騎士団コヨミ ―団長執務室―
黙々と書類に目を通しサインや了承印を押す青年
「ふぅ・・・こんなもんかな」
騎士団コヨミの騎士団長のスグルは少し疲れたように言葉を零す
スグルがエダ商業地区に着任して数週間が経つ、
その間に広い騎士団の土地に現在、鍛錬場、花騎士達の宿舎、診療所の増設作業が行われている
「それでもまだ土地が余ってるんだからレティシアさんの期待度がわかってしまうな・・」
スグルは横の方にある団長補佐の席にいるナズナに声をかける
「ナズナ、少し休憩しようかあまり根つめても効率が落ちるし」
「わかりました、ではお茶と私が作ったお手製のケーキをお持ちしますね」
そう言うと同時に頭を下げ、部屋を退室していくナズナ
「ここにきてもう3週間くらいかな、そろそろひと月か・・」
その間にスグルは現在所属している花騎士達の戦闘スタイルやスキルなどを見せてもらっていた
そこから今後、害虫が出てたときの戦闘形態を何度か頭の中で
シュミレーションしている日もある。
「自分は嫌な予感っていうのがよく当たるから困るんだよな・・・」
エダに来て未だに害虫との戦闘はしていないここエダは西側と違ってどちらかというと
平和な方だ、その反面西側は経路的にかつてあった今は亡き国「コダイバナ」と近いので
よく「西の荒野」に遠征が成されている「西の荒野」より先に前線を延ばさないのは
色々な事情があるが伸ばした場合のしわ寄せがリリィウッドに来やすくなるので
伸ばさず現状維持を通していると言われている
「伸ばしたらリスクもあるけどそれじゃいつまでも平行線のままだと思う・・・やっぱり元老院は頭が固いな
騎士団長になる前から姐さんに聞いてたけど、しきたりやら大事にするのは
良い事だけどそこに新しいモノを取り入れるのもいるよなやっぱり」
と誰も居ない執務室で愚痴をこぼすスグル
窓から町並みを見ようと視線を外に向ける
すると騎士団の門前に憲兵が少し慌てる様にこちらに向かってくる
「どうやら予感が当たったかな・・準備するか」
数分後
バタバタと誰かがこの執務室に駆け込もうとする足音がする
その足音が止まり強めのノックが響く、スグルは返事をする
「どうぞ」
入ってきたのは少し慌てているナズナだ
「だ・・団長さま!ご報告が!」
「分かっている害虫が出たんだな?」
「へ?どうして分かったのですか!」
「さっき偶々窓見たら憲兵さんがここに駆け込んでくるのが見えてね」
そういいながら執務室から外へ移動するスグル
「ナズナ、皆にはもう?」
「はい!もう皆さんにはお伝えしてあります!そして馬車も用意してありますので!」
ナズナから簡易の報告書受け取るスグル
「分かった、ありがとう!ナズナ行ってくるよ・・」
「団長様!お気をつけて、ご武運を!」
スグルは振り返らず手を上げてそのまま外に出て行った
―――――――――――――――――――――――――
-騎士団コヨミ 門前-
スグルが外に出るとすでに馬車の前にチューリップ4姉妹とリューココリーネが待っていた
「すまない遅くなった」
とスグルが言うと
「全然遅くないわ早いほうだと思うわ」
「そうだね・・むしろまるで見ていたかのようにすぐ来た感じかな?」
レッドチューリップとリューココリーネがスグルにそう言うとスグルが言葉を返す
「まぁ実際憲兵さんが門に駆け込んでるのが見えたから間違いないな」
「そういえば団長これが初陣なの?」
イエローチューリップがスグルに聞いてくる
「たしかに『騎士団長』としては初陣だけど、下積みの時に戦闘を経験しているから
初陣だけど初陣じゃない見たい感じだな」
「ふーんなかなか頼もしいわねー」
微笑みながらにイエローチューリップが言うと
「流石ですわね、団長様」
「凄いです!団長様!」
パープルチューリップとホワイトチューリップがスグルを賞賛する
「ありがとう、さてそれじゃ行こうか・・皆馬車に乗り込んでくれ」
そうスグルが言うと花騎士達は馬車に乗り込んでいく
馬車の御者はスグルがするのでスグルは馬車の前の方に乗り込んでいく
「ちょっと急ぎめに行くから馬車が揺れるぞ」
後ろから花騎士達が
「気にしなくて良いわ」
「大丈夫だよ急ぎめで尚且つ安全にね」
「馬車で酔っても私の薬あるから大丈夫」
「それが不安なんですけどね私は」
