DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語 作:紅卵 由己
と、いうわけで色々と今月は大変でしたが、本編最新話です。めっさキツイです。
今回の話は、クオリティの向上を意識した結果、文字数が8000の大台に乗りました。
そして、今回の話は序盤で作者自身がかなり書きたかった話の一つです。見れば分かるかと思います。
では、前口上はこの辺にしておいて、本編をお楽しみください。
山の斜面というのは、その山の高さと広さによって角度が成り立っている。
この『滝登りの山』は、その名の通りに『滝』が形成される場所があり、中腹付近では単なる川がよく見受けられるものの、水が流れる元となった位置である頂上付近では、当然ながら山の大地の傾きが激しい部分も存在する。
エレキモンが叩き飛ばされ、その勢いのままに転がり落ちている坂道は、少なくとも普通に歩いて登る事が出来るレベルの坂道。
だが、それでも緩やかなものでは無く、打撃の威力と坂道の斜角は、ゴロゴロと転げ落ちるエレキモンの体に鈍い痛みとヒリヒリとした痛みを奔らせ、視界と意識をぐらぐら揺らす程度の勢いを与えるほどだった。
冷静に思考する事も、強引に打開する事も出来ないままエレキモンは坂を転がり続け、やがて進行していたルートの先にあった一本の樹木に(思いっきり縦の回転をしながら)激突する形で、ようやくエレキモンの動きは止まった。
「っ……ぅあ……!!」
後頭部に奔った鈍い痛みから蹲り、泣きそうなほどに弱弱しい呻き声を漏らすエレキモン。
だが、その痛みが治まる間も無く、次の脅威が迫ってくる。
明らかな敵意と、狂気に近いほどの殺意を含んで突然襲い掛かって来た、ガルルモンと言う名の黒く鋭利な体毛を持った一匹の獣だ。
ここまで走って来た勢いのまま跳躍し、回転しながら自分に向かって来るガルルモンを見て、何とか反射的に横の方へエレキモンは回避運動を取る。
間一髪で避ける事に成功したが、エレキモンの後方にあった樹木はノコギリによって斬られたかのような激しい音を発生させながら倒れ、辺りの地面を静かに揺らしていた。
もし回避に成功していなかったら、エレキモン自身があの無慈悲な刃によって体を裂かれていたかもしれない。
それを想像してしまい、ゾッとした冷たいものを背筋に感じてしまうエレキモンに、実行者であるガルルモンが狂気を宿した目を向ける。
やはり、相手を『敵』としか認識していない目だった。
間を空ける事も無くガルルモンは前足ごとエレキモンの居る方へと振り向き、獣特有の唸り声を漏らしながら近づいて来る。
舌なめずりなどはせず、確実に『敵』を仕留めるために。
「っ……!!」
何とか逃げるために足を動かそうとするが、体に奔る痛みがそれを阻害する。
そもそも、ちょっと前に受けてしまった打撃の所為でエレキモンの体力は大分削られていた。
四足で大地を駆けるガルルモンから逃げ切るだけのスピードを出す事など、どう考えても無理な話である。
「ふざけんな……まだ、俺は……!!」
死にたくない。
そう言おうとしたエレキモンを前足で押さえ込もうとするガルルモンだったが、そんな時。
ガルルモンが通ってきた坂道の方から、まるで先ほどまでの自分自身を再現しているように、青に近い黒色の物体がゴロゴロと回転しながらやって来た。
そしてそれ――ベアモンは、回転の勢いを止めないまま体を強く地面に打ち付ける事で跳躍し、ガルルモンの横っ腹に体当たりを直撃させた。
体格差はそれなりにあったはずだが、その重量と坂道によって加速された速度が合わさる事で生まれた衝撃が、ガルルモンの体を3メートルほど突き飛ばした。
それによって、エレキモンは九死に一生を得る。
「エレキモン、大丈夫!?」
「何とか、な……」
ベアモンが、ボロボロになっているエレキモンを見て
突然の奇襲によって距離を置いたガルルモンも、視界に入ったベアモンを新たな『敵』として認識する。
「それよりどうすんだ……!! 何か策はあるのか!?」
エレキモンの声色も、焦りと恐怖で自然と変わって来ていた。
対するベアモンは、何も言わずに気を張り歯を食い縛る。
「おい、何か言ったら――!!」
エレキモンが怒鳴るように問おうとした時、ベアモンの体が青色の輝きを伴うと共にエネルギーの繭に包まれた。
それが『進化の光』である事を、既に進化する光景を二度も目の当たりにしているエレキモンは理解していた。
だが、その進化の繭が膨張する速度は、明らかに遅かった。
理由は単純で、エレキモンにもすぐに分かった。
(さっきぶりってレベルの時間しか経ってないのに、まだマトモに体を休ませる事も出来て無いのに、そんな状態でまた『進化』を発動したら……!!)
