DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

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ねんがんの デジモンサイドのプロローグを 更新したぞ!!

と言う事で、今回からやっと……あの世界が登場します。

8月24日追記。

感想を参考に、ところどころに修正を加えてみました。


電子世界にて――『偶然の大物釣り』

 デジタルワールド。

 

 数多の情報のデータが集まって形成されたその世界には、人工知能を持つデータの生物であるデジタルモンスター……略称『デジモン』が生息しており、様々な種が生まれ持った個性を活かして生きている。

 

 そのデジタルワールドのデータの大陸に存在する村の一つ――発芽の町。

 

 丘のある草原の上に建てられたこの村には、木造(きづくり)石造(いしづく)りの扉の無い建物が多く建っており、丘の最上部から湧き水が溝を沿うような形で流れ、滝と川が形成されている。

 

 村には動物や植物など、様々な物を模した姿をしたデジモンが多く住まっており、互いに協力し合いながら暮らしている。

 

 そんな発芽の町の真昼間(まっぴるま)

 

「……ハァ」

 

 片方の手に釣竿を、もう片方の手にバケツを持ち、赤と青の毛並みに九本の尻尾を持った哺乳類型のデジモン――エレキモンが、木造の建物の中に入った途端にため息をついていた。

 

「ぐぅぅぅぅ~……」

 

 彼の目の前には、黒に近いグレー色の毛皮を持つ小熊のような姿をした獣型のデジモン――ベアモンが、気持ち良さそうに寝息を立てていた。

 

 彼からすれば見慣れた光景なのか、エレキモンは頭の痛さを装うように額に右の前足を当ててもう一度ため息を吐くと、ベアモンを起こしにかかった。

 

「おい!! 起きろ寝ぼすけ!!」

 

 最初にエレキモンは、ベアモンの体を揺すって直接意識を覚醒させようとする。

 

「ぐぅぅう~ん、あとごふぅ~ん……」

 

 しかし大して効果は無いようで、ベアモンは器用に寝言でエレキモンに返答しながら眠りの世界にしがみ付いていた。

 

「ったく……おい!! とっとと起きろ!! 約束を忘れて何昼寝してんだ!!」

 

「ぐぅぅ……う~ん」

 

 その様子を見たエレキモンは揺する力を更に強めると、ベアモンは寝ぼけて意識が完全に覚醒していないままで立ち上がった。

 

「やっと起きたか。いつもながら苦労させられる……ぜ!?」

 

 しかし、エレキモンの予想はベアモンが睡眠欲に負けて前のめりに倒れこむと言う形で、文字通り押し倒された。

 

 偶然にも、ベアモンの正面にエレキモンが居たためにエレキモンはベアモンに押し倒される。

 

「あたたかぁ~い……」

 

「こら!! お前には自前の毛皮があるだろうが!!」

 

「ふにゃぁ~……気持ちいい~」

 

 ――ブチッ。

 

 その瞬間、エレキモンは自分の頭の中で何かが切れる音を聞いた。

 

 それが何の音かはエレキモン自身理解出来ていたが、抑えるつもりは毛頭無かったらしい。

 

 よく見ると額に青筋が出来上がっており、体からバチバチ火花(スパーク)が発生しているのがその証拠。

 

「いい加減に……しろやあァァァ!!」

 

「ふぎゃぁぁぁあああ!?」

 

 次の瞬間には、エレキモンの体からゼロ距離で放たれた放電がベアモンに炸裂し、朝のモーニングコールよろしくベアモンは自業自得の悲鳴を上げていたのであった。

 

 流石に電撃を受けた事もあって意識は完全に覚醒し、ベアモンは目を覚ました……のだが、体の方は痺れてガクガクと震えている。

 

 毛皮の大部分から焦げ臭い黒い煙が出ているのは、きっと彼自身が全くの手加減をせずに放電したからだろう。

 

 やがて体が痺れながらも動かせるようになると、うつ伏せに倒れていた自分の体を起こす。

 

 それと共にエレキモンも脱出する事が出来た。

 

「……あ、エレキモンおはよ~」

 

「おはよ~……じゃねぇよ!? もう昼だ!!」

 

「ほぇ? そうなの……?」

 

「……ハァ」

 

 そして、電撃を受けながらもようやく眠りの世界から脱出したベアモンの第一声はと言うと……何とも緊張感の欠片も見えない朝の挨拶だった。

 

 電撃を受けても能天気に時間軸のズレた朝の挨拶が出来る辺り、元気ではあるようだが起こしたエレキモン自身は何処か疲れたような表情をしている。

 

