シャークオルフェノクを倒した蓮は隠れていたシェリーを呼び、シェリーはそれに答えるように出てきた。
シェリーは走って此方に来ると興奮したように言ってきた。
「まさか蓮お兄さんが英雄の赤の戦士で、人間界で噂になってる仮面ライダーだったなんて!私ビックリしちゃった!」
「………俺は英雄でも、戦士でも、仮面ライダーでもねぇよ」
「え?でも、今の姿は絶対赤の…「くどい。いい加減にしろ」ッ!そんな言い方ないじゃない!」
「いいか?英雄ってのは俺の親父の事なんだ。だから俺は英雄でも戦士でも無いんだよ」
シェリーはそれを聞き、う~んとと考えた後何か思い付いた感じで言った。
「でも、お兄さんは私を助けてくれたから私の中では英雄で格好いい戦士よ!」
「………勝手にしろ。さて、仕事も終わったし帰るか。お前の家は何処だ?」
「……え、えっと~…」
「…おいまさか……」
「わ、忘れちゃいました。と言うかここ、どこ?」
辺りに冷たい風が吹いたような気持ちになった蓮はその事に、
「な、ん、で!自分の家も覚えてないんだお前は!!」
「仕方ないじゃない!そもそもどうやってあの路地に入り込んだかも思い出せないし!ここも来たことがないからわからないの!」
「ハァ…仕方ねぇ。お前の家を探すぞ」
「ありがとう!蓮お兄さん!お兄さん優しいね!」
「優しくねぇよ」
「ううん優しいよ!こんな私の家を一緒になって探してくれるなんて、そんな人居ないよ」
「おい、自分の事は『こんな』とか言うんじゃねぇよ」
「あ、うん。ご免なさい……」
「ったく……行くぞ」
「はーい!」
そう言って二人は家を探しに行った。
「お兄さんって何で赤の戦士ってこと隠してるの?」
唐突にシェリーは蓮にそう聞いてきた。
「…何でって、さっき言った通り、赤の戦士ってのは親父の事なんだ。で、それなのに俺が戦士とか英雄って言われるのは釈然としない。ついでに親の力を頼りたくないってだけだ」
「戦士とかが嫌なら仮面ライダーはどうなの?英雄ってのよりヒーローみたいな感じだけど」
「ヒーローって英雄って意味の英語だぞ…」
「え?そうなの?」
蓮は「そうだ」と言って少し考えた後、こう答えた。
「確かに仮面ライダーって言うのは戦士とか英雄とかよりも馴染みやすいかもしれない。でも、俺には名乗れない。俺には人助けとか人を守るって言う正義は無いんだよ。有るのはオルフェノクとかを倒すことだけだ」
シェリーはその話を聞いて「ふーん」といった後こう言った。
「やっぱりお兄さんは優しいよ」
「今の話を聞いてよくそんな答えができるな」
「だって、オルフェノクとかを倒すことだけってことは他から見たら人を助けたり、守ったりしてるってことでしょ。それに気付かないってことは根っからの優しい人ってことじゃないの?今も面倒くさいっていいながら私の家を一緒に探してくれてるし」
その答えに蓮は唖然とした。
「…そんな考え方があるとは……けどな、俺は仮面ライダーを名乗れない」
「え?何で?」
「…これ以上は俺の問題だ。もうこの話は終わりだ」
「…うん」
シェリーは蓮の言葉に大人しく従った。蓮のそのときの声が何かを後悔しているような雰囲気を纏っていたからだった。
二人が家を探し初めて早一時間。オカルト研究部と家族と別れてから二時間半ほどたった。場所は少し街から離れた人気の少ない場所だ。
ここに来る時、流石に離れすぎていると思い蓮はオートバジンを取りだし、シェリーと乗って走っていた。取り出したときシェリーが興奮して大声を出し、蓮に怒られたことは言うまでもない。
「もう一時間たつがまだ分からねえのか」
「うーんと……あ、ここ見たことがある!」
「本当か?」
「うん!だっていつも帰る途中………帰る…途中…?私、どこから帰ってる途中なんだっけ…?」
「おいどうした。大丈夫かよ」
流石にシェリーの様子がおかしいことに気がつき、オートバジンを止める蓮。
