この小説を読んでいただき、本当にありがとうございます。
今回、長くなってしまったので2話に分けました。
それでは第22話、張り切っていきましょう。
「おい、まだ来ないのか?」
「仕事で少し遅れるとの連絡は頂きましたが…私もそれしか知らないもので…。申し訳ございません…。もう少しだけ、お待ちください…」
外は夕方、ではなく、太陽が沈みまもなく夜を迎えようとしていた。
現在、刀夜はギルドカウンターにて、アリアノーラを問い詰めている。問い詰めている内容は勿論、刀夜に会いたいと言ってきた4人が、いまだ現れていないことであった。
自分が会いたい、と言ったならまだしも、向こうが望んで刀夜をギルドに呼び寄せたのだ。それで約束の時間に遅れてくるというのは、刀夜にとっても不愉快極まりないものであった。
そうして待つこと1時間ほど、今までなんとかアリアノーラが刀夜を引き止めていたが、刀夜は明日の朝が早いこともあり、帰ることにした。
「悪いが明日も早いんでな。これ以上は待てない。帰らせてもらう」
「ちょ、ちょっと待って!もう来るから、だからもうちょっとだけ!」
口調が普段のものになっていることなど気にもせず、アリアノーラは刀夜を必死で引き止めようとする。
だか、そんなアリアノーラを意にも介さず、刀夜が出口へと歩を進めようとした、その時であった。
「ギィ…」と扉が開き、外からギルドの中に4人が入ってくる。丸テーブルで酒を飲んだり、雑談をしていたハンター達はその4人を見て驚きの声を上げる。
「おい!あれ、"豪炎"のパーティーじゃねぇか?!」
「マジかよ…。''必中''に''吹弾"、''衝撃''までいるのか…。最近見ないから死んだとまで俺は聞いていたが…」
「バカやろう!ランク5だぞ?全員リオレイアをソロで倒す、化け物みたいな実力持ってんだ、そう簡単に死ぬかよ!」
「"豪炎"の背中にある大剣…。あれ、炎剣リオレウスか?それに、他の3人の装備もよく見るとえげつない…。あれ全部本物かよ…」
4人を見て、ギルド内はザワザワし始める。
そんな中、刀夜はというと、1人静かに思考を巡らせていた。
(あれが俺に会いたいと言ってきた奴らか…。4人が4人とも、俺の見たことがある武器だな。ただ、どれもゲームでは、下位の素材で強化できるものばかりだ。この世界にはG級はさておき、下位と上位の区別もないということか?それとも…)
MHをプレイしたことがある人にとっては周知の事実であろうが、ゲームにおいては、ハンターランクによって下から順に、下位、上位、そしてゲームによっては更に、G級に分けられる。
ゲームでは、下位クエストと上位クエストで、狩猟するモンスターの種類はさほど変わらない。下位クエストには下位クエストのリオレウス、上位クエストには上位クエストのリオレウスがいる、といった感じである。
しかし、下位と上位のクエストでは難易度がまるで違う。下位と上位では、そのモンスターの強さが段違いなのだ。
その代わり、上位のモンスターからは希少で高価な素材が入手でき、武具を更に強化できるようになる。武具の幅が広がるのだ。
そんな下位と上位の違いであるが、この世界にはその区別がないのだろうか、と刀夜は疑問に思う。しかし、答えがすぐに出るとは思わなかったため、そこでその思考を打ち切り、別のことを考える。
(にしても、ランク5で下位の装備なのか…。益々黛の事は、人前では話せなくなったな)
そんなことを考えていると、燃えるような赤い長髪の女性が、アリアノーラのカウンター前にいた刀夜に話しかける。
「お取り込み中すまない。こちらの受付嬢に少々急用があってな…。少し変わって頂けないだろうか?」
刀夜は急用、と言われおそらく自分のことだろうと思ったが、少々目立ちすぎる彼女らと、この場で話し合うのは気が引けた。そのため余計なことは言わないことにした。
「あぁ、大丈夫だ。今帰ろうとしてたところだからな。では俺はこれで失礼する」
そう言って立ち去ろうとした刀夜であったが、アリアノーラはそれを見逃してはくれなかった。
「トーヤさん、待ってください!」
トーヤ、と聞いて明らかに4人がピクリと反応する。口を開いたのはプロントであった。
「おいおい、トーヤってまさか…。アリアちゃん、このちんちくりんが、あのキリサメトーヤなのか?」
最近筋力がついてきたと言っても、元々引きこもりであった刀夜の体格は、お世辞にもがっちりしたものとは言えなかった。それに刀夜の身長は160cmほどであり、ルーナとあまり変わらないくらいであった。ちなみに、エルザの身長は170cm弱という高身長である。