「パープル姉さんの言うとおりです」
「ちょっと!?」
という戦闘を控えている前の会話じゃないと思うが
スグルは笑いながら逆に安心できてしまう
そしてスグルは馬車を走らせる為声を上げる
「はっ!」
馬車は騎士団を出て害虫が出た地点へ向けて出発した
―――――――――――――――――――――――――
-エダ商業区近郊の森の中-
馬車を止め目的の地点に着いた一行
「簡易の報告だと小型が数体と中型か大型らしき奴が1体と書いてるが
他に居る可能性がそれだけは頭に入れといてくれ皆」
「「「「「了解(しました)」」」」」
討伐が開始して少し経つ
さっそくガサガサ茂みが揺れているどうやらお出ましのようだ
少し揺れてから・・・
「キシャアアアアアア」
小型のカマキリ害虫が飛び出してきた
「はいはい~これでも食らいなさいよっと!」
イエローチューリップが飛び込んできた害虫に向かって自慢のハンマーで攻撃を仕掛ける
「ギッキシャアアアアア」
ハンマーで吹き飛ばされる害虫
「ホワイト今よ!」
そうイエローチューリップがホワイトチューリップに言うと
「分かりましたイエロー姉さん!」
ホワイトチューリップが持つ杖から炎が生み出されすぐさま吹き飛んでいる害虫に命中する
「ギ・・・ギシャアアアアア」
断末魔をあげ害虫は絶命し光の粒子に変わる
「とりあえず一匹目ね」
「そうですね」
イエローチューリップとホワイトチューリップは言葉を交わす
「しかしあの団長さん初陣だけど戦闘に慣れてるわね・・それにかなり頭も切れるしね」
「そうですね・・・討伐開始前にこの人数体制で行くときは
びっくりしましたがイエロー姉さんがさっき言ったことで納得しました」
イエローチューリップとホワイトチューリップが害虫を撃破する少し前のことである
「今回はレッドチューリップ、リューココリーネ、パープルチューリップの三人一組
イエローチューリップ、ホワイトチューリップの二人一組で行こうと思ってる」
花騎士達はそうスグルが言うと肯定するように頷き組に分かれていく
「それともうひとつだけ、敵の深追いしないでなるべく俺と君たちが見える距離で掃討してほしい」
そう団長から言われて今の体制に至る
「レッド姉さん、リューココリーネさん」
「何?パープルどうしたの?」
「団長様はどうして自分のそばに花騎士を置かずに先ほどの指示をなさったのでしょう?」
パープルチューリップは二人に問いかける
その問いかけにリューココリーネが答える
「それはね、私達の組み合わせはレッドチューリップが前衛で私と君が後衛だそれは分かるね?」
「はい」
「それで彼が自分のそばに花騎士を置かない理由はね、この距離だよ」
「距離?」
「そう距離さ、多分だけどこの距離だと団長が急に害虫に襲われても
後衛の私たちの攻撃が届く範囲なんだよ」
「言われてみればたしかに団長様のいる範囲は私の攻撃は届きます」
「前に私たちが団長に戦闘スタイルを披露した後にどこまでくらいなら攻撃が届くのかを聞かれなかった?」
納得したようにパープルチューリップはリューココリーネに言う
「たしかに聞かれました・・そういうことなのですね、深追いをするなという指示はそこに繋がるのですね」
「そうだと思う、それに仮に奇襲が来ても後衛の私たちの攻撃で時間は稼げるし
何よりあの団長さん腕は立ちそうだしねちょっとの時間なら凌げるを見越してこの体制にしてるはずだよ」
「二人ともおしゃべりはそこまでみたいよ」
前を歩くレッドチューリップが言うとリューココリーネとパープルチューリップは意識をそちらに向ける
すると小型のイモムシ型害虫1体とナメクジ型害虫2体が茂みから姿を現す
「さてと、それじゃ二人ともフォローお願いね!」
レッドチューリップが後ろの2人に言うと2丁拳銃を構えて前へ飛び出していく
レッドチューリップに反応してイモムシ害虫は体を丸めてレッドチューリップに突進する
レッドチューリップはそれを軽快にかわし、イモムシ害虫の後ろに回り込み銃弾を浴びせる
「ギィイイイイ」
と声を上げ倒れこむイモムシ害虫だがそれでは終わらない
倒れている地面から尖った樹の牙が飛び出しイモムシ害虫の体を貫く
「ギィイイ・・・・ギイイィィィ・・」
イモムシ害虫は体を貫かれそのまま絶命し光の粒子に変わる
「さすがねリューココリーネ!
