ナザリック最後の侵入者   作:三次たま

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 戦闘メインで構成するつもりじゃなかったのに……どうしてこうなった……

 そして戦闘シーンが気に食わないなら、最後のところだけ読んで要領つかむだけでもありかと。まぁ普通気に食わなかったらブラウザバックだよね。

 更新遅れたごめんなさい


木天蓼 後編

木天蓼 後編

 

 

 私はゆっくりと、まるで散歩でもするかのような軽い足取りで、彼女が隠れているクレーターの影まで歩んでいく。

 だけども私がそこに辿り着く前に、彼女が自ら私の前に出てきてくれた。

 

 彼女、シャルティア・ブラッドフォールンは、いつもの漆黒に紫の刺繍が入ったボールガウンではなく、血のように紅い全身鎧を身に纏っている。天翼を広げ銀色に輝く月光に照らされた姿からは、格好いいとも美しいともつかないような、何とも言えない感動を私に抱かせた。

 

 普段はエロばかり頭に詰め込んでいるペロロンチーノだが、こういうところで私の中二心の残症を煽ってくれるから隅に置けない。

 しかも変なところで真面目な彼のことだ。きっとNPCのビルドにすら遊び心を加えず、ガチで組んでいるだろうことは容易に想像がつく。ウルベルトとは大違いだ。

 

「こんばんわ、シャルティア・ブラッドフォールン様。良い夜ですね。個人的にこんな日にはお茶とお餅でも拵えて月見でもしていたいところなんですが、どうかその殺気を止めていただけませんか?」

 

 彼女はちっとも脅威ではなかったが、背後についているモモンガさんと敵対したくない。そうなれば彼は相当苦しむだろうし、アルベドさんにも嫌われてしまう。ついでに言えば死にたくない。

 

「よしなんし。おんしは、今でもこうして守護者である私との上下関係を気にして振る舞っているんでありんしょうが、一度6階層での振る舞いを見た後では、その後の猫かぶりの巧妙さが鼻について仕方ありんせん。」

 

 なるほど、通りで私の礼儀作法の受けが最悪だったわけ。無理やり支配ロールしたモモンガさんと真逆な結果とは、ひどい皮肉じゃないか。

 

「しかし、猫の裏側に居たのが獅子だったなんて思いもしなかったでありんすよ。よくもまぁこれまで騙し通したものでありんすね。きっとおんしを気にかけていたアルベドもデミウルゴスも気付かなかったんじゃありんせんか?」

 

「本題お願いできます?どーして人畜無害なワタクシめが、あなたに狙われなきゃならないのよ」

 

「自分で言っていたではありんせんか。おんしは強力な精神支配に侵されていて、敵対認証を察知しては暴れまわるという厄介な状態なのでありんしょう?

 であれば、守護者最強の私が直々に一度殺害してそれを解いてあげるというまでのこと。感謝しなさい」

 

 その割に血気盛んな楽しそうな顔。馬鹿馬鹿しい、大方アウラと同じで欲求不満なんだろう。

 

「言っておきますが、私は撤退をオススメしますよ。」

 

 私の挑発に見事シャルティアは引っかかる。もっとも挑発を兼ねた本音だけれど。

 

 シャルティアはこめかみに力強い血管を浮かび上がらせ、殺気が最高潮に達した。

 最早デタラメ廓言葉は完璧に鳴りを潜めていた。正直ウザかったのでちょっとありがたい。

 

「あぁん、大した自信だな!ペロロンチーノ様に生み出されたこの私が、負けるはずがねぇんだよ!」

 

「ソレハスゴイ」

 

 勝利を確信しているのだとすれば、そんなあいてにわざわざ全身鎧を着込むのだろうか?

 なんとも分かり易い虚勢である。

 

 彼女は巨大な片手槍を構え、両翼をはためかせて臨戦態勢を整える。

 きっと転移前の私だったら逃げたくなるような鬼気迫る程の迫力だろうが、案外嫌われメイド生活も無駄ではなかったらしい。

 敵意に感覚麻痺した私は、彼女のそれが只のウザいそよ風のようにしか思えなかった。あるいは洗脳によって気が狂っただけかもしれないが

 

「井の中の蛙というよりは、墓穴の蝙蝠かな。貴方じゃ私には勝てないよ。」

 

 

 

◆◇◆

 

(殺す!絶対殺す!至高の御方に作られし私をコケにした代償に、死の寸前には地獄を見せてやる)

 

 憤怒と殺意に塗れたシャルティアの思考は、一周回って冷静さを取り戻した。

 

