一応、ここで立香を助けた男がわかります。
「フッ、飛んでいる鳥を射るのは得意分野だ」
光の矢が詩人の男の鳥へと迫る。
「危ねぇっ!」
背後から迫る光の矢を紙一重で躱す大鳥。だが、まだ安心はできなかった。目の前を通り過ぎた光の矢は形を変えて別のものへと変化していく、それは小さい戦闘機。
その戦闘機が急旋回して大鳥に機関銃を連射。
「オイ!どうなってんだ!?この聖杯戦争に呼ばれるサーヴァントは何かを召喚しないとイケネェってか!?」
銃弾の雨を避けるかのように大鳥がクルリ、とドリルのように回転して避けた。そして戦闘機と大鳥がすれ違う。
「イッチマイなァ!!」
バチバチ、と戦闘機の上空から小さな落雷が落ちてくる。戦闘機が翼をもがれて墜落する。
「どうすんダヨ、Vチャンよ。早めにあの姉チャンを倒さねーとジリ貧ダゼェ?」
Vと呼ばれた立香を助けた男がゆっくりとアーチャーのマスターへと近づいていく。
「弓兵のマスターはこの聖杯戦争で何を望む?富か?名声か?それとも───力か?」
「うーん、私は強い人と戦えたらいいなーって思ってるんだけど」
中学生ぐらいの少女、アーチャーのマスターが少し悩みながらそう答えた。
「なるほど、力がお望みか」
「少し違うかも?私は聖杯に願うことなんてないけど、聖杯戦争で強い人と戦いたいんだ!」
「アー、こりゃあ言っちゃぁ悪いがこのマスター。かなり頭がいかれてるゼ?」
大鳥が首を横に傾けてそうVへと語りかける。だがVには大鳥の言葉が聞こえている様子ではなかった。まるで悪夢でも見ているかのように左手で額を抑えているかのようだった。
「そっちの姉チャンもそれでいいのかよ?」
ハァ、と大鳥はため息を着いてアーチャーのサーヴァントへと語りかけた。先程、戦闘機を召喚した長い銀髪の女性。
「私には関係ない。マスターが戦うというのであればそれに従うのもサーヴァントの役目」
アーチャーが軍帽を深く被る。マジかよ、と大鳥が落胆する。
「ということでやりましょう!」
そう言って少女が刀を抜いた。まるで戦うことが決まってるかのように構えを取った。
あまりにもやる気満々の少女。だが、Vには戦意はない。
「オイオイ、本当にヤるのかよ?俺達は戦うつもりはないゼ?ほら、やるならもっと別の陣営とやりあえばいいだろうよ?」
大鳥の問いに少女は少し残念そうな顔をする。
「そう言われてみればそうですけど、元の世界に帰る方法って知ってます?」
「さぁな」
「……その反応、そうですよね。方法が一つしかないなら私はそれを取ります!」
少女が自分に言い聞かせるように呟いて決意を固める。カッ、と目を見開いて少女の体が白く発光した。
「っ!?」
(───疾いっ!!)
白い一筋の光となって少女がVの懐へと入る。決して気を抜いていたわけではないがVはこの少女のことを甘く見ていた。
Vが背後へと跳躍し、少女の横薙ぎを紙一重で躱す。そしてVが片方の腕を空へと掲げる。そしてバサリ、と先程まで少女の隣にいた大鳥が一瞬でVの頭上へと移動して彼の腕を掴んだ。
「なんだよ、あの嬢チャン。半分、悪魔の血でも流レテンノカ?」
大鳥が半分冗談を呟いた。少女の身体には悪魔の血は流れていない。だが、そう思えても不思議ではない速さを彼女は兼ね備えている。
「流石に2対1ではこちらが振りか」
まるで自分達がの戦力が二人分にも満たない言い方をするV。
「グリフォン、お前はアーチャーの警戒をしておけ。あの少女は俺が相手をする」
「正気か?」
「そのためのコイツだ」
首を傾げる
「ハイハイ。じゃあな、死ぬなよ!」
そう言ってグリフォンがアーチャーの方へと飛んでいく。
だが、少女はその様子に動じずVを見据えているだけだった。
そして数秒。少女が動いた。再び一筋の光となって。こちらへと飛んでくるのがVにも見えた。
「ハァッ!!」
少女が刀を振り下ろす。さすがのV一人ではその一太刀を避けることも防ぐこともできない。そう一人では。
「っ!?」
だが、少女の一太刀はVの目前で何かに防がれる。少女は見たその正体。
Vから引き剥がされたタトゥーだった。いや、性格にはタトゥーが引き剥がされ、それが密集した黒豹にだった。
尻尾を刃へと変形させている黒豹がそのまま体を縦回転させてチェンソーの様に少女の刀の同じ部分に何度も斬りつけていく。
