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さて、久々の大型モンスター討伐です。刀夜はどのように戦っていくのでしょうか。
それでは第19話、張り切っていきましょう。
赤依頼である[ドスジャギィの討伐]を受けた刀夜はセントラル草原にいた。一度倒したことのあるドスジャギィとはいえ刀夜に油断という文字はない。アイテムポーチにはカーディナル孤島で採取したものを調合して作った様々なアイテムが入っており、準備は万端であった。
そんな刀夜だが、現在肝心のドスジャギィが中々見つからずにいた。
「とりあえず、前にジャギィの群れがいたところまで来てみたが…姿も見かけないとはな。すぐに見つかると思っていたんだが…」
ドスジャギィは大型モンスターであり、鳴き声も大きいことから見つけるのは容易いと刀夜は考えていた。しかしそれに反して中々ドスジャギィが見つからない。
「やはり、奴の巣に行くしかないか」
実は刀夜は前回の依頼でセントラル草原に来た際にドスジャギィの巣と思わしき場所を見つけていた。そこには少なくない動物の白い骨が地面に転がっており、更にはジャギィやジャギィノスが多く存在したのだ。
その時、ジャギィ達は自分たちの巣に侵入してきた刀夜を敵とみなし襲いかかったが、逆に刀夜が1匹残らず殲滅したというのはまた別の話である。
「あそこにいなければ、もう宛がないな」
そうして歩くこと数分、巣に着いた刀夜の心配は杞憂に終わる。
視線の先には薄紫色の表皮をまとう大きな個体が寝息を立てていた。
(やはりここにいたか…。前に戦ったドスジャギィより大きい個体か?しかし、まさか睡眠中とはな…。道理でほかの場所で遭遇しないわけだ)
睡眠中のドスジャギィの周りには頭を高くしてキョロキョロしているジャギィが複数いる。恐らく見張りであろう。見張りの仕草をしているジャギィ以外にも多くのジャギィやジャギィノスがいる。
(見張りの奴らを合わせ雑魚が20体ほどか…問題ない。むしろ奇襲をかけられるとは運がいいな。…さて、負けることはないだろうが油断せず行こう)
そうして刀夜は背中の黛に手をかけ、ドスジャギィに向かって走り出す。突如出現した刀夜にジャギィ達は戸惑いながらも襲撃を知らせる鳴き声を発する。その声でドスジャギィはゆっくりと目を覚ますが、その瞬間にドスジャギィに激痛が走る。刀夜の抜刀攻撃が命中したのだ。刀夜はすかさず追撃を加えようと試みるが、周りにいたジャギィやジャギィノス達が刀夜の前に立ちはだかり、追撃はそちらに加わる。攻撃を受けたものは絶命したが、ドスジャギィはその時間で態勢を立て直し、攻撃態勢に移る。刀夜は内心舌打ちする。
(ちっ…こいつらボスを守ろうとしているのか。おかげで初撃しか与えられなかった。少し面倒だが、ドスジャギィよりも先に周りのヤツらから片付けるか…)
作戦変更した刀夜はドスジャギィの攻撃をかわしつつ、周りのジャギィやジャギィノスに次々と斬りかかる。そして刀夜の攻撃によりジャギィやジャギィノスの鮮血が吹き出し、それを吸い取るように黛の練気が溜まっていく。
(そろそろか…)
ちょうど10体目を倒した直後、黛の刀身が発光し始める。練気が溜まったのだ。ドスジャギィは半分ほどになった自分の味方を増やすため上体を上げて「アッアッオーウ!!」と大きな鳴き声を発して味方を呼び寄せる。すると大量にジャギィやジャギィノスが現れ、その数は相当なものになった。
(目算で30体…。こいつ、巣にいる見方全部を呼び寄せやがったな)
ドスジャギィは普段3~5体ほどしか呼び寄せない。しかし、今回の戦闘場所は自分の巣であり、加えて敵は凄まじいスピードで味方を斬り殺していくのだ。ドスジャギィも生きるためにそれだけ必死なのである。
(だが、数が増えたところで俺には関係ない。黛の練気も溜まった。ここから一気に決めさせてもらう)
そうして刀夜は急にドスジャギィ達に背を向け、退路のない岩壁のコーナーへと走る。ドスジャギィ達がそれを見逃すはずもなく、刀夜を囲んであたかもドスジャギィ達が刀夜を追い込んだような図になる。そうしてドスジャギィ達が刀夜に一斉に攻撃を加えようとしたその時であった。
「お前ら、何勝った気でいるんだ?……俺がここに来たのは、お前ら全員まとめて、斬るためだ…」
そう言って刀夜は次々と向かってきたジャギィやジャギィノスに気刃斬りを繰り出す。それも1度ではなく3度。刀夜に真正面から突っ込んだ大量のジャギィやジャギィノスが避けられるはずもなく、かと言ってその凄まじい斬れ味にジャギィ達が耐えられるはずもなく、5~6体ほどが絶命する。
そして刀夜の攻撃はまだ終わらない。
「残った雑魚ども…まだこれで終わりじゃないからな…」
そう言って刀夜は黛で強力な気刃大回転斬りを繰り出した。気刃大回転斬りは攻撃力もさる事ながら、その攻撃範囲もかなり広い。これ程広範囲に攻撃できるのは近接武器すべてにおいて見てもこの技のみであろう。
そうして気刃大回転斬りはジャギィやジャギィノス達の生命力を容赦なく奪っていく。気刃斬りからの気刃大回転斬りのコンボは凶悪である。攻撃範囲、威力共に申し分なく、更に気刃大回転斬り後には黛の攻撃力も上昇するのだ。刀夜の猛攻が続き、遂にはその場に立っているのは刀夜とドスジャギィのみになった。
「残るは…お前だけだ」
そう言って刀夜は微笑する。刀夜の右手にある黛の刀身は、ジャギィ達の血によるものでもあるが、それに加え、黛自身の発光により真っ赤に染まっている。ドスジャギィは自分の部下達を殺された怒りからか、先程とは別物のスピードで体当たりをしてくる。
「スピードは中々のものだが、当たらなければ意味は無い」
そう言って刀夜は回避行動を取らず、横移動斬りにより、ドスジャギィの攻撃を避けると同時にうまく攻撃を加える。
ドスジャギィは刀夜に命中しなかった体当たりの勢いで一瞬体の自由が効かなくなる。そしてその一瞬を刀夜は見逃さない。
真っ赤に発光した黛の柄を両手で握り、ドスジャギィの頭部に強烈な気刃斬りを加える。するとドスジャギィはあまりの痛みに体を仰け反らせつつ後ずさる。よく見るとドスジャギィの頭部にあるエリマキが所々破れている。頭部破壊だ。
(部位破壊か、今が絶好のチャンスだなっ!)