 彼女を相手取るときには特に、取り乱してはならない。それが、先程の少年たちとマタタビの闘いを見て分析した成果である。

 

 殺した敵をアンデットに変えてそのままぶつけるとは、今度機会があればシャルティア自身試してみたくなる位に良く出来た方法だ。相手の精神を揺さぶっている合間に強力な罠を仕掛ける手腕は純粋に感心した。だが、自身が同じ過ちを犯す訳にはいかないだろう。

 

「ふー、やりますか」

 

 マタタビは右半身を後ろに引いて、刀を隠すように後ろ方向に構える。

 一見すると隙きだらけだが、シャルティアからは刀身の長さが掴みづらい上にカウンターの体制が整った嫌な構え方だ。

 先程の戦闘では白兵戦を避けていたようだが、前衛としての技能を身に着けていることは一目して理解できた。

 戦士職は取っていないのであろうが、それはシャルティア自身にも言えることだ。

 

 手の内の知れないマタタビに対し、序盤から近接戦闘に持ち込むのは勇み足が過ぎる。

 まずは遠距離からの攻撃で動きを読む取るのが望ましいだろう。

 

「〈魔法最強化・ヴァーミリオンノヴァ/朱の新星〉」

「遅いよ」

 

 マタタビの周囲が紅蓮の炎で包み込みこまれたが、気付いた時には彼女の姿はなかった。

 次の瞬間、シャルティアの背後にマタタビが肉薄している。そこから神速の袈裟斬りが見舞われようとしていた。

 

「ぐっ!」

 

 シャルティアは反射で身を捩り、スポイトランスを盾にしてどうにかその攻撃を受け止める。受け止めた一撃は思いの外軽かった。

 

 ところがその後の追撃では、手数の多さと素早さに間に合わず何回か直撃を食らってしまう。

 一撃一撃の数値的威力はそれ程でもないが、攻撃箇所が一々的確過ぎる。装甲の隙間や顔面部分スレスレに掠める感覚は怖気が走った。攻撃力はなくとも急所に当たれば致命傷なのだ。

 

 対してシャルティアが仕掛ける攻撃は、その尽くを風のように躱されてしまう。

 シャルティアの武器、スポイトランスはダメージを与えた時その何割かの体力を回復できる凶悪な効果を有している。前衛同士の打ち合いには有利な武器なのだが、当然といえば当然、当たらなければ無意味である。

 

(こいつ本当に盗賊系!?真っ向勝負じゃ勝てないんじゃなかったの?)

 

「そんなんただのブラフですよ。」

 

 このままではダメージレースでシャルティアが負けることは明らかだ。

 一旦距離を取るため、回数制限系の近接スキルをシャルティアは発動させた。

「〈不浄衝撃盾〉!」

 

「あがっ!?」 

 

 武器攻撃よりも範囲のある衝撃波攻撃を、マタタビはモロに食らった。そのまま後方の大地に吹き飛ばされていく。

 どうやら彼女の物理防御力はあまり高くないらしく、手足に擦り傷ができていた。

「……くそぅ、受身取ったのに痛いなんて」

 

(これだけで効いてるみたいね……)

 

「《ライフ・エッセンス/生命の精髄》」

 

 確認してみると、たったこれだけの攻撃でマタタビのHPは半分を切っていた。

 それならばと、シャルティアは片手を振り上げて手中に光の塊を顕現させる。

 今度は必中効果のある遠距離攻撃を目論みる。

 

「これで終わりよ〈清浄投擲槍〉!」

 

素早いマタタビでも回避は不可能。そして命中すれば絶命に至るだろう。

 

「〈生口の術〉大福招き猫」

 

 マタタビが大地に手を翳し、墨色の独特な文字で魔法陣を発生させる。

 そこから煙を巻き上げて召喚されたのは、文字通り大福のようにまんまるとデフォルメされた巨大な招き猫の像。

 猫像は壁のように立ちふさがり、光の槍と相殺されるように消えていった。

 

(……厄介ね、これが忍。神官職の私では良く判らないけれど、今のは召喚魔法の忍術版かしら?)