 これがツッコミ役の宿命とでも言うのだろうか、とエレキモンは内心で思いながらもベアモンに状況を説明する。

 

「いいから起きろボケが!! 今日は昼間に釣りに行く約束をしてただろ!!」

 

「………………」

 

「……まさか、忘れていたのか?」

 

「……あっ」

 

 エレキモンの約束と言う言葉を聞いたベアモンの表情が、徐々に焦燥感を帯びていく。

 

 この時のベアモンの表情を例えるならば、前日に完璧に終わらせておいた宿題を、当日に学校へ持っていく事を忘れていた小学生の表情が当てはまる。

 

「……昨日、次の日に釣りをしに海辺へ行く約束をしていただろ。なのに今日、待ち合わせの場所で予定の時間になってもお前は来なかった。だからまさかと思ってお前の家に来たら……このザマかよ」

 

「あ~……」

 

「……何か言う事は?」

 

「……てへっ」

 

 ――カチッ。

 

 ベアモンの可愛い子ぶった返答を聞いたエレキモンの脳裏で、今度は何かのスイッチが入る音が聞こえた。

 

 堪忍袋の尾が切れているわけでは無いらしいが、何故か物凄く気持ちの良い笑顔を浮かべている。

 

 その表情を見たベアモンが本能的に危険を察知するも、既に手遅れだった。

 

 エレキモンは次の瞬間、全身からパチパチ音を立てながらベアモンに、とてもとても(おそろ)しい声で言い放った。

 

「四十秒で用意しな。ただでさえこっちは待ち惚け食らってるんだからな!! これ以上遅らせたら問答無用でスパークリングサンダーをブチかます!!」

 

「鬼!! 悪魔!! 禿(ハゲ)!! サディスト!!」

 

「のんきに昼寝して、一日前の約束を忘れるお前に言われたかねぇぇぇッ!!」

 

 ベアモンは木造の帽子掛けにかけておいた自分の帽子――アルファベットでBEARSと文字が書かれた青色の帽子を逆向きに被り、同じく青色の革で作られたベルトを左肩から右側の腰に、そして手を痛めないための防具として両手にはそれぞれ六つほど巻いていく。

 

 急いでいるせいか、かなりきつめに巻いている所もあれば緩く巻いている所も見える。

 

 そして、部屋の隅に置いてある釣竿を右手に、その隣に置いてあるバケツを左手に持つと共にベアモンはエレキモンと共に用の済んだ家を後に、村の入り口付近へと向かって走って行く。

 

 二匹が立ち去った後に木造の部屋に残されたのは、空洞の中のような静寂と木造の建物特有の木の匂いだけだった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「うわぁ~……!!」

 

「いつ見てもすげぇ……」

 

 村を出て一時間ほどの場所に存在する浜辺のエリア。

 

 強い日光がブルーな海や岩肌を照らし、美しい自然の風景を二匹の目前に現していた。

 

 硬い甲殻に覆われた(かに)のような姿をしたデジモンや、ピンク色の硬い二枚貝のような姿をしたデジモンなど、この付近には水の世界に生きる野性のデジモン達が多く生息している。

 

「この辺りの砂浜ってガニモンとかシャコモンとか、成長期のデジモンが多いから危険な場所じゃないんだよね」

 

「だな。シードラモンとかが滅多に現れない場所だから、成長期の俺達からすれば絶好の釣りポイントだ」

 

 潮の流れる音をBGMに、二匹は持ってきたルアー付きの釣竿を振り被り……放つ。

 

 見事な放物線を描きながら、糸の通ったルアーは海の中に投下された。

 

 後は、得物が食い付くのを気長に待つのみ。

 

「それにしても、お前も中々粋なまねをするよな。普段は川釣りなのに、突然海釣りだなんて」

 

「最近は森の方でも嫌な噂が流れているでしょ? デジモンが狂暴化して、暴れているとか……」

 

「あ~、まぁ確かに物騒だな。でもそれだけじゃないんだろ?」

 

「バレた? 実は単に魚が調達したかっただけだったりするんだよね~」

 

「こいつぅ。まぁそういう事なら、別に何の不満も無いけどな」

 

 あはは、と二匹はニヤけ顔を見せながら笑う。

 

 エレキモンは自分の手に持っている竿を地味に微動させながら一度思考すると、気が変わったかのように話題を変える。

 

「ところでよ、お前は決めたのか?」

 

