ナザリック最後の侵入者   作:三次たま

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エタリません、かんけつまでは。


貴方以外のこの未来を Kill it, kill it

◆◇◆

 

 マタタビが一見して、タブラの放つ違和感は一目瞭然であった。

 実際隠す気も無いのだろう。黒曜石の玉座に腰かける彼の気配にマタタビは吐き気を憶えていた。

 

 男のようで、女のようで、賢者のようで、獣のようで、戦士のようで、姫のようで、王のようで、悪のようで、善のようで、全のようであった。

 一つの一人であるはずのタブラの中に、様々な気配が混ざり合っている。

 さながら幾種もの料理が狭い密室に並べられ、互い違いに穢し合い鼻を摘まむほどの悪臭に成り下がるようである。

 

 そんな蠅の集る人の膿の肥溜めの中に、嗅ぎ覚えのあるなじみ深い気配が一滴だけ。

 

 朽ちた竜骨の鎧を身に纏い、両の手に剣と盾を構えた悍ましい戦士。

 〈完全なる戦士〉により前衛職としてのステータスを手にしたタブラの佇まいは、一寸違わず たっち・みー の構えと等しかった。

 

「せめて……言い訳を聞きましょう」

 

 マタタビは、喉元からせり上がる怖気と憎悪を限界まで押し留め、努めて冷静にタブラへと問いかける。

 そんな努力が眼前の異形種には殆ど無意味であることは自明だった。

 

 タブラはどこまでもマタタビの腹の底を見透かしたように、かかと嘲笑って肩を揺らす。

 

「誤解もへちまもありはしません。マタタビ君のご明察の通り、佐々木正義と燈子を殺したのは私です。

 魔神戦争終結の宴の喧騒に紛れて今後の展望を言い争っていた夫妻に、〈恐慌〉の魔法をかけて殺し合いをさせました

 

 そして夫妻が現世での過剰ストレスによって蘇生魔法を拒絶したことも含め、すべて私の目論見通り

 白金の竜王の眼を誤魔化すのには、幾分骨が折れましたがね」

 

 親の仇はびっくりするほど清々しく、娘であるマタタビに向かって己の罪を白状した。

 あからさまに憎しみを煽るように。

 

 一周廻ってここまでくると哀れである。彼は人間だった時からすでに、脳神経の繋ぎ方が常人と明らかにずれていた。

 ブレインイーターとして人間性から解放されて、むしろ今の彼はさぞや幸福なのだろう。

 

「何のために、そんなことをしたの? 」

 

 

「全てはこれの為ですよ!」

 

 タブラはうきうきとして、壁面にかけられていた大きな黒い布を剣先でつまんで取り払う。

 そして子供が自分のおもちゃを自慢するように無邪気にどやどやと見せつけた。

 

「アインズ様とマーレさん?」

 

 壁面に掲げられていたのは、人骨製の額縁に飾られた、1枚の大きな絵画だった。

 内容は、下のネームプレートに記された「大虐殺」というタイトルが全てを物語っている。

 

 ダークエルフの少女を傍に置いたオーバーロードが、5匹の黒山羊を操って、平原に広がる人々の軍勢を蹂躙する光景。

 最奥で采配を振るうオーバーロードの絶望的な威光もさることながら、黒山羊に踏みつぶされる人々の表情や、ぶちまけられる内臓の描写が逐一写実的で圧倒される。まるで本物の戦場を切り取ったかのような迫力とおぞましさ。

 

 一体作者はどんな心情でこれを描いたのか、常人には及びもつかないことだろう。

 しかしマタタビには即座に理解できてしまった。マタタビもまた、人間性を外れて人外の狂気に片足を突っ込んでいる分際だから。

 

「ひょっとして、もし私がこの世界に訪れなければ、これが現実になっていたりしたのかな?」

「それはもう素晴らしい世界だったでしょうね」

 

 タブラは心底悔しそうに歯噛みしてみせた。

 

「……なるほど、そういうわけですか。確かにこれは、あなたにとって最高の娯楽ですね」

 

