DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

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ちょいと間を空けての次話投稿となりました。それでも本編に比べればずっと早いから良かった……。

今回の話でようやく半分を超したって所です(星流さんとのコラボ回の)。まぁこれが終わっても『とあるお方』とのコラボ回が待っているわけなのですが、とりあえず超速で書き進めて今月中にコラボ回は終わらせたい所。無論、クオリティを落とさないように。

星流さんに情報提供を求めても返事が無かったので一人で頑張ってみたら、思いの他書き上げられたスタイル。




異世界にて――『ファンタジーと若者を誘う甘い声』

 

 歩き続けて辿り着いた『城』は、七色の光を放つ水晶によって建てられたものだった。

 

 当然ながら『城』の中にはこちら側の世界のデジモンが住んでいるわけで、信也がユウキ達三人の事情を説明するのに多少の時間を食った。

 

 かつて、ユウキも現在移住している町に住む過程で長老(ジュレイモン)と会話した事もあったが、今回も『その時』と同じようにあっさりと承諾してもらえたようだ。

 

 一息をつくために用意してもらった客室に行く途中に視界に入ったデジモンの姿は、帽子を被った魔法使いや白い羽を持った天使といったファンタジー色の強いものが多く、いかにもこの『城』が神聖な場所である事を端的に示していた。

 

 ベアモンもエレキモンも、そして当然ユウキも、この『城』の風景には圧巻の一言だった。

 

「すげぇなホント……こんな所に来る事になるなんて、人間だった時は考えた事も無かったわ」

 

「凄くピカピカキラキラしてるよね。どうやって建てたんだろう?」

 

「魔法とか言うのを使ったんじゃねぇの? ウィザーモンに似たデジモンとか、結構その手の技術が使えそうなデジモンは多そうだし」

 

 実際の経緯が分かる事は無いだろうが、様々な推測が思考を飛び交っている。

 

 だが、ここに来た目的は見物では無いので、足だけは止めずに歩く。

 

 そうしている内に、彼等を迎え入れるために客室へと辿り着いた。

 

 内装には、ホテル等でしか見られないほどのベッドが複数あって、部屋としては当たり前な壁や窓からも、普段なら見る事も出来ないような豪華っぷりがオーラを成しているようにすら見えた。

 

 庶民(ユウキ)平民(アルス)にとって、天使や魔法使いが当たり前のように住んでいるこのファンタジー空間は、それぐらい凄まじい印象を残してしまう物だったのだ。

 

「うわぁふかふか~っ!! 何これ物凄く気持ち良いよ、何か一気に眠く……」

 

「おいこら、一息つくのは構わないけど、まだやらないといけない事がある事を忘れてないか……って、寝てる!? 早すぎるだろ!?」

 

「まぁ、こいつを起こすのは任せとけ。とりあえずベッドから引き摺り下ろすのが先だが」

 

 数十秒後。

 

 エレキモンによる目覚まし(強度のビリビリ込み)によって一気にベアモンは目を覚まし、その後ある程度の休憩を取ってから、ユウキ達は信也に付いて行く形で客室を出て行った。

 

「何処に行くんだ?」

 

「食堂。とりあえず、連絡を取りたいデジモンが居るからな」

 

 多少の会話を挟んでから、四人は客室と比べて広い部屋の中に長めのテーブルや複数の椅子が設置されている場所――食堂に入る。

 

 そこでは、信也とは違う別の『人間』が一人で何らかの準備を整えていたらしく、椅子に座っていた。

 

 容姿としては、白い制服に青色でチェックのネクタイを付けていて、信也と比べると大柄な物だった。

 

 恐らくは中学生だろうとユウキが推測を立てている内に、その『人間』――ユウキの記憶が間違っていなければ、おそらく神原拓也の仲間で『雷のスピリット』を受け継いだ『紫山順平』という名前なはずの彼が、信也に向けて口を開いた。

 

「信也、通信はもう少ししたら繋がるぜ」

 

「ありがとな。相談に乗ってもらった上に、通信の準備まで任せちゃって」

 

 信也がそう言うと、彼は通信に使うのであろう機械をいじりながら、右手をひらひらさせる。

 

「お前にお礼を言われるほどじゃないって」

 

 言っている間に調整が済んだのか、椅子から立ち上がった少年は信也やユウキ達の方を向く。

 

「それじゃ、俺はエンジェモンの部屋に戻るよ。通信が終わったら呼びに来てくれ」

 