はいは~いそれじゃ次々いく・・」
「レッド姉さん危ないです」
そうパープルが言うとレッドチューリップはその場で跳躍する
跳躍後レッドチューリップがいたあたりに粘液が着弾する
「あぶないあぶない当てさせあげないわよっと!」
そう言いながらレッドチューリップは跳躍状態で体をバク宙するようにして
ナメクジ害虫の後方付近に回りこみ空中から銃弾を2体に撃ちつける
「ジュギィィィ」
ナメクジ害虫が仰け反ったとこでレッドチューリップが言う
「パープル今なら行けるでしょ!」
「ありがとうございます!レッド姉さん」
そうパープルチューリップが言うと持っている魔道書から風の刃が発生する
そしてその風の刃は魔道書から飛び出した一目散にナメクジ害虫2体に直撃する
「「ギュギシャアアアアアァァァァァァァ・・・」」
刃で体を切り裂かれ絶命する害虫見てスグルは思った
「花騎士はやはり強い・・・俺は彼女達をちゃんと支えて
そして戦いやすい状況に指揮するのが俺の使命だ・・・」
遠めでスグルが呟いた後レッドチューリップと目が合った
レッドチューリップは意味ありげにウィンクと投げキッスをしてきた
「本当に凄いお姉さんだな・・・」
と呟くも内心ドキっとするスグルであった
あれから何回か害虫を倒しているが最初の頃に比べて
遭遇する事が減っているどうやら着実に討伐は出来ているようだ
だがスグルは気にしていることがある
「おかしいな・・・見間違いか?」
そう簡易の報告書にあった中型~大型クラスの害虫がいないのだ
スグルが唸っているのが気になったのか花騎士達がスグルの方に集まってくる
レッドチューリップがスグルに尋ねる
「どうしたの?団長さん?」
戻ってきた皆に視線を送りつつスグルが聞き返す
「皆、中型か大型がいそうな感じはあったか?」
5人とも首を横に振りいないことを伝える
「そうか・・・」
そう答えると
「ギシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
物凄い叫び声が森に響いていく
少ししてその叫び声の主が姿を現す
大きなカマ振りかざしているの見えた大型のカマキリ害虫のようだ
「探しに行く必要ないみたいね」
イエローチューリップが呟くと
「そうみたいだな、向こうから来てくれるなら都合はいい」
スグルは5人に目配せ
「皆・・・あいつには・・」
作戦を5人に伝えるとリューココリーネが言う
「団長、君は下がってて後は君のいう作戦で行くから見てて欲しい
もう居ないとは思うけど自分の周りには気をつけてね団長」
「分かった」
リューココリーネにそう短く返しスグルは後方に下がる
それでもやはり自分は騎士団長だという意識なのか物陰には隠れず
スグルは花騎士達の動きを見守る
少しして5人は戦闘体勢に入る
「行くわよ!イエロー!」
「分かったわ!レッド姉さん!」
まず、レッドチューリップが害虫に向かって切り込んでいく
害虫は向かってくる二人に大きな鎌を振り攻撃する
一撃目の振りをレッドチューリップすんででかわし害虫側面に回り込み銃弾を害虫のお腹に放つ
「ギシャアアアアア!!!!」
ダメージが効いてるようだ害虫の視線がレッドチューリップの方に向いた
その瞬間真横から跳躍したイエローチューリップが
害虫の頭部に向けてイエローチューリップがハンマーで殴りかかろうとした
ガキンッ!
