DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

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この星流さんとのコラボ回のあとに『もう一人』とのコラボが待機状態なのでガンガン進めますよ~って事で最新話。

今回の話はコラボ回でようやくとなる戦闘回。どうしてもシリアスな話にしか出来ないので、ギャグを書くのが恋しいです(どうせみんなシリアスになる)。

……それにしても、コラボ回になった途端に更新速度が飛躍的に上昇したような。本編でもこんぐらい早ければなぁ。


異世界にて――『亜麻布を纏う女神の誘いと幻』

 夜の森を一人の少年と一匹の竜が走る。

 

 辺りの木々がざわめいても、夜の闇が危険の色を示していても。

 

 それぞれが捜し求めていた相手、という存在の前には何の感慨も与えない。

 

「兄貴!! いるんだろ!!」

 

 窓の方から『何か』が見えていたはずの場所に来たが、信也が呼びかけても彼の知る人間の声は聞こえない。

 

「どこだ!! 隠れてないで出てこい!!」

 

 信也が生き別れの兄弟を探している一方で、ユウキは自分自身の『敵』に挑むように声を上げる。

 

 どうしてこのような場所に来ているのか、という疑問に、何故姿を見せないのかという疑問が追加される中、物音がした。

 

 森という環境を形成する、木々の中の一本-―その裏からだった。

 

 幹の影から姿を現したのは、紛れも無い『人間』の姿。

 

「兄貴!!」

 

 神原拓也。

 

 赤色の上着に青いズボンを着た、信也によく似た――というより信也がよく似た容姿のその少年を見て、信也の顔が(ほころ)ぶ。

 

 信也からすれば、ようやく再会した生き別れの兄弟の兄である拓也は、笑顔を見せながら口を開く。

 

「神原信也。神原拓也の弟にして、炎のスピリットを預かる者。兄を超えるのが目標のようですが、自分の力の伸びにまだ気づいていない様子」

 

 容姿に似合わぬ、大人の女性の声だった。

 

 ユウキにとっては聞き覚えも無い、信也からすれば聞き覚えのあるその声に、二人は理解出来ずに戸惑う。

 

 信也に向けて不気味に笑いかける拓也の姿が再び幹の影に消えると、今度は反対側の方から物音がした。

 

 そちらの方へ視線を向けると、そちらの方には名前も素性も分からない、あの青色のコートを羽織った男の姿が見えた。

 

「お前……ッ!!」

 

 思わず身構えるユウキに向かって、声が投げ掛けられる。

 

紅炎勇輝(こうえんゆうき)。正体不明の男の関与によりデジタルワールドへ飛ばされ、恒常的にデジモンの姿を取るようになっている。スピリットによるものでもないようですし、大変興味深い」

 

 拓也の時と同じ、女性の声だった。

 

 信也だけでなく、ユウキの本来の名前や細やかな事情も知るその声の主に対して、ユウキは目を細める。

 

「何でそこまで俺の事…………」

 

 ありもしないはずの出来事だったからか、違いを理解する事は難しく無かった。

 

 実際に会って恐怖を味わった事があるからでこそ、分かるのだ。

 

 気配に、自分の防衛本能が働かない。

 

「……あの男じゃないな。誰だ!!」

 

 その叫びに似た声に男はほくそ笑みながら、またも幹の陰に隠れる。

 

 二度に渡って現れた幻影は、それぞれが二人にとって重要な人物だった。

 

 第三者の視点から理解するには、二人の事をずっと観察している必要がある。

 

 つまり。

 

(……この幻影を作り出してる奴が、あの時の……!!)

 

 答え合わせをするかのように、木々のある方とは別の方からデジモンが現れる。

 

 今度こそ、まがい物の幻影では無く、正真正銘二人にとっての『敵』が、姿を現す。

 

 背は高く、両腕以外は白く大きな布で覆われていて、顔の上半分も同じく布に隠されて見えず、(すそ)には白い百合(ユリ)の刺繍がされ、右側には背中から張り出している孔雀の羽が見えている――と、神々しさを感じさせる人型のデジモンだった。

 

 そのデジモンの名前を、ユウキは知らなかった。

 

 だから、知っている信也の方が名前を言った。

 

「オリンポス十二神族の一人、ユノモンか」

 

 ユノモンと呼ばれたそのデジモンは否定もせず、布で隠れていない口で微笑んだ。

 