「決めたって何が?」

 

「これからの事だよ」

 

「??」

 

 エレキモンの問いを聞いたベアモンの頭上に、小さな疑問符が浮かんだ。

 

「聞いた話によると『アイツ』は『あの事件』以来、力を付けるための武者修行の旅に出たらしいじゃんか。お前はどうすんだ?」

 

「……エレキモンも、返答に困る質問をしてくるね~」

 

「気になってたからな」

 

 エレキモンは思った事をそのまま口に出して返答した後、ベアモンの答えを待った。

 

「……僕は、正直言って……ギルドに入ろうと思ってる」

 

「……そうか」

 

 ベアモンの返答を聞いたエレキモンは納得したように軽く頷くと、そのまま言葉を紡ぐ。

 

「お前、外の世界をもっと見てみたいって言っていたもんな。実は俺もギルドに入ろうと思ってる」

 

「え? そうだったの?」

 

「お前とは別件でな」

 

「ふ~ん……お、ひっかかった」

 

 会話の途中、ベアモンの竿にピクピクと反応が現れ、魚が喰い付いた事に気がついたベアモンは竿を持つ手に力を加える。

 

「どっ……せぇ~い!!」

 

 後ろに走りながら一気に竿を振り上げると、突発的な噴水に似た小さな水しぶきと共に魚が海の中から釣り上げられた。

 

「デジジャコかぁ……まぁ、当たったから良しとするかな」

 

 掛かった魚を見て魚の種類を判別すると、ルアーの針から魚を外し、持ってきていたバケツの中に放り込む。

 

 ベアモンの反応からして、目当ての魚と言うわけでは無いのは目に見えて明らかだ。

 

「まぁそんな事もあるさ。そういや狙いは?」

 

「デジサケ」

 

「やっぱりな~……お、こっちもか」

 

 ベアモンの狙っている魚の名称を聞いたエレキモンが予想通りと内心で呟くと、自分の方の竿にも掛かった事に気がついた。

 

「ぐぎぎ……ぐっしゃ~い!!」

 

 ベアモンとは違い、釣り竿を口に咥えて釣り上げるという変わった釣り方を披露したエレキモンは、釣り上げた魚を一目見ると直ぐにバケツへ投入した。

 

「ちぇっ、こっちもデジジャコかよ……」

 

「あはは、そっちもそっちだね」

 

「うるせ~やい」

 

 自分をからかうベアモンの発言に少々イラっと来ながらも、エレキモンは再度釣り竿を海へと投下する。

 

 釣り上げた魚の大きさや美味しさなどを話の草に、釣り上げてはまた釣り上げて、時々釣りのポイントを変えながら、二匹は徐々にバケツの中へと魚を増やしていった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 それから二時間後。

 

 二匹は場所を海水に濡れた岩肌のある地帯へと移っていた。

 

 同じサイクルを何度も繰り返していく内に、気がつくと二匹の持ってきたバケツの中は両方ともいっぱいになっていた。

 

 海水の入れられたバケツの中では魚達が窮屈そうに泳いでおり、後々の事を考えるとベアモンとエレキモンの口元に自然と(よだれ)がはみ出る。

 

「そろそろ帰らないか? もう大体釣れたんだし」

 

「いや。まだ僕はメインディッシュの魚を釣れていないから、もうちょっとやってみるよ」

 

 ベアモンはそう言い自分の好物が当たる事を願いながら、もう何回投下したか細かく覚えていない釣り竿のルアーを海へシュートする。

 

「雑魚ばっかりだもんなぁ。それでも数が多いから、飯には困らないわけだが」

 

「むぅ~……だけど、たったの一匹すら当たらないのはちょっとなぁ……」

 

「お前、引き運無いな」

 

「うるさいよ。このスカポンタン!! 見ててよ、君がびっくりするぐらいの大物を釣り上げてやるからさ!!」

 

 恐らく十回以上は魚を釣ったのにも関わらず、狙いの魚が当たらない事をネタにちゃっかりトゲを刺すエレキモン。そして、その毒に対して同じ毒で対抗するベアモン。

 

(ま、どうせ当たらないと思うけどな。ましてや大物なんて、そう簡単に……)

 

 

 

 

 

 ベアモンの粋がった台詞に対して、エレキモンがそう内心で呟いた時だった。

 

「うおおおお!! 何だか凄い引きだあああああ!!」

 

「……ってはやっ!! マジかよ、竿の方が先に折れたりしないよな!?」

 

