DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

35 / 86
 ギャグ要素を多めに振りまいておけば、後々遠慮無くシリアス要素を投与出来る(断言)。

 ここまで投稿が遅れてしまい、申し訳ございませんでした。

 ぶっちゃけた話、コラボ回のオリジナル展開に難産状態で、モンハンとかスマブラとかしてたのが関係無いレベルで執筆が進まなかったのです。

 何とか書き上げられたこの話は、またも『繋ぎ』に近い話なのですが、それでも自分で書けるだけの物は書いたつもりです。

 個人的に書きたい話はまだまだ先な上に、まだ『あと一人』コラボ回を書くお方が残っていて、本編の方はまだ『第二章』になっていないという大惨事な状態ですが、何とか頑張っていきたいです。

(いっその事『第二章』の最初辺りを先駆けで書いておいた方がいいんじゃないかなと思う今日この頃)

 では、始まります。

 ※同日九時半にて、星流さんの指摘で『雷』のスピリットの所有者であるあの少年の名前を間違えていたので修正しました。


異世界にて――『ひと時経ちては時間の有効活用』

 早朝の食堂。

 

 その一室の中に入っている『人間』達と一緒に『いただきます』とご丁寧に口頭で言ってから、朝食の一品であるイエローパンケーキなる料理を口の中に放り込んだ赤色の哺乳類型デジモン――エレキモンことトールは、気軽な口で何か言った。

 

「にしても、お前等『人間』ってのは不思議な生き物だよな。何て言うか、名称が異なってても存在自体はそんなに違う物には感じないっていうか」

 

「まぁ、この世界じゃ僕達もデータだからね。そう思われるのも仕方無いのかも」

 

 エレキモンと『氷』のスピリットを受け継ぐ少年――氷見友樹のそんな和やかさを感じるやり取りを、電撃ドゴビリやら伸縮自在の髪の毛によるたかいたか~いやらでズタボロ状態なユウキは朦朧とした意識の中で聞き取っていた。

 

 ぶっちゃけ、今は『人間』と『デジモン』がどうとかいう問答は本気でどうでも良いのだった。

 

 そんな事よりもうっかり壊してしまった寝室付近のドアと壁とか、未だに柴山純平との間に形成されている気まずい雰囲気の払拭とかをしたい所なのだが、寝起きに発生した突発的ラッキースケベイベントからの一連の出来事から受けた精神的ダメージの回復が追い着いていない所為か、一向に食欲が湧いてこない。

 

 結局、ユノモンから受けた幻覚攻撃の後遺症という事情こそは説明出来たのだが、起きた出来事がきっちり無くなったりするわけでも無い。

 

 傷付いた少年の心は容易に回復したりしないので、ギルモンという種族が持つ羽みたいな形の器官も力無く垂れていた。

 

 彼は本当に遠い目で天井を眺め、力なく口をカクカク動かしながら何かを呟いている。

 

「…………いやぁ、災厄(さいあく)。正直言って、倒したからこんな事になるような要因は無いと思って油断してたのもあるけど、こうも不幸ってのは連鎖するモンなのか。というか本当に最近は心に癒しが来るようなラッキーが少なすぎる。こりゃあその内、唐突にエンカウントした魔王クラスのデジモンにド級の威力な雷を落とされる日も遠くないんじゃないかな…………」

 

「何だかんだ言ってブリッツモンと対等に戦えてたあたり、お前って『進化』すると結構強かったのな。おかげで言葉の割に無事だし、まぁ良かったんじゃないか?」

 

「良くないよ。全ッ然良くないよ。おかげで変な誤解を植え付けられたかもしれないのに、こんな精神状態で飯が喉を通るか!!」

 

「んな事言っても、何か食わないと力が出せないのも事実だろ」

 

 椅子に座りながらも何も口に入れないユウキの切実な嘆きを余所に(スルーとも呼ぶ)、着々と赤色の炒飯を口に運んでいく『火』のスピリットを受け継ぐとある人物の弟こと神原信也。

