DIGIMON STORY デジモンに成った人間の物語   作:紅卵 由己

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最近、文字数が5000字に届かなくなってきました……物語はちゃんとナメクジレベルで少しずつ進んではいるんですが、やはり気にしてしまいますね。

今回は3500字ぐらいですし……むむむ。ところどころ地の文を加えられそうな所を探しているのですが。

と、いうわけで。

今回から後書きにちょっとした物を用意しました。




第一章 ―嵐の前の三日間 digital side―
電子世界にて――『安眠出来ない寝起きの朝』


 月が太陽に置き換わり、自然の摂理のままに世界(デジタルワールド)の時刻は朝へと転じる。

 

 夜明けの光がベアモンの家の中を穏やかに照らし、それによってユウキは目を覚ます。

 

「……朝か」

 

 外の明るさを確認すると気だるそうに体を起こし、両手を上げて背伸びすると共に大きな欠伸(あくび)が出る。

 

 それらはユウキにとって、普段通りの動作で普段通りの日常の始まりを意味するものだった(・・・)

 

 ほんの、一日前までは。

 

「……夢オチじゃない、か……」

 

 夢ならば、今自分を取り囲んでいる状況にも納得する事が出来ただろう。

 

 だが、これは夢ではなく現実(リアル)

 

 ふと自分の後ろを見れば、自分に寝床を与えてくれたデジモンである、青み掛かった黒色の熊のような外見をした獣型デジモンのベアモンが、平和そうに鼻先からちょうちんを出しながら眠っているのが見える。

 

 思わず、深いため息が出た。

 

(至近距離に怪しい奴が居るってのに、バカっぽい奴だな……)

 

 ユウキはそう内心で呟くが、そんな事は幸せそうに笑顔まで浮かべて寝ているベアモンには関係無い。

 

 ふと、自分とベアモン以外この場に居ない事を思い出すと、ユウキは自分の体をじっくりと確認する。

 

 指はニンゲンのように肌色の五本指ではなく、三本の白く鋭い爪の生えたもの。不思議な事に、指のように細かく自分の意志で動かせる。

 

 試しに握り拳を作ろうと意識してやってみると、まるで百円で遊べるUFOキャッチャーのアームに少し似た形になった。殴打(パンチ)に使えるかどうかは実際にやってみなければ分からない。

 

 足は前に三本、後ろに一本の爪が生えているが、こちらは大して実用性があるわけでも無さそうだ。使えるとすれば踵落(かかとお)としぐらいだろう。

 

 尻尾に関しては、まだ慣れていないが多少は動かす事が出来るようだ。

 

(……とりあえずは、何とかなるもんだな)

 

 人間としての記憶による補助もあって、身体の動かし方は本能的に分かった。

 

 問題点があるとするなら、まだ(・・)デジモンとしての『攻撃手段』が格闘ぐらいしか使えない事だ。

 

(にしても、何でこうなったんだ? 昨日は色々ありすぎて考える余裕が無かったけど……)

 

 自分が何故デジモンと言う、人間からすれば架空上の存在に成ったのか。

 

 それに関しては現状だと調べようが無く、持っている知識から作り出される想像ぐらいしか手がかりと呼べそうなものは無かった。

 

 もしユウキの記憶にある『アニメ』と同じ理屈ならば、この世界に来た理由は『選ばれたから』で説明はつくだろう。

 

 だがその『アニメ』の中には必ず、ある『アイテム』が存在していた。

 

(……デジヴァイス)

 

 架空の設定上では、デジタルワールドに選ばれし者の証。

 

 闇を浄化する、聖なる力を秘めた情報端末(デバイス)

 

 それが今自分の手元に無い以上、自分が『選ばれて』来たわけで無い事は明確だった。

 

(そもそも、俺は公園であの青コートの奴に気絶させられたんだったよな。それが何で、異世界に転移なんて結果を招いてるんだ?)

 

 分からない、未知の部分が多すぎる。

 

 手がかりになりそうなのは、やはり最後に出会った人物ぐらいだが、青いコートを着ていたという事と肌が恐ろしいほどに冷たかった事ぐらいしか覚えていない。

 

(……訳が分かんない)

 

 自分は何故ここに居るのだろうか。

 

 この世界で何をすればいいのだろうか。

 

 両方の前足で頭を抑えながら自問自答するが、やはり納得のいく答えは得られない。

 

「……クソッたれが」

 

 ユウキはベアモンを起こさないように静かに、それでもキリキリと奥歯を噛み締めながら、苛立ちに満ちた声で呟く。

 

 その言葉に、自己満足以外の意味は含まれていない。

 

 続けて呟いた言葉が、彼の現状(いま)を物語っていた。

 

「やれる事が無い……」

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 一方、エレキモンは赤色と青色が混ざった体毛を早朝の風に(なび)かせ、朝の眠気を残した呆け顔をしたまま、ベアモンの家に向かって哺乳類型デジモンの特徴とも呼べる四足を進めていた。

 

「ふぁ~、ねみ~……」

 

 まだ起きたばかりだからか、やはりまだ眠いようだ。

 

(……ったく、昨日面倒そうな奴を拾っちまったせいで面倒な事になったなぁ。村に来る事を提案したのは俺だけどよ……)

 

 内心で自分の行いに後悔しつつも、四足を止める事無く考える。

 

(確か、アイツの種族名はギルモンっつ~言ってたな……んで、個体名(コードネーム)はコーエンユウキねぇ……)

 

 種族としての名前だけでなく、個体としての名前も持っていて。

 

 自身の事をニンゲンと言い、何処かデジモンとしての違和感を感じる怪しいデジモン。

 

 村に来るように提案したのは単に助けるためだけでは無く、その危険性を実際に確かめるため。

 

個体名(コードネーム)を持つって事は、どっかの組織に所属してたって事なのかね……)

 

 この世界(デジタルワールド)において、個体名(コードネーム)とは組織や友達など信頼関係を持つ相手との(あいだ)で自身の一個体としての存在を示す暗号のような物である。

 

 種族としての名前は、デジモンならば誰もが生まれた時から知っている。

 

 だが自分の姿を見て、それを信じられないような反応を見せる相手を見たのは、エレキモンにとって初めての光景でもあった。

 

(……アイツ、マジでニンゲンなのか……?)