 オリンポス十二神という組織に属するデジモンの共通点として、原型となった情報が『ギリシャ神話』という文章から掘り起こされた物であり、属するデジモンの全てが進化の最高世代な上で『神人型』と呼ばれる種族に君臨している。

 

 ユウキの知る限り、まだ8体までしか情報が出ていなかったはずだが、どうやらこちらの世界では全ての席が埋まっているらしい。

 

 名前の元となった神は『ギリシャ神話』で『ヘラ』と呼ばれ、一方で『ローマ神話』では『ユノ』と呼ばれている存在だろう。

 

 推測を立てている内に、ベアモンやエレキモンと泉が追い着いてきて、ユノモンの姿に足を止めた。

 

 最初にベアモンが、警戒心と言う名の敵意を向けながら問う。

 

「君が、ユウキと信也をここに連れてきた張本人?」

 

「察しが良いですね。けれどそんな敵意のある目で見ないでいただけるかしら。あなた達三人をどうこうするつもりは無いのです」

 

()()()()()()、か」

 

 ユノモンの返答を、エレキモンが静かに復唱する。

 

 窓から見えた二種類の幻影は、信也とユウキにしか見えていなかった。

 

 見せていたユノモンの意図を考えても、どうやら信也とユウキ以外に手を出すつもりは無いらしい。

 

「つまり、狙いはユウキと俺って事か」

 

 信也がそう言うと、ポケットの中へ手を――伸ばそうとした所で、咄嗟に手を引っ込めた。

 

 その手に生じた浅い切り口を見た後、ふと地面を見てみれば孔雀の羽が一本刺さっているのが分かった。

 

 信也にもユウキにも、他の三人にも、あまりにも速いその攻撃に反応する事は出来なかった。

 

 首か眉間でも狙われていたら、殺傷能力の度合いから見てもそこで生が終わっていたかもしれない。

 

 そして、その攻撃――――と言うより制止に近い行動に出た当のユニモンは、信也に笑みを向ける。

 

「そう焦らなくても良いでしょう。しばし、お話しませんか?」

 

 人間や獣の敵意や都合など気にも留めていない、まさしく神と呼ばれる者に相応しい余裕と優先順位。

 

 興味を持たれているらしいが、明らかにナメられていた。

 

 信也は思わず奥歯を噛み締め、ユウキも無意識の内に唸り声に近い音を漏らしている、が。

 

 こちらの都合を通してもらわない限り、先ほど放った羽が肌をまた裂くぞと暗に言っているようにも思えて、仕方なく相手の意見に従うしか無かった。

 

「話って何だ? なぜ俺の事を知っている?」

 

 最初にユウキが問うと、ユノモンは当然の事のように答えを述べる。

 

「私は情報を蓄え続ける存在。あなた達がこの世界に落ちてきた時から、拝見していました」

 

「俺達が話してた事も全部聞いてたのか」

 

 その回答に、エレキモンは言葉を吐き捨てる。

 

 他人のくせに、興味本位だけで踏み込んでくるその姿勢が、どうしても気に入らない。

 

 神話や宗教における人間と神の関係性というのも、神は基本的に『天界』と呼ばれる場所から人間を傍観していて、人間は祈祷や舞踏などの行動によって神に『交渉』し、それに応えるのかそれを突っぱねるのかも神の意志によって決定される。

 

 時に、人間側の都合に合わせて災害や疫病から救う事もあれば。

 

 時に、神の都合に合わせて災害や疫病を(もたら)す場合だってある。

 

 ユノモンというデジモンの都合が『情報を蓄え続ける事』と設定されているのなら、信也やユウキに関する事で自分の知りたい事を知るためならば、本人達の都合より自分の都合を優先するのかもしれない。

 

 信也が、それを裏付ける問いを出す。

 

「あんた、前から……ユウキ達が来る前から、俺達の事、監視してたな」

 

 その事実に、信也だけではなくユウキですら胸焼けがした。

 

 ユノモンは問いを出した信也へ視線を向けながら、答えを返す。

 

「最初から全て見ていたわけではありませんが。戦闘は全部見ていましたし、この木のエリアにあなたが来てからは、そう、ずっと」

 

 信也は、疑問を覚えた。

 

 ユウキは、寒気を覚えた。

 

 ユノモンの視線は信也の顔に向けられたまま少しも動かず、その桃色の唇からは()()ない言葉だけが溢れる。

 