 もしマタタビが最終日のナザリックに忍び込まず、アインズ様――モモンガだけでNPCごと転移していた場合のケースを考える。

 おそらく非常に高い確率で世界征服計画が続行されて強く反対するでも無いアインズ様は、ナザリックの理想の支配者を演じてこの世界に君臨していたことだろう。

 全ての者から小さな本心を隠し通して、独りきりで。

 

 そしてその末路に、群衆に超位魔法を解き放つ暴挙。かつての仲間が目にすれば、糾弾の誹りは免れまい。喜ぶのはタブラくらいだ。

 最善を尽くした果てが大いなる過ちとは、余りにも報われない。

 

「なんて儚く美しく、お労しい御姿……アインズ様」

 

 虚栄に塗れたオーバーロードの深い孤独と儚い想いに、私の目頭は熱を帯びた。

 

「……よりにもよって、君にこの作品を称賛されるとは思わなかったですね」

 

「一緒にしないで。あなたと私じゃ見ているものが違い過ぎるわ

 くだらない、こんな未来のために父さんと母さんを殺したのね」

 

 改めて、マタタビは胸いっぱいに大きく息を吸い込んだ。

 喉元に詰まっていた理性というつっかえを吐き出して、感情のままに剣を握りしめる。

 

「わかりました。よーくわかりました。つまりあなたの狙いはアインズ様を、勘違いと虚栄に塗れた哀れな妄執の怪物へと導くこと。

 あなたがお父さんとお母さんを完殺したのは、アインズ様を独りっきりにさせるため」

 

「ああそうだ。十三英雄には『国堕とし』の吸血姫がいたからね。眷属化でもされて現代まで生き延びられては迷惑千万。ゆえに悲劇の心中としてご退場願ったわけですよ」

 

 何が迷惑千万だ。全て自分の身勝手ではないか。

 

「ところがそんなあなたの野望は、私がアインズ様と同伴したことで無意味になった。

 どころか私が真実を暴き立てれば、私とアインズ様を同時に敵に回すことになるってしまう」

 

 容疑者の立証に物証は不要だ。私がタブラと接触すれば、彼がマサヨシの脳みそを貪ったことは一目で理解できてしまう。親子の縁とケット・シーの鋭敏な感覚を誤魔化すことは不可能だから。

 

「だからわざと墓場の死体に手掛かりを残して私一人をおびき寄せ、先手を打って迎え撃とうってんだね?」

 

「正解だ。本当に君は頭の回転が良い。そして大馬鹿だ! わかっていて一人でここに来るなど自殺行為以外の何者でもない」

 

 タブラは狂喜したように両手を広げ、マタタビを指差して笑う。

 

「しかしそれも仕方がないでしょう。佐々木桜はそういう娘だから。誰に似たんだか、昔から一人で全てを抱え込んでしまう悪い癖があるんですよ」

 

 ギロリと一瞬、タブラのマタタビへ向ける視線に、親しみ深い温もりが混ざりこむ。

 吐き気がした。

 

「……笑止」

 

 本当に、可笑しくて仕方がない。私は懸命に引き攣る頬を引き締めた。

 マタタビは静かに吐き捨てた。

 

「私はアインズ様を尊敬している。だからこそ、あの方の苦しみを少しでも和らげたいと思うのは当然のこと。だったら取るべき行動は一つだけ。 ――人知れずにお前を殺す。それだけだよ」

 

 良かった、本当によかった。

 タブラが救いがたい最低最悪の外道で良かった。

 親の敵として、アインズ様の敵として、一切ためらうことなく私は彼に刃を向けられる。

 

 そしてこれからどれだけマタタビがアインズ様とナザリックに不利益を齎そうとも、この世界に訪れたことは間違いじゃなかったのだと理解で。きて、本当によかった。

 あんな虚しい末路が待ち構えるぐらいならナザリックが滅んでも構わないと、心の底から私は思った

 

「これが、そうか」

 

 頭痛がする、胃がむかつく、耳鳴りが止まらない。

 そして胸の奥底で、何か大切なものが壊れていく音がする。構わない、そのまま消えてなくなってしまえ。

 

「殺してやる」

 