不安が思考を過ぎる中、目の前でベアモンの体は大きくなっていく。
幸いにも、目の前の現象を警戒してか、ガルルモンは襲ってくる様子も無い。
そして、モノクロモンとの戦いの時と比較して倍近くの時間を経て、繭は砕かれた。
中からはベアモンでは無く、その進化形態であるグリズモンが現れガルルモンと相対する。
「ベアモ……グリズモンッ!!」
思わず友の名を叫ぶエレキモンの目の前で、グリズモンは一気にガルルモンの居る方へ向かって四足で駆け、両方の前足を使って押さえ付けようとした。
だがそれは空を泳いだだけで、ガルルモンを捕らえる事は出来ず。
逆に、後ろに跳躍する事でグリズモンと距離を置いたガルルモンが、隙を見せたグリズモンに向かって飛び掛ると共に、空中で回転する。
「ガルルスラスト!!」
ガルルモンの技の一つ――両方の肩口から伸びているブレードを使って標的を寸断するその技を、グリズモンは両前足に装備された防具で受け止める。
だが。
「……ッ!!」
徐々に、グリズモンが装備している防具に鋭利なブレードによって多くの傷が付けられ、その耐久性をどんどん削られていた。
まるでそれは、グリズモン自身の体力が限界に近づいている事を示しているようでもあって。
今にも崩れ落ちそうな体を、気力で支え込んでいるだけに過ぎない事を示していた。
「こんの……ッ!! いい加減にしろおおおおッ!!!」
グリズモンは吠えると共に力技で前足を振りぬき弾き飛ばすが、ガルルモンは回転しながらもあっさり四足で着地すると、即座に茂みのある方へと駆け出して行った。
決して、グリズモンとエレキモンを見逃したわけでは無い事ぐらい、当たり前だった。
(……マズイ。このままじゃ、グリズモンでもガルルモンを退ける事が出来ねぇ……)
同じ獣型のデジモンでも、双方ではそれぞれ特化した能力が違う。
グリズモンは、爪や牙に秘められた殺傷性と、抜群の格闘センス。
ガルルモンは、四足歩行の敏捷性と、獲物を確実に仕留める正確性。
この状況においてグリズモンの能力が発揮されるには、ガルルモンとの距離を詰める以外に無い。
だが、ガルルモンはそれを知ってか否か、それとも視界に入っている重量級の前足――『熊爪』を警戒してからか、奇襲するその時までグリズモンの攻撃範囲から大きく出ている。
グリズモンには、万全の状態ならばどの方向から奇襲されても対応出来る能力が備わっている。
だが、今の彼は万全の状態と言うには程遠く、あとどのぐらい『進化』を維持出来るかすら危うい状態なのだ。
タイムリミットは、あと何十秒か、それとも数秒か。
どの道、危険な状態である事に変わりは無かった。
◆ ◆ ◆ ◆
そんな危険な状態にある一方で、ミケモンとユウキはウッドモンと交戦していた。
交戦とは言っても、この戦いで成すべき事はあくまでもウッドモンが立ち塞がっている(つもりで無くとも)先の道を進み、ガルルモンに襲われているエレキモンと、ガルルモンを追いかけて転がっていったベアモンの救援に行く事であり、ウッドモンを優先してまで倒す必要は何処にも無い。
ミケモンだけなら、
だが、この場に取り残されたもう一体――ユウキが突破する事は、現時点では難しい。
ミケモンには野良猫のように身軽で素早い動きをする事が出来る体を持つのだが、ギルモンはその体形から見て分かる通り、四足歩行を行ったり二本の足を使って素早く動く事に適していないのだ。