 まるで誰かが仕組んだとすら思える見事なタイミングで、ベアモンの釣り竿が大きく(しな)り始めたのだ。

 

 引っかかった魚の引きが強いのか、それとも単に重いからか、腕力に自信があるベアモンでもかなり厳しそうだ。

 

「仕方ねぇ!! 逃がすよりはマシだから、俺が手伝ってやる!!」

 

 そんなベアモンに、エレキモンは文字通り手を差し伸べた。

 

 後ろからベアモンの体を引っ張り支え、大物と思われる魚を逃がさないために強力する。

 

 ベアモンも、それに呼応するように腕の力を強めた。

 

「どっ……こんじょぉぉぉ~!!」

 

 そして、気合の入った叫びと共に釣り竿を大きく振り上げた。

 

 ――バシャァ!!

 

 ――ガァン!!

 

 雑魚を釣り上げた時とは比較にならない水しぶきが上がり、釣り上げられた獲物は派手にベアモンとエレキモンの背後にある岩の方へと叩きつけられた。

 

 よっぽど大きく、そして重かったのか、反動でベアモンは岩肌に背中から倒れる。

 

 その際に後ろに居たエレキモンは、まるでドミノ倒しのように巻き込まれ、ベアモンと同じ姿勢で倒れた。

 

「痛てててて……エレキモン大丈夫?」

 

「俺も大丈夫だ。強いて言うなら、お前ちょっと重いぞ」

 

「ひどっ」

 

 ベアモンは立ち上がり、エレキモンはそれに順ずる形で立ち上がる。

 

 二匹は互いに安否を確認した後、後ろの方へ向けられている釣りの糸を辿ってその先に掛かっていると思われる魚を確認しようとする。

 

「……え? これって……」

 

「どう見ても魚じゃないよな……ってか、コイツって……」

 

 釣り針が刺さっていたのは魚の口では無く、赤色の恐竜を思わせる姿をした――

 

 

 

 

 

 

 

『……デジモン!?』

 

 ――デジモンの鼻の穴だった。

 

 返しの針が全国のサディスティックな人物がよくやりそうな鼻フックのようになっているため、見るからに痛々しいが、二匹からすれば疑問に思う事が多すぎて、思考が追いついていなかった。

 

「……死んではいないよな……?」

 

 エレキモンは恐ろしいものを見てしまったように腰引け気味ながらも、明らかに死んでいるように見えるデジモンの体の中央の部分を右の前足で触る。

 

 体温は……かなり冷たかった。

 

「……体が消滅してないって事は、まだ死んではいないって事だが……この様子だと、かなり危険な状態だな……」

 

「………………」

 

 エレキモンの告げた予測に、ベアモンは目の前で倒れているデジモンを可哀想と思った。

 

 だが同時に、疑問も浮かんだ。

 

 体の形を見るに、水棲型のデジモンでは無い。

 

 だが、自分が生きていた『森』の地域では見覚えも無いデジモンでもある。

 

 どちらかと言えば火山や荒地など、恐竜型のデジモンが生息する地域に適したデジモンにしか見えない。

 

 そんなデジモンが海の中から見つかるなど、どう考えても異常なのだ。

 

「……助けよう!!」

 

「え?」

 

 単に同情心からか、それとも正義感からの行動か。

 

 ベアモンは自身の両手をデジモンの胸の部分に当て、力いっぱい押す。

 

 すると、恐竜デジモンの口から海水が噴き出された。

 

「おい、そいつが何者なのかも分かんないのに助けるのか? もしも悪い奴だったらどうする?」

 

「仮にそうだとしても……見捨ててられないでしょ!! お願い、エレキモンも手伝って!!」

 

 自分の力だけでは助けられない。

 

 そう内心で理解したベアモンは、この場で手を借りられる唯一のデジモンであるエレキモンに、手伝いを要求した。

 

 エレキモンは一度「う~ん……」と深く俯きながら考えたが、やがて腹をくくったように声を上げた。

 

「……だ~!! 仕方ねぇな、やると決めたからには……絶対に助けるぞ!!」

 




やっとの事で登場。

今回登場したベアモンこそ、この小説で第二の主人公のベアモンです。

人間サイドのプロローグがシリアス一直線だったので、デジモンサイドぐらいはギャグを入れても良いよね!! 答えは聞いてない←←

さて、今回の話の最後に出た赤色の恐竜のようなデジモン。

一体何者なんだ……←←

次回も引き続き、デジモンサイドのプロローグをお送りします。

次回もお楽しみに。
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