 

 意気地になっていても体はとても正直で、今もユウキはお腹からぐ~ぐ~と音を鳴らしている真っ最中なのである。

 

 そして、そんな彼へと追い討ちをかける者の存在があった。

 

「ねぇユウキ、それ食べないのなら僕にくれない? 勿体無いし、すごく美味しそうだし~」

 

「渡さねぇよ!? 食欲が湧いてからヤケ食いするつもりなんだから…………おいコラ渡さないっつってんだろォが!!」

 

「だってまだお腹が空いてるんだもんね~!! 世の中早い者勝ちなのさ~!!」

 

「気が早くても迷惑だ!!」

 

 席が隣なのと絶賛放置中である事をいい事に、両手で海賊的強奪(バイキング)を実行しようとする灰色のテロリストことベアモンと、空腹ながらもベアモンの両手から料理を死守しようとする赤色のガーディアンことギルモンのユウキ。

 

 そう慌てなくても飯なら残ってるぞ~、という信也の言葉を余所に両手オンリーの格闘戦に傾れ込もうとする。

 

 食欲という感情が動きに補正をかけている所為か、二人とも普段とは比較にならないほどの手の動きを見せていたりするのだが、二人にそんな自覚は無い。

 

 一方で、そんな二人をサラリと無視するエレキモンは、信也に向けて声をかける。

 

「ところで、まだ俺達が帰るために必要な『レール』が敷かれるまで、あと一日か二日は必要なんだったよな? 俺達は今日何をして過ごせばいいんだ?」

 

「あ~。安全に城の中で過ごしてもらいたい、と言いたい所なんだが。やっぱり何かをしてもらう事になるかな……」

 

「何か、ね……」

 

 エレキモンは、テーブルの上に置いてある皿から冷野菜のサラダ(ドレッシング付け)を摘みつつ、言葉を紡ぐ。

 

「具体的には何すんだ? 労働関連とかならまだ分かるんだが」

 

「ん~、周囲の探索とか、その辺りは俺達の内の誰かがやるだけで済むからなぁ。やる事があるとするなら……」

 

 思考し、ステーキの一切れを口に運んで咀嚼してから、信也はこう言った。

 

「……これからの事を考えて、戦闘訓練(トレーニング)かなぁ……」

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 そんなわけで、朝食の後の運動という建て前による模擬戦のお時間であるのだが。

 

 バトルフィールド代わりに使う事になった城の外の森にて、エレキモンは率直な質問を信也に向けて飛ばす。

 

「なんて事を言ってたけど、お前確か『スピリット』を預けてる最中だったよな。信也、生身で戦えんの?」

 

「どっかの異世界から来たヤツじゃあるまいし無理。というか、武器も何も無い俺が戦うわけないだろ!!」

 

 先日、信也はユノモンとの対決の終盤にて起きた『異変』の原因を調べるため、城に戻ると共に天使の姿を成すデジモン――エンジェモンに、自身がデジモンに『進化』するために必要な『スピリット』を預けていた(ちなみに、ユノモンから受けた幻覚の『後遺症』が出たのはそれぞれ風呂に入った後なので、『そこまで』は信也を含めた一同の五感も正常だったらしい)。

 

 故に、今の信也にユウキやベアモンを相手に出来るだけの戦闘力は無い。

 

 そんなわけで、対戦相手となる別の『人間』も二人ほど同行する事になったのだ。

 

「まぁ、予想は出来たから俺や友樹が相手する事になったんだけど。誰が誰と戦うんだ?」

 

 そう言う少し太めの男の子は、今朝に激闘(笑)を繰り広げた『雷』のスピリットの継承者――紫山順平。

 

「僕はベアモンと戦ってみたいな。何と言うか、気が合いそうだから」

 

 一方で『氷』のスピリットの継承者こと茶色い帽子を被った少年――氷見友樹は、興味を示すような言葉を口にすると、精神年齢的には同等かそれ以下(断定)なベアモンは、訝しげにこんな事を言い出した。

