おそらくオバロオリ主界隈でも屈指の無能っぷりでしょうな。
幕間だから今回は短めです。
カルネ村空き家 (アインズ)
あれからアインズとナーベラルは、名指し依頼によりある人物をカルネ村まで護衛をすることになった。途中色々あったがここでは省略する。
ともかく現在は、カルネ村の空き家に宿泊することになったということだけを押さえておけば良い。
天井から吊り下げられた蛍光ランプの弱々しい灯火は誘蛾の羽ばたきによって見え隠れし明滅を繰り返している。薄汚れた白塗りの壁の所々、拭いきれなかった茶色いシミが残っており、見るものが見ればそれが何なのか理解できるだろう。
鈴木悟ならば怖くて一泊するにもご遠慮したいところだが、幽霊を恐れる死の支配者とはいかにも馬鹿らしい。
絶対支配者休業中のアインズは、硬いベッドに腰掛けて溜息……のような何かを零した。
不潔感が嫌なのか、それとも主のそばでくつろぐことを躊躇っているのかわからないがナーベラルはドアの横で仕えるように立ち尽くしている。
宿泊と言っても夜はまだ長く、やることは別にない。沈滞したようななんとも言えない空気の中を二人は過ごした。
(あー暇だ、やっぱりナザリックに帰るべきだったか?)
部屋は当然密室なのでやろうと思えば転移で帰還することも当然出来たのだが、そもそも冒険者となった本音の理由はナザリックのストレス空間から逃れるためなのだ。
そう考えるとナーベラルがついて来たのは本末転倒だったが、あの場所から距離を置いただけでも意外と気分が軽くなった気がする。これまでたった一人で維持し続けてきたナザリックだというのに、それこそ矛盾しているかもしれない。
暇にあかせてルプスレギナから預かったマタタビの少女漫画を読んでみた。
しかし、現実離れした異性像やキラ付いた画風がどうも好きになれない。青臭くて甘酸っぱい人間模様のやり取りは見ているだけでお腹いっぱいになる(骸骨に腹はないけれど)。
異性で尚且つ倍近い年齢差があるマタタビと趣味嗜好が異なろうと、それは仕方ないことだ。最近の子はこんなのが好きなのかぁ、という年寄りくさい感慨に耽る。
しばらくして、室内でじっとこちらを見てくるナーベラルの視線が居た堪れなくなり、結局ページ数半分程度で閉じた。
(そういえば、ナーベラルは退屈しないのか?)
ちらっと彼女の方を見る。公私混同というか、公=私みたいなところのあるナーベラルは別段不満そうなようには見えない。
強いて言うなら、至高の存在がただの民家で一晩過ごされる、ということに苦言を呈していた程度だ。こちらが問題ないと言うと一応は引き下がってくれた。むしろ二人きりのこの状況を、どこか嬉しがっているような気さえする。
ひとつ屋根の下で美女と二人きりというシチュエーションに男として何も感じないこともなかったが、友人の娘的な存在に手を出してしまうほど、鈴木悟は節操のない人間でもない。ましてや今はアンデッドなのだから。
(……うーん、それにしても気まずい。)
アルベドの場合は事務的が多いし設定改変のこともあって非常に構ってくるのに対し、ナーベラルの場合はかなり物静かである。
アインズ個人では後者のほうが好ましいのだが、密室の沈黙は別ベクトルの心労をもたらすことになった。身に纏った全身鎧の内側に疼くようなムズムズを感じても、やはりどうすることも出来ていない。
薄暗い部屋の中、ベッドから見上げる凛としたナーベラルの横顔は天上の月光のようであり、主従を分かつ絶壁はかくも果てしなかった。
今日で異世界転移から十日目、幾度となく繰り返した自問は未だアインズを飽かすことはなかった。
(かつての仲間達みたいにNPC達と肩を並べることが出来るだろうか?)
世界征服の方がまだしも優しいかもしれない。彼らを傷付けてしまうかもしれない。それでも思わずにはいられなかった。
なぜなら
見てしまったからだ、カルネ村でアルベドと親しげに話す姿を
聞いてしまったからだ、トイレから響くエクレアと共に笑う声を
知ってしまったからだ、バーでのデミウルゴスとの一部始終を
頭蓋裏にこべり付いた情景は渇望の業火の薪となり、アインズの身を冷酷に焼き焦がした。
自分はどうしようもなく一人なのだと、求めてしまうくらいなら気付かなければよかったと思う。
それでも狂いたくなるくらいの妬みを押さえ込み、共に外出しないかと彼女を誘ったが断られた。
それらは今に至るまでアインズを苛み続け、剥き出しの精神を徐々に削り取っていき
泥水に満たされたお盆は、とうとう一滴、どす黒い涙をこぼした。
「……おまえなんて、いなければよかったんだ」
静かな水面に垂れた一雫が波紋を広げるように、小さく呟かれた一言は無音の部屋にはっきりと響いた。
「ああああぁあいんじゅさま!?どどどどぅどうされたというのですかっ!私が、今度は一体どのような失態をしてしまったのでしょう!?」
アインズはテンパるナーベラルを見て自身も驚愕したが、間もなく沈静化により正気を取り戻した。
自分が口にしたことがあまりにも信じられなかった。
ひとまず支配者ロールを緊急発進し、恐慌するナーベラルを諭した。
「すまないナーベラル、お前では……お前のことを言ったわけではない。紛らわしいことを言って悪かった、許せ」
「いえ、アインズ様が謝られることはないのです!悪いのは、アインズ様を煩わせたその者に決まっております」
「いや、それは……」
覆水盆に帰らず。
八つ当たりだということは、アインズ自身イヤというほど理解している。
無意識にこぼれ出た悪意は理性に抑制されるも、呪い返しのような後悔になって本人を蝕んだ。
(俺、何言ってんだ……こんな)
そんな時、〈メッセージ/伝言〉が届く。
『アインズ様』
「……アルべドか」
『執事長助手秘書官マタタビが、反旗を翻しました』
「え」
筆遅くてごめんなさい。次回分は6割り程度出来ています。
実はもっとギャグやる予定だったのです。
だのにどうしてこんな構成になった……
感想、気に食わぬところ、誤字脱字があればコメントお願いします
そういえば今更ですが、オリ主の見た目は「ひまわりさん」で検索するとわかります
まか当然性格は全然違います