そして、ミケモンからしても置いていくわけにもいかないため、仕方なくウッドモンを『倒す』選択をしているわけである。
「とっとと行かねぇといけねぇんだ……悪いが押し通るぞ」
早急に決着を付けなくてはいけない状況であるが故に、ミケモンはいちいち相手の出方を窺う事などはせず、即行で攻め始める。
ミケモンの武器は、茶色のグローブに包まれた前足に備わっている硬い肉球に爪と、高い瞬発力を発揮させるための後ろ足。
ウッドモンは自身の武器である棒状の腕をミケモンに突き出すが、ミケモンはそれを横移動で避けると一気にウッドモンの懐へ四足で接近し、顔面の部分に飛び掛るとそのまま前足に備わっている鋭い爪で引っ掻いた。
「ネコクロー!!」
ザシュザシュザシュザシュッ!! と、まるで木工刀で削り取ったかのような音が連続する度に、ウッドモンの体を構成している樹木の体が削れていく。
ウッドモンは苦痛の声を漏らしながらも、自分に取り付いているミケモンをもう片方の棒状の腕で叩こうとするが、ミケモンはウッドモンの体に爪をくい込ませると共に両腕に力を込め、地に足を付けていない状態でありながら、上に跳んだ。
脚力の基点となるものが無いが故に大したジャンプ力は発揮されなかったが、それでもウッドモンの攻撃を避けられるぐらいの高度は跳べており、ウッドモンは自分自身の腕で自分の顔面を殴ってしまう。
空中で回転しながら落下するミケモンは、再びその爪でウッドモンの顔面部分を引っ掻く。
そして地に降り立つと、今度は爪ではなく硬い肉球で一撃。
「肉球パンチ!!」
鈍い音と共に衝撃がウッドモンの目と目の間に炸裂する。
反撃など許さない。思考する時間も与えない。無駄な行動を取らない。
常に自分が『攻める側』に立ち続ける事こそが、戦いにおいて最も優勢に近い立場に居られる方法である事を、ミケモンはよく知っていた。
だが。
「……やっぱり、ジリ貧だな」
ミケモンの爪によって削り取られたり、衝撃によって小さな亀裂を生じさせていたウッドモンの体は、まるで擦り傷が治る光景を高速で見せられているかのように、失われた部分を内部から『成長』させる事で再生されていた。
原型が樹木であるが故に、養分さえあれば最低限の傷は高速で修繕出来るのだろう。
ただの引っ掻き攻撃やパンチだけでは、攻撃力が再生力を上回るのに時間が掛かってしまう。
即座に思考を切り替え、一端ウッドモンと距離を取ったミケモンは、自分の戦闘に割り込むと邪魔になるとでも思ったいたのであろう――先ほどから攻めあぐねているギルモンのユウキに声を掛ける。
「おい、ユウキとか言ったな。手を貸せ、こいつを倒すぞ!!」
「やけに簡単に言ってくれるが、どうやって!!」
「お前の『必殺技』が必要だ。俺がこいつの『腕』を止めるから、最大級のをブチかませ!!」
ギルモンの『必殺技』は、口から強力な火炎弾を放つというもの。
実際、ウッドモンというデジモンはその体を構成しているデータが『樹木』であるが故に、火の属性を伴った攻撃には滅法弱い。
ミケモンの判断は間違っていない。
ただ一つ、ユウキが『必殺技』の『出し方』を分かっていない、という点を除いては。
「………………」
「……おいまさか、記憶喪失だから種族としての技の出し方すら分かってないなんて言わないよな?」
「…………はい」
