DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語 作:紅卵 由己
それにしても、必要と思った場面とかいろんな所をカットする事無く書き上げようと思うだけで、第一章がここまで長引くとは思っていませんでした。現在は『山』とか『森』とかが舞台なんですが、これが『海』とか『ジャングル』になったらどうなるんだこれ。てかもう24話も書いてるのに、これアニメだったら既に完全体進化イベントあっても可笑しく無いのに……。
そんなこんなで最近他の方への感想をなかなか書きに行けない中、最新話をお送りします。
色んな場所から水の流れる山の頂――『メモリアルステラ』のある神秘的な空間から出て、早五分。
時刻も町に戻る頃には昼間へと突入するぐらいになり、ミケモンはこの山に来た目的を既に達成しているらしいため、偶然の邂逅もそろそろ終わりに近づいていた。
「……で、ベアモン。『メモリアルステラ』を見物出来たのはいいんだが、これからどうするんだ」
「どうするって……決まってるでしょ? 元々僕等がこの山に来た目的を忘れたわけでも無いでしょ」
ユウキとベアモンとエレキモンの三人は、まだこの山に来た最優先の目的である『食料調達』をまだ満足に終えていないため、ミケモンと違ってこの山を降りる気は現時点で無い。
というのも、昨日に引き続き危険なデジモンが居るからとか、もうそろそろ夜になって夜行性のデジモンが出没して危ないからとか、そういった理由でせっかく登った山をあっさり下ってしまうのもそれはそれで癪な上に、もしこのまま数日か最低でも一日は生計を保てるぐらいの果実(もしくは野菜)を入手出来なかった場合、ここ数日ずっと口にしている塩辛い魚介類をまた釣りにいかなくてはならなくなり、仮に第二希望としてベアモンが述べていた『湖のある林』まで行ったとしても、そこでまた『敵』と遭遇してしまう可能性も否めないわけで。
まだ、三人はこの山を降りるつもりにはなれなかった。
特に、ベアモンほど魚介類が好みの食料でも無いユウキと――――エレキモンは。
「まぁ、現時点の腹持ちは悪くないんだがな。もう二日間も魚とかしか口にしてないのが嫌だし、元々俺は果実の方が好きだし? とりあえず採取を続ける方向なのは確定だろ」
ボロボロと本音のような何かを口から漏らすエレキモンだったが、そこでユウキは今更過ぎる考えを口にする。
「……てか、エレキモンもベアモンも、何でバケツを持ってこなかったんだ? アレでもあれば、ちっとは楽に採取した果実とかを持ち帰れるのに」
「あのな。昨日アレに魚を入れてたから知ってると思うが、海水浸しのバケツだぞ? そんなもんに入れたら、持って帰る間に果実が腐るだろ。そうでなくても塩っぽいのが付着して味が酷くなる」
「水で洗えばいいんじゃないか。それだけでも大分マシになるはずだし」
言われて、エレキモンは怪訝そうな表情を浮かべると、溜め息を吐きながら言い返す。
「……お前、自分ではそういう納得の出来る事を言ってるが、そもそもバケツの中に入ってた海水を、ベアモンが魚を全部食い終わった後に処理してなかっただろ。その上、俺の方のバケツもまだ溜めておいた貝が結構入ってるから使えない。更に根本的な事から言えば、そもそも
「……それもそうか」
エレキモンにそう言われ、ユウキは渋々納得したようにそう返した。
そんな会話に先頭からミケモンが聞き耳を立てていたが、特に反応して面白そうな話題では無いと判断したのか、特に言葉を発したりする事は無かったようだった。
山の下り道の途中でベアモンは視線を動かすと、ユウキに対してこんな事を言った。