刀夜は怯んだドスジャギィに更に気刃斬りを加え攻撃の手を休めない。そこから戦いは一方的になった。刀夜の猛攻はドスジャギィに攻撃のターンを与えず、どんどん体力を削っていく。そうして数分後。
「これで終わりだ」
刀夜が気刃大回転斬りをして黛を背中に直したところで「キャオッ…」という声が聞こえ、ドスジャギィはピクリともしなくなった。
「赤依頼、ドスジャギィの討伐、完了」
その声で、戦いは終わりを迎えた。
「…返り血でベトベトだな。早く帰って風呂に入ろう」
そう言って刀夜はドスジャギィの剥ぎ取りを行った後、ベースキャンプの方向へと歩み出すのであった。
ドスジャギィの巣であった場所は、今や斬殺された死体で溢れかえっており、まさに血の海となり果てていたのであった。
刀夜がドスジャギィを討伐して数時間、セントラル草原は夕暮れを迎え、辺りは燈色に染まっていた。
そして、そのセントラル草原にはドスジャギィの巣であった場所の方へと向かう4人のギルド調査隊の姿が見られる。
「ギルドマスター直々の依頼と聞いて何事かと思ったが、ドスジャギィの巣の調査…。俺らが向かう必要があるのか?」
「だよなローウェン。この前もカーディナル孤島の調査をさせられたばっかなのに…。俺、有休希望!」
「プロント、文句ばっかり言わないの!これも仕事なんだから」
「んな事言ったってよ…。でも、カーディナル孤島の調査は面白かったよなぁ。確かあの時もドスジャギィだったよな?」
「そうだね…。あれは本当に凄かった…」
今回派遣されたメンバーは前回、カーディナル孤島に派遣されたメンバーと同じである。大剣のエルザ、ハンマーのローウェン、ライトボウガンのプロント、狩猟笛のルーナ、4人が4人とも、その時の衝撃はまだ残っている。
「確かに凄まじかったな。だが、その人物は未だ謎のままだ。エルザが妹に頼み込んでまで探っているが収穫なしとはな…」
ローウェンがそう呟くとプロントが反応する。
「え?!エルザさんの妹さんにも手伝って貰ってるんですか?!確か、エリスさん、でしたっけ?」
「プロント、この話前にしたよ…。話聞いてなさすぎ…」
やれやれという感じでルーナが呟く。
そして、エルザも口を開く。
「私もここまで情報が得られないと思っていなかった。カーディナル孤島にある人間の生活区域はモガの村だけだ。そこに例の剣士がいると踏んでいたんだが…。エリスによるとそこにいたハンターは2人、1人はランク2になったばかりの新人ハンターらしい」
「ランク2ってことは、そいつが例の剣士じゃないんですか?ドスジャギィ討伐をしたはずでしょうし」
プロントがエルザに最もな質問をする。
「…プロントがまともだ」
「プロント今日どうしたの?」
「だから俺の扱い酷すぎるって…」
そうして項垂れるプロントを気にせず、エルザは答える。
「いや、その新人ハンターは片手剣の使い手らしい」
その答えに3人は納得し、今度はローウェンが口を開く。
「あれは太刀による傷跡だもんな。では、もう一人のハンターはどうなんだ?」
「いや、そちらはもっとありえない。何しろ、仮登録のハンターらしくてな。ちなみにその仮登録のハンターは本登録をするためにリエル王都にいるそうだ」
「なるほどな。仮登録のハンターがあれほどの傷跡を残したとは思えないな」
「そういう事だ。今もエリスに探ってもらっているが、手がかりは掴めていないのが現状だ」
「迷宮入りってことですか…。中々難しいですね…」
「ルーナの言う通りだが、前にも言ったようにあれほどの実力者だ。いずれ頭角を表すだろうな」
ローウェンがルーナにそう言う。
そんな話をしていると、プロントが急に真剣な表情になる。
「お喋りタイムはここまでみたいだ…。この先から血の匂いがする…。それも、1匹2匹の血の量じゃねぇ…。半端ねぇ量だ」
プロントは視覚と嗅覚が優れており、それを活かして危険を察知するのが
大変得意であった。普段は4人の中でいじられ役であるが、こういう場合には絶対の信頼を置かれている。
「みんな、気を抜くな。行くぞ」
エルザがそう言うと3人は頷いて、ドスジャギィの巣へと向かうのであった。
如何でしたでしょうか?
何か感想等あればよろしくお願いします。
次回はギルド調査隊の視点から始まります。
それではまた次話で会いましょう。