この小説を読んでいただき本当にありがとうございます。
今回は刀夜のドスジャギィ討伐について、様々な視点から描いております。
それでは第20話、張り切っていきましょう。
「っ!!なんだこれは…」
エルザが驚きのあまり本音を漏らす。他の3人も目の前に広がる後継に唖然としている。
「え、えげつねぇ…。自然災害レベルの惨劇だな…」
「な、何体いるんでしょう…」
プロントとルーナがポツリと呟く。
「パッと見たところ、30…いや、40体程だな…。それにジャギィやジャギィノスだけじゃない。ドスジャギィの死体もあるぞ…」
ルーナの疑問にローウェンが答え、そのまま続ける。
「死後3時間というところか…。エルザ、調査対象の人物は確か、今日[ドスジャギィの討伐]を受注したんだよな…?」
「あぁ…そのように聞いている。恐らく、あれはそのランク1のハンターが討伐したドスジャギィだろう…」
エルザのその答えにプロントが声を荒らげる。
「っ!!そんなのありえない!上級ハンターでもそんな短時間では無理だ!ドスジャギィに加え、こんな数のジャギィやジャギィノス、ましてやランク1のハンターが…ありえないだろ…」
興奮気味のプロントをルーナがなだめるように話しかける。
「落ち着いてプロント…。ですが、私も信じられません…。他の上級ハンターが通りかかったということはないんですか?」
「それはない…。今日セントラル草原での依頼を受注したのは全てランク1か2のハンターだったらしい。ましてドスジャギィの討伐を受注したのは1人だけだったそうだ…」
「嘘だろ…」
プロントが驚愕でその場に固まる。
「恐らく、性能の良い高級な防具を身につけていたんだろう…。これ程の数だ、無傷では倒せまい…。防御力が高ければジャギィやジャギィノスの攻撃であれば防げる。そのままゴリ押したってとこだろう…。その新人ハンターが貴族であるとしたらありえる話だ……っ!!」
ローウェンがそう話しつつ、ドスジャギィの死体に近づき、その傷跡を見たところでその表情は、更に驚愕の表情で染まる。
「エルザ、プロント、ルーナ!!これを見ろ!」
ローウェンのその声で3人はドスジャギィの死体へと駆け寄る。その傷跡を見て、驚きのあまり、3人は心中にこみ上がる感情を表現出来ないでいる。
しかし、プロントとルーナが「マジかよ…」、「信じられません…」と声をあげる中、エルザはどこか嬉しそうに微笑んでいるようにも見えた。
「やっと…見つけた」
「あぁ…。他のジャギィやジャギィノスの傷も同じだ。この斬り傷、間違いない。俺たちが探していたカーディナル孤島のやつと同じだ。だが…太刀筋は恐らく同じだろうが、今回のものはあの時よりも深い…」
「っ!ほ、本当ですね…。前よりも、強くなっているんですか…」
エルザは所持していた資料を腰につけたアイテムポーチから取り出し、受注者の名前を確認する。
「この人物がカーディナル孤島での、そして今回のクエスト受注者なのか…」
エルザの手にある資料には、クエスト受注者の欄に<キリサメ トーヤ>という文字が書かれていた。
日も暮れ、暗くなってきた頃、刀夜は依頼完了の報告も終え、現在ハンター専用の宿泊場所にいた。
返り血で全身真っ赤に染まったまま、依頼完了の報告をアイシャにするためにギルドへ行ったところ、「トーヤさん、大丈夫ですか?!というか、どんだけ赤いんですか!リオレウスもびっくりです!」と意味不明なツッコミが飛んできた。
そうして、それがドスジャギィらの血であることを説明し、ドスジャギィの皮を渡して無事討伐したことも伝えると「え…まだ一日も経ってないですよ…。そんなに早く終わっちゃったんですか…?」と驚かれた。刀夜にとって、この世界でのモンスター狩猟時間の基準など知ったことではなかった。前世では50分という短い時間で狩猟しなければならなかったのだ。
(まあ、あんなモンスター達をたった50分で狩猟しようというハンターが化け物なだけか…)
この世でドスジャギィをものの数分で討伐した、自分はどうなるのかは考えないことにした。
そんなこんなで刀夜は無事、ハンターランク2へと昇格した。
刀夜は宿舎で明日以降のことを考える。
「明日からランク2の依頼を受けられる訳か。早いところ上のランクに上がって受けられる依頼を増やしたいところだな…」
そう呟く刀夜の手には、ハンターランク2の証である黄色のプレートが握られている。
「ランク2からはキークエストもあると言っていた…。どうやって攻略していこうか…。ククク、やはり、クエストは楽しいな」
刀夜はそう言って微笑する。今後どのような依頼があり、どのようにモンスターと戦っていくのか、それを考えただけで心が踊る。
「明日はジャギィシリーズも作っておきたい。アイシャに聞いて武具屋に行かないとな…。ククク、自分で集めた素材で武具を作る、モンハンの醍醐味だな」