 

 忍は盗賊系の中でもアサシン関係のスキルを多く必要とするクラスだ。

 直接戦闘能力を多少失う代わりに忍術を多く収める〈カシンコジ〉、逆に直接戦闘能力を高める〈ハンゾウ〉、または両者の間をとった〈シノビ〉などのクラスが存在する。

 

 忍術は魔法と同じでMPを消費して発動し、その威力はその忍術に込めたMP量に依存する。

 例えば第三位階相当のMPを込めて発動した〈生口の術〉なら《第3位階怪物召喚》とほぼ同じものと考えて良い。

 だが一見すると、どの程度のMPが消費されたか相手には解からないのが非常に厄介な点なのである。

 

 シャルティアはまじまじと相手を注視した。

 一瞬でも気を許せば、マタタビはあっという間に詰め寄ってくる。ならば隙を見せないまでの事。

 放たれる威圧感に気圧されて自分を見失ってはいけない。彼女は決して倒せない相手ではないのだ。

 

 戦う者として生み出されたシャルティアは、戦闘においてあくまで冷静を失わない。蹂躙とは根本的に異なる行為だから。

 自身に暗示をかけるように、念入りに気持ちを切り替える。

 

 

 相手が、動き出した。

 

「〈炎弾の術〉」

 

 太陽の縮小図の如き巨大な火の玉がシャルティア目掛けてやってきた。

 躱せる速度ではあるが、まず間違いなく囮だろう。既にマタタビは移動している。 

 

 最適な逃げ道としてシャルティアが選んだのは空だった。 

 シャルティアの背中から生えている翼は飾りではなく装備だ。スキルにより強化された飛行速度は〈飛行/フライ〉より上。彼女が〈羊皮紙〉で飛んでくれば今度はシャルティアに軍配が上がる。

 地上移動しか出来なさそうなマタタビには有効な手立てかと思われた。

 

 しかしそれを待ち構えていたとばかりにマタタビの顔がニヤける。

 また別の〈羊皮紙〉を取り出し盗賊スキルで発動させた。

 

「逃がしゃしませんよ、〈要塞創造/クリエイト・フォートレス〉」

 

「拠点作成系の魔法?」

 

 瞬時に大地から、100メートルほどの巨大な漆黒の重厚感のある円筒状の塔が地鳴りを上げて飛び出した。

 マタタビは、そのまま塔の外壁を駆け足で登り上がってシャルティアのもとまで走り出す。

 

 わざわざ足場のためだけにこんな魔法を使うなど、与えられた能力の知識しか持たないシャルティアでは驚く他ない。

 完璧に、常識の埒外にいる存在だった。

 

「なっ!」

 戸惑うシャルティアの間合いに肉薄し、マタタビはシャルティアの背中に飛びついた。束縛耐性のあるシャルティアに通用したということは、盗賊系のスキルで強化されている可能性が高い。

 翼にしがみつかれ、飛行バランスが著しく崩れる。

マタタビは体制を組み換え、両翼を両手で引張り、背中を両足で押さえつける。

 

「クソっ離しやがれっ」

「せーのっ」

 そのままシャルティアの翼は引き千切られた。

 飛行手段を失い、二人はもみくちゃに取っ組み合い名がら真っ逆さまに地面へ落下していく。

 

「仲良くしましょうよ」

「〈ミストフォーム〉!」

 

 シャルティアはとっさに幽体化のスキルを発動させ、マタタビの拘束から逃れることに成功した。

 対し一人地面に降下するかと思われたマタタビだが、取り出したワイヤーフックを塔の積石の隙間に引っ掛け、もう一度壁面を駆け上がる。

 

「……やれやれつれないですね。スクロール〈霊体接触/インヴィジブル・タッチ〉

 からの~」

 

 マタタビが懐から大量の手裏剣を投げつけ続々とシャルティアの幽体に突き刺さる。

 苦悶を上げて実体に戻ったシャルティアの口元からは血が垂れていた。

 

 両者は再び地面に降り立って互いを見つめ合う。共に相手の隙きを、一瞬たりとも逃すまいとした緊迫した空気が漂う。

 

 受けたダメージ量は大きいものの、試合の流れはマタタビに握られているようだった。

 しかしシャルティアにとって見れば、「流れ」なんてまやかしだ。あと一発まともに攻撃をぶつけるだけでマタタビは負けるという事実は揺るがない。

 素早いとはいえ徐々に慣れていけば、マタタビ相手に一撃を当てるくらいそれ程難しくはないだろうと予想する。

 

 そんなシャルティアの落ち着いた態度に、マタタビは素直に感心を抱いた。

 

「ったく、想定していたより強いですね、シャルティアさん。」

 

「馬鹿にしてるのかしら?」

 

「いえいえ、見直したんですよ。貴方みたいなガチビルド纏っている奴なんて、大概はテンプレパクっただけの雑魚ばかり。モンスター相手なら武器振り回すだけで済むから、前衛技能をちゃんと身に付けたプレイヤーって凄く稀なんですよ?