「ええ、神原信也、あなたです。自分では気づいていませんが、あなたはスピリットの力を引き出すことに非常に()けている。秘めている可能性は計り知れない。これほど相手の事を調べたくなったのは久しぶりです」

 

 信也は、思わず荒い息を吐いていた。

 

 自分以上に自分の事を知っている、という事実に息を詰まらせてしまう。

 

 ユノモンの視線が、今度はユウキの方にピタリと止まる。

 

「そして紅炎勇輝。異世界からの迷い人についても部下に調査させていましたが、あなたのような事例は初めてです。スピリットやデジモンの力にも頼らず、恒常的に人間がデジモンの姿を取っている。どうしたらそのような事象が起こりうるのか、興味をそそられます」

 

 ユウキの瞳の縦線が更に鋭くなり、口の中に篭る熱が強くなる。

 

 自分の心に、土足で踏み込まれた者が見せる怒りの表情だった。

 

「俺はお前の実験体(モルモット)じゃない……ッ!!」

 

 搾り出されたその言葉を聞いても、ユノモンの微笑みは変わらない。

 

「私はウルカヌスモンのような無粋な神ではありません。調査の為に無闇にあなたを傷つける真似はしませんよ。……その調査の中で、あなたが人間に戻る方法も分かるかもしれません」

 

 そんなわけが無い。

 

 そう分かっているつもりでも、言葉に対してユウキは目を見開いてしまった。

 

(……人間に戻る、方法……?)

 

 それが分かれば、今までの暮らしが戻ってきて、家族や友達とも再会出来るのか。

 

 甘い話だと理解していても、心はグラグラと揺れ動いてしまう。

 

 何が正しいのか、判断がつかなくなる。

 

 別世界の住人とはいえ、ユノモンの情報量は本物だ。

 

 数多に存在する情報の中から、人間に戻る――だけではなく、人間の世界に戻るための方法だって分かるかもしれない。

 

 少しずつ、思考が誘導されていく。

 

 敵意がどんどん萎んでしまう。

 

(……俺は……)

 

 

 

 

 

「ふざけるな!! 僕達を出刃亀(ストーカー)してた奴の言う事なんて、信じられるもんか!!」

 

 ベアモンの大声が聞こえた。

 

 眠気から覚めるように意識が正常へ傾き、冷静に思考するだけの機能が戻っていく。

 

「だな。敵であるはずのお前が、ユウキの世話を焼くはずがない」

 

 エレキモンが腰を落としながらそう言った。

 

 そう、考えてみれば、そんな甘い話があるはずが無いのだ。

 

 ユノモンが持っている情報は、あくまでも『こちら側』の世界でのみ手に入れた物。

 

 ユウキ達の生きる『あちら側』の世界の情報を持っていない以上、それは真実に至る事も無い。

 

 何より、仲間の目の前で、決めた事があるから。

 

 それまでの甘く救いの見える思考を振り払い、顔を引き締めて、ユウキは真っ向からユノモンを見据える。

 

「ああ。これ以上他人に俺の運命を左右されてたまるか。自分の謎は自力で解決する!!」

 

 泉が、信也の肩に手を乗せる。

 

「で、信也はどうするの?」

 

 問われた信也は大きく息を吸い、吐いた。

 

 その顔に不敵な笑みを浮かべながら、目の前の亜麻布を纏う女神を見据え、言う。

 

「俺は最初っから戦う気満々だ。それに、俺が強いって事は俺が一番よく知ってる」

 

「はいはい」

 

 泉は苦笑し、肩をすくめる。

 

 士気は高まり、一同が目の前にいる亜麻布を纏う女神と対峙する。

 

 しかし、当のユノモンの表情には一切の動揺も見えず、不気味にすら思える微笑みは変わらぬままだ。

 

(……『オリンポス十二神』って事は究極体。この『開拓地(フロンティア)』の世界では、完全体とか究極体の世代がイコール強さの基準に成り得る訳じゃなかったはず。余程の差が無ければ、経験で補える。だが俺達は所詮成長期クラスのデジモンだ。スペックの差で押し負ける可能性の方が遥かに高い……なら、今いるメンバーの中で一番ダメージを与えられる見込みがある奴は……)

 

 互いの様子を窺い、一時の静寂が過ぎる中、エレキモンが先陣を切った。

 

「スパークリングサンダー!!」

 

 エレキモンは尻尾の先端から火花の散る音と共に電撃を放つが、ユノモンはそれを自身の纏う布でいなす。

 