 

 先日ベアモンの言っていた通りならば、彼は本来デジモンではなく人間だった(・・・)と言う事にもなる。

 

 だがエレキモンの知る限り、人間がデジモンに成るなどと言う話は、伝説や神話などの御伽噺が書かれた文書でも見た事が無い。

 

(デジモンに『進化』する文書なら知ってるが、デジモンに『変わる』なんて出来事は文書ですら出て無いぞ……?)

 

 進化と変化。

 

 頭の文字以外は一致している似た言葉ではあるが、その意味はまったく異なる物だ。

 

(ベアモンは割とマジに、アイツの事をニンゲンだと信じちまってるが……判断材料が少なすぎる)

 

 疑問の原因となっている者が悩んでいるのと同じように、デジモンとしての常識を持つ彼も悩みに悩んでいた。

 

 だがその疑問を解決する事が出来るわけも無く、やはり答えは出ない。

 

(……とにかく、この事は町長にも聞いてみるか)

 

 内心でそう呟きながら、エレキモンは四足をベアモンの家に進めるのだった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 ユウキはベアモンが起きるまでの間、ベアモンの家の中にある物を興味本位で見てまわる事で暇を潰していた。

 

 結局の所、一匹で考えていても何も解決しない事を悟ったのだろう。

 

(場所が場所なだけあって、自然の物から作られた物しか無いな……)

 

 周りにあるのは木で作られた物ばかりで、家の中というのにまるで外に居るような錯覚すら覚える。

 

 扉が無いのは単に素材不足なのか、それとも別の意図があるのか、はたまた面倒くさいだけなのか、元は人間だったユウキには分からない。

 

 そしてその家に住んでいるベアモンの心境も、全く理解する事が出来ない。

 

「……ハァ」

 

 思わずユウキは、この世界に来てから何回目になっただろうか覚える気も無いため息を吐いていた。

 

 そんな時、まるで救いの手を差し伸べるようなタイミングで家の入り口から一匹のデジモンが顔を見せる。

 

 それはエレキモンだった。

 

「う~っす、どっかのバカと違ってお前は早起きだな」

 

「心配事とか色々多すぎて、安眠出来なかったんだよ。正直あと一時間は寝ていたい気分だ」

 

「ふ~ん……ま、そういう気分になってるところ悪いけど、ちょいと俺と一緒に来てほしいんだが」

 

「……何でだ?」

 

 エレキモンの発言に対して、ユウキは率直な疑問を投げかける。

 

「お前がいつまで住むつもりなのかは知らないが、町に住む以上は町の長に顔を見せとかないとダメだろ」

 

「……要するに、顔合わせか」

 

 デジタルワールドでの足がかりとなる物が現状では無いため、しばらくはこの町にお世話になる。

 

 だが勝手に住まう事は流石に拙いのだろう。ユウキは面倒くさそうに思いながらも納得し、エレキモンの言う町の長の家へと向かう事にしたようだ。

 

「ところで、このベアモンはどうするんだ? まだ寝てるけど」

 

「あ~そっか、コイツは寝てるんだったな……まぁいいだろ」

 

「いいのか?」

 

「いいんだ。コイツを起こすだけでも時間が掛かるし」

 

 いまだに眠りの世界でお花畑な夢でも見ているのだろうベアモンを余所(よそ)に、ユウキはエレキモンと共に家の入り口と出口を兼ねた穴から外に出て行く。

 

「で、町の長の家ってのは何処に?」

 

「いちいち教えるよりは実際に行って見た方が早いと思うぜ。何より、滅茶苦茶分かりやすい目印があるからな」

 

「?」

 

 エレキモンの言葉の意味も分からないまま、発芽の町の町長であるデジモンと話をするために足をただ前に進ませる。

 

 今は先が見えない道でも、進むしか無いのだ。

 

 例えそれが自らを危険に晒すかもしれなくても、不確定要素だらけの迷路を確実に進むために。

 

 




本日のNG。

「ところで、このベアモンはどうすんだ? まだ寝てるけど」

「あ~そうか、コイツはまだ寝てるんだったな。……よし、ちょっと待ってろ」

 そう言ってエレキモンはベアモンの部屋に保管されていたのか、それとも自分で隠し持っていたのかガムテープを両手に準備し出す。

「……え、何をする気なんだ?」

「まぁ見てなって」

 明らかに悪戯が大好きそうな悪ガキの表情をしているエレキモンは、ガムテープをベアモンの閉じられているまぶたと口に貼り付ける。

 次に、またもや何処から取り出したのか分からないネズミ取りをベアモンの手元と足元の辺りに複数設置する。

「さて、行くか」

「……あ、あぁ……」

 二匹はベアモンが起きない内に、ひそやかに家の中を出る。





「ん~!!! ん~ッ!!!???」

(うわああああ何これ何も見えないよおおおお、って痛ったあああああ!? 何かが僕の手を挟んでる!! なぁにこれぇぇぇぇぇぇ!?)

 数分後、ベアモンの家から当然の如く悲鳴が聞こえたが、町長の家に向かったエレキモンは内心でガッツポーズを決めたのだとか。

「……どやぁ」

 
 NGその1『もしもエレキモンが公式設定通りの悪戯好きだったら』

 
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