DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

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お待たせして申し訳ありませんでしたああああああああああああああああああ!!!!

いや~……そりゃあPixivでやっている企画の運営とかデジスト最新作とかスパロボ天獄篇とかあったとは言え、前話から2ヶ月も期間が空いてしまうとは……うわぁ本当に申し訳が無い!! ちくしょうもっと早く書けると思っていたのにしかも今回も物語的にはそんな進んでない気もするしうわあああああああああああああああ!!

……まぁ、そんなわけで最新話なわけですが、ようやくこの『デジモンに成った人間の物語』の設定で(主にネタバレ無しでコラボとかにも使えるものが)解禁出来そうなものが増えそうです。ずっとずっと暖めていた設定を解禁出来るというのは、こういう部分でも利益(自己満足)が出るのもあるので嬉しいです。

では、あまり多くを語っていると退屈だと思いますし、早急に前書きは終わりとしましょう。

では、最新話始まります。



七月十三日――『普通とは何なのか//特別とは何なのか』

 兄である縁芽苦郎の股間を蹴り潰したり関節技で徹底的に悲鳴を上げさせたりついでに(中学生にはとても見せられないレベルの)エロ本を没収したり……妹としてはある意味で一つの大仕事が終わり、兄の私室(寝室と言ってもいい)から出てきた縁芽好夢はそれでも不満が残る心情だったりした。

 

 彼女は自室に戻ると、残ったストレスを発散させるために布団を叩いたりぬいぐるみを抱きしめたり色々とやってみたのだが、やがてテンションが平常値まで低下しきったからかポツリと呟いてしまう。

 

「……空しい」

 

 兄と妹の関係、と聞くと中々に親しいものを想像してしまう人間は多いだろう。

 

 妹である好夢も当然、兄である苦郎の事を本当に好意的に想ってい()

 

 だからでこそだろうが、好夢はどうしても『現在の』苦郎の事を好意的に見る事が出来ない。

 

 朝は朝食を食べて歯を磨き学校に登校するだけ。

 

 昼は『消失』事件が始まる前の場合、昼食を学校で取っていたが、それだけ。

 

 夕方だろうが昼間だろうが、どの道家に帰宅した後は特に何かをする事も無く寝ているだけ。

 

(……前は、もっと……)

 

 いつからこうなったのか、どうしてそうなったのか、そんな理由を好夢は知らない。

 

 妹である自分にも分からないのだから、おそらく他人にも原因は知らされていないだろうと思える。

 

 『何か』を隠しているような気がするが、仮にそれがどんなものであっても、現在の腐った兄の姿を見るのは忍びない。

 

 気を紛らわせるためにスマートフォンを弄ろうとも考えたが、結局『何もしていない』ような気分になると思い、嫌になって中断した。

 

 こんな時、何をすれば良いのだろう?

 

(あの腐肉兄は寝ることに意識が向いてるだろうから、こっちの面倒を見てくれるとは思えない……というか、あんな状態の兄と絡んでたらこっちまでダラけ始めるような気もするし…………うぅ、部活動は例の『消失』事件のせいで夕方まで出来なかったし……)

 

 そこまで考えて。

 

 ふと、好夢は中学生なりにある事を思い付いた。

 

(……よくよく考えてみれば、この『消失』事件が解決されれば部活動の時間も元通りになるだろ~し……そもそも、苦郎にぃがあれだけダラけてるのなら、あたしが支えられるように頑張らないといけないんじゃないの?)

 

 ……いやいや、全体的にあのクソ馬鹿兄貴がダメなだけだろう。

 

 そんな思考が脳裏を過ぎったが、ともかく何をやるかの『切っ掛け』は作れた気がする。

 

(……確か、ニュースで見たけど勇輝にぃも居なくなっちゃったんだっけ……雑賀にぃも、ひょっとしたらもう行動してるかもしれない)

 

 少し考えて浮かび上がったのは、兄が通う学校繋がりで知り合った人達の中の二人。

 

 たまに会っては話もした事はあったし、友達と呼べるぐらいには親しくさせてもらった事もある。

 

 兄は(多分)殆ど意識していないと思うが、少なくとも何も思えないほどに感情が枯れている覚えも無い。

 

 なら、せめて自分にも出来る事をしよう。

 

「………………とは言うものの……」

 

 具体的に、どんな事をするべきだろうか?

 

 努力をする事に躊躇いは無いが、そこに何らかの意義を見い出せないのであればただの自己満足だとも思う。

 

 というか、こういう時にやるべき事は?

