この小説を読んでいただき本当にありがとうございます。
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では第21話、張り切っていきましょう。
「武具屋はどこにある?」
早朝、刀夜はギルドで、アリアノーラに武具屋の場所を聞いていた。
アイシャはというと、今日はギルドで働いていないらしい。昨日アリアノーラに押し付けられた仕事で夜遅くまで働いていたらしく、今日は臨時休暇を貰ったそうだ。
「武具屋ならここを出て右手に行っていただき、一つ目の角の所にあります。ですが、こんなに朝早くから行っても、武具屋は空いていませんよ?」
アリアノーラの言葉には、どこか棘があるような気がした。彼女の目元には若干クマができている。実は彼女も別件で、遅くまで働いていたのだが、そんなことは刀夜の知ったことではない。気にせず刀夜は続ける。
「そうか…まあ場所の確認だけしたかった。空いてなくてもいい。それと、アイテムを買えるような施設はないのか?」
刀夜は今まで、カーディナル孤島で採取したアイテムを手に狩猟していた。薬草とアオキノコを調合して作った回復薬が代表的だが、そもそも、刀夜はこれまでモンスターの攻撃を受けていないので、使う機会はなかったが…。
それでもこれからの狩猟では必要になってくるであろうものである。今まで通り、調合して、すべてのアイテムを賄う、というのは些か難しいと感じたのだ。
「そう言えば、トーヤさんはリエル王都、初めてだったんですね。なら、ハンターがよく利用する施設の場所を示した地図をお渡ししておきます」
「どうぞ」と、アリアノーラに渡された地図を受け取る。
「これは助かる」
地図を見ると、そこにはギルド、武具屋、雑貨屋、それに闘技場といった場所が記されていた。
「俺の用はそれだけだ。それじゃあな」
そう言って、刀夜は自分の用が済んだので、ギルドカウンターから離れようとした時である。
「ちょ、ちょっと待って!1つ、お聞きしてもよろしいでしょうか…?」
アリアノーラの口調が変わった。刀夜は地図を受け取った礼もあり、話を聞くことにする。
「なんだ?」
「……ドスジャギィ、本当に昨日、討伐されたんですか…?」
「当たり前だろ」と刀夜は内心で思いつつ、意味不明な質問をするアリアノーラに返答する。
「質問の意味がよく分からないが、俺が昨日討伐した。何ならドスジャギィの素材を見せようか?」
そう言って、アイテムポーチに入っていた、ドスジャギィの爪をアリアノーラに見せる。
「ありがとうございます…。申し訳ありません」
アリアノーラは、刀夜を疑ったことに対して謝ったのだが、当の本人は謝られたことに疑問の様子である。
「何に謝っているのかは知らんが…聞きたいことはそれだけか?」
「あと一つだけ…。こちらは質問ではありません。トーヤさん、あなたに会いたいとおっしゃっている方達がいるそうです」
「断る」
即答である。面倒事に違いないと思ったからだ。
あまりの早さにアリアノーラは唖然とするが、彼女は彼女でここでは引き下がれず、言葉を続ける。
「と、とりあえず、話を聞いていただけませんか?トーヤさんにとっても良い機会だと思います」
自分に利点がある、その言葉で刀夜はとりあえず話を聞くことにする。
刀夜が無言になったことで、話は聞いてくれるだろうと思ったアリアノーラは口を開く。
「その方達はハンターランク5のハンターでありながら、ギルドの調査隊としても活動しています。"豪炎"のエルザ、"衝撃"のローウェン、"必中"のプロント、"吹弾''のルーナ、ご存知ありませんか?」
「残念ながらご存知ないな。生憎、そういう知識に関しては疎いんでな」
恐らく有名なハンターなのだろうが、刀夜は他のハンター事情など、気にしたことがなかった。
「そうですか…かなり有名な方達なのですが…。まあ、それは置いといて、その方達があなたに会いたいと仰っているのです。トーヤさんにとっても有益な情報を得られるかもしれませんよ?」
有益な情報、その一言で刀夜の心は揺れ動く。
(それは、ぜひとも聞いておきたい…。ランク5のハンターか、確かに多くの情報を持っていそうだ…。特に面倒事を押し付けられた訳でもないしな。会うだけ会っとくか)
「会うだけなんだな?面倒事とかはごめんだぞ」
「はい。会いたい、その一言だけお聞きしております。了承していただけますか?」
「それだけならいいだろう」
そう言って刀夜は了承する。
「分かりました。では、夕方このギルドへとお越し下さい。……話している内に時間も経ちましたね。私からの要件は以上となります。トーヤさん、ありがとうございました」
「面倒事が無ければそれでいい」
「心に留めておきます。そろそろ武具屋も空いているでしょう。行ってらっしゃいませ」
そう言ってアリアノーラは刀夜を見送る。刀夜は素材を持って武具屋へと向かうのであった。
ギルドでのアリアノーラとのやり取りを終え、刀夜は現在、武具屋の前に来ていた。店からは微かに鉄の匂いが漂っており、カンカン、という音が聞こえる。恐らく、もう店は空いているのだろう。