「くっ!!」
少女は少しだけ刀を握る力を力めて後ろへと引いた。
(今のシャドウの攻撃で傷一つつかないか……)
いとも容易く悪魔の身体には傷を負わさる程の切れ味を持つ
(考えられのるのは二つ。マスター自身の魔術か、あの刀自体が魔剣のような類か)
それに、とVがさらに目を細めた。
(未だにマスターの体が小さく発光しているのは魔術のような類と見て間違いないだろう。それも恐らく身体を強化するような)
厄介だな、とVは小さく呟いてため息を着いた。
アーチャーの対空迎撃にグリフォンは手を焼いていた。
「どうやら姉チャンは近代のサーヴァントらしいナ!」
彼女の周囲を飛び回り銃弾の合間を躱していく。
「ご名答。私はアメリカの航空母艦エンタープライズさ。そういう君は神話時代か童話の関係者か?」
アメリカ海軍の象徴、エンタープライズ。日本では過去に9回も撃沈されたと言う逸話を残してはいるが定かではない。もし、彼女か本当に空母のエンタープライズならば相当な厄介なサーヴァントとなる。
ニヤリ、と笑うエンタープライズ。今度は彼女がグリフォンの存在を探る。喋る大鳥というのは神話か童話の線でしか存在しないと彼女は思っている。
「残念ながら俺達はそんなんじゃねぇノサ!」
グリフォンが隙を見て電撃を放つ。放たれる電撃は彼女へと直撃する。だが、彼女は少し仰け反る程度だった。
「生憎、俺
「達ということは彼もサーヴァントではないのか……」
少し意外そうに呟くエンタープライズ。確かにエンタープライズはサーヴァントの気配を微かに感じ取っていた。
「まァ、当たからずとも遠からずダナ。あのVチャンはとあるサーヴァントの心サ。あのVチャンには力がネェ。マスターは召喚中に死んじまったんだゼ?信じらるか?だから、サーヴァントとしても不完全」
エンタープライズが無言で弓を構えていた。何か哀しげな目をしていたがグリフォンにとってはどうでも良かった。
「Vチャンの事を話した俺が言うのも何だけどナンデ躊躇ってんだ?サーヴァントを一つ落とせるんだぜ?ラッキーだろ?」
「サーヴァントだと……?」
エンタープライズが眉を潜めた。
「言っただろ?召喚されるサーヴァントだったってまァ、不慮の事故で残念な結果になったがナ」
「つまり、あれでもサーヴァントとしてのクラスは持っている、と……?」
「さ、サービスはここまでだゼ。エンタープライズチャンよ。俺様も少し本気を出させてもらうゼ!」
グリフォンの纏う空気が変わった。グリフォンの攻撃が少し過激になる。相手の頭上から雷を落とし、グリフォンの周囲を旋回する戦闘機に電磁波を展開させ、更には突進までしてくるのは。
だが、彼女のやることは変わらない。それがたとえ、悪夢でも。
「───撃ち落とす」
瞳を金色に輝かせて彼女はそう強く宣言した。
(まさか、ここまでとはな……)
Vは球体となったシャドウを見て改めて聖杯戦争というものを認識する。そのあまりにも強いアーチャーのマスターである少女。下手をすれば最優のサーヴァントであるセイバーにも引けを取らないだろう。
そして彼を守る者は今はいない。シャドウはやられ、復活するのに時間を有する。そして口煩いグリフォンも今はアーチャーの足止め中だ。ならば、と。
「アーチャーのマスターよ」
「え、あ、はい?」
少し驚いたようにも見える少女。彼女はたどたどしく返事をした。
「名を聞いておこう」
「えっと……
そうか覚えておこう、と彼が呟き。彼が左手をゆっくりと持ち上げた。
「冥土の土産だ。───悪夢を見せてやる」
Vが上げた左手をパチン、と指を鳴らした。それを機に彼の髪の色が抜けた。黒から白へとまるで何かを失ったかのように。
「……!?」
そしてそれを見ていた可奈美も何かに気付く。自分達の頭上から何かが降ってくるのを。
それはまるで炎を纏った巨大な岩、隕石に近い。それが可奈美のいる場所を目掛けて落ちてくる。
即座に可奈美は退避。先程まで彼女がいた場所には隕石が衝突した。アスファルトが粉々に砕け散り、巨大なクレーターが出来上がる。
可奈美は見た。それを。
手と足を持った巨大な悪魔。人で言うところの顔の部分には紫色の何かが見えており、それが妖しく輝いているのを。
彼女が見たのはその名の通り
この聖杯戦争、ヤベェ奴しかいねぇじゃん(