実際は記憶喪失などではなく本当に『知らない』だけなのだが、なんかもう申し訳なさ過ぎて、ユウキは思わず敬語で謝っていた。
なんてこった、とミケモンは思わず天を仰ぎたくなった。
ウッドモンの両腕が、ミケモンとユウキのニ体に向かってそれぞれ伸び突き出され、会話しながらもそれを何とか避けると、ミケモンは責める事も無くユウキに向かってこう叫ぶ。
「『でかい炎を吐き出す自分』をイメージしろ!! んで、それを実際にやる時、自分の『必殺技』の名前を叫べ!! それが種族として所有している『必殺技』を出すための『キーワード』になる!! 『必殺技』の名前は分かるか!?」
「そっちは何となく分かってるけど、この状況で明確なビジョンをイメージするなんて……!!」
「俺が時間を稼ぐ。だから遠慮せずにやれ!! お前の仲間の命運が掛かってんだからな!!」
「ッ!!」
ミケモンはウッドモンの顔面に再び飛び掛ると共に引っ掻いて、ウッドモンの意識をユウキから外す。
その間にユウキは、何とかしてイメージする。
だけど。
(……そんなの、イメージ出来るわけがねぇだろ!!)
ユウキは、元は人間『だった』デジモンだ。
そんな彼の『経験』に、炎を吐き出すなどという物があるわけが無い。
イメージを形成するには、材料が足りない。
だが、そんな彼の思考を知っているわけもないまま、ウッドモンに攻撃を続けているミケモンは二つ目の言葉を放つ。
「イメージするのは、自分以外の物で例えてもいい!! とにかく頭で考えて、それを表に出す事だけに集中しろ!!」
「自分、以外の物……?」
「さっき戦ったデジモンの事を忘れたわけでも無いだろ!!」
さっき戦ったデジモン。
それがどんなデジモンであったか、ユウキはとてもよく覚えていた。
何故なら、一時間程度しか時間の経っていない、新たな『経験』の元となったデジモンだったから。
(……モノクロモン!!)
その戦いの記憶は、恐怖や痛みと共に根強く『経験』に刻まれている。
力不足からほとんど傍観する事しか出来ず、力になろうとして無様に失敗した、苦い記憶。
それを活かすべき時は、間違いなく今なのだろう。
根強く残っている『実際の』記憶を掘り起こし、それと元としてイメージする。
口を大きく開け、喉の奥から空気ではなく熱気を生成し、その時の感覚を記憶に取り入れながら。
一度、口を閉じる。
目の前の敵を一回でノックアウトさせるための、強大な一撃を放つための『溜め』の動作として。
口の中に篭る熱気はどんどん膨張していき、鼻の穴からも蒸気に似た白く熱い空気が漏れる。
人間の体だったならば、口中どころか顔中が大火傷となっていて大惨事の行為だっただろうが、ギルモンの体であるからか痛みは全くと言っていいほどに無かった。
ただ、やはり呼吸をしない状態を継続しているため、息苦しくなる。
「グ……グ……!!」
ミケモンは、ユウキが『必殺技』を放つ準備を終えた事を確信し、ウッドモンの目元付近を爪で引っ掻き削り取って直ぐに『必殺技』の射線から出る。
ウッドモンは目元の痛みから腕を目元付近まで動かし、痛みを和らげようとしているのかは分からないが痛がる様子を見せ、更に大口を開けて苦痛に満ちた声まで上げている。
いくら再生しようが、樹木そのものである自分の体を傷付けられて『痛み』を感じない事は無いのだ。
そして、自分の体に走る『痛み』の方へと意識を向けているが故に。