「ユウキ!!」

 

「無茶だけど……戦うしかないか!!」

 

 ギルモン(ユウキ)ベアモン(アルス)の成長期デジモン二体が、推測上では究極体クラスであろうユノモンに向けて駆け出す。

 

 一方は爪を、もう一方は拳を振るうが、ユノモンは布をひらめかせながら避ける。

 

 その動作の意図がダメージを恐れての物なのか、衣装を無駄に傷付けるのが嫌だからなのかまでは分からないが、ともかく究極体クラスのデジモンでありながらも成長期のデジモンの攻撃に対して『避ける』という動作を取った以上、攻撃が当たりさえすればダメージを与えられる可能性がある。

 

 攻撃を避けた際の隙を利用して、信也と泉は今度こそポケットの中から必要な物を取り出せた。

 

 それぞれ赤と紫をイメージカラーとした、彼等の『世界』で『進化』に使われる情報端末――デジヴァイスだ。

 

 信也と泉は、即座にデジヴァイスを持っていない空いた手の周りのバーコード状のデータを発現させると、それをデジヴァイスに擦り合わせるように交差させる。

 

「「スピリット・エヴォリューション!!」」

 

 何かを宣言するような、切り替えるようなその言葉と共に二人の周りから大量のバーコード状のデータが出現し、それぞれの身体を包み込む。

 

 内部で何か起きているのかは、ユウキ達の『進化』と同じように外部からは見る事が出来ない。

 

 しかし、ユウキだけは何が現れるのか分かっていた。

 

「アグニモン!!」

 

 信也が居た場所からは、赤い色の鎧を見に纏い、燃え盛る炎のような髪の毛を生やした人型(ヒューマン)のハイブリッド体デジモン――『火』の闘士ことアグニモンが。

 

「フェアリモン!!」

 

 泉の居た場所からは、目元や脚部などの各部位に薄い紫色の防具が取り付けられ、その名の通り妖精のような羽を背中から生やした、同じく人型(ヒューマン)のハイブリッド体デジモン――『風』の闘士ことフェアリモンが。

 

 それぞれ、太古に存在した原初の究極体デジモンの力の欠片を受け継いだ、強いデジモンだ。

 

「ユウキ、ベアモン、離れろ!!」

 

 アグニモンに『進化』した信也の声を聞いて、ユウキとベアモンが飛び退く。

 

 そして、二人が()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「サラマンダーブレイク!!」

 

「トルナード・ガンバ!!」

 

 アグニモンは全身に炎を纏った全力の回し蹴りを。

 

 フェアリモンは竜巻のように回転しながら放たれる猛烈な蹴りを。

 

 

 

 

 

 ――――それぞれ、ユウキとベアモンに向けて、放っていた。

 

「が……あああああッ……!?」

 

「ぐうううううっ……!?」

 

 少なくとも成熟期か完全体クラスの力を持つデジモンの技を受け、それぞれが呻き声に似た声を漏らす。

 

 予想外の角度から、予想外の攻撃に、予想以上の衝撃が全身を駆け巡る。

 

 何で自分達に向けて攻撃してきたのか、理由さえも想像出来ない。

 

 少なくとも、正常な思考でやった事とは思えない。

 

「なっ、大丈夫か!?」

 

 アグニモンもフェアリモンも、自分の意志で狙ったわけではない、と言っているような反応だった。

 

 思わず攻撃してしまった相手(ユウキ)を助け起こすアグニモン。

 

(あいつ等何をやってんだ……。目の前に、敵は見えてるはずだろ……!!)

 

 そして、エレキモンがこの現象を発生させた発端である()()()()()()()()()()、雷撃を放つ。

 

 電撃がユノモンの背中を貫くと、ユノモンの体が霧のように霧散して消え、代わりにアグニモンが攻撃を受けていた。

 

 そこでようやく事態を認識したエレキモンが、ハッとなったように目を見開く。

 

「悪い!! 今、そこにユノモンが……」

 

 事態を推測していたフェアリモンが、皆に聞こえるように声を出す。

 

「みんな、さっきのは幻よ!! ユノモンが私達を惑わしてるんだわ!!」

 

 その回答に応えるように、ユノモンの微かな笑い声が全員の聴覚を揺らした。

 

 いつの間にか、彼等が戦っている地点よりも離れた位置から傍観の体勢を取っていた。

 

 ふと考えてみれば、ユノモンはユウキと信也をこの場におびき寄せる過程で、視覚や五感に干渉する術を使っていた。

 