「おう」

 

 互いに必要な分の言葉を交わすと、少年はユウキ達に軽く手を上げてから食堂を出て行った。

 

 信也が椅子に座って機械のボタンを押すと、機械に付いている液晶画面から映像が出現した。

 

 紫色の体毛をした、ウサギに似たデジモン――トゥルイエモンの姿が、それには映っていた。

 

「お待たせ、トゥルイエモン」

 

『信也に、その三人が異世界から来たというデジモンか』

 

 映像上のトゥルイエモンが、信也の横に移動していたユウキ達三人に目を向ける。

 

 説明のため、信也が順番に指し示す。

 

「ユウキと、ベアモンと、エレキモン。で、こっちも説明すると」

 

 途中、信也がユウキ達の方へ顔を向け、映像に映るトゥルイエモンの方を指し示した。

 

「仲間のトゥルイエモンだ。すっごく偉いデジモンの生まれ変わりで、デジモンデータの調査が得意なんだ」

 

 聞いたユウキに、一つの思考が過ぎった。

 

 それは信也の言う『すっごく偉いデジモン』の事だが、端的に言ってもその表現が出来るようなデジモンはユウキの知識上でも少なくない。

 

 そんな中で、トゥルイエモンという種族が一番の興味を(くすぐ)った。

 

 トゥルイエモンというデジモンの世代は成熟期で、その前の成長期の種族として最も該当されるのはロップモンという名のデジモン。

 

 そして、もう一つのキーワードである『生まれ変わり』の指し示す意味を考えれば、それだけで『誰が』生まれ変わったデジモンなのかを予測する事は、この世界の物語を『アニメ』という形で知っているユウキにとって難しくなかった。

 

「ロップモン、で今がトゥルイエモン。次がアンティラモンだから……おお」

 

 ユウキだけが、驚くように言いながらトゥルイエモンの方を向いていた。

 

 当のトゥルイエモンは『さて』と言いながら、まるでドッキリ箱の中身を言い当てられたかのように慌てながら座り直す。

 

 いかにも図星のようにしか見えないが、誰もツッこんだりはしない。

 

『ここ数日の時空のゆがみのデータは純平が送ってくれた。だがまず、君達自身の口から経緯を聞きたい。ゆがみに巻き込まれた時から信也に会うまでの出来事を話してくれ』

 

 まずは、そもそもの事情の聴取から始めたいらしい。

 

 ベアモンとエレキモンの視線が、一斉にユウキの方へ向けられる。

 

 ユウキは軽く息を吐いて、その後に吸ってから口を開く。

 

「そもそも俺が、海に行きたいって言ったのが始まりなんだ」

 

 頭の中で紡ぐ言葉を選びながら、冷静に事実を述べる。

 

 彼――ユウキがどうして海を漂流していたのかという疑問に、ベアモンとエレキモンが共感を示し、ユウキ自身が時間のある時に行きたいと懇願したのがそもそもの始まりである事をユウキ本人が述べ。

 

 海岸に到着し、探索を開始してから時間が経ち、泳ぎ疲れたベアモンとエレキモンが休んでいる間にユウキが『黒い渦』を発見し、それが生み出した急な海流に呑まれ、更に発生した高波によって海岸で待機していた二人が波に呑まれ、そのまま『黒い渦』の中に吸い込まれた事実をベアモンが紡ぐ形で言って。

 

 そして、目を覚ますと全く知らない風景が広がっていて、冷静に思考し対処法を模索するためにその場で野宿を決行し、次の日に周囲を探索していたら空から人間が降ってくるのを見たまでの経緯を、最後にエレキモンが背伸びしながら説明した。

 

 そこまで述べた後、次から次へと的確な質問がモニター越しに飛んできた。

 

『目が覚めた時、上空に黒い渦はあったか?』

 

「いや、何も見当たらなかった」

 

『目が覚めた時間は?』

 

「分からない。少なくとも、目が覚めた時点でお昼の終わりぐらいだったよ」

 

『野宿していた場所は?』

 

「目が覚めた地点。さっき言った通り、未知の場所で大きく動くと危険だからな。近くに川も見えてたから水には困らなかったし、食料も木に()ってるのを近くでよく見つけられたから、危惧していた問題も起きなかった」

 

 大体の事情を伝え終えると、横で見ていた信也がこんな事を言ってきた。

 

「なんか、刑事ドラマのアリバイ調査みたいだな」

 