「そもそも、私の家って…どこに………私、どうやって暮らしてたんだっけ…?誰と……暮らしてたんだっけ?何がどうなって……?お父さん、お母さんの顔…思い出せない…。怖い……怖いよお兄さん。助けてよ…」
そう言ってシェリーは目に涙を浮かべながら頭を抱えて踞る。蓮はこれには何か訳があると思い、黒歌に連絡しようとする。
その時、何処からか、歩いてくる音そして、拍手する音が聞こえる。蓮が前を見てみると年老いた男性が歩いてきた。
「いや~傑作だねぇ。まさか記憶をなくしているとは。ま、知ってたんだけどねぇ♪それはさておき、どーも初めまして!赤の戦士さん!リゼヴィム・リヴァン・ルシファーでっす♪あ、リリンって言った方が分かりやすいかにゃー?」
そう言ってリゼヴィムは「ヒャハハハ」と笑う。
蓮は恐らくこいつがシェリーがこうなった原因だろうと理解し、睨み付けながら聞く。
「てめぇ、こいつに何しやがった」
「まぁまぁ、落ち着いて。キレやすいと早死にしちゃうよ。あ、オルフェノクの君には関係ないか!リゼヴィムったらボケが始まっちゃったかな?」
「!てめぇ、何でその事を」
「こんなのちょっと調べればわかりまーす♪取り合えずその子の話をするとね、その子、悪魔と人間のハーフじゃなくてただの人間で、ついでにオルフェノクでーす!あ、名前はそのままだよ?ヒャハハ、驚いた?」
「なんだと!?」
そう言って、シェリーを見る。
シェリー自身も驚いている様子だった。
「私が、オルフェノク?」
「はーいそうでーす!なわけないって顔してるねぇ。いいよ、その表情!分からないならこの薬を打てば直ぐに分かるよ♪それじゃあ打ってみよう!」
そう言ってリゼヴィムは一本の注射器を手に持ち、二人が反応できない速さでシェリーに近づき、注射を打った。シェリーは打たれた瞬間倒れる。
「うっ!」
「おい!…お前、こいつに何を打った…!」
「えーっとオルフェノクを洗脳する薬かなー。でも、これ欠陥品でね?時間が経つと洗脳が切れちゃうし、五回目に打つと理論上暴走しちゃうんだよねぇ。因みにその子に打った注射で、この欠陥品はラスト、そ・し・て、記念すべき五回目、でぇーーす!」
その時、倒れていたシェリーが起き上がる。
蓮はシェリーに顔を向け、シェリーの目を見た。その時の目は虚ろで何も考えていないような目だった。
「ア、アアアァァァァァaaaaAAAAAAA!」
シェリーは獣のような声を上げ、体を変化させ、成人とほぼ同じ大きさになる。そして大きな羽を広げた。
その姿は足には鋭い爪、手には双剣、腕には羽を付け、顔はまるでコンドルのような姿――――コンドルオルフェノクになった。
「おー初めてだったけど間違ってなかった!お爺ちゃん流石!」
オルフェノクは少し止まった後、無差別に攻撃を仕掛け始めた。
攻撃が激しく、蓮が変身できずにいるとコンドルオルフェノクは飛んでいった。飛んでいった方向をみるとその方向は―――
「まずい!」
―――人が多くいる居住区だった。
「ほーら、早く行かないと沢山の悪魔が死んじゃうよーん」
「チィッ!」
蓮はリゼヴィムを睨みながらオートバジンに股がり追いかけに行った。
蓮がオルフェノクに追い付くと居住区は悪魔が突然の襲撃で混乱し、対抗するもコンドルオルフェノクにやられ灰になったり、それを見た他の悪魔が逃げ惑う、まさに地獄のような場所になっていた。
「aaaaAAAA!」
コンドルオルフェノクは獣のような叫びを上げながら悪魔を襲っていた。
そして、今目の前では子供が転けている所に攻撃を仕掛けようとするコンドルオルフェノクの姿があった。
「変身!!」
『complete』
「オオオォォォ!!」
蓮はファイズに変身し、叫びながらオルフェノクに向かっていく。
攻撃しようとしていたオルフェノクは蓮の方に顔を向けるが、突進してきた蓮に吹っ飛ばされる。