 

「え~、トモキとかぁ……大丈夫なの? 『スピリット』で『進化』するのは分かってるけど、チビっ子相手に拳を握るのは気が引けるなぁ……」

 

「何だかすごく舐められてるようにしか思えない言葉なんだけど、というかチビっ子なのは君も同じだと思うよ?」

 

「何言ってるのさ~。僕から見ると、君や信也だけ背丈も小さいし、何と言うかひ弱そうに見えるよ? 何よりまだまだ幼さが抜けてな~い!!」

 

「それお前が言うの?」

 

 小学五年生(らしい)少年に対してエラそうに腕を組みながら語るベアモンだったが、そんな彼に向けて友樹はこう言葉を返した。

 

「う~ん。とりあえず僕、本当はサンタクロースなんていないって事を理解してるぐらいには君より成長してるよ?」

 

「な…………ッ!!??」

 

 唐突に告げられた言葉に、ベアモンは割と本気で呼吸を詰まらせる。

 

 彼は、何と言うか野生のデジモンと死闘を繰り広げている時みたいなシリアス顔で、反論した。

 

「う、嘘だ……雪の積もる冬の季節に出てくると言われてる『サンタモン』が本当は実在しない存在だって……? で、でもっ、寝床のすぐ傍に文字で書いた物が朝になったらちゃんと届いているのはどう説明するんだ!! 僕は認めないよ、赤い吹くを来てそれなりにスマートな体形の神獣型デジモンの引く『空飛ぶ(そり)』に乗ってやって来る、完全体の人型デジモンは実存するんだ!!」

 

 あれ、友樹の言っているのは現実世界のサンタの事であって、デジタルワールドのサンタの事じゃないんじゃね? と、論点がズレている事に内心でツッコむユウキの事などいざ知らず。

 

 ベアモンの反論を聞いた友樹は、表情を変えずに割と冷酷に現実を告げる。

 

「ベアモン達の住んでいる場所の事とかは知らないんだけど、多分それは『そういう』コスプレをしたデジモンが、真夜中に住んでいるデジモンがちゃんと眠っている事を確認してから家の中に入って、書かれている物を確認した後に頑張って用意して、秘密裏にプレゼントを置いてるだけだよ。事実、前にデジヴァイスで『サンタモン』って調べてみても情報は浮かばなかったし……ねぇ」

 

「…………」

 

 少年の告げた言葉に、どうやら『サンタクロースは実在するんだぜ』的な情報を本気で信じていたらしいベアモンは、両手と両膝を地に着けてがっくりと項垂れる。

 

(……ふ~ん、実在はしねぇのか。割と魔法使いとかが実在するこのデジタルワールドじゃ、その『サンタクロース』ってのが実在しててもおかしく無いと思ってたんだが……ま、特に困るもんがあるわけでもねぇし、いいか)

 

 ちなみにエレキモンはと言うと、ベアモンと違ってすごくどうでもいいような反応だったりした。

 

 なんと言うか、もうこの時点でどちらの方が『子供っぽい』のかは明確になってしまい、二重の意味でベアモンは負けているのだが。

 

 ここでベアモンは、何故か友樹に向けて明確な敵意を向けた。

 

 彼は言う。

 

「……キサマだけは絶対に許さんッッッ!!」

 

「え、え~っ!? どうしてそんな本気の怒りみたいな表情で睨んできてるの!? サンタクロースが実在しない事がそんなにショックだったの!?」

 

「うるさい!! 僕はこれでも夢見てた事があるんだよ……『サンタモン』は実在して、いつか僕が強くなったら家の中に入ってきた所をボコボコにして、橇の中にあるプレゼントを丸ごとゲット出来るんだって……!! 君はその夢をぶち壊しにした。絶対に許さ~ん!!」

 

「外道すぎる!? 純粋な願いだと思ってたら私欲満々じゃないか!! 善意でプレゼントに来たサンタさんをボッコボコにして強奪って、鬼ヶ島にやってきた桃太郎よりも容赦が無いと思うんだけど!?」