「ユウキ。ちょっと採ってくるから、ちゃんとキャッチしてよね?」
「? キャッチってどういう……」
「見れば分かるレベルの事だし、細かい説明は必要無いでしょ」
視線の先にあった木にベアモンが登ると、ベアモンは枝から赤色に熟された
何となくベアモンの言っていた言葉の意図を察したユウキは、上方から落ちて来る林檎を両方の前足で掴もうとする。
人間の時のような『両手』による精密な動きは出来ないものの、二日間の間でデジモンとしての体の動かし方に少しは慣れてきたのか、取りこぼしも殆ど無い。
「意外とそういう事は上手なんだな。今度からそういうのを任せても大丈夫か?」
「よっ、ほっ。このぐらいならもうちょっとテンポを速くしても大丈夫――――ちょっ、待っ……ぐぇっ!?」
「……うわぁ」
尤も、その言葉を聞いた途端に、林檎を落としてくる速度を本当に上げてきたベアモンの方を見上げようとしたユウキの額に、一回り大きめの林檎が直撃した事もあったが、エレキモンやミケモンの協力もあって無事に採取する事が出来た。
量としては三人で分けて一食分、二人で分ければ二食分はカバー出来るぐらいだろうか。
やはり、人間としての暮らしにしか慣れていないユウキからすれば、
結局の所、採取した林檎を町まで持ち帰るのには、ユウキとベアモンが林檎をそれぞれ抱え込んで運ぶしか無いわけである。
ちなみに運んでいない面々について捕捉すると、エレキモンは一度に多くの物を抱えきれるほど前足が長いわけでは無いし、ミケモンはそもそも『手伝ってやる義理も無い』などとぼやいて現在進行形で面倒くさがっているのだ。
ユウキもベアモンも、抱え運んでいる林檎を落とさないように慎重に歩いている。
慎重に、歩いて、いたのだが。
「……っと!? あ、ちょっ!!」
「あ?」
何の前触れも無くベアモンが抱えていた林檎の一つが落ちて、コロコロと坂道を転がり始めた。
仕方なく、エレキモンが四足で駆けて林檎を確保しようとした、その時。
彼等の居る場所からずっと遠い雑木林の向こう側で、ガサリと茂みの揺れる音と、四足の獣が大地を駆ける足音がした。
「やっぱり、何かカゴみたいな物を運べる道具が必要なんじゃないか?」
「……って言われてもねぇ。そういうのを作れるほど僕等って技術持ってないし……」
「てか、せめて一枚の布ぐらいは無いのか? 風呂敷として使えば、包み込んで運ぶ事ぐらいは出来るだろ」
三人はその音の正体にも存在にも気がついていないのか、視線がコロコロと転がる林檎の方に向けられていた。
もし、彼等の内の一人でも冷静に耳を澄ませていたならば、音の発生源がどんどん近づいて来ている事に気が付けたかもしれない。
その音がどんな進路を辿って移動しているのか、予想するのも出来なくは無かったのかもしれない。
もし、彼等の内の一人でも近づいて来る気配に気付く事が出切れば、その気配のする方を向いて警戒する事だって出来たかもしれない。
気配の源が到達する前に声を出して、仲間に危険が迫っている事を伝える事だって出来ただろう。
そして、音と気配を三人が同時に認識した時。
そして、ベアモンの背筋に生存本能から来る寒気が奔った時。
そして、黒い影のような何かが茂みの奥から林檎を抱えているベアモン目掛けて飛び掛ってきた所で。
「肉球パンチ!!」
甲高い打撃音が、三人の直ぐ近くで炸裂した。
それと共に襲撃者――鋭利な黒色の体毛をした狼のような姿をしたデジモンが、ミケモンの硬質化した肉球による横殴りの打撃を
襲撃者の着地した場所に目を向け視認した直後、エレキモンが嘆くように叫ぶ。
「ガルルモン……!? 今日はどういう日なんだ、またこういうのが襲い掛かってくるのかよ!!」