「ちょっとプロント!失礼すぎ!」
ルーナがプロントの発言に非難の声を上げる。
刀夜はというと、前世で自分に対する罵詈雑言には慣れたものであったため、特に気にした様子はない。
そんなことよりも刀夜は、勝手に揉めないでくれ、とため息を付いている。
「プロントさん、アリアノーラです。それと、ここでは少々目立ちます。奥の部屋でお話を致しましょう。トーヤさん、よろしいでしょうか?」
アリアノーラはそう言って、刀夜に確認を取る。
「色々言いたいことはあるが…。ここでは目立つというのは同感だ。とりあえず、この場から離れたい」
そう言う刀夜にプロントは何か言いたげであったが、アリアノーラに制止される。
「プロントさん、言いたいことは奥の部屋で言ってください」
「…分かったよ」
アリアノーラは刀夜を含めた5人を奥へと誘導する。刀夜はというと、アリアノーラの気遣いに少し感謝していた。あの場で話し合うとなると目立ちすぎるため、刀夜にとってはストレスでしかなかった。
そうしてアリアノーラを含めた6人が部屋の中へと入る。その部屋は、刀夜がギルドマスターであるグライスと会った場所であったが、グライスはいないようだ。疑問に思う刀夜に答えるように、アリアノーラが口を開く。
「この部屋は応接室となっております。ギルドマスターの部屋はこの建物の5階でございます」
「なるほど、そういうことか…」
刀夜が納得すると、アリアノーラは「では私はこれで」と言って部屋から出ていった。部屋にいるのは5人となり、まずエルザが刀夜に話しかける。
「君が、キリサメトーヤだったのか…」
「あぁ、俺はお前らが誰だか知らんがな」
その言葉にプロントが噛み付く。
「おい…。さっきからなんだよ、その感じ。お世辞にも好感が持てるとは言えねぇよな」
「プロント、喧嘩腰で話すのはやめなよ…。すいません…」
「俺は気にしてない。別に好感を持ってもらおうなんて思ってないしな。それに、約束の時間に遅れるような奴らに好感が湧くわけないだろう」
「っ!!…そういう所が気に食わねぇって言ってんだよ…」
そんなやり取りを見かねたローウェンが口を開く。
「プロント、その辺にしておけ。彼の言うことは正論も正論、どう考えてもこちらが悪い」
ローウェンがそう言うと、プロントは「ちっ…」と舌打ちすると、口を閉じた。そうして今度はエルザが口を開く。
「遅れてしまい本当に申し訳ない。少々仕事が長引いてしまってな…。どうか許して欲しい…」
エルザの謝罪の言葉にローウェンとルーナも頭を下げる。プロントはふてぶてしいままであった。刀夜は、このままでは話が進まないため話題を切り替えることにする。
「まあ、別に気にしてない。それよりも、お前らのこと、ランク5のハンターってこと以外何も知らないんだが」
「本当に俺たちのこと、何も知らないのかよ…」
小さく呟くプロントを尻目に、ローウェンが口を開く。
「すまない、自己紹介から始めようか。俺の名前はローウェン=マクスウェル、ハンマーを主に使っている。武器も防具もウラガンキンのものだ。そして、こいつはプロント=テック、ライトボウガンの使い手だ。こいつはリオレイアの装備だ」
ローウェンがプロントの紹介も同時にする。プロントはまだ機嫌が悪いようだ。
「私はルーナ=フルーレ、狩猟笛を使わせていただいてます。装備はティガレックスのものです。よろしくお願いします」
笑顔でルーナは自己紹介する。不機嫌そうなプロントとは対象的な印象である。
「最後に私だな。私はエルザ=レッドローズ、このパーティーのリーダーをしている。この通り、大剣を使っている。装備はリオレウスのものだ。改めて遅刻にせよ、うちのプロントにせよ、数々の非礼を謝罪させてくれ。すまなかった」
エルザの言葉でプロントがまた噛みつきそうになったが、ローウェンが制止している。
(っ!!レッドローズ…。確か、エリスの姓もレッドローズだったな…。後で少し聞いておくか)
そんなことを考えていると、周りには話を聞いていないと思われたのであろう。プロントが口を開く。
「おい、お前なんとか言えよ」
「あぁ、すまない。別に聞いていなかった訳では無い。少し考え事をしていただけだ」
素直に謝罪する刀夜にエルザが話しかける。
「すまない、君の紹介もしてもらえないだろうか?」
「そうだったな…。俺の名前は霧雨 刀夜、武器はこの太刀を使っている。この通り、防具はハンターシリーズの駆け出しハンターだ。何故お前らのようなランク5のハンターが俺に会いたがったのか、今でも謎に思っている」
「「「「っ!!」」」」
4人が4人とも、刀夜の自己紹介に驚いている。そして、ローウェンとルーナが刀夜に疑問をぶつける。