 

 それに貴方、一見頭が弱いように見えて、プレイヤースキルもいい線に行っています。アインズ様ほどじゃないけどね。

 最初にやった挑発も逆効果みたいだし、これなら素直に不意打ちしとけば良かったな~。

 まったく変なところで真面目なところが、あいつに……いやなんでもない」

 

「なんだか微妙に貶されている気がするのだけれど」

 

「まぁともかくです。シャルティアさんの強さはバランス良く組まれた能力と、それを活用しきる技能。

 確かにこのまま持久戦にもつれ込めば、ビギナーズラックが決まって逆転される可能性も十分あるね。」

 

(……こっちの戦術を読まれてる)

 

「だから簡単な話、その強みを殺してしまえばいいのさ。」

 

 それだけ言って、再度マタタビはシャルティアの間合いに接近する。

 とはいえシャルティアもいい加減、彼女の速度には慣れてきていたため簡単に懐へは近付けさせなかった。

 刀とスポイトランスがぶつかり合う間、マタタビは空いた片方の手で別のアイテムを取り出した。

 

 それはバケツ大程度の蓋付きの壺。それに特別魔力が感じられるわけでもない。

 そのまま取っ手を掴んで、シャルティアの方へと振りまわした。

 

 壺程度ぶつけられたところでシャルティアにはダメージは無いが、マタタビが只の壺を出すわけもない。半信半疑ながらもスポイトランスで殴りつけて弾いたところ、あっさり割れて中に入っている液体がシャルティアへとぶちまけられた。

 

 

(血液!マズイ、〈血の狂乱〉が)

 

「アウラに聞いたんです。

 確かにその武器との相性上、自由意志のないマネキンには相応しい能力だとは思いますが、PVPでは些か致命的過ぎますよ?」

 

 

「ぐゔぉあああぁぁぁぁぁぁだめぇえええええおさえられなあぁぁぁぁあいいいいいい」

 

 たった今までは麗しき戦乙女の姿を保っていたシャルティアだが、この瞬間〈真祖〉本来のおぞましい姿へと変貌した。

 殺戮衝動があらゆる思考を塗りつぶし、戦士は魔獣に成り下がっていく。

 

「肉体能力は上昇されちゃうけど、これまで戦って体感した肉体能力からして十分対処できると判断しました。

 唯一厄介な飛行能力はさっき潰しちゃいましたしね」

 

「このぉぉぉおおよおぉぉうううくもおおおぉぉおお」

 

「あははは、いくら威力があったってそんな大振りじゃあ当たらないよ」

 

 空気すら引き裂くような連続攻撃がマタタビに向かってくる。

 命中すれば即死必定だが、優雅に舞うようにその尽くを平然と躱されてしまった。

 

「それと一つ誤解を解いておきたかったんだけどさ、あなた私の攻撃力を軽視してるよね?

 私のこの日本刀、武器属性なんだと思う?

 答えは霊属性、つまり一番あなたに効き目の薄い属性って訳。

 

 ちなみにこれ、製作が面倒なことで定評のある神器級なんだけど、お金持ちな私は同じ能力を持つ武器を全属分揃えているの。」

 

 一撃必殺の雪崩を軽々避けつつ、マタタビは鼻息混じりに武器を取り出した。それは元から持っていた日本刀と瓜二つだった。

 

「ホラ見て全く同じでしょ? ちなみにこれ、あなたの弱点の神聖属性ね。

 ……そろそろ終わりにするか」

 

 先程使っていた刀を乱雑に地面に放り捨て、新たに取り出した刀を構えた。

 

 隙きに塗れたシャルティアへ、神速の剣閃を浴びせ掛けられる。

 

「ぐうっがっががあがああああああああ!!!!!!」

 

 異形の絶叫が月夜に響き渡った。

 

 刃と触れ合う肉から、「ジュウゥッ」という蒸発音が煙とともに流れ出て、

 神業とも言うべき速さと正確さにより、四肢は切断され眼球が切り取られていく。

 

 〈真祖〉の怪物には、達磨のような無様な姿だけが残された。

 

◆◇◆(視点変更)

 

「ぁかぅ……はぅ」

 

 私はダルマの爪をぎゅっと食い込ませ首を絞め上げてた。気道が狭まり、辛うじて残っていたシャルティアの虫の息がさらに弱まっていくようだ。

 もっともヴァンパイアに呼吸は不要だから、この現象の意味合いは少しだけズレている。

「まぁ、もちょっとだけ生きてもらわにゃならんのですけど」

 