「あぁ、俺も実はそう思った」

 

 残念ながら、刑事ドラマという単語すら知らないベアモンとエレキモンには、伝わらなかったようだが。

 

 その後も経緯などに関する質問が続き、具体的な情報をかき集める作業が続いた。

 

 そして、必要な分の情報を絞り終えたと判断したトゥルイエモンは、満足そうに頷いた。

 

『これだけ具体的に日時が分かれば十分だ。時空のゆがみの記録を元に、一時的なレールを敷けるだろう』

 

「レール?」

 

 その単語には、ベアモンとエレキモンだけでなく、信也やユウキも頭に疑問符を浮かべていた。

 

 レールと言えば、電車などが正確な道順をなぞるために必要な物の名称のはずだが、時空というキーワードに対してどうしてそのような物が話題に出てくるのかを察する事が出来ない。

 

 正解に至る答えを出せない一同を見て、トゥルイエモンは両手を組みながら言った。

 

『レールの上を何が走るのか、聞くまでもないだろう』

 

 言われて。

 

 同時に、二人が反応した。

 

「トレイルモンか!!」

「ああっ、トレイルモン!!」

 

 トレイルモン。

 

 その名の通り列車を原型としたデジモンで、基本的には多数のデジモンを乗せて世界(デジタルワールド)の大地を走る機能しか知られていないが、実際にはそれだけでは無い。

 

 走るための(レール)さえ『そこ』にあれば、宇宙空間だろうが人間の世界だろうが行く事が出来るのだ。

 

 無論、ユウキ達の住んでいる側の世界(デジタルワールド)だろうと。

 

『お互いの世界に負担をかけないため、長時間レールを敷くことはできないが。三人を帰すだけなら問題はない。二、三日待ってくれ』

 

「分かった。じゃあ待ってる間は……」

 

 ユウキの視線が信也に向けられ、その目が示す問いに信也は笑って頷く。

 

「今は敵もいないし、ゆっくり泊まってってくれよ」

 

「いいの!? うわぁ、お城のベッドにおいしいご飯かぁ」

 

「ベアモン。ベッドはさっき見たからともかく、食事の方は妄想入ってるぞ」

 

「え~。エレキモンは楽しみじゃないの?」

 

「楽しみじゃないと言ったら嘘になる」

 

 何故か、信也から歓迎の言葉を向けられたユウキではなく、ベアモンとエレキモンの方が先に喜んでいた。

 

 一瞬にして中学校の修学旅行みたいな空気になり、思うように喜べなくなったユウキは。

 

「……こんな一行だが、よろしく頼む」

 

 微妙な顔をしながら、そう言うぐらいしか無かった。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 そして、それから時が経ち。

 

 外がすっかり月明かりに照らされた夜の風景へと変貌した頃。

 

「あ~、もう食べれない!!」

 

 この『城』での食事でパンパンに膨れたお腹を抱えて、ベアモンは客室のベッドに横になっていた。

 

 そんな彼に対して呆れた視線を向けるのは、やはりエレキモン。

 

「食べるすぐ寝ると、チョ・ハッカイモンになるぞ」

 

 エレキモンの言葉が聞こえているのか聞こえていないのかは分からないが、ベアモンは今にも睡魔に呑まれそうなレベルで呟くだけだった。

 

 デジモンの知識にそこまで詳しく無い信也が、ユウキに対してシンプルな質問をする。

 

「なあ。チョハッカイって、孫悟空に出てくるあれか?」

 

「一応モチーフはそうらしいな。でもチョ・ハッカイモンはブタの着ぐるみ着た女子みたいな格好で、腹すかせるとキレて暴れる怖い奴、らしい」

 

 ユウキ自身、そのデジモンに関してはそこまで着目していたわけでも無いので、思わず曖昧な言葉で返していた。

 

 だが、何やら信也はその返事(特に後半部分)を聞いて、何か心当たりがあるような様子を見せていた。

 

 お腹を空かせると、キレて暴れる怖い女子。

 

 さて、それは誰だったかな、と頭の中でこの世界を題材にした物語の登場人物を思い出そうとするユウキ。

 

 そして、その答えはドアの向こう側から突然やってきた。

 

「失礼しま~す!!」

 

 その人物を視界に入れた信也が、ベッドから思わず飛び上がった。

 

 容姿は金髪で細めの体。

 

 服装は薄い紫色と白色の上着。

 