その姿を見た悪魔は「赤の戦士だ!」「赤の戦士が来てくれた!」「赤の戦士が来てくれれば百人力だ!」と言って攻撃をしようとする。しかし、オルフェノクに攻撃をしようとしていた悪魔に蓮は大声で言う。
「早く逃げろォォ!」
「し、しかし……」
「こいつはお前らがどうにか出来るような奴じゃない!死にたくなかったら、逃げろ!こいつは俺じゃねえと倒せないんんだ!はっきり言って足手まといなんだよ!」
そう言われ、一瞬怒りを覚える悪魔達。しかし、悪魔は先程殺られた他の悪魔が灰になったことを思いだし、「死ぬのはごめんだ!」「あんな死にかたは嫌だ!俺はもっと生きたい!」と言って一目散に逃げた。
ファイズは転んでいた子供を抱え、一旦離れる。
「大丈夫か」
「う、うん」
「そうか。ならさっさと安全な所に行け」
そう言って子供を下ろし、オルフェノクの方に向かおうとする蓮。そこで子供が声をかけた。
「あ、あの…」
「…なんだ」
「助けてくれて、ありがとう!赤の戦士さん!」
「…フン」
蓮は鼻で笑うと、子供の方を見ずに右手でサムズアップをし、走って行った。子供は同じように蓮の方に向かってサムズアップをして、避難した。
蓮がコンドルオルフェノクの所に向かうと、オルフェノクは街を破壊していた。まるで、目に写るものは何でもかんでも敵と言う感じだった。
そこに噂を聞き付けたサーゼクスとアザゼル、セラフォルーが駆けつける。
「これは!」
「ひどい……」
「おい、乾!これは何があった!」
「オルフェノクのほぼ一番ひどい暴走の仕方だ!お前らは住民の避難誘導をしてくれ!攻撃が効かないお前らじゃ居ても足手まといだ!」
「そんなのやってみないことには!」
「待て!」
蓮はそう言うがすでに冷静でいられなくなっていたセラフォルーはファイズの言葉を聞かずに攻撃するが、当然効かない。
コンドルオルフェノクは攻撃してきた方を標的にしセラフォルーに迫る。セラフォルーは得意の氷で凍らせるが少し止めただけでその威力は落ちなかった。
そしてセラフォルーに攻撃が当たり、倒れた所でコンドルオルフェノクが双剣を振りかざす。
「セラフォルー!」
「ッ!」
セラフォルーはとっさに目を閉じる。がいつまで経っても痛みは来ない。セラフォルーが目を開けるとそこには剣を止めている蓮がいた。
蓮はそのまま蹴りを入れ、オルフェノクを吹っ飛ばす。
「話を聞いて冷静になれ。あんたそれでも魔王か」
「なっ!」
「いいか。あいつは俺にしか倒せないんだ。そんな敵に立ち向かっていって死んだらどうするんだ。住民がもっと混乱する。だったら敵の事じゃなく住民の事を考えて行動しろ。安心しろ。あいつはちゃんと倒してやる。それともう無茶はするんじゃねえぞ」
そう言ってオルフェノクの方に向かっていく蓮。
一方、セラフォルーの方はというと、顔が真っ赤でサーゼクスに呼ばれるまで動く事はなかったと言う。
その後、三人は他の悪魔と協力し住民の避難誘導をしていたと言う。
「………よぉ。気分はどうだ」
「aaAAAAAA――!」
「………そうかよ」『Ready』
そう言ってコンドルオルフェノクに向かいながらオートバジンからファイズエッジを引き出す。
そして、
「ハァァァ!」
「aaAAAA――!」
双剣とファイズエッジがぶつかり合う。
「フッ!オラァ!」
「AAAAaa!」
「おい、てめぇ!いい加減目を覚ませ!迷惑掛けてんの分からねぇのか!」
戦いながら蓮はコンドルオルフェノクに声をかける。そうしているとそこに、リゼヴィムが現れる。
「無駄だよん♪だって暴走しちゃってるし、もう意識なんて無いも同然なんだよー、バーカ!諦めなって」
「絶対に何かあるはずだ。俺は諦めないからな」
そう言ってファイズエッジで手加減して切っていく蓮。しかし、何度呼び掛けても返ってくるのは叫び声と攻撃だけだった。
手加減していると言っても攻撃は攻撃。いつの間にかコンドルオルフェノクはフラフラになっていた。