そして、結果的に腕を使って視界を封じてしまっているが故に。
そして、ミケモン自身もその状態を狙っていたが故に。
「今だ。撃て!!」
(ファイアー……)
ミケモンの声を聞いた直後、ユウキはずっと苦しそうに溜めていたものを解き放つように口を開ける。
「――――ボオオオオオオオオオオオオオオオルッ!!!!!」
技の名を叫ぶと共に、ギルモンの口内に溜められていた火炎が一個の球を形成しながら放たれた。
放たれた
直後、火球がウッドモンの体の内部で爆ぜた。
よほど火力が強かったのか、爆炎は凄まじい音を伴ってウッドモンの体を内部から焼き尽くし、口元から灰色の煙を噴出させる。
自身の弱点である炎を食らい、ウッドモンは断末魔に似た叫び声を周囲に響かせると共にその場にへたり込んだ。
戦意さえも炎によって灰にされたのか、技を放ったユウキにもミケモンにも抵抗しようとはしない。
勝敗など、わざわざ問うまでも無かった。
「行くぞ」
「……あ、ああ!!」
野生の世界は弱肉強食とは言え、やはり相応の罪悪感は感じてしまう。
ユウキはミケモンにそう言われ、やるべき事を再認識した上でウッドモンのすぐ脇を通り、坂道を下り始めた。
◆ ◆ ◆ ◆
時間がとにかく足りない。
周囲に見える茂みのどこからガルルモンが襲って来るのか、目で追うだけでは判別出来ない。
ただ待つだけでも、グリズモンのタイムリミットは迫ってくる。
「クッ……」
自分自身のタイムリミットを意識するあまり、冷静に戦術を構成する事が出来ない。
攻撃しようにも、その範囲は『技』で拡張しない限りは腕の長さと同じぐらいが限度だ。
そしてこの時も、キョロキョロと周囲を見回すグリズモンの視界の死角からガルルモンが襲い掛かる。
「――――!!」
グリズモンは気配に反応する形でガルルモンの方を向き、何も考えないまま右拳を突き出す。
それが裏目になった。
「フリーズファング!!」
ガルルモンは本能的に技の名を言うと共に、突き出された拳に向かって噛み付き牙を食い込ませる。
すると技の効果なのか、グリズモンの拳がどんどん冷たくなっていき、やがて氷に包まれると共に動かなくなってしまった。
「ッ……ぅらあッ!!」
腕から伝わる激痛に苦痛の声を漏らすグリズモンだが、反撃と言わんばかりにもう一方の左拳を突き出す。
今度は、腕に牙を食い込ませていたがために、ガルルモンはその拳を避ける事が出来ない。
しかし、グリズモンの拳にモノクロモンとの戦いの時のような力強さが宿る事も無い。
ガルルモンは頬に拳を食らい、その威力でグリズモンの右腕から引き剥がされる。
だが、それだけだった。
「ぐぅ……っ!!」
利き腕である右前足から力を感じない。
それどころか、全身からどんどん力が抜け落ちている。
攻撃を受けてしまったのが拙かったのか、グリズモンの膝が地に付くと共に『進化』が解除され、元の姿であるベアモンに戻ってしまった。
既に疲弊していた体を酷使したのだから、消耗した体力は既に気力で補っても補強出来ないレベルにまで削られているだろう。
そして、視界から最も脅威を感じる『敵』が居なくなった事で、ガルルモンは茂みに隠れる事も無く近づいて来る。
そんな光景を、エレキモンは見ている事しか出来なかった。
(くそ……っ)
エレキモンは、悔しさのままに内心で嘆く。
(俺って奴は……ッ!! 何でまた守られてんだよッ!! 何でいつも、最終的には……!!)