 肉体という名の殺戮人形に、名状し難い仄暗い衝動が注ぎ込まれる。

 石油のように粘り濃い真っ黒なそれは、腸の底で唸り声と共に燃え上がる。

 

 

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 400年前のお侍さんは刀を武士の魂であると宣っていたそうな。

 武御雷の刀剣武器への拘りはその辺の武士道に由来するそうだが、マタタビにとって剣とはどこまでもただの道具に過ぎない。

 そこにあるから、使い易いから、ただ利用するだけの道具。

 

『桜もやってみるか、剣道』

 

『……やる』

 

 初めて竹刀を握ったのは、桜が4歳の頃のことだった。

 桜にとって刀とは、道具であれど武器ではない。

 

『教えて、お父さん』

 

 一種のコミュニケーションツールの域を出なかった。

 桜は一度も、剣を好きだと思ったことがない。

 

 ただ剣と父からの押し潰さんばかりの寵愛が、才能と鞭撻という形で桜を一方的に祝福した。

 主観的には呪いにも等しかった。

 

 

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◆◇◆

 

 

 ブレイン・イーターの脳食いは、対象の脳髄から直接記憶を吸収して自身の記憶として貯える、冒涜的極まりない能力だ。

 記憶とは個人の全て。生まれてから培ってきた技能も経験も、奪ってしまえばタブラの物。

 だからタブラは、佐々木正義の死体から吸い取った世界最高峰の剣術と、桜に対する膨大な戦闘経験を惜しみなくマタタビに発揮する。

  

 ユグドラシルにおいて〈完全なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)〉は完全なるネタ魔法に過ぎないが、正義の戦闘技術をもってすれば、アサシンであるマタタビを相手取るなら至上最適解な戦術と言っても過言ではない。

 

「来なよ、桜」

「死ね」」」」

 

 少女を象った死神は小さな呪詛を残してから、死の黒風と化して容赦なくタブラへと斬りかかる。

 華奢な腕から振るわれる刃が狙うは鎧の隙間の首筋だ。

 

 常人どころか並みの100レベル戦士職でさえ視認が難しい超神速。急所を狙う太刀筋の正確性は、芸術の域にすら達していた。

 

 時と場合を忘れていればその美しさに感嘆すら漏らしていたことだろう。しかしタブラにとって、あるいは佐々木正義にとって、マタタビのありとあらゆる攻撃が予測の範囲内にある。

 

「わかりやすいね」

 

 タブラの剣は悠々と、マタタビの斬撃の軌道を逸らして弾いた。

 もはや死の恐怖は無く、タブラの中の佐々木正義の疑似人格は、二百年ぶりの剣の交わりに場違いな感嘆に震えている。

 

「………まだよ」

 

 甲高い一合の響きから、刀と剣の熾烈な剣戟が火花を散らす。

 しかしその光景は剣士の立ち合いよりも、超速回転するノコギリが鉄塊に刃を突き立てる状態の方が近かった。

 

 激しく果敢に斬りかかるマタタビを、鎧を纏うタブラは淡々と極めて最低限の動作で捌き続けていた。どころか口を開く余裕すら、彼にあった。

 

「相変わらずだ。真っ直ぐで純粋で、美し過ぎる(・・・・・)

「黙れ」

 

 大人と子供の如き差が、両者の間に立ちはだかっている。

 

 この世界において数多の猛者を翻弄し続けたマタタビの高速剣技。初見ではまず突破不可能なそれを〈完全なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)〉状態のタブラがこうして完封している理由とは、つまるところマタタビの性格にあった。

 

「桜の剣には嘘が無い」

 

 マタタビは、嘘がつけない。どんな状況だろうと、どれだけの殺意が渦巻こうとも、マタタビという存在の根本は変わらない。

 彼女はどこまでも真っ直ぐで純粋だった。

 故に、彼女の剣にフェイントや駆け引きといった小細工は存在しない。彼女の願う、最善最短最速だけを究極的に追い求めた結果が今のマタタビの剣なのだ。

 

 そしてそんなマタタビの性質を父であり師匠である正義はこの世界で誰よりも理解していた。

 ゆえにタブラは、彼女が思い描くであろう最高の剣を予想して、先回りで防ぐだけでいい。

 