 同士討ちを誘発させる事など、朝飯前という事だろうか。

 

 このままでは、同じ事の繰り返しをするだけで戦いにすらならない。

 

「全員!! ここを動くなよ!!」

 

 そんな時、信也(アグニモン)が一声をかけた後、ユノモンに向かって駆け出した。

 

 たった一人で。

 

「アグニモン、危険だ!!」

 

「心配するな!! 十二神族一体なら、俺一人でも叩ける!!」

 

 ユウキが思わず手を伸ばして言葉を飛ばしたが、信也はそう返すだけで行動に揺らぎは出ない。

 

 明らかに、功績から自分の力を過信している者の台詞だった。

 

「くらえ、バーニングシュート!!」

 

 アグニモンはそう言って、サッカーの要領で右足に発生させた火炎の球を蹴り放つ。

 

 瞬間、炎がユニモンを飲み込まんと肥大化し、ユノモンの体を燃え上がらせた。

 

 だけど。

 

(……そんなに甘いわけがない……!!)

 

 ユウキの予想を裏付けるように、ユノモンの体の中へ炎が飲み込まれていく。

 

 同時に、全体的なシルエットが変貌を始める。

 

 ユノモン――――正確には、そう見えていたデジモンの声が、聴覚に干渉する。

 

 

 

 

 

「そんな攻撃で、俺を超えられると思っていたのか?」

 

 信也にとって、それはよく知った兄の声だった。

 

 ユウキにとって、それはこの世界における『主人公』の声だった。

 

 シルエットを覆い隠していた炎が消えると、そこにはアグニモンによく似た体形に、ヴリトラモンの羽や尻尾や武装を持たせたような、二つの特徴をまるまる一つに纏め上げたと言っていいデジモンの姿が見えていた。

 

 アグニモンの体が、思わず硬直する。

 

「アルダ、モン……」

 

 知識として持っていたその名を呟いた時には、既にアルダモンの巨体が彼の視界を埋め尽くしていて。

 

(まず……っ!!)

 

 ユウキがハッとなった時には、既にアルダモンが生み出した超圧縮された炎が爆ぜて、アグニモンの体を刺茂みの向こう側へと吹き飛ばしていた。

 

 見ている事しか、出来なかった。

 

「……しん、や……?」

 

 彼は一体どうなったのだ。

 

 何がどうなって、この結果を招いたのだ!?

 

「ッ……!!」

 

 考えた時には、既にユウキが信也の吹き飛ばされた方向に向かってた。

 

 ユノモンの目的を考えれば、生存はしているだろうけれど。

 

 それでも、目の前の悲劇を前に体は勝手に動いていた。

 

 




 
 ◆ ◆ ◆ ◆
 
 補足説明。

 今回の話に登場したユノモンは、実はコラボ作者さんである星流さんが『公式で登場する前にオリジナルで創作した』デジモンであり、デジモンクルセイダーに登場した個体とは大きく能力が異なっています。

 以下、星流さんの製作した詳細データのコピーです。

 ユノモン

 レベル:究極体
 型(タイプ):神人型 属性 ワクチン
 必殺技 『リリウム・カンディディウム』『マラカイト』
 プロフィール
『オリンポス十二神族の一人で、貞節と情報を司るデジモンである。白い布をゆったりと体に巻き、右の背に金属製のクジャクの羽を持つ。布で顔の上半分を覆っているため、表情は分からない。配下を使って敵味方のありとあらゆる情報を集めている。興味を持った相手については自分から出向いて調査する。その頭脳には今までに調べ上げた情報が全て収められている。

 必殺技の《リリウム・カンディディウム》は敵の五感を狂わせ、敵にとって最も意識している者、あるいは最も恐れる者の姿を見せるという。敵はその幻と戦い続け、自滅していく。クジャクの羽を飛ばす《マラカイト》で自ら攻撃する事もできる』

 とまぁ、こんな感じです。公式設定とは大きく異なっている事がよく分かると思います。ヒステリックモードなんてありません。

 今回の話は、ようやく戦闘になりましたが次の話で戦闘回は終わらせる予定です。

 それにしても、色々と詰め込んでみましたが、星流さんの所のユノモンの能力を三人称で書くと表現が難しいですね……。

 というか幻覚の表現って、三人称で書くと『違和感』とかをどう演出すればいいのか……。

 次回もお楽しみに。

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