 彼女ほどではないが、私もだいぶ消耗してしまっていた。

 私のHPは実質飾りみたいなもんだから良い、浪費しまくった消費アイテムもストック全体からすれば微々たるものだ。けれどMPの消費はかなり痛い。特に〈要塞創造/クリエイトフォートレス〉の燃費は結構悪く、使ったときの脱力感が凄まじい。

 

 ユグドラシルにはMP回復アイテム等は存在せず、自然回復を待つしかないのが常識だが一応例外もある。他人から貰えばよい。

 普通プレイヤー同士のMPのやり取りは、譲渡スキルを持った側が相手に任意で送りつける者なので、一人きりの私では不可能だ。しかしこれにも例外もある。

 

「スキル〈魔力泥棒〉」

 職業〈トリックスター〉で会得できるこの〈魔力泥棒〉はその名の通り相手から一方的にMPを根こそぎ奪う事ができる。直接触れ続けることが発動条件だから、こうして無力化してから出ないと使えないのがちょっと不便。

 

 ダルマの首を握る手首をつたい、力の波動みたいなものが私の中へ流れ込んでいった。

 全部を吸収しきっったので、ぽいっと地面に放り捨てる。

 

 見ていてなんだか気の毒な気がしてきたので、さっさとトドメを刺してあげようとしたその時、いつかバーで飲んだ、甘ったるいお酒みたいな匂いが鼻腔に張り付いた。

 

「え?」

 

 私は酔っ払ったように体のバランスを崩して倒れてしまった。

 

 どういうこと?なんだか思考がまとまらない。これは……吐息?

 遠距離からのスナイピングのスキルで狙い撃ちにされたのか。

 でもこんな芸当できるやつが、どうして私の感知に引っかからなかった。

 

 まさか、私の感知範囲がバレてるのか?範囲外ぎりぎりから吐息のスキルを発動させるなんて……

 とすれば、考えうる相手は一人しかいない

 

「……うーん次はアウラさんかぁ~。折角仲良くなったのに……」

 

 私の感知範囲の円周上全体から、何かが勢い良くこちらへと進んでくるのを感じ取った。

 この世界では非常に高レベル、先程の人間たちとも比べ物にならない用な力量の魔獣たちがいっぱい近付いてくる。それは、いつか魔樹で感じ取った気配そのままだ

 

 

 刀を杖にしてなんとか立ち上がった頃、魔獣軍団は私の周囲を取り囲んでいた。その先頭で指揮を取っているのはアウラだ。子供ながら、視線だけで人を殺せてしまいそうな、強烈な殺意を感じ取れる。

 多分、弟……妹分のシャルティアがやられて腹を立てたのでしょう。あれでも茶釜姉弟は仲が良い。窮地に駆けつけるお姉ちゃんなんて、一人っ子な私では妬けてしまいそうな光景だった。

 

「一応先に手出ししてきたのはシャルティアさんなんですよ?逃げる機会はあったのに、あの人そのまま居残りやがるから……」

 

 私は悪いことをした子供みたいに言い訳じみた調子で白状した。

 

 しかし、怒りが最高潮に登っている故でしょう。底上げされた平常心は一切揺るがず、こちらへの敵意に何ら変化はない。

 多分シャルティアと同じで、挑発が逆効果になるタイプなんだろうと思う。

 

「全部知ってる。始めっから見てたんだ、あんたが洗脳される前から。

 まったく……あんたなんか信じなければよかった」

 

 少女の声にしては、やや低い声域。

 今の彼女の気配には、非常に覚えがあった。あれは、怖いぶくぶく茶釜だ。

 

 嫌になるような懐かしさ。でもどこか、憎めなくて愛おしい。

 どうしてだろう? もう随分前のことなのに

 

 信じなければ……か。確かにそうかもしれない。 

 私が居なければ、あんなことには……そして今みたいなことにはならなかっただろう。

 

「そうですね、きっとそれが正解です。」 

 

 ここには居ない魔王さまへ向けて願う。

 

 今度は、間違えないでくださいよ?

 




 
 あともう一話だけオリ主が暴れるの続くから、書くのが苦痛。
 いい加減にしやがれオリ主と言いたいところ。

※今回の捏造
・オリ主の能力

 気に食わぬところ感想誤字脱字あったらよろしくお願いします
 コメント荒れるかなぁ……

 シャルティアへの対処は趣味じゃなくて合理性の追求なんだけども。グロ嫌いやし
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