「こなくそ!」

「ほら、また」

 

 タブラが一歩踏み出すたびに、マタタビの足は2歩進んでいる。全身鎧の重さもあって、スピードでは明らかにマタタビが勝っている。

 だがステータス差が必ずしも勝敗を分かつわけではない。少なくとも、足の速さと思考の速さは比例しない。マタタビが思い描く8歩先をタブラの読みが1歩超えていれば、マタタビの攻撃は届かない。

 

「それに速すぎるのも考え物だよ?」

「っ!」

 

マタタビの剣が大上段から振り下ろされるより先に、迫る勢いを逆利用してタブラの突きがマタタビの肩を貫いたのだ。

カウンターを仕掛けられれば、マタタビの規格外の速さは帰って足を引っ張ることになる。

 

「まずは一本。さぁ次だ」

「……まだ、まだだッ!!」

 

 それでもマタタビはまだ止まらない。

傷口から鮮血を噴き出しながら、マタタビはなおも攻勢を続ける。

痛みを感じていないのか、それとも感じた上で無視しているのか、それはマタタビ本人にしかわからないことだ。

しかし一つだけ確かなことがあるとすれば、その目つきからは怒りと憎悪が消えていないことだろう。

 タブラを殺さんとする気迫だけは、決して衰えていなかった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 かつて、ネーミングセンスが壊滅的と称されていたモモンガにとって、タブラ・スマラグディナが有していた深淵な神話知識は、ある意味大きな助けになっていたと記憶している。武器や装備に付ける名前を考える際、モモンガ含め多くのギルドメンバー達が彼に名付けを乞うていたものだった。

 

『タブラさんタブラさん。新しく作った武器に名前つけたいんですけど、神話ネタで何かあります? 強そうなやつお願いします』

 

『じゃあ現地の言葉で「偉大なるもの」って意味の創造神の名前とかどうでしょう?』

 

『おー! いいですね!』

 

『オニャンコポンって言うんですけど……

おやモモンガさん半信半疑って様子だね?』

 

『半分どころか100パー疑ってますね!』

 

 

 確か、パンドラズ・アクターの名付けもタブラに頼んだはずだった。

 

 現実化した今でこそあのNPCの振る舞いは歩いて動くパンドラの箱(黒歴史)でしかない。しかし本来は、ギルドメンバー全ての能力をコピーできる能力にちなんで、神から全てを与えられた者という意味から『パンドラ』と名づけられたのである。

 

 

 ナザリック地下大墳墓という世界観の構築において、タブラ・スマラグディナは欠かせない存在だった。

 思い出であり、友であり、仲間でもあり、モモンガの人生に射した掛け替えのない輝きの一つなのである。

 

 

 だから、どうしてこうなったのだろうと、思わずにはいられない。

 

 なぜマタタビとパンドラズ・アクターが突然、タブラを始末しにカッツエ平野に飛び出してしまったというのか。

 

『理由はどうしても話せません。でも、今しかチャンスがないの』

 

 そもそもなぜタブラが、アインズとマタタビに敵対することになるというのか。

 マタタビとタブラの間に何があったのか。

 わからないことだらけで、心が状況についていけない。

 

 だからアインズにできたのは、辛うじて動く理性で全NPCを玉座の間の中に置き去りにして、レメトゲンのゴーレムたちを使って完全封鎖をすることくらい。

 

 アルベドと共に完全武装を整えて、アルベドと共に八階層で彼女と(・・・)対峙することくらい。

 

 タブラを相手取るというマタタビに、下手な横やりを入れられないための時間稼ぎである。

 

『絶対に、タブラは生きて捕まえるから。信じて』

 

 

 

 それだけで、精いっぱいだった。

 

 

 ナザリック地下大墳墓、第八階層荒野エリア。

 

 第八階層守護者ヴィクティムが住まう『セフィロトの樹』と正反対の地点に位置する、『禁忌の深淵クリフォート』。

 赤黒い大樹の幹が逆さまに地中に埋め込まれ、下に伸びる枝を伝っていくように掘られた洞窟である。

 