 白い帽子を頭に被っていて、首の方に青色の宝石が付いた首飾りをかけている。

 

 食堂で出会った順平と同じく、その女の子の姿はユウキの記憶の中にも存在していた。

 

 食事の時にも出会ったが、彼女は『風のスピリット』を継承している、織本泉という名前の子だったはず。

 

「男子部屋だぞ! ノックぐらいしろよな!」

 

「いいじゃない、別に。そもそも何でこの部屋の人じゃない信也が文句言ってるのよ」

 

 なるほど、確かにそういう場面もあったっけ、と思い出したように頷くが言葉には出さないユウキ。

 

 出したら最後、信也と共に『レディーに対して何を言ってるのよ~!!』的なリアクションから、流れでデンジャラスな体験をする事になりそうだからだ。

 

 端的な表現をするなら、風の闘士がヒステリックモードと化して襲ってくるだろう。

 

 口は災いの元なのだ。

 

「何かあったのか?」

 

 一方で、人間と違って男性と女性の概念が身についていないデジモンなエレキモンは、何やら急ぎの用があるのだと認識したらしく、背筋を伸ばして問いを出していた。

 

 違う違う、と言わんばかりに泉は笑って肩をすくめる。

 

「ううん。暇だしおしゃべりに来ただけ。食事の時は私達の話ばっかりで、あまりユウキ達の話聞けなかったし」

 

 誰も座っていない椅子の一つを引き、ユウキや信也と同じように座る。

 

 思えば、食事の時には『彼等』の話を中心に話題が展開されていて、ユウキ側から話題を切り出す事は無かった。

 

 それを思い出すと、ユウキは少し迷いながらも口を開く。

 

「あのさ、信也や泉が初めてデジモンになった時、どんな気分だった?」

 

 信也は空を巡回する際に、ヴリトラモンというインド神話に登場する火竜の呼び名を持ったデジモンに『進化』をしていた。

 

 それはユウキが人間からデジモンに『成った』のとは厳密に言えば違って、彼とその仲間はそれぞれが違う『スピリット』という伝説に登場する十闘士の力を宿したアイテムを所有しており、それと『デジヴァイス』と呼ばれる携帯端末を併用する事で『進化』をするらしい。

 

 ベアモンやエレキモンからすれば、伝説の十闘士と聞いただけでも驚きを隠せずにいた。

 

 その所為か、言葉を聞いた信也が思わず身を引いた事には、偶然にも誰も気付かなかったのだが。

 

 信也が何故か固まっている間に、泉が回答する。

 

「最初は変な感じがしたかな。自分なのに自分じゃなくなっちゃったみたいで」

 

 その言葉には、ユウキ自身も何処か覚えがあるので共感した。

 

 泉が返答したのを聞いて、何気ないフリをしながらも信也は会話に加わる。

 

「そうだなぁ。何がどうなってるんだかって気はしたけど。でも俺、兄貴に近づけたみたいで嬉しかった」

 

 何か思う所があるのか、ポケットの上から『進化』に使っていた端末に手を触れる。

 

 ユウキの知る限り、『スピリット』と呼ばれるアイテムには名と通ずるような意思がある。

 

 彼にとっては、自分を『進化』させてくれる『スピリット』達も仲間と同じか、それ以上に身近な存在なのだろう。

 

「俺はデジモンになれて良かったって思ってる。おかげで知らなかった世界を冒険できてるし、自分が成長していってるって思えるからさ」

 

 だが、信也とユウキの『デジモンに成った』というキーワードに対する認識は異なっている。

 

 一時的なものなのか、恒常的なものなのか、という点だ。

 

 もしかしたら、人間の世界には一生戻れないかもしれない、という不安が彼の中に無いわけが無い。

 

 だから。

 

「俺は……まだ分からない。なりたくてデジモンになったわけでもないし、なれて良かったかなんて……」

 

 その声色は、薄い。

 

 心の何処かで、自分の中の『人間性』が形を凶悪な物へ変わっていくような気がしてならない。

 

 信也も、そんなユウキに対して投げ掛けられる言葉を見つけられずにいる。

 

 そんな時、泉がふと立ち上がり、客室の窓際にあったカーテンを半分開け、窓も開いた。

 

 開いた窓から澄んだ夜風と森の香りが吹き込んでくる中、月明かりに照らされた森を背景に、彼女は振り返る。

 