「ま、待て…。ドスジャギィ討伐の時も、防具はハンターシリーズだったのか…?」
「そ、それに、よく見ると背中の武器…。太刀だとは思っていましたが、見たことのないものです…」
ルーナの反応は予想していたものだが、ローウェンの質問は刀夜に疑問が浮かぶものであった。
「ルーナ、だったか…。お前の質問には正確な答えを返しかねる。ただ、俺の愛刀、とだけ言っておく」
「そ、そうですか…」とルーナは無理やり納得する。刀夜は「そして…」と続ける。
「そして…ローウェンの質問だが…。俺から質問だ。何故、俺がドスジャギィを討伐したことを知っている?」
その刀夜の疑問にエルザが口を開く。
「その質問には私が答えよう。私たちはランク5のハンターであると同時に、ギルドに勧誘され、調査隊としても活動している」
その情報はアリアノーラから聞いていたため、刀夜は頷く。
「で、今回はセントラル草原の調査を任されていた。そこで凄まじいドスジャギィの死体を発見してな…。ハンターの実力は、モンスターの死体を見ておおよそ予測はつく。今回君に会いたいと言ったのは、あのような実力を持つものを実際に見てみたい、という個人的な興味だ」
刀夜は「なるほど…」と言いつつも、頭の中では違うことを考えていた。
(それは迂闊だったな…。前に黛にも言われたが、恐らく俺のゲームと同じ動きは、この世界ではかなり上位のものに位置するのだろう…。これで変に目をつけられるのも困るな…。まあ、過ぎたことを後悔してもしょうがないが…)
そこで刀夜は思考を打ち切り、口を開く。
「なるほどな。だが、買い被りすぎだ。ローウェンの質問だが、確かに俺はハンターシリーズでドスジャギィを討伐した。でも、それは運が良かっただけだ」
そこでプロントが声を荒らげる。
「ふざけるのも大概にしとけ!ドスジャギィだけならともかく、あれほどのジャギィやジャギィノスがいて、ハンターシリーズの防御力で、大きな怪我もせず帰ってこれるわけがねぇ!」
「プロント、落ち着いて…」
そこでローウェンが、何かに気づいたように口を開く。
「待てプロント…。つまり、
「そ、そんなまさか!」
そう言って4人は刀夜の方を見る。刀夜はというと、今にもため息を付きそうであった。
(待て待て待て…。そんなに、この世界における俺の動きはおかしいのか?ゲームだとそれくらいの技術を持ったプレイヤーは山ほどいたぞ…。しかし、そうだとしたら、相当面倒だな…。だが、もはや言い逃れも出来そうにもない…。はぁ…やはり来なければよかったな。いや、時間の問題でもあったか…)
そんなことを考えつつ、刀夜は白状する。
「確かに、攻撃は受けていないな」
「「「「っ!!」」」」
刀夜のその言葉に4人は唖然とする。そしてプロントがまたも声を荒らげる。
「そんなの…信じられるかよ!バカバカしすぎるな!俺はもう帰らせてもらう!」
「ちょっとプロント!」
そう言ってプロントが刀夜の横を通り過ぎる時、「俺はお前を認めない…」と一言言って、部屋を出て行った。
「騒がしいやつだな」
「本当にすまない…。普段はああじゃないんだ…」
「大丈夫だ。気にしてない。だが、この事はあまり他言して欲しくない。俺は面倒事が嫌いでな、1人でやりたいように生きたいんだ」
謝罪するエルザに刀夜はそう返す。
「あぁ…ギルドにもこの事は伝えないでおく。だが…正直なところ、私も信じられないな…」
「別に信じてもらう必要も無い」
そう言い切る刀夜にエルザと他2人も無言になる。
そして少ししてから、エルザが口を開く。
「しかし、カーディナル孤島でも調査した時に、同じような傷跡のドスジャギィの死体を見たことがあるんだが、傷跡を見たところ、あれも君がやったものだろう?」
「っ!!…あぁ、そうか。傷跡で分かるんだったな…」
内心で「まずいな…」と思う刀夜を安心させるように、ルーナが言葉をかける。
「その件に関しては大丈夫ですよ。ギルドにはうまく報告しておきましたから」
「本当か?それは助かる。ありがとな」
刀夜は3人に感謝の言葉を述べる。それにより少し場が和んだが、次の刀夜の発言で、再び場が驚きに包まれることになる。
「そう言えば、エルザは姓がレッドローズだったな。エリスの姉か何かか?」
「い、妹を知っているのか?!」
「やはり血縁関係だったか」
「そうだ…。エリスはれっきとした私の妹だ。それよりも、何故トーヤがエリスを知っている?!」
刀夜は「雲行きが怪しくなってきたな…」と思いつつ、正直に答える。
「何故?そりゃ知っているだろう。なんせ、エリスには俺が
「「