同じ事を、ユウキも危機感を表に出した顔のまま内心で嘆くが、襲撃者であるガルルモンはこちら側の事情など知る由も無く、剥き出しの殺気を乗せた視線を獣特有の唸り声と共に向ける。
その目に宿っている感情が何なのかまでは判別出来ないが、ガルルモンの目を見たベアモンが第一に浮かべた
「……やっぱり、普通じゃないよ、こんなの……」
「だろうな」
ミケモンの呟くと共にガルルモンの次の動きがあった。
ガルルモンは両前足で素早く山道を駆けると、一度茂みの中へと姿を隠したのだ。
辺りから茂みの揺れる音と共に、何かが通り良く切れる音が周囲から聞こえる。
「……ガルルモンの体毛は、伝説のレアメタル――『ミスリル』のように硬いって聞くが、マジみたいだな」
ただ身を潜めて攻め時を待っているだけでは無く、その肩口から生えている体毛の刃で辺りの草木を切り裂く事で、些細な音を散らしながら駆け回っているようだ。
ただ一直線に攻めてきたモノクロモンと比較しても、攻め方は明らかに違い、狂気の中でも獣型デジモン特有の
何らかの違いでもあるのかと思ったが、結局襲い掛かってきている事に変わりは無いため、むしろ確実に獲物を仕留めようとするガルルモンの姿勢は、ユウキ達からすれば脅威を強めるマイナス要素でしか無い。
故に、その違いは、ただ新たな恐怖として認識される。
だが。
「……とにかく、コレは放り捨てとくぞ……」
ユウキは冷静を出来る限り
もう流石に、二日の間に何度も命の危機に見舞われた所為か、ある程度の脅威に対しては腰が抜けたりする事も無くなったようだった。
「仕方無い。後で回収できればいいんだけど……!!」
ベアモンも同じように抱えていた林檎を茂みに放つと、拳を構えて臨戦態勢に入る。
一方で、一番最初にガルルモンに攻撃してミケモンはと言うと。
(……チッ、音が断続し過ぎてて判別がつきにきぃな……)
自身の長所である聴覚を惑わされ、ガルルモンの位置を特定することが難しくなっていた。
何故なら、周囲から聞こえる音の種類が複数存在し、その中で最も重要な音を他の音が阻害しているのだ。
この状況で最も聞き取る必要のある音とは――ガルルモンが地を駆ける際に生じている足音。
本来ならそれを辿る事で動きを予測するのだが、ガルルモンが移動の際に通っている茂みがざわざわと揺れる際に発生する雑音が、ガルルモンの両肩から生えている希少金属レベルの硬度を持った体毛の刃が、周囲の木に傷を刻み込む際に発生する摩擦音が、足音の位置を特定しようとするミケモンの聴覚を邪魔している。
だが、だからと言って目だけには頼れない。
相手は四足歩行を基本とし、
当然、ミケモンは自身の攻撃を当てるために接近する必要があるのだが、普通に追いかけて殴ろうとしても避けられて隙を作るのがオチだろう。
だが、ガルルモンが
それも、現状ではガルルモン相手に狩られ兼ねない三人が、次にガルルモンが攻撃してくる可能性のある『標的』として存在している状態でだ。
故に、ここで取るべき選択は一つ。
速やかに現在居るメンバーを一箇所に集め、十分に迎撃出来る状態を整える事。
「おいエレキモン。そんな所に居たら恰好の獲物だぞ。早くこっちに合流しろ!!」
実を言えば、一箇所に集まった所をガルルモンが種族特有の『必殺技』を使う可能性もあり、それを使われると、被害が個々の領域を越えて環境にすら影響を及ぼしかねない事もミケモンは知っていた。
だが、あのガルルモンには本能的とはいえ『戦法』を行えるだけの理性が、当時ユウキ達を襲っていたモノクロモンとは違って、ある程度残されている可能性が高い。
そして、野生が引き起こす本能は、決して『自分が危険に遭う選択』を取る事は無い。