明日のことを考え、寝床につく刀夜であった。
時は遡り、刀夜の依頼完了報告を受けたアイシャがアリアノーラにその件を伝えようとしている。今日アリアノーラは受付嬢ではなく、別室で書類に埋もれ、その処理で身を粉にしていた。
「はぁ…量多すぎ…。これなら受付でハンターの相手してる方がマシだわ…」
アリアノーラの容姿は整っている。ハンターの中には野蛮な輩も当然いる訳で、毎日のようにアリアノーラはそういったハンターに口説かれていた。勿論アリアノーラはいつもの仕事対応で上手くかわしているが。
「あぁー!終わらない!もう嫌だぁー!」
そう言って、仕事を放棄しようか考えた時、扉がガチャと鳴って開く。
「アリア~!トーヤさんが帰ってきたよ~!すごく早いよね、リオレウスといい勝負!」
自分のことをアリアと呼ぶ人物は限られている。その中で、このようなキャラの濃い人物は1人しか思い浮かばない。
「はぁ…アイシャ、相変わらずだね…。急にどしたの?」
アリアノーラは疲れた様子でアイシャに問いかける。
「だから、トーヤさんが帰ってきたんだって!」
「あー、そういうこと…。彼、あの殺気からして実力あると思ったんだけど…。まだドスジャギィは早かったかな」
どこか残念な様子でアリアノーラは呟く。ランク1のハンターが初めてドスジャギィの討伐をする際、丸1日かかるのが当たり前である。こんなに早く帰ってきたのは、ドスジャギィに敗北したからであろうとアリアノーラは自分の中で結論づけた。しかし、次のアイシャの言葉で、その結論が早くも間違いであることがら証明される。
「一体どうやってあんなに早くドスジャギィを討伐したんだろう…」
「っ?!アイシャ、今…なんて言った…?」
「ん?だからどうやってあんなに早くドスジャギィを討伐したのかなって」
「えっ?!待って待って、彼ドスジャギィを討伐してきたの?!こんな短時間で?!まだ半日も経ってないじゃない!」
「アリア、ちょっと落ち着いて…。私も驚いたけど、これが証拠」
そう言ってアイシャは刀夜から渡されたドスジャギィの皮をアリアノーラに見せる。それを見たアリアノーラは更に驚愕の表情に染まる。
(間違いない…ドスジャギィの皮だ…。でも、信じられない…。この状況に頭がついていかないわ…)
アリアノーラは混乱している。
「アイシャ、彼が誰かから素材をもらって、それをあなたに見せたってことはない?」
依頼関係での素材やアイテムの受け渡しは重罪である。なによりハンターの間では、その行為は他のハンターを侮辱する最低最悪の行為とみなされている。そのため今まで素材やアイテムの受け渡しが行われた例はなかった。そんな行為を疑うほどまでにアリアノーラにとっては信じ難いことであったのだ。
「……それは絶対ないよ。トーヤさん、ギルドに入ってきた時ドスジャギィやジャギィ、ジャギィノスの返り血でリオレウスみたいに全身真っ赤だったし、なにより素材嬢度はハンターさんの間では最悪の行為。アリア、それを疑うのはトーヤさんに失礼、いや、侮辱に値するからね?」
真剣にそう述べるアイシャにアリアノーラは冷静になる。
「そ、そうよね…。ごめん、少し冷静じゃなかったわ…」
アリアノーラがそう謝るとアイシャは表情を緩める。
「分かってくれたらいいよ。でも、私もあの早さには驚いたよ…」
アイシャの普段の濃いキャラは素であるが、いざという時ほどしっかりしている。前世で多くのMHプレイヤーに好感を持たれた要因として、この部分が大きいだろう。
冷静になったアリアノーラはようやく状況を飲み込めるようになってきた。
(グライスさんが「トーヤが出発して半日ほどしてから調査隊を出すように」と言っていたけど、あれでさえ早いと思ってたのに…。それを上回ってくるなんてね…。彼の実力、本物みたいね…)
そしてアリアノーラは刀夜が帰ってきたことで優先すべき仕事が出来たことを思い出す。
「よし!そういう事なら私、やることが出来たから!アイシャ、悪いけどこの処理頼むね!」
そう言ってアリアノーラは部屋から出て、このギルドの2階にある、調査隊が仕事をする部屋へと向かう。
部屋を出る際後ろから「アリア、マジですか…」という声が聞こえたが、アイシャには後でご飯を奢ることで許してもらおうと考えるのであった。
如何でしたでしょうか?
ギルドの建物の構造を説明し忘れていたのでこの場で説明しておこうと思います。
1階→クエストカウンター、その奥に色々な部屋が諸々あります(ちなみにギルドマスターの部屋はこちらではありません)
2階→ギルド調査隊の仕事部屋
3階→ギルドナイトの仕事部屋
4階→会議室
5階→ギルドマスターの部屋
こんな感じです。頭に入れておくとイメージしやすいかもしれません。
では、また次話で会いましょう。