DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語 作:紅卵 由己
去年十二月の更新以来、ニコニコの生主さんとスマブラ対戦したりモンハンしたりで時間が中々取れず、追撃の多忙コンボでここまで更新が遅れてしまいました。
なのでという訳ではありませんが、今回の話はちょっぴり文字数が多めになっております。ざっと8000字ぐらいでしょうか。
『第一章外伝』よりも先にこちらの方を更新した方が良いとも思ったので、前回の時点でそれなりに唐突な展開(想定内)が発生した『第二章』の続きを投稿するに至りました。
では、ずっと退屈な展開に微妙な反応しか出来なかったお方も居ると思いますが、今回の話は一種の通過点というかぶっちゃけこっちの方が『第二章』の始まりっぽいお話です。
タウン・オブ・ドリーム。
繁華街、商店街、地下街、海外の街――そういった『人と建物が集中する場所』を強引に一つの巨大な建造物の中に集約させた結果、様々な国の料理や衣服を専門とした売店が多彩に建ち並び、一種の遊園地と化した施設の名である。
一説では近代化の第一歩として技術を結集させ、いずれは日本で一番科学の発展した観光名所とする予定だとか、各国との友好的関係を築くための巨大なシンボルだとか、トンでもない巨額を貯め込んだ資産家が土地を買い込んで孫のために巨大な遊び場を作ろうとした……だとか、噂話にも種類があったりするレベルでは『今の時代』の日本の中は有名な場所だったりする。
実際、この施設には海外発案な興味をそそる料理だったり衣服だったり、それ以外にも単純に遊び目的でやって来る人間は多く、現にこの施設に足を運びに来た雑賀は、一般のデパートでもよく見る人込みの影響で思うように進む事が出来ずにいた。
走って他人とぶつかってもアレなので、ひとまず早歩きで目的の場所に向かう。
(……にしても、そういや最近は来て無かったな。場所が比較的遠くて来るのが面倒なのもあったが、ちょっと見ない内にまた新しい要素でも取り入れてんのかね)
この施設の変わった特徴に、公式発表の時点でまだ『未完成』であるらしいにも関わらず、有名な遊園地と同クラスかちょっと上レベルの人気を得ている点がある。
単に様々な国の特色を取り入れているだけで無く、それを実現する過程で施された技術のレベルが日本という国の中でも最大級の物(だとテレビでは語られている)だからという理由もあるだろう。
建物の中でありながら天井には立体映像で現実の物かと錯覚しそうな青空の動きが、新種のスポットライトかと錯覚するような巨大な電極(?)によって太陽の輝きが常に再現され、それ以外にもまるで幽霊のように実体を持たない形で様々なアニメや漫画の『キャラクター』が歩いている姿を目にする事が出来る……ように演出するための何らかの映像技術が実用されてたりなど。
実際に『それ』に触ったり話しかけたりする事が出来ないとしても、一方的な自己満足に過ぎないとしても、二次元的な情報は人間の好奇心を刺激する。
まるで、夢の中に入り込んだかのような……それでいて現実に確かに居ると認識出来るからでこそ、不思議な魅力を醸し出して客を寄せているのかもしれない。
(……つーか、一階のカフェとは書いてたが、具体的な店の名前までは書いてくれなかったのは……いやまぁ本当に誘拐犯の仲間なら、位置を特定されるような文面は控えるつもりだったのかもしれんけど)
雑賀が歩いている『タウン・オブ・ドリーム』の一階……というか全階層に共通する事だが、やはり食品や衣服だけに限らず雑貨や書籍関連を含めて売店が多く、その中からピンポイントでメールの送り主の指す場所を特定するのは難しい。
何より、実を言うと雑賀は今日までカフェと呼べるような店に立ち寄った経験がほとんど無い。
コーヒーやスコーン等の上品さの漂う食品より、炭酸飲料とかスナック菓子やらを食らう事が多い『質より量』な思考の持ち主である彼からすると、カフェなんて大人になっても居酒屋とかと比べると立ち寄る可能性がかなり薄い場所だと考えていたのかもしれないが、それでも今回は友人の安否の確認などが掛かっているため、仕方なく来たのに変わりが無いのである。