故に、この状況で『必殺技』を使ってくる可能性は、余程狂気に蝕まれていない限りは有り得ない。
「言われなくても分かってるっての……!!」
苛立ちを含んだ声でエレキモンがミケモンに応えると、エレキモンは周囲を警戒しながらこちらに向かって四足で駆けて来る。
後は、一度の迎撃につき複数の攻撃をくらわせてやれば、最小限の実害で事を済ませられる――はずだった。
「っ!?」
突然、隣の茂みの方から太い棒状の何かが突き出され、エレキモンに向かって迫り来たのだ。
エレキモンは何とか反応し、間一髪の所で後ろに跳躍する事で直撃を免れようとしたが、棒状の物体は突き出された状態から更に動き、その直ぐ横へ回避行動を取っていたエレキモンを叩き飛ばした。
「エレキモン!?」
それを目撃したベアモンが叫び、思わずエレキモンの飛ばされた方へと走り出すが、同時に少し離れた場所で茂みが揺れる。
「!! ベアモン、左の後方から来るぞ!!」
ミケモンが叫び終わった時にはエレキモンを狙って、ガルルモンが茂みの方から飛び掛ってきていた。
エレキモンが飛ばされた方へ走っていたベアモンは、仲間思いな性格が原因で、その接近に気付く事に遅れてしまう。
「!? うわぁッ!?」
ベアモンが半ば反射的に転ぶような体勢を取った事で、牙を剥き出しに飛び掛ってきたガルルモンはベアモンの体を飛び越える形になってしまったが、その直後、ベアモンは自分の行動に後悔を覚えた。
何故なら。
ベアモンが走っていた先では、謎の物体に叩き飛ばされたエレキモンが山道を転げ落ちている最中なのだ。
当然、
「ベア……ロールッ!!」
ベアモンは、何らかの策を思考する間も無く、追い掛けるために走る途中で
その場に取り残される形となったユウキとミケモンも、エレキモンを助けるために追いかけようとしたが、それは出来なかった。
偶然にも、道を塞がんとする一体の大きなデジモンが、茂みの中からゆっくり現れていたからだ。
「……こんな時に……ッ!!」
ユウキは思わず、歯を噛み締めていた。
視界に入ったデジモンは、全身が枯れ果てた大木のような形状をしており、明らかな殺意をこちらに向けて襲い掛かろうとしている。
早急に倒さなければ、ベアモンとエレキモンの身が危ない!!
「チッ……とっとと倒すかすり抜けるかして、アイツ等を助けに行くぞ!! そうしねぇとマジで危ない!!」
一方の二人の目の前に存在する障害物の名はウッドモン。
一方の二人を襲い掛からんとしている獣の名はガルルモン。
状況は、過去最高級に切羽詰っていた。
NG? こんな状態で書けるわけが無いじゃないですか←←
と、いうわけで、第一章のボス(予定)となるガルルモンとウッドモンの同時エンカウントとなります。
いやぁ、地域に合わせて自然なデジモンを登場させて、その地域を『本当に歩いている』ような描写を自然に入れるのは、ホントに難しいです。山道なんてまず歩いた経験が無いので、殆ど妄想で描写するしか無いわけですし。
でも、環境とかを意識すると今度はキャラごとの心理描写が薄くなりがちに感じるジレンマ。こういうのは一話一話で『どちらか』に偏らせるべきなのか、それともやっぱりバランスを取るべきなのか……ぬぐぐ。
出来るなら、第一章が終わった後に『第一章外伝』的な感じてギャグ短編を入れたい。本編ずっとシリアスだからギャグシーン入れようにも中々入れにくいですし。
……あ、後で活動報告にてちょっとした割と重要な意見を申そうと思うので、お時間のある時にでも案を入れてもらえればうれしいです。
では、次回もお楽しみに。感想・質問・指摘など、こちらもいつでもお待ちしております。