力が――度胸が――強さが。
足りないからなのだろうか。
ベアモンやユウキには有って、自分に無い物は何なのか。
(クソったれが……ッ)
涙腺が悔しさに刺激される。
頭の中が色んな感情に塗れていく。
その全てが、今はどうでもよくなってくる。
今求める物は、ただ一つの結果だけ。
(いつまでも守られてばかりなんてお断りだ……今度は、俺が……)
ガルルモンが、今にも倒れ掛かっているベアモンを噛み砕こうとする。
エレキモンは、ベアモンを守るために立ち塞がる。
ガルルモンが構わずに飛び掛った、その時。
「俺が、こいつを守れるような俺になってやるッッッ!!」
光が、煌めいた。
エレキモンの全身が、火花に似たオレンジ色のエネルギーを纏って繭に包まれる。
飛び掛ってきたガルルモンは、それに当たると共に弾かれ距離を離された。
それは色こそ違う物の、ユウキやベアモンが『進化』を発動させる時に出てくる物と同じ物だった。
「エ……レ……キモン……?」
繭の中で、エレキモンの姿が明確に変わっていく。
全身の体毛は赤色から白色になり、孔雀のように広がっていた尻尾は先の方に赤を残して更に広がる。
前足は飛ぶ事に適してなさそうな大きな羽に、後ろ足は体重を支えるための巨大に発達した脚に。
首元では羽毛が一種の髭のように変化した物になり、頭部には薄黒い
そして上顎の部分は黄色く硬化し
――――エレキモン、進化……!!
繭が膨張し、卵に衝撃を加えた時のように亀裂を奔らせると、内部からエレキモン――だったデジモンが姿を現す。
そして、進化した自分の存在を肯定するように、名乗る。
「コカトリモン!!」
ウッドモンの台詞が無いのは、ゴルゴムの仕業って事にしておいてください(投げ槍)。
というのも、元々の設定からウッドモンは狂暴で、台詞として書くとしても『ゴオオオオおオオオオ!!』とか『グギャアアアアア!!』とか何だか軽い台詞ぐらいしか思い当たらなかったので。今回は地の文のみで表現させていただきました。南無散。
と、いうわけで今回の話では、ユウキ――ギルモン念願の『ファイアーボール』習得と、エレキモンの進化の両方をお届けさせていただきました。
これに当たってこんな質問が来ると思っているので、ちょっと自問自答します。
Q「何でユウキはデジモンのアニメシリーズでギルモンが技を出すシーンを見ているはずなのに、明確にイメージ出来なかったの?」
A「あくまで架空《フィクション》としか認識しておらず、それもアニメの絵を見ただけであり、
現実《リアル》の動きと比べると印象に残りづらいから。そしてモノクロモンを選んだのは、同じ『火炎の球を放つ』という共通点があったから」
アニメでカッコいい技を見ても、それを実際に真似出来るかと聞かれれば無理、ってのと似た理屈です。もしくは、ある日突然狼にされた人間が四足歩行のやり方を知らないから戸惑ったりするのにも似ています。
そして、ある人なら気付いたかもしれませんが、この話にもあった技を『受けて』覚えるという部分に関しては『デジモンワールド リ・デジタイズ』の要素をイメージして書いていました。あのゲームは本当に面白いので、最新作であるデジモンストーリーの方も楽しみでなりません。
そして、ある人はやっとという所でしょうか。本編中でのエレキモン初進化です。いかがだったでしょうか?
エレキモンというキャラが本格的にカッコよくなるのはまだ先(だと思っています)が、やはり序盤の内でも彼の心境的なものを表に出さないとな~と思って、今回の進化回では色々と考えた結果、ユウキやベアモンとは違う方向の『感情』を出して進化をさせました。
それが何なのか、読者の方々には分かりますか? 分かったら凄いと思います。
では、次回。コカトリモンはどうやってガルルモンのスピードに対抗するのかをお楽しみに。