 

 周辺の人達への聞き込み――――はやっても然程意味が無く、既に身元調査などは警察が行っているはずだ。

 

 ……実は同じ事を当の雑賀自身も考えていた事に気付くわけもなく、何かをしないとやり切れない気持ちになっていた中学生は、こう結論付けた。

 

(……よし、兄貴をもう一度締め上げて少しは『協力』してもらおっか!! 見た感じあんなだけど、頭脳面では実際役に立ってくれるはずだし!! ここは妹としての立場をフル活用してでも頑張る場面なんだ!! うん、そう考えよう!!)

 

 そんなこんなで(割と一方的に)第一の方針を決定した好夢は、本日二度目となる直談判(本人にとってはご褒美である可能性もあるが)を行うために今一度(ガードの薄い)兄の部屋へと足を踏み入れる。

 

 兄を支えられるようにと思いながらも、何処か目的と手段が入れ替わっているような気がしないでもない。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

なんやかんやで『有益な情報』とやらを与えてくれるらしいサツマイモカラーな衣服の女は、先の流れで注文していたメニューを食べ終えたと思ったら今度は別の組み合わせで何かを注文してきた。

 

「……あの~、テメェ今度は何注文してんの? そもそもどうしてあのどシリアスな流れで新しいスイーツを摂取しようとしてんの? 何なの? 実はドヤ顔であんな事を言っていながら何も考えていなくてたった今になって話す内容を考えてたの? 馬鹿なの? というかなんだその赤色の塊は」

 

「だって何かを食べながらでないとわざわざ談話の場をカフェに設定した意味が無いだろう。何も食べずに会話だけしかしないのなら適当に近場の公園のベンチとかでも事足りるし。うるせぇなちゃんと考えているよ同窓会で一発ギャグ言うと宣言しといて何も言えず恥ずかしい思いをする公務員ではあるまいし。何ってフルーツトマトの焼きケーキだぞ。まぁ、パンやケーキの生地には色々と混ぜられて試される事は多いし、アリなんじゃないかな? 名前は少し違うが原理的にはホットケーキと大差無いし」

 

「もうそれチーズとか加えてマルゲリータで良くね?」

 

「だが割とイケるぞ。うん」

 

 何と言うか、好きで食べているというよりは、新発売だとか話題にもなる異色なメニューを食べる事に好奇心を働かせているのだろうか? 女性として摂取カロリーとかには気を配らないのか、あるいはデザートは別腹とか言うタイプなのだろうか。

 

 ふと、テーブル越しの椅子に座っている雑賀は視線を下へと向けて、何故か自分の方にも注文されていた…………何だろう? 相手側の赤色なトマトケーキも割と異色だとは思うが、こちら側にあるモノは……赤色というか、どちらかと言えば紫に近い色をしているが、どうも紫イモとは違う材料を盛り込んだらしいパウンドケーキだった。

 

 怪訝そうな目を向ける雑賀に気付いたのか、女は軽く解説する。

 

「それはドラゴンフルーツの赤い果肉な品種を使ったからそういう色になっているだけだ。割と『前』はレアだったらしいが、遺伝子技術の進歩で品種の固定化も安定してきてから、日本でも割りと見るようになっただろう?」

 

「……あ~、そういやそんなのもあったな。フルーツとか名付けられてるが、味はどっちかと言うと野菜系じゃなかったか?」

 

「糖度は高くて20度ぐらい。まぁ原産地が『日持ち』させる過程で速攻収穫してて、甘いものが中々出回らなかったからだろうな。その認識は」

 

 軽く食べてみたが、思ったよりも異色な味だった。

 

 少し食べてから女の方へ視線を戻すと、向こうの方も会話を進めるつもりらしく早々に口を開いた。

 

「……で、話を戻すが……えっと、何処まで話したっけ?」

 

「おい、何で忘れてるんだよ。勇輝の奴が『デジタルワールド』に居るとか言って、更には物語の登場人物だとかどうとか、俺にアイツを助けられるかもしれない『力』が宿っているだとか、極め付けに『有益な情報』とやらを引き換えに危険を承知で戦うかどうか決めろと聞いてきて、思いっきり返答した所じゃねぇか」

 

「……そんな分かり切っている事を聞いたわけでは無いんだがな……あぁ、まだ話してもいない状態だったな」

 

 聞いて、言って、そして女は本題を切り出す。

 

「適切な情報を与えるためにもある程度は聞いておくが、まず第一に、お前は自分自身が『普通』の人間と違うかもしれないと感じた事はあるか?」

 

 唐突な質問だった。

 

 予想もしなかった質問に多少戸惑ったが、雑賀は出来る限り情報を引き出すために意見で返す。

 