対して蓮もコンドルオルフェノクの攻撃を受けすぎており、体力は半分も削られてしまっていた。
「さーて、もう決めちゃう?決めちゃうよねー!絶好のチャンスだし!」
リゼヴィムがそう言っているが蓮はその言葉を無視する。
「おい!聞こえてんだろ!返事しやがれ!なぁ、おいシェリー!いい加減、目ぇ覚ませ!ばか野郎!」
そう蓮が言うとオルフェノクはピタリと止まった。
そして、声が聞こえた。
『蓮…お兄…さん』
「うっそォ!そこで奇跡起こっちゃった!?うわっムカつくなー!」
『蓮お兄さん、私を早く止めて…』
「…………」
『私はもう…人を…殺したく無い……!』
「……………」
『こうして…押さえられるのも後少しだけ。だから、私を、この殺戮兵器を止めて……!』
「…………………ああ、分かった。今解放してやる」
そう言ってファイズポインターにメモリーを挿す。
『Ready』
『EXCEED CHARGE』
『ENTER』を押し、無機質な音が響く。
「ハァァァ………ハッ!」
蓮は跳んでファイズポインターから赤い光を出し、オルフェノクに飛んでいき、赤い矢印を出現させロックオンする。
「ハァァァァァァァ!!」
叫び声を上げコンドルオルフェノクにクリムゾンスマッシュを決めた蓮。コンドルオルフェノクいや、シェリーは蓮の方を向いた。その雰囲気は柔らかく、まるで笑顔になっている様な雰囲気だった。
『ありがとう、私の大好きな
その言葉を最後にシェリーは青い炎を上げ、灰になった。
シェリーが灰になり、蓮はその灰を見つめていた。
「いやー!まさか最後に意識が復活するとは予想外でした♪お爺ちゃんビックリしちゃった!でも、折角人間界からオルフェノク連れてきたのに赤の戦士を倒せないなんて、とんだ
そう言うリゼヴィムの前にはアクセルフォームにチェンジした蓮がファイズエッジを横一線に振ろうとしていた。
「おわっと!危ない危ない♪でもそのくらいどおってこと無いのよねん♪」
「じゃあ、これならどうだ」
蓮はもう一度ファイズポインターにメモリーを挿し、ファイズアクセルのボタンを押す。
『start up』
「ハァッ!」
「ちょ!速すぎ!」
蓮はそんな事は知らないといった感じでリゼヴィムを殴っていく。
残り六秒になったところで蓮は決めにかかった。
瞬間、リゼヴィムの回りには十個の赤い矢印が出現し囲った。
「おっと~これは避けれないねぇ~…」
「ハァァァァァァ!」
リゼヴィムにアクセルクリムゾンスマッシュを決める。
リゼヴィムは……青い炎を上げ灰になった。
蓮はそう思った。
『three…two…one…time out』
『Reformation』
そこで丁度アクセルが解除された。
そして近くから声が聞こえてきた。
『ざーんねーん!そいつは俺のダミーだよーん♪』
「!どこにいやがる…」
『教えるわけ無いじゃん。バッカじゃねーの?ヒャハハハ』
「そうか…丁度いい。お前に言っておく」
『このお爺ちゃんに~?はっ!もしかして愛の告白かな!?』
『1・0・6』
『burst mode』
蓮は声がした方に銃を向ける。
「人の命を弄んで欠陥品とか言って軽くみている様な奴は…俺の敵だ。次会ったら殺してやるよ」
そう言って引き金を引く。
すぐに何かが爆発した音が鳴る。どうやらスピーカーに命中したようだ。
蓮はそうした後変身を解除した。その後、シェリーが灰になったところに行き、灰の山にこう言った。
「やっぱり俺には仮面ライダー何て言う資格はないみたいだ……」
そこに黒歌から「大丈夫だった?」と言う電話が来て、いつも通りだといい、集合場所を決めてそこに集合することになった。
蓮は携帯を切り、壁際に止まっているオートバジンに近寄る。
「………クソッ!」
蓮はオートバジンに乗る前に、壁に拳を叩きつけ悔しがった。そうした後、オートバジンに乗り、集合場所に向かった。