「きっと、すぐには気持ちの整理なんてつかないわよ。もしかしたら、デジモンになった事を後悔する日もあるかも」

 

 それは、ユウキにも『いつか』はあるかもしれない未来の予想図の一つ。

 

 デジモンに成った事という事実以外にも、様々な不安は思考の中に存在する。

 

 泉が述べたのは、子供にとっては当たり前の前提と、暗い未来の予想図(ビジョン)そのもの。

 

「でも」

 

 だが、そこで泉は言葉を止めたりはしない。

 

 微笑み、優しく言葉を投げ掛ける。

 

「私は、ユウキが『デジモンになれて良かった』って思える日が来ると思うな。素敵な仲間もいるみたいだし」

 

 その言葉に、ユウキは返事を返す事が出来なかった。

 

 代わりに後ろを向くと、話を静観していたベアモンやエレキモンと目が合った。

 

 彼等と出会えたのも、思えばデジモンに成ったからだ。

 

 様々な不安もあるが、出会えたという偶然の運命には今でも感謝している。

 

 いつか、本当の意味でそんな時が来るのだろうか? 考えてみても、今は答えに辿り着けない。

 

 信じて進むしか無いのだろうか、なんて事を考えている時だった。

 

「兄貴!?」

 

 その声は、いつの間にか泉の横から窓の外――厳密には、その下方向に視線を落としていた信也のものだった。

 

 信也の弟と言えば、間違い無く神原拓也だろう。

 

 だが、彼は信也から聞いた話によると『オリンポス十二神のデジモンに連れ去られた』はずだ。

 

「拓也!? どこ!?」

 

「あそこだよ!! 森のそば!!」

 

 必死になって景色の一点を指差す信也。

 

 しかし、そこには誰もいないようにしか見えない。

 

 ()()()()夜風を吸いながら、ユウキも窓の方へ寄り。

 

 見てしまった。

 

(…………あ、れは…………)

 

 思わず邪魔だと言わんばかりに信也の体を真横に押しのけ、ユウキが窓の外を再度凝視する。

 

 そこに、居た。

 

 

 

 人間だった時の記憶の最後に遭遇した、夏の季節であるにも関わらず青い色のコートを羽織った男が。

 

 思わず、手に触れた時の冷たさを思い出して、血の気が引いた。

 

「あれは……まさか……!?」

 

 そこでようやく、言葉を口に出せた。

 

 自分の瞳が獣のような縦線を描いていて、何故か他の者には『それ』が見えていない事実になど、意識を向ける間も無かった。

 

 自分と同じく『何か』を見た信也と共に客室の扉を開け放ち、廊下を走り、外へと駆け出す。

 

「信也、待ってよ!!」

 

「二人してどうしたんだ!?」

 

「ちょ、ユウキ!?」

 

 追いかけてきたのか、後ろの方から順に泉とエレキモンとベアモンの声が響いてくる。

 

 振り返る事もせず、全力で走りながら叫ぶ。

 

「あいつだ!! 俺が、人間世界で最後に会った……何で……こんな所に……ッ!?」

 

 自分達を招く存在(ありえないかげ)に、意識が向いていたからか。

 

 その甘い夜風に混じった、女性の微かな笑い声に、二人は気付いていない。

 

 ベアモンとエレキモン、そして泉は。

 

 森の奥にあるのが罠だと理解した上でも、危険な夜の森に二人だけを行かせないために、追い掛けるしか無かった。

 




コラボ回の第三話となる話は、前回と比べると文量も少し多めになった繋ぎの話となりました。

デジモンフロンティアのキャラも、一応『デジモンに成っている』という共通点が存在しているので、それに対する気持ちの受け取り方の違いみたいな物を描いたつもりです。一時的な物なら変身ヒーローみたいに受け取れますが、恒常的なものの場合は、何か別の物になったというインパクトの方がデカいはずです。多分。

でもアレですよね。とりあえずデジモンに成ってみたいなぁって気持ちは一部の人にもあると思ってます。パートナーデジモンが現れてほしいって8月1日に願う人と同じように、そういう気持ちを抱いているようなお方も居ると思うんですよ。割とマジで。

この小説では結構暗い面を表に出していますが、作者自身も……そうですね、ギルモンかガブモンあたりに成ってみたいなぁなんて。

さて、次の話ではようやく戦闘が書けそうです。『彼女』を相手に彼等はどうするのか。

次回もお楽しみに。感想・質問など、いつでもお待ちしております。
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