 本来ははその最奥で停止状態で置かれている彼女が(・・・)、しかし玄関口にてアインズとアルベドの前に立ちはだかっている。

 アインズは思わず細い声で呟いた。

 

「ルべド……」

 

 姉妹ともあってその容貌は、姉であるアルベドが二回り幼くなったような雰囲気だ。背丈からして、だいたい13、4の少女といった具合であろう。

 肩口を過ぎてなお長く伸びる黒髪は漆のように艶やかで、瞳は夜空に星を散らしたように紅く煌めいている。ただ右目を隠した前髪が一房だけ紅く染まっている。肌の色は透き通るように白く、唇の紅が一際映えていた。

 

 全身を赤いラインの奔った黒いキャットスーツに身を包み、瑞々しく発達し始めた女性的な体格を強調する一方で、両肩から腕先にかけて薄桃色の強化装甲が覆いこみ、彼女が異形の機械人形であることも示していた。

 

 改めて、彼女の名はルべド。ハーフゴーレムとして外付け改造を施された(・・・・・・・・・・)特別なギルド拠点NPCであり、ナザリックどころかこの世界全体において個として史上最強の戦闘力を誇る存在である。

 

 ハンドアームのような巨大な左手が握るのは、黄金に輝くメカニカルな外観の、2メートルほどもある二股槍。ルべド専用に与えられたオーダーメイド神器級アイテム『キトリニタス』である。

 その鋭利な二つの先端がアインズへと向けられる。

 

「対象補足、ギルドマスター:モモンガ及び拠点NPCアルベド。脅威度演算、許容範囲。これより殲滅を開始する」

 

 無機質で機械的な女声は、しかし物理的な力を持っているかのようにアインズの体を圧迫し、息苦しさすら感じさせる。

 そんなルベドに対し、本音では恐ろしくてたまらないアインズ。だがまるで動じた様子もなく答えてみせる。

 

「待て、その命令が誰に下されたものか教えろ。指令内容が矛盾しない限りは私の言うことも聞いてくれるのだろう? 頼む、答えてくれ」

 

 アインズは内心で一縷の望みに縋るように問い質す。

 しかし、既にわかり切っていた答え合わせだけが示された。

 

「最上位指揮権保有者、タブラ・スマラグディナ」

 

「そうか……本当にそうなんだな……」

 

 表情変えずに言い切ったルべドの返答に、流石のアインズも堪え切れない想いで拳を握る。

 困惑と、身を引き裂くような悲しみである。

 

「おのれタブラめ! 妹にアインズ様を狙わせるなど……なんてことを! 許せない!」

 

 アルベドはアインズとルべドの間に立ちはだかり、両手のバルディッシュとカイトシールドを強く大地に突き立てる。

 そして身に纏う神器級全身鎧ヘルメス・トリスメギストス、漆黒のヘルムの隙間から射殺すような眼光を差し向けた。

 

「そして、いくら可愛い妹でも、アインズ様の敵ならば容赦しないわよ? ルべド、いえスピネル」

 

「すぴ……ねる…………」

 

 一瞬、無機質なルべドの表情に影が差す。

 ハーフゴーレムの改造体である彼女の定義は、純粋な拠点用NPCよりも、どちらかと言えばゴーレムに近い。

 普段はゴーレムと同様に休眠状態にされているし、タブラ本人だけが所持している遠隔操作端末により自在に操作できる、まさにロボットだ。

 

 しかし、それでも生身の体はちゃんと持っているし、根本的にNPCとして生み出された以上、人格のキャラクター設定は存在する。

 

 アルベドは言うまでも無く、アインズもルべドのパーソナリティを設定文としてよく知っている。

 だからこの場の3者が、心底から戦いを望んではいないこともわかっていた。

 

「…………」

 

 それでも、彼女──ルべドはキトリニタスを構え続ける。

 

「ねぇルべド」

 

 姉であるアルベドの声に、ルべドの瞳が揺れた。

 ルべドの視線が雄弁に「邪魔だ」とアルベドを邪険にしているのが読み取れた。

 しかしアルベドは動かない。

 

 慈愛の女神の如き表情から、一転して邪悪な悪鬼の如く口をゆがませて嗤い上げる。

 

 

「ふふ、本当にいいのね? アインズ様に刃を向けるなら、たとえあなたのお姉ちゃんであっても殺すわよ?