更に言えば、他の大半がこの『タウン・オブ・ドリーム』に娯楽や食事目的で来ているにも関わらず、明らかに焦燥感に襲われている雑賀の姿は風景から見ても浮いている。
ふと携帯電話を開いてみると、液晶画面に表示された時刻は既に二時の二十七分に移行し、残り時間が三分を切った証拠を示していた。
(……ちくしょう、残り約二分……それまでに探せるのか)
こうなれば人込みとか関係無く走って探すか、と思い始めた時だった。
「やあ」
またも、唐突に。
約十分前に突然流れたメールの着信音よりも緊張を奔らせる声が、背後から雑賀の耳に入り込んできた。
「………………」
雑賀の想像している通りならば、わざわざこの『タウン・オブ・ドリーム』で知り合いも友達も引き連れずに来た自分に話しかけてくる人物は、偶然にも同じ道に通り縋った友達や知り合いか、もしくはメールを送り込んできた人物そのものぐらいだろう。
「いや~、カフェと明記したのはいいけど正確な名前までは書いてなかったとうっかりしてね。だから制限時間過ぎた頃にまたメールで制限時間の延長と店の名前を告げようと思ったんだけど、その前に適当に歩いてたらお前の姿が視界に入ったもんだから、逆にこっちから来ちゃったよ」
恐る恐る、背後を振り向く。
そこで、見たのは。
◆ ◆ ◆ ◆
友達のために奔走している者もいれば、自分の家で無難な生活を営んでいる者もいる。
むしろ、下手に事件に関わろうとして二度と帰れなくなるより、安心を得られる団欒の場に居た方が安らいでいられるから……と述べるとかなり芯の通った理由に聞こえそうなものなのだが――――まるで、そんな事を思っていないであろうと思える人物を目の当たりにしている少女は、単刀直入に目の前の青年に向けて呆れた声で言った。
「……ねぇねぇ、何をしてやがるんだニート兄。
「んあ……?」
言った言葉の内容と言うよりは、言葉を発した制服姿の少女――
彼は一度ベッドの上で背筋(というか体)を伸ばすと、その体制のまま言葉を返す。
「好夢か。元気っぽくて何よりだわぁ」
「だらけてないで質問に答えろや。というか、例の件で中学の時間が削られてるって事は苦郎にぃも知ってたでしょ? いつの話してんのよ」
「いやいや元気ってのはそっちじゃなくてな。やっぱりアレだわ。牛乳のお陰でちゃんと成熟してきデゴブブブーッッッ!!?」
最後まで言い切る前に、苦郎は自身の妹である好務が反射的に放った踵落とし(一瞬パンツが見えそうだったが短パン装備である)を股間に頂戴して悲鳴に近い奇妙な声を漏らす事となった。
股間を押さえて悶絶する兄に向けて、好夢は坦々と言葉を紡ぐ。
「……オトメの何処をイメージしてナニを言おうとしやがってんの?」
「どっ、おぉぅ…………そ、そりゃあ当然そのまな板みた」
「二発目いっくよ~」
「待って!! ガチで潰しに来られたら俺男性から女性にジョブチェンジしちまうからやめて!! 別に好夢が貧乳である事を兄であるワタクシは何も残念に思ってンゴォ!!??」
全然懲りてないようなのでもう一発踵落としをブチ込み、もう本格的に泡とか吹きそうな苦郎に向けて今度こそ返答を促す。
「で、いったい全体何をやってるの? 昼飯は食べたみたいだけど、その後はただ寝てるだけ。この時間に宿題を早くやれとまでは言わないけど、とりあえず枕元にエロ本敷いて寝るのは止めろ。それも三次元じゃなくてニ次元の女物だし……何なの? 昼寝を趣味にしてたらいずれ何も出来ない人間になるよ?」
「ぉ……ぅ……ぇ、えぇとだな……それはアレだよ。昨日辺りに夜更かししてな……それで学校の中でも眠気がすげぇんだわ、これが。だから寝溜めしてんの。それと、そこの保険体育の参考書的なアレはそれで見れるかもしれない夢に影響を与えるためのアイテムな」
「……人間の体って睡眠時間を『溜める』事が出来ない仕組みになってなかったっけ? あと、やっぱりまた夜中までネトゲしてたのかこの兄は。そんなんだからリアルで友達が少ないんじゃないの?」
「現実で生きてくのに必要なのは友好じゃねぇ。一定以上のビジネスマナーと成績だ。それと
「典型的なダメ人間の図じゃん……まぁ、実際成績は良いらしいけど」
苦郎が自室としている部屋の中は少し散らかっていて、少し目を向ける方向を変えてみるだけでも漫画やら小説やらゲームソフトやらが散らばっているのが見えている。