 

 完ッ壁に悪役モードに変貌したベアモンが戦闘態勢に入ったのを見て、友樹も何と言うか色々と諦めるしかなかった。

 

 彼は左手にバーコード状のデータを一本円の形で出現させると、右手に持った水色と緑色のダブルカラーな情報端末――デジヴァイスの一部分に接触して擦り合わせ、半分ヤケクソ気味に宣言した。

 

「スピリット・エボリューション!!」

 

 瞬間、友樹の周りに大量のバーコード状のデータが出現し、包み込む。

 

 その光景は先日信也が行っていた『進化』と瓜二つでありながら、抱く印象は燃え上がるような闘志というキーワードと対極な、凍て付くほどの冷たさを現しているように見えた。

 

 無論、その原因はスピリットに宿された『属性』にあり、信也の持っていたスピリットが『火』の属性を持つ一方で、友樹の持つスピリットが宿す属性が『氷』であるからであり、決して彼が冷徹な正確をした少年というわけではない。

 

(確か……友樹が『氷』のスピリットで進化できるデジモンはニ体だったよな)

 

 内部では、少年の体を前後からサンドイッチにするように闘士のデータが張り付いている頃だろう。

 

 ユウキが一人――というか一匹で思考していると、バーコード状のデータは役目を終えたかのように分離した。

 

 そして、少年の元居た場所から『人間』の姿は消え失せ、代わりに雪のように白く『人間』の面影を遺した『デジモン』が姿を現し、名乗る。

 

「チャックモン!!」

 

 チャックモンという名の友樹だったデジモンの姿は、心なしかベアモン――子熊に似た容姿を伴っていながらも人型の形をとっていて、雪で構成されたと言っても過言では無いほど白い全身の各部位には緑色の防具を装着していた。

 

 その姿を見て、ベアモンも拳を強く握り締める。

 

「……絶対に負けないから」

 

「その意気は良いんだけど、原因が原因だから呼応出来そうに無いよ」

 

 ベアモンが先手必勝と言わんばかりに一歩を踏み出すと同時に、チャックモンが右肩に砲門が四つもある砲塔(ランチャー)と、足元に雪原を滑るのに使われるスキーのボードを出現させる。

 

 あっと言う間に戦闘を開始させて森の方へ移動しつつある二人を横目に、一方でエレキモンはユウキに向けて当初の疑問を口に出した。

 

「で、結局どっちが順平と戦うよ?」

 

「俺はちょっと遠慮したいかな…………朝の件があるし」

 

「朝の件?」

 

「エレキモン。世の中には知らない方が良い事だってきっとあるから、その件に関しては何も聞かないでくれ」

 

「?」

 

 事情を知らないエレキモンには何の事なのかを察する事が出来なかったが、とりあえずユウキは順平と交戦するつもりは無いらしい。

 

 仕方無いので、エレキモンは視線を順平に向けて告げる。

 

「とりあえず俺が順平と戦うけど、いいか?」

 

「ああ、俺もそれで構わないぜ。俺もエレキモンに用があったしな」

 

「俺に?」

 

 唐突に告げられた言葉に疑問を浮かべるエレキモン。

 

 そんな彼に向けて、順平は続けて言葉を並べる。

 

「実はちょっと前に、これから戦う十二神族の対策として、今まで俺達がデジヴァイスで『スキャン』した十二神族のデータを元にデジモンの進化プログラムをエンジェモンが作ってくれたんだけどさ。俺達ってただの人間で、それぞれ持ってる『スピリット』でしか『進化』は出来ないんだよ。エンジェモン自身は先の出来事で負傷してるから戦いは出来ないし……」

 

「……それで、お城には闘士と対等に戦えるデジモンが少ないから、俺が試しに使ってみてほしいって事か?」

 

「そういう事だよ」

 

「そりゃあ……まぁ、模擬戦する事に異議は無いんだけどよ……」

 