 さて、あの気色悪い剥き出しの筋繊維にハバネロでも塗りたくれば、どんな声で啼くかしらね」

 

 鮮烈で痛々しい演技を前に、アインズの見えない胃は煮え立って吐き気すら催した。

 何を想ってそんなことを言い放ったのか、考えたくもないくらい。

 

「排除します」

 

 そしてアルベドの一流芝居を皮切りに、どこか煮え切らなかったルべドの雰囲気が万華鏡を転がすようにガラリと変わった。

 機械的な無機質さが霧散し、虚ろな瞳に明確な怒りと殺意が宿る。

 

 感情が物理的な力を宿したかのように、ルべドを中心として目が乾くような熱風が吹きすさぶ。背中から紅いひし形の飛行補助ファンネルが八枚現れ、機甲妖精のごとく彼女の足を浮き立たせた。

 

「!!」

 

 次の瞬間、ルべドはまるでロケットのように一直線にアルベドへと迫り、カイトシールドと二股槍の衝突が火花を散らす。衝撃で周囲の空気が地ならしの如く震えた。

 

 激しい金属音は、まるで世界の終わりを告げる鐘の音にも似て、アインズの耳に響き渡る。

 

 

 




◆※捏造設定



◇二つ名:最強起動兵器

◇ルべド[異形種] rubedo

――『すぴ……ねる…………』


【挿絵表示】


◇役職
・妹

◇住居
・第八階層禁忌の深淵クリフォート

◆趣味
・姉

◇属性アライメント
・邪悪[カルマ値:-200]

◇種族レベル
・マシンナーズ:LV10
・ハーフ・ゴーレム:LV10
・オーマ:LV5
◇職業クラスレベル
・ファイター:10LV
・アイアンウォリアー:5LV
・アーマード・メイジ:15LV
・ベルセルク:5LV
・ストライカー:10LV 
・ゴッド・スラッシャー:5LV   


◇[種族レベル]+[職業レベル]:計75レベル
・種族レベル:25
・職業レベル:50

◇能力表(最大値を100とした場合の割合)
・HP(ヒットポイント):97 
 (80+17)
・MP(マジックポイント):52 
 (永続自動回復)
・物理攻撃:120
 (90+30)
・物理防御:105
 (82+23)
・素早さ:80
 (62+18)
・魔法攻撃:85
 (60+25)
・魔法防御:100
 (77+23)
・総合耐性:88
 (72+16)
・特殊:40
(20+20)

・合計値:767
 (595+172)

※()は外付け改造による加算分

◆概要

 種族は弐式炎雷と同じハーフゴーレム。ハーフゴーレムは100レベルまでの余剰成長域を開けておくことで、その分一般的なゴーレムと同様に外付けの改造を施し能力を強化させることができる。
 ルべドの場合は25レベル分の容量を改造強化に充て、ワールドアイテム【熱素石(カロリックストーン)】を搭載したことで、ギルドメンバー最強と呼ばれる たっち・みー すら凌ぐ戦闘力を得ている。しかし強さの代償に、修理や改造に必要な金属素材が莫大であり、ランニングコスト的に実践運用される見込みは皆無。

 使用する神器級武器は身の丈より長い黄金の二股槍の『キトリニタス』。
 元ネタは錬金術における大いなる業の一つ。(意味は黄化(黄金) : 変容、完成。15世紀以降しだいに下の「ルベド」へ統合されるようになった)


◆性格

機械人形の様な無機質な口調を持つ反面、実は姉妹愛が強く姉への依存度が高い。あまりにも過剰なことから長女のニグレドからは「行き過ぎた愛情」として忌避されている節がある。
姉と創造主以外には極めて無関心。また、創造主の指令が下れば姉であろうと容赦せず殺すことにも躊躇いはない……というわけでもない。




余談だけど、この子のキャラデザ見てピンと来た人はsobin様をめっちゃ好きな人です
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