それぞれのタイトルは『デジモンネクスト』だとか『フィギュアウォーズ』だとか色々だが、そういった割と小学生などにもウケそうなタイトルの物以外にも思春期の男子が好みそうな物まで混じっている。
そして、そんな部屋の現状を作り出している張本人は、そんな事を気にしている感じも無く口を開く。
「で、俺にそういう事言うのはいいけど、何の用で部屋に入ってきたんだ?」
「苦郎にぃが最近本当にだらけきってて、それが見てられないから喝を入れに来た。それだけ」
「えぇ~……少しぐらいだらけてていいじゃんか~」
「ダメとまでは言わないけど、苦郎にぃの場合は度を過ぎてんの。昼に帰ってくるようになってから、苦郎にぃはその後の時間の殆どを昼寝して過ごしてるじゃん。ざっと二時間から三時間ぐらいは軽く。受験とかも想定するんなら、もう勉強とかに時間使うべき時期なんじゃないの?」
「ん~……勉強とか面倒くせぇし……てかもう殆どは覚えちまってるしなぁ……」
「その辺りの過信が受験落ちに繋がったら洒落にならないでしょ。いいから起きて、勉強以外でもいいからせめて何かしようよ」
「……………………」
苦郎は、少し考えるような素振りを見せたが。
「……やっぱり無理。もう一時間ぐらい寝させて」
「い・い・か・ら!! 起きて何かしろグータラ兄貴がァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「いや本当に眠いんだから寝かせてよぉ!! つ~かどうしていつも俺が昼寝してると襲撃してくるわけ!?」
「アンタは現実に現れた何処ぞのメガネ小学生か!! 今日こそはその怠け腐り切った根性、物理的に叩き直してやるわーっ!!」
えーっ!! 怠けはしても腐った覚えは一度も無いんですけどーっ!? と苦郎は弁解の叫びを上げるがもう遅く、怠け者の兄とは対極で努力家な上に柔道部所属な少女が極め技の体制に入る。
世の中で、どういう状況を平穏と呼ぶべきなのかは判断の難しい所だが、少なくとも平和と呼べなくも無いかもしれない、そんな変わった兄弟のじゃれ合う光景は青年の「ギブ!! ギブだから許してっていうかそれ以上はマジでいけないーっ!!」という悲鳴と共に流れていくのだった。
◆ ◆ ◆ ◆
そこは、やけに自然の雰囲気が漂うカフェだった。
いかにも高級な木材を使ってますよ~と言わんばかりの茶色いテーブルに椅子、そしてカウンターが設備されていて、入り口でも出口でもある道の両端には、二酸化炭素から綺麗な空気を生み出す事が出来る(らしい)観葉植物の一種が鉢と共に設置されている。
割とこの手の飲食店(特にファーストフード店)では木造のテーブル等を取り扱う事は少ないらしく、明らかに森の中をイメージしたのであろうこのカフェでは、数多くの客が菓子を口にしながら世間話やら身内話やらの談笑をワイワイガヤガヤとまではいかないものの繰り広げている。
その中に混じった二人の内の一人――――頭髪を若干金に近く染めていて、上に紺色のTシャツを着て下に黒色のジーンズを履きこんでいる現役高校生こと
理由は単純。
彼、雑賀自身が置かれている状況そのものである。
「……何これ?」
彼の目の前のテーブルにはこのカフェで最近作り始めたらしいスポンジ記事系の菓子が置かれているが、正直そんな事はどうでもいい。
問題なのは、自分と対する位置に居る茶色に染められた髪の毛にポニーテールの髪型で、衣服としては季節に合った半袖ではなく、生地は薄いようだが長袖でサツマイモみたいな色をした上着にオレンジ色のズボンを穿いている―‐女性の存在である。
メールの事を知っているという事は、雑賀をこのカフェに呼び込んだのは間違い無くこの女性なのだろうが……何と言うか、明らかに物凄く秘密裏に動いてそうなのに関わらず、全身を黒服とかでカモフラージュしているわけでも何でも無く、いかにも『好きで着てますよー』な意味合いしか感じられていない。
その女性は、思わず呟いた雑賀の言葉に疑問符を浮かべると、率直な意見を述べた。
「何って新商品らしいミルクティー味な紅茶ケーキだよ? うぅん、確かにそれっぽい味はするけど全体的にショートケーキの下位互換っぽい感じが拭えない。ていうか原材料が同じ乳製品って以外に茶葉以外の長所が見当たらない!! でもまぁ何だかんだ言っても美味しいから別にいいか」