 エレキモンは右前足で頭を軽く掻いてから、疑うように問う。

 

「十二神族って、お前等の敵なんだろ。そいつ等のデータを投与して、なにかマズイ事が起きたりしないだろうな? 具体的にはバグが生じて命を落とすとか、混じったデータに自我を乗っ取られるとか」

 

「その辺りは何とも言えない。少なくともあいつ等は『邪悪な力』を宿しているわけでも無いし、危険な事は起きないだろうけど、今までそのプログラムを投与したデジモンが居ないわけだからな」

 

「つまり、投与するかしないかは俺が決めろって事か?」

 

「ああ」

 

 話の途中、疑問を覚えたユウキが順平に質問する。

 

「その『進化プログラム』って、もしかして俺が使うとマズイのか? わざわざエレキモンを指定してきたって事は、そうした方が良い理由があるんだろ?」

 

「いや、ユウキが使っても条件にそこまで差は無いと思うけど、エンジェモン曰く『雷の属性を宿したデジモンが好ましい』んだってよ。理由までは分からないけど、エレキモンの方が『進化プログラム』を使うのに適したデジモンらしい」

 

「……俺も一応『進化』すれば電子(プラズマ)の力を使えるはずなんだけど、まぁエレキモンの方が扱いは上手か」

 

 結局の所、エレキモンに判断は委ねられている。

 

 彼は暫し思考し、やがて諦めたように言葉を口にした。

 

「……しゃあねぇな。仮に模擬戦の中でコカトリモンに進化したとしても、十闘士デジモンに敵うとは思えないし、何より俺自身もそれなりに興味があるから……その『進化プログラム』の実用性、試してやるよ」

 

「ありがとな。でも、身に異変が起きたと思ったら直ぐに言ってくれよ?」

 

 順平はそう言うと共に、自身の右手に持った情報端末(デジヴァイス)を左手で操作し始める。

 

 少しして彼の端末から、多重に練り塊り一個の果実のような形をしたバーコード状のデータが出現した。

 

 凝視して見ると『0』と『1』のデジタルな数字が複雑なパスワードでも描くように刻まれていて、それ等が元々はデジモンのデータであった事を示していた。

 

「それが例の『進化プログラム』か? 何か、イメージとは随分と異なってるな」

 

「ああ。エンジェモン曰く、十二神族と果実は中々に縁のある物だったらしくてな。こういう形に整ったらしい」

 

「神話とかでも、果実との関連性は割とあるからなぁ。確かに妥当かも」

 

「でも何と言うか、美味しそうではないなぁ……」

 

 そもそも『人間』が食べるための代物では無いんだが、なんてユウキのツッコミはさて置いて。

 

「じゃあ、どうやって投与するんだ? ていうか、投与した後はどうやって摘出すんだ? 俺のものにしちゃっていいの?」

 

「投与の方法は、果実って外見で分かると思うけどな。で、用が終わったらデジヴァイスで『スキャン』して回収するから。十二神族のデータは『こっち側』の世界としても重要だからな」

 

「そっか。まぁそういう『経験』が得られるってだけでも、俺からすれば十分に嬉しい事だけどな」

 

 エレキモンは順平に近付くと、後ろ足のみで立ち上がり、神人型デジモンのスキャンデータから創り出された果実を両前足で受け取った。

 

(…………すげぇ力を感じる…………)

 

 エレキモンは思わず躊躇したが、一度深く呼吸をした後にその果実を口にする。

 

 同時に、エレキモンの全身がバーコード状のデータで形成された繭の中に包み込まれた。

 

 果実に宿りし神人型デジモンのデータがエレキモンの電脳核に変革を与え、その存在の情報を上書き始める。

 

 コカトリモンに進化した時とは違う、未知の感覚が全身を駆け巡る。

 

 ――――エレキモン、進化……!!