「やるじゃない・・!」
イエローチューリップが声を漏らす
その攻撃は頭部届かずハンマーは害虫の鎌によって弾きかえされる
「(でも、団長さんの言うとおりだわあの害虫自分の頭の守りに入ったわ、
ならさっき聞いた作戦でうまい事いきそうだわ!)」
と心の中でイエローチューリップが呟き視線を姉に向けると
レッドチューリップは頷き返し
「こっちにいらっしゃいデカブツちゃん・・言葉分かるか分からないけどね」
レッドチューリップが害虫に向かって煽ると害虫はレッドチューリップの方に視線を向き直し、
レッドチューリップに向かって叫びながら走り出す
「ギシャアアアアア!!」
「(かかったわ!)」
ニヤリとレッドチューリップが動かず害虫を待つ
すると後方から
【グランドバスタアァーーーー!!!!】
その叫びと共に害虫の足元の地面にひびが入り
害虫の動きが止まる
イエローチューリップのスキルが害虫の足元に炸裂する
「今よ!リューココリーネ!」
イエローチューリップがそう叫ぶ
「お見事だよ・・イエローチューリップ・・ふっ」
リューココリーネは持っている杖の先に魔力を流し込みそれを地面に突き刺す
【超 自 然 学 術 ・ 大 地 の 牙!!】
ひびの入った地面から樹木が飛び出すその樹木は上には伸びずに害虫の足に絡みつき害虫の動きを封じる
何とか動こうともがく害虫
「ふふ・・無駄だよしばらくは動けないよがっちり固定してるしね」
リューココリーネはレッドチューリップに視線を送る
「それじゃトドメと行きましょうかー!」
レッドチューリップは走りだし少ししてから跳躍し
狙いを害虫の頭部に定める
しかし害虫も抵抗し両方の鎌を自分の頭部向かって飛んでくる
レッドチューリップに差し向けようとする
両鎌はもう少しレッドチューリップに到達しようとした瞬間
【ト ル ネ ー ド !】
【フ レ イ ム バ ー ス ト !】
左側の鎌は荒れ狂う風に弾きかえり右側の鎌も大きな炎に弾きかされる
「ギィイ!?!」
弾かれた両鎌の間からからレッドチューリップ飛び込んでいく
「そんなに死に急ぐのなら、私が倒してあげるわ。」
がら空きになった頭部に
レッドチューリップはスキルを放つ!
【ハ ー ト ブ レ イ ク シ ョ ッ ト !】
無数の弾丸を撃ち込み続け最後に魔力を込めた一撃の魔弾を
再度頭部に向かって放つ
その直後大きな爆発音だけがした
「まぁ、こんなものかしらね。」
レッドチューリップは地面に着地すると同時にそう口にする
害虫は断末魔もあげずに光の粒子に変わるとこだ
断末魔なんて聞こえるわけがない害虫の頭部は吹き飛んでいるのだから
「勝ったんだな・・・はは・・」
遠くで見守っていたスグルは安堵と同時に腰を地面に落とす
「あら、団長さん腰抜けたの?」
戻ってきたイエローチューリップに尋ねられる
「あぁ、戦闘行ったことはあるけど
団長としての初陣ってのはあったんだろうな・・ははは・・」
「大変、団長さん大丈夫?私が診てあげるわ」
レッドチューリップがスグルに密着するように診ようとする
「そこまでしなくていい!?というか色々当たってるから困るって!」
「うふふ・・・何が当たってるのかしらね?」
「ノーコメントで!」
スグルは顔を赤らめながらレッドチューリップにそう言い返す
「団長さん、本当に大丈夫ですか?」
心配そうにホワイトチューリップが尋ね
後ろでパープルチューリップも心配そうに見ている
「大丈夫、大丈夫もう立てるからそれより」
皆に目配りしてスグルは言う
「皆、お疲れ様」
スグルが5人にねぎらいの言葉を掛けると
5人もまたスグルにねぎらいの言葉を返す
「団長さんもお疲れさま」
「団長もお疲れ様」
「お疲れ様、団長」
「お疲れ様です団長様」
「お疲れ様です団長さん!」
少しの沈黙してからスグルが花騎士達に言う
「さぁ帰ろうかエダに・・・」
花騎士達は声をそろえて
「「「「「はい!」」」」」
こうしてスグル団長の初陣は終わった
続