「別にいいかじゃないよ馬鹿じゃねぇの!? 俺達!! 一応っ!! て・き・ど・う・し!! テーブル挟んで優雅にティータイムに突入している状況がおかしすぎるッ!!」
「なんだいなんだい、情報提供の過程で当然ながらゆっくり会話が出来る場が必要だから、こうして案内しただけじゃないか。こうして目の前でそれなりに成熟はしているつもりな女の子が居るんだから、もう少しゆっくりしててもいいのだが?」
「じゃあ何故に時間制限とか設けたし!? 後、もう外見から分かるけどお前、女の『子』と呼べる年齢は過ぎてるだろ!!」
「馬鹿を言うんじゃない。これでも私はまだ未成年の十七歳だ。それとも何だ、もしも私が背丈の小さい『お兄ちゃん♪』とか猫撫で声で喋ってくるような子だったら対応を変えていたのかな? 案外ロリコンだったのか。これは悪い事をしたと謝罪するべきだろうかね」
「人を変態みたいに呼ぼうとするなこんな公共の場所で!! ……ていうかさ」
本当に『関係者』なら悪い事はやりまくっているだろ、とツッこむ気さえ起きなかったので、雑賀はここぞとばかりに話題を切り替えようとする。
というか、早い所切り替えないとこのままでは貴重なチャンスを弄り話だけで過ごしてしまうかもしれないから、という懸念もあったのだが。
「率直に聞くけど、どうして俺を呼んだんだ? 本当にお前が例の事件を『引き起こした側』に居るんなら、もっと人気の少ない場所に呼んだ方が色々とやりやすかったんじゃないのか」
「おや?」
雑賀の質問に、女性は意外な風に思ったような声を漏らす。
その反応に他でも無い雑賀自身が怪訝な目を向けるが、女性はそのまま言葉を紡ぐ。
「あぁなるほど、まぁ仕方ないか。あくまで現代社会程度のスケールで考えてしまう気持ちが分からないわけでも無いし」
「何?」
「あんまり段取りとかを踏んでてもったいぶっても蛇足だし、まずは事実だけ率直に言おうか。その上で外堀りを埋めていく方が手っ取り早そうだ」
サツマイモカラーなシャツの女性は、自分の側にも置いてあるコーヒーの注がれたカップを口に寄せ、一度苦い液体を口に含んでから言う。
あっさりと。
事実を。
「お前の友達……『紅炎勇輝』は今、この現実世界には存在しない。まぁ死んでいるわけじゃなく、今彼はデジタルワールドに居るのだが」
その、常識を語るような言葉に。
これまで考えてきた前提の全てが頭から抜けていない雑賀は、ただ呆然とする事しか出来なかった。
……この女は、いったい何を言っている?
「……何を言うかと思えば、痛々しい二次元の話かよ。現実とゲームを一緒くたにしても理論の理の字だって出てこねぇぞ」
「まぁ、信じるも信じないもお前次第なのだが」
女性の雰囲気は変わらない。
「現に『紅炎勇輝』は、ギルモン……あ、一応種族設定は理解しているよな? それに『成って』電子情報の世界に居る。……おいおい、まさかどんな人間にもどんな機械にも存在を明かす事が出来なかった『私達』が、たかだか現実の理論『だけ』に留まった連中だとでも思っていたのか?」
「………………嘘だろ、そんなの現実に有り得るわけがねぇ。現にデジモンはホビーやら何やらで出てくる『架空《フィクション》』の存在だろうに」
「なら証明してみるといい。私が今語った、デジタルワールドが本当に『実在しない』という理由を。それが出来るのなら何もこれ以上は言わないし、それが君にとっての現実ならば仕方の無い事だ」
「………………」
証明する以前に、否定する事だけなら簡単なはずだった。
何故ならこの女の言っている事は、常日頃から見る液晶画面の中にも惑星と同等規模の『物理的な世界』があるのだと言っているような物なのだから。
そんな物は、太陽の周りを今も巡っている火星や月ぐらいの物で、大きくても薄い液晶画面の面積には決して存在し得ない。
だが。
「否定出来ないだろう」
「……っ」
簡単なはずの返答が、口から出せない。
「どんな人間でも、心の何処かではこの地球……それだけに留まらず、月や火星などにも自分が暮らしていける、存在出来る『世界』は色々な所が在るものだと思っているものだ。例えば、死者の魂……現実で考えると在るのかも分からないものが向かうとされる『天国』やら『地獄』やら。それがどういう場所なのかを想像した事はあるだろう?」
