ」
「その書物は信用出来るものなのか?」
「歴史書とか図鑑とかそういう物は大抵、
「ふ~ん……俺はそういう文献とかに興味が無いからなぁ。目にする事のある本なんて、ベアモンの家か長老の家にある面白い物語が書かれた本ぐらいだ。面白いのか? そういうの見てて」
「興味が沸いたりして面白いぞ? 暇潰しとかに厚めの本はもってこいだしな」
「……アンタ、留守番中に居眠りだけじゃなくて読書までしてんのか?」
「もう殆ど読み終わったから、最近は寝てる事が多いけどな」
◆ ◆ ◆ ◆
そんなこんなで雑談を交わしながらも、一行はこの『滝登りの山』の頂上までやって来た。
周辺の地形は斜面から平地に近くなり、周りの樹木が謎の材質で形成された石版のような物体を外部から覆い隠すように生えていて、その石版の周りには明らかに自然の産物とは言えない材質の台座が存在していた。
明らかに他の空間から浮いているような印象しか受けない、それでいて神秘的な雰囲気すら思わせるこの物体こそ、この
今、この場に来たメンバーの中で唯一この物体の事を知らないデジモンであるギルモン――ユウキに対して、ベアモンは質問する。
「アレが『メモリアルステラ』なんだけど……本当に見覚えは無い?」
「無いっていうか、初見だからな。遺跡とかにありそうな石版としか思えないが……」
本人からすれば当然の反応をしたに過ぎないのだが、その一方でユウキの事情を(本当の意味では)知らないミケモンは、本当に驚いたかのようにこう言っていた。
「お前さん、本当に知らないんだな……こりゃあ重症だわ。常識が足りてないなんてな」
「?」
「あ~気にしなくていいから。そんな事より、始めてみるんだしもっと近づいてみてみない?」
「あ、あぁ」
ベアモンに手(というか前足)を引っ張られる形で、ユウキは『メモリアルステラ』の近くまで近づいていく。
「……おぉ」
(……本当に初めて物を見る目だ)
近くに寄ると遠くから見ている時点では神秘的に思えた物体が、不思議と近未来的な雰囲気を帯びた電子機器のようにも見える。
ユウキは思わず関心の言葉を漏らし、そんな彼の横顔を見てベアモンが内心で呟いている。
その少し後ろではエレキモンが二人の様子を眺め、ミケモンは『メモリアルステラ』の方へと視線を送っていた。
「まぁ、やっぱり見た感じ『メモリアルステラ』に異常は見られないな……平常稼動しているみたいだし、ここ最近の異変にアレは関連性が無いって事かねぇ……」
「となると、やっぱり何者かの仕業って事になるのか?」
「そう考えるのが妥当だろ。自然的な問題なら『メモリアルステラ』に異常が起きててもおかしくないし、まず何者かによる意図的な原因があるに違いねぇ。あのモノクロモンが異常なまでに興奮してるって時点で、そう考えるのが普通だろ」
「……チッ、本当に最近は災難続きだな……」
だが、一日の中で流石にこれ以上の災難は起こらないだろう、とエレキモンは思う。
というか、自分は一日に二回以上の災難に遭遇するぐらいに運の無いデジモンでは無いのだと、エレキモンは切実に思いたかった。
◆ ◆ ◆ ◆
まだ朝から昼へと変化していない時間。
平和を思わせる青空に
山の中に大量に存在する樹木の中の一本。
それに寄り添うような形で、そして風景に溶け込むような形で『何か』が居た。
周辺の野生のデジモンは、その『何か』に気付いていない。
「………………」
ただ無言で山頂の方へと視線を向けている事すら、周りのデジモンは気付かない。
・・・・・・・・・・・・・
そして、彼は何も言わないまま、手に持ったアサルトライフルの弾丸を装填する。
視線を山頂から、山頂に近い位置に見える獣型のデジモンへと移す。
「…………」
やはり、何も言わないまま、その
一発の銃声が鳴る。
・・・・・・
射線上に見えるデジモンの首筋に、弾丸が埋め込まれる。
そこまでの事があってやっと、周辺のデジモンは本能的に危険を察知し、逃げ出した。
それに意識を向ける事も無く、彼はもう一回引き金を引いた。
同じ銃声が鳴る。
・・・・・・
移した視線の先に居るデジモンの首筋に、再び弾丸が埋め込まれる。
それを確認した後に、彼はこう呟いた。
「……さて、どうする」
今回は『感情』の進化に視点を当てた話と、次の話の伏線を撒いて置きました。
実際デジモン単体による進化で、しかもただ『感情』を強く抱くだけで進化出来るのなら誰でも苦労はしないだろって事で、前々からこのデメリットは思いついていました。
作中の彼等の説明だとピンと来ない方もいるかもしれませんが、要するに『暴れ馬』を乗りこなせる技量を持った『乗馬者』が必要なのと同じです。
短い後書きで、今回のNGも書けていませんが、前書きの通り、帰宅してから書き足します。
では、次回もお楽しみに。
たったあれだけの描写で最後に出てきたキャラが分かる人は本当にデジモンが好きな人だと思う。
帰宅後、一番最後のアサルトライフルに関する描写を追加しました。