刀夜は扉を開ける。中に入ると店の壁には沢山の防具や武器が並んでいた。どれもゲームで見たことがあり、序盤で使うような物ばかりであった。それだけで刀夜の心は弾んだが、今回来たのは、これらを買うためではない。刀夜は店の奥にあるカウンターへと向かう。
カウンターには誰もおらず、奥からはカンカンという音が聞こえる。奥で仕事をしているのだろうと思った刀夜は、口を開く。
「誰かいるか?防具の生産を頼みたいんだが」
すると奥から、油で顔を汚した大男が現れる。身長は、2mにも達するほどであろう。身につけていた軍手とゴーグルを取り、大男は口を開く。
「いらっしゃい。こんな時間にハンターが来るなんて珍しいな。まあ、それはいい。防具の生産だったか?」
「あぁ、ジャギィシリーズを作って欲しい。素材、これで足りるか?」
刀夜は大男に、ゲームにおいて、ジャギィシリーズを作るために必要な分の素材を渡す。
「おぉ、足りるとも。ピッタリだ」
刀夜は「やはりそうか…」と呟く。
(この前のハンターシリーズもそうだったが、ゲームと必要な素材は同じなのか。今後も意識しておこう)
そうして刀夜はこの世界のお金、ゼニーも渡す。お金に関しては、依頼報酬で幾らか貰ったので、しっかり支払うことができた。
「では、これで頼む。いつ頃できそうだ?」
「明日には出来てるぜ。毎度あり」
刀夜は一瞬、黛についても強化できるか聞いてみようと思ったが、なんと言っても、周りの反応から判断する限り、一般的に知られていない武器のようだ。それに、アルバトリオンの素材を使った武器を見せるのは、あまり良くない気がしたのでやめておいた。
そうして刀夜が武具屋を後にしようとして、大男に背を向けた時である。大男は刀夜の背中にある、黛がたまたま目に入ったのだ。それを見て、大男は声を上げる。
「ちょっと待て!その背中にある武器、見せてくれねぇか?」
刀夜はピクっとして立ち止まる。
「…急にどうした?」
「いや、俺は長年この武具屋をやっているが、そんな武器は見たことなくてな…。どういう武器か、気になったんだ。少しだけ、見せてくれねぇか…?」
刀夜は悩む素振りを見せる。見せて欲しい、と言われて刀夜は、大男に面と向かって断る理由を持ち合わせてはいない。「アルバトリオンの素材を元にした武器です」とは口が裂けても言えないからだ。かと言って、黛は意志を持った太刀であり、それを扱うには、それ相応の覚悟が必要であるとのことだ。手に持たせるのはまずい気がした。
「見せるだけならいい…。が、触らせることは出来ない。それが条件だ」
「あぁ、十分だ」
大男の返答を聞き、刀夜は背中の黛を引き抜く。すると同時に、漆黒の刀身が顕になる。
「これで満足か?」
黛を見て、大男は驚愕で目を丸くする。
「っ!!お前…そいつぁ相当な業物だろ…?」
「…見ただけで分かるのか?」
刀夜は人目見て、黛を業物と言い当てる大男を感心している。
「長年武具屋をやってきたんだ、それくらいはどうってことないさ…。それにしても、それ程の物は今まで見たことがない…。ジャギィシリーズを欲しがるようなハンターが、何故そんな業物を持っているかは知らんが…大切にしろよ」
「あぁ…こいつは、俺の愛刀だからな」
そう言って刀夜は黛を背中に直す。余計な詮索はしてこないようで、刀夜にとってはありがたかった。
「お前、名前は?」
大男に名前を教える義理はなかったが、この大男なら教えても悪い気はしなかった。
「…トーヤだ」
姓を言うと、また東洋の下りがありそうだったため、名前だけを伝える。
「トーヤか、覚えておこう。俺の名はアイアンだ。武具に関しては任せておけ。生産、強化をしたい時はここに来るといい」
「よろしくな」とアイアンが言うと、刀夜は軽く頷いて武具屋を後にするのであった。
刀夜は武具屋を出てから、今まであまり見れていなかったリエル王都をぶらぶらとしていた。
アリアノーラからもらった、地図を手元に様々な施設を見て回る。
施設を見終わると、昼ごはんを食べ、今度は宛もなくリエル王都内を歩く。
前世において、自由に外を見て回る、という経験がなかった刀夜にとって、リエル王都の散歩は新鮮そのものであった。
「自由、か…。案外暇なもんだな。だが、心が落ち着く…」
青空の下で独り、笑い声や雑談、店の呼び込みなどでザワザワとしている、中世風の街並みを歩く。
傍から見れば、孤独なようにも見える。だが、今はその孤独が刀夜にとって、心地よかった。
何も気負うことなく、何にも怯えることなく、ただひたすらに暇を持て余す。そんな時間は刀夜にとって、かけがえのないものであるように思えた。
「モンスターの狩猟中も楽しいが、これはこれで、また違った楽しみがある…。前世では考えられないような生活だな…。本当に、転生できて良かった…」
そんなことを呟きつつ、ただただ刀夜は歩く。
そうしている内に、あっという間に時間は過ぎ去っていき、そろそろギルドに向かわなければならない時間になろうとしていた。
「さて、そろそろギルドに向かうか。ランク5のハンターか…。どんな情報が得られるだろうか…。ククク…楽しみだ」
小さな自由を存分に楽しんだ刀夜は、ギルドへと向かうのであった。
如何でしたでしょうか?
今回は少しほっこりとした感じも入れてみました。
それでは、また次話で会いましょう。