それは恐らく、現在の文明に浸って生きている人間の殆どに該当している事だろう。
死んだ人間の精神が、生前の行いによって二通りの場所に連れられ、その後に新たな命として転生する……という、確証も事実も存在しないにも関わらず現在も『あるかもしれない』と認識されている世界、もしくは場所。
それだけでは無く、人間は自分の頭でそれぞれ異なる世界を頭の中で想像し、時としてそれを文とし小説として売りに出す場合も多い。
科学が存在せず、魔法やら王国やらによって成り立っていく世界。
一部の人間が超能力とも呼べる特別な力を持ち、それを中心に動いていく世界。
戦争の過程で科学が高度に発達し続けた結果、巨大なロボットが兵器として開発された世界。
どれもこれも、あくまで空想上の産物や個人だけの現実に過ぎず、現実には存在しないはずの世界感。
この女が言っているのは、そういった空想や想像が『実在』している世界が本当にあるという事だ。
それほどまでに人間の常識が通用しない危険な世界に、親友が放り込まれているという事だ。
真実が何処にあるか分からないまま、雑賀はただ問いを出す。
「……アイツは、今どうなっている」
「『彼』は私達の目的に必要なピースの一つだからな。私達『が』殺す事はまず無い」
「……お前等は何がしたくてこんな事をしやがった……」
「流石に目的まで漏らすほど優しくは無いよ」
「……結局お前は何を言いたいんだ……ッ!!」
「単純だよ」
女性はフォークを使って紅茶のケーキを一定の大きさに割って刺して食べながら、気軽な調子に返答する。
「この、ある意味で一種の物語の登場人物の一人でもある君には、一応物語を自分の手で変える権利がある。多分何を言わずとも『巻き込まれる』可能性は高いのだが、下手に逃げられても困るからね。率直に言って、君には既にお友達を助ける事が出来るかもしれない『力』を宿しているんだよ」
「…………」
「だから、どうするのかを今ここで決めてみろ。今ここで聞いた事から目を背けて平穏を享受していくか、あるいは自分の身に危険が及ぶことを踏まえてでも戦いに身を投じるか。その返答次第で、こちらから有益な情報をお前に与えてやる」
「……返答する前に一つだけ確認させろ」
雑賀は、真っ直ぐに女性と向き合う。
「お前は敵なのか? 味方なのか?」
「メールでも書いたはずだが、味方以外。直接的な敵になるつもりも無ければ、味方になるつもりも無い者だよ。一応、利害の一致で組織の一員的なポジションに身を置いているわけだし」
「…………」
不安要素はまだ残っている。
だが、それでも選ぶしか無い。
「……言っておくが、お前等の意思に『従って』選ぶんじゃねぇからな。自分の意志で動く。だから……」
例え、この選択が相手の想像の範疇にあるのだとしても。
「……正直まだよく理解出来てはいねぇが、やってやるよ。だから教えろ、有益な情報ってヤツを」
「そうかい」
対するサツマイモカラーの服を着た女性は、雰囲気を変えずに返答する。
内面の心境を察する事は出来ないが、まるで祝福でもするかのように。
「では、ようこそ。この退屈な現実に貴重なスパイスを与えてくれる『
物語の始まりはギャグ展開で始めるのが読みやすいだとか何処かの超絶恐ろしい執筆スピードなお方が言ってました。
まぁだから今回の展開に至った、というわけでも無く、ちゃんと列記とした意味を持ったお話なのでご安心を。
今回の話で何気に『この作品』の世界感の一種が露になりましたが、現実でも(馬鹿にならないレベルの費用が掛かるでしょうけど)ああいう一種の遊園地は作れそうですよね。某夢の国のアトラクションも物凄くキラキラしていますし、プラネタリウムとかで架空の星空だって作れる時代ですし。
当初『タウン・オブ・ドリーム』という場所の別案の名前には『ドリームシティボックス』なる物もありましたが、それだとちょっと微妙だと思ってこちらの路線に向かわせる事にしました。銃を持っている事が普通だったり色々怖い部分もありますが、何だかんだ言っても外国の街並みってそそられますよね。
では、また次回にて。
ようやっと色々と出来るかもしれません。