 

 繭の内側で、四足歩行を基盤とした哺乳類のシルエットが、二足歩行を可能とする人型のシルエットに近付いていく。

 

 上半身の特徴は頭部から黒い三本の角が生えていて、首元には赤色のスカーフが巻かれていて、胴部には中心にのみ水色が入った赤色の特異な印が刻まれていて、両腕に装備されたグローブには光を反射し輝く水色の宝石を付けた金色の輪が付いていて、それ以外はただ白い頭髪の『人間の少年』そのもの。

 

 一方で、下半身には山羊のような黒い蹄を持つブラウン色の毛が生えた獣の脚が備わっていて、その足首にも赤色の布が巻きついている。

 

 そして、腰元からは太股を護るための白い防具が取り付けられていた。

 

 率直で語るならば、半人半獣。

 

 だが、その身に宿るのは神の力。

 

 繭の中から電撃を迸らせながら、エレキモンだったデジモンがその姿を現す。

 

「アイギオモン!!」

 

 アイギオモンと名乗ったそのデジモンは、全身を見回して自身の『進化』が無事に完了した事を確認すると、その目を対戦相手へと向けた。

 

 その視線から意図を読み取った順平が、信也や友樹と同じように左手にバーコード状のデータを円の形で出現させると、右手に持っていた青と黄のダブルカラーのデジヴァイスへと擦り合わせる。

 

「スピリット・エボリューション!!」

 

 これまで見てきたものと同じく、多重のバーコード状のデータに姿が覆い隠される。

 

 内部でどういった変化が起きているのか、外部から傍観するだけのアイギオモンには想像出来ないが、どこか身近にある物を感じ取れた。

 

 そう時間も立たない間に、渦状になっていたバーコード状のデータが役目を終え、少年『だった』存在から分離する。

 

 現れたのは、全身の各部位が青と金の色に染まった昆虫のような装甲に包まれていて、頭部からはカブトムシそのものと言っても過言では無い立派な角が存在する、巨体な『雷』の属性を担う闘士。

 

「ブリッツモン!!」

 

 彼は現れると共に、アイギオモンと視線を交える。

 

 互いに、意識の確認を取る。

 

「準備は良いんだよな?」

 

「ああ。子供が相手だからって遠慮はしないからな」

 

 偶然にも、ここにニ体の『雷』の属性を宿す人型を基盤としたデジモンが対峙する事になった。

 

 お互いに『違う世界』に住まう、闘士と神人型の戦闘が始まる。

 




 オリジナル展開って思いのほか筆が進まないや←←

 そんなこんなで登場した、この『コラボ編』限定のエレキモンの進化体ことアイギオモンなのですが、デジモン作品をアニメしか見ていない場合だと、このデジモンの存在を知っているお方は比較的少ないのではないでしょうか。

 彼はスマフォゲームの『デジモンクルセイダー』に登場する主人公的ポジションのデジモンなのですが、正規の進化系譜だと成長期のデジモンはエレキモンとなっているのです。

 そして、この件に関してコラボ相手の星流さんに色々とお伺いした所、登場させられる方法を提示してもらえたので、今回の展開に繋がりました。

 ……まぁ、ぶっちゃけた話、コラボ編で『ようやく』出せた事から察せる通り、本編ではエレキモンの進化ルートにアイギオモンを入れるつもりが無い(分岐含む)ので、このコラボ編を最後にエレキモンが進化したアイギオモンの出番はありません(断言)。

 設定的に『トール』という名前に一番ピッタリなデジモンではあるのですがね……いかんせん扱いにくいデジモンな上に、エレキモンがアイギオモンに進化出来るという設定を知ったのがコカトリモンに進化させた後だったので……(それでも採用したかと聞かれると微妙な線ですが)。

 ちなみに『氷』のスピリットの所有者こと氷見友樹が割と子供じゃなくなってるのは、フロンティア本編終了後の『02』的な物語だからです。詳しい話は星流さんの『デジモンフロンティア02―神話へのキセキ―』をご参照の事。

 では、次回は『雷』同士の対決と…………?




 あ、ベアモンとチャックモンの対決は描写しないと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。