「……そもそも何をどう思って『普通の人間』って区分を出すんだ? それだと、まるで俺……いや、俺や勇輝とかの『一部の人間』と言うべきか。アニメやら漫画やらに出て来る『特別性』を含んだ人間って言ってるようなもんじゃねぇか」

 

「着眼点としては悪くない。実際、お前の言いたい『特別性』はお前――牙絡雑賀や紅炎勇輝、そして私も一応属している『組織』のメンバー以外にも……まぁ、その他にも大多数といった所か。宿している人間は少なくないぞ? 散歩でもすれば、数人ぐらいは見かけているかもしれないぞ」

 

「……そんなに大多数なら普通、誰かの目に触れられてるか何かあるんじゃねぇのか……? そもそもお前の言う『特別性』が何の事を指してるのかが、まだ検討も付かないんだがよ」

 

「仮に誰かが知っ言いふらしたとしても、現実的で物理的な証拠が無ければ実証も出来ず、やがて『普通の人間』に対する信憑性は無くなっていくだろう? 何より、確かに大多数存在するという風な言い回しこそしたが、その全員が決まって自身の力を『自覚』しているかどうかに関しては別問題だ。アレは普通に日常を満喫していられる人間が使える『力』では無いからな」

 

「何だそりゃ……」

 

 言っている事の意味を、ほとんど理解出来ない。

 

 いや、むしろ今は女の言葉の中からキーワードをかき集め、後で推理するべきなのだろうか?

 

 そうと分かっていても、言葉の中に潜む真意や意図を探ろうとしてしまうのは、自分自身が『特別性』とやらを欲しているからなのか。

 

「別に、俺自身は何か特別な事が出来るわけでも、特別な物が見えた事があるわけでも無いぞ。努力すれば他の奴にも出来るような事を『特別性』と言ってるわけじゃないんだろ。何のことなんだ?」

 

「これに関しては、口で言って理解出来るようなものでは無いと思っている。というか、そうか。やはりまだお前は『自覚』の段階か……これはやはり、危険と知りながら戦いに赴く覚悟の有無を聞いておいて正解だったな」

 

「……だから、何に対しての『自覚』なんだよ」

 

 そう問われると、女は唐突に自身の即頭部へ右の人差し指を突きつけて、

 

「これ」

 

「あ?」

 

「知的な生命体としては最も重要な部位。……漫画やゲームに出てくる超能力者だって、この部位に『普通』とは違う何らかの違いがあるから超状を引き起こせるものだろう? 本来使われる事が無い部分を使ったり、全く違う情報処理方法を会得して。つまりはそういう事だ」

 

「…………」

 

 女の言った事は単純で、それ故に雑賀でもあっさりと理解は出来た。

 

 だが、それでも思わず唖然とした風な声を漏らしていた。

 

「……まさか、脳だってのか……?」

 

 思考、慣れ、記憶……そういった情報を総括するメインサーバー。

 

 それが無ければ生きていく事も出来ない、思考判断する生命体としては心臓と同じかそれ以上の重要性を持つ臓器。

 

「……そりゃあお前が言う通り、フィクションに出てくるような『異能の力』ってのには少なからず脳ってのは関係を持ってるだろうさ。有名所なら念動能力《テレキネシス》やら精神感応《テレパシー》やら、空間跳躍《テレポート》やら……映画とかで話題になる物を上げれば、未来予知能力とかも入る。でも、仮にそういう物が現実に存在していたら、確実に話題になってるだろ。問題を拡大させないために情報統制されてる可能性もあるけれど、仮に脳の構造やら何やらを改造でもしちまったらどうなる? 確実に知的な部分だったり感覚的な部分だったりが『障害』を被るぞ。俺自身、あんまり病院のお世話になった覚えはないし、何よりお前の言う通りに脳が『特別性』を得る過程で何らかの変化をしちまってるんなら、とっくに俺は障害者扱いされても仕方の無い人格になってる。流石におかしいだろ」

 

「まぁ、そう思うのが妥当ではあるだろうな」

 

 女は変わらぬ調子で、それでいて既に理解している事を教える教師にでもなった風に。

 

「だが、現に私も含めた『一部の人間』の脳は『特別性』を獲得している。というか、個人個人の脳の構造を『目だった障害』も見当たらないのに、わざわざ専門の医師に相談して調べてもらう人物などそうそういないだろう。殆どは幼少期の中で医師から正常なのか障害を持っているかの検診を受けているものだが、それでも『その後』の変化に関しては本人が気付かない限り再検査する可能性も低い。第一にこの変化は、知的障害や感覚障害に繋がるものでも無いわけだし……多少それっぽい物があったとしても、医師からは些細な誤差程度にしか観測されないだろうさ」

 

「じゃあ、何で俺がお前の言う『特別性』ってのを宿している事に『気付いていた』んだ?」

 

「単純に『特別性』を獲得している事が『事前に』分かっていた紅炎勇輝の友達である、というのが第一の理由。同じ『組織』のとある人物から提供された情報が第二の理由。それだけではまだ推測でしか無かったわけだが、こうして面と向かって会ってみて直ぐに確信した。お前も既に『普通の人間』とは違う、という事をね」

 

「……ロボットアニメに出て来るキャラクターじゃあるまいし」

 

 特徴的なSE(サウンドエフェクト)の鳴る、見覚えがとても有ったアニメの事を思い出しながらも、雑賀は考える。

 

 やはりこの女の言う事は、まだ理解出来ないが、ホラを吹いているようにも思えない。

 

 思えないのは、自分が脳の深い部分で女の言葉が示す意味を『知っている』からなのか。

 

「まぁ、戦いを経験すれば、お前にも紅炎勇輝にもいつか分かる事だ。ここまで言っても思考が理解に届かない以上、現状では何を話しても意味は無いだろうし……手っ取り早く『有益な情報』を告げて話を終えるとするか」

 

「……こんだけ言っておいて、お前にとっては始まる前のチュートリアルに過ぎなかったってわけか」

 

「そもそも、この程度の事が『有益な情報』とは一言も言った覚えは無いぞ? 戦う覚悟を問いながら、戦闘イベントに発展するような話題を出さなかった時点で気付こうか」

 

 女は自身が所有しているのであろうスマートフォンを取り出し、その画面を雑賀の目の前で覗き見しながら、

 

「……さて、お前は水ノ龍高校という所を知っているか?」

 

 とてもとても、心当たりのあり過ぎる場所の名前を言った。

 

「……ついさっき行ってた場所だぞ。あまり他の学校とかに興味は無いが、都内の水泳大会とかで割りと名を上げているってぐらいはどっかで聞いた事があるぞ」

 

 つい少し前に何らかの『事件』が起き、誰かが被害を被ったであろう場所。

 

 そんな場所の名をピンポイントで告げてきた時点で、嫌な予感が雑賀の脳裏を過ぎり、

 

「簡潔に言うが、このままそこを放置していると人死にが発生する可能性が有る。同じ学校に在学している、とある『特別性』を獲得していた人間……いや、もしかしたらそうなくなっているかもしれない『彼』の牙によって」

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 その青年は、勉強が不出来だった。

 

 別に、努力を怠っていたわけでも無く。

 

 きちんと不出来なりに努力を続けていたために、将来に不安が残るレベルは脱していたが。

 

 それでも、彼は勉強が不出来なのだと自分自身を戒め、誰に頼る事も無く成長を続けてきた。

 

 理由は、人によっては別に大した事でも無い。

 

 ただ、誰よりも身近な人に認められたかっただけ。

 

 そのために自分に出来る事を自分なりに見つけて、実際他者にはその才能を認められる事になった。

 

 だけど、自分が『認められたい』と願う人物以外の事を意識出来るぐらいの余裕も自分の中に作れていなかった彼の精神は、少しずつ磨耗し始めていた。

 

 少しでも友人を作ろうと思えば、誰かは手を差し伸べてくれたかもしれない。

 

 結局それは叶わず、彼は高校まで一人の友人も作る事無く成長を続けてきた。

 

 そんな彼の運命の分岐点となったのは、ひょっとすれば必要も無かった事だった。

 

 偶然、見知らぬ子供がトラックに轢かれそうになっている場面を、目撃してしまった。

 

 距離から考えて、その時は他の誰よりも自分の方が近かった、なんていう都合の合致した場面でも無い。

 

 だけど、見知らぬ誰かのために自分の命を張るだなんて、危険以前にこれまで考えた事も無い事だったから。

 

 もし見捨てたとしても、誰からか責められるわけでも無かったかもしれないけれど。

 

 それが何に繋がって、自分に何を与えてくれるのかも分からなかったけど。

 

 ただ、目の前で人が死ぬ所を見たいとも思わなかった。

 

 そんな、些細な感情の揺れでしかなかった。

 

 それだけだった。

 

 だから。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 現在時刻、三時二分。

 

 自転車を漕ぎながら、雑賀は『タウン・オブ・ドリーム』で遭遇した謎の女との会話を思い返していた。

 

司弩蒼矢(しどそうや)。それが今回の件で戦う事になる『特別性』を持った人間の名だ』

 

 どうしてそんな個人の名前を知っているのか、という疑問はもうしない事にした。

 

 どうせ、『普通の人間』がやらないような手段を用いて、自分や勇輝の個人情報を事前に獲得していたのと同じ事だろうから。

 

 そして、全てを知られていると理解した上で、同時に自分には何かを出来る可能性がある事を知ったから。

 

『今から数日以上前に交通事故で四肢の半分を損失し、病院で療養中の身ではあったんだが、最近『組織』のメンバーの一人が接触して何らかの動きを促したらしくてな。間違い無く『普通の人間』には出来ない事をやる事が出来るようになっている』

 

 恐らく、それを理解した上でも女の言う『組織』のメンバーが止めたりする可能性は薄いだろう。

 

 こうなる事を理解した上で『促した』のだとしたら、その人物が『特別性』とやらを獲得するのを助長する動きを見せるはずだから。

 

『そして「特別性」を持った人間だけが出来る、とある能力を使う事で病室から脱出する事は可能なのだが……そうなると厄介な事に、彼は高確率で人間の理性を失っているか、あるいは悪酔いのエキスパートな状態になっているかもしれない。まぁ、本人の人格次第で殺人事件にも傷害事件にもなりえるわけだが、放置しておくのも忍びないわけだ』

 

 女の意図は掴めないが、敵でも味方でも無いと公言している辺り、件の『組織』に対して全面的に協力しているわけでは無いらしい。

 

 よくそんな姿勢であんな風に自由に動けるな、と素直にサツマイモカラーな衣服の女の力に関しては評価せざるも得ない。

 

『彼の居場所は「水ノ龍高校」の何処かか、あるいは別の何処かか。止めるにせよ、居場所を突き止めるにしろ、お前には自身の「特別性」に目覚めてもらう必要がある』

 

 言っている事は間違ってもいない。

 

 友達を助けるにしろ、近くの誰かを助けるにしろ、力はこれから必要となる。

 

『覚えておけ。トリガーは「とある意思」だ。それだけ覚えていれば、後はお前次第の問題でしか無い』

 

「………………」

 

 だが、現在雑賀が思考している事は、それだけでは無い。

 

(……アイツは勇輝が、ギルモン……というかデジモンに『成って』電子情報世界――デジタルワールドに居ると言っていた)

 

 指し示される単純な事実。

 

 女が告げた事実が本当なら、女の言う『特別性』は紅炎勇輝も持っている事になる。

 

(……まさか、俺達の脳に宿っている『特別性』ってのは……)

 

 それは、つまり。

 

 

 

 

 

「……デジモンの、データ……?」

 

 




 ◆ ◆ ◆
 
 一年と半年近くかけてようやくこの小説の基盤となる設定が公開出来ました。やったぜ。

 そんなこんなで今回は『第二章』から出て来るこの小説を象徴(?)しそうな設定の排出に、ちゃっかり名前だけ登場の新キャラ(大体5人目?)に、縁芽兄妹の(別に入れなくても良かったかもしれない)じゃれ合いと、遅れた分を取り戻すべく舞台はあまり動いていませんが作品に与える影響量としてはそれなりに多めとした話でした。

 ……割とデジモンを軸とした作品でデジモンとの接点が生じる原因の大半は、『デジタルワールドの危機』だったりが多く、アニメ作品でも(テイマーズやセイバーズを除くと)ファンタジー色が強めな形でパートナーと出会ったりしてるイメージがあります。まぁ、第一話からデジタルワールドに直行するってのはアドベンチャーの二作とフロンティアとクロスウォーズ(漫画版含む)ぐらいだった気もしますし。

 そういう感じで『デジタルワールドが大変なんだ!! 助けて!!』とかいうパターンから大きく出て、思いっきりイレギュラーな路線へこの小説は流れ込ませる事をこの小説を書いていた最初期の頃から構想を練っておりました。

 デジモンは情報《データ》。この原点の設定があるからでこそ出来た設定でもありますが、まだ『本領』が何も出ていない以上、あんまり印象は強くないと自分でも思っております。

 でもまぁ、これに関してはまだもうちょい進めないと。我ながら書く事に時間が掛かる設定と話の構成をしていて申し訳が無いです。

 次の話で戦闘を勃発できれば御の字といった所でしょうか。戦闘に入るの早くね? と『第一章』の構成を見た後だと思うかもしれませんが、この『第二章』でやりたい事は他にも色々あるので。

 では、また次回。

 全く違う新しいものを見せられる事を祈りつつ、さり気無く感想や質問や指摘などを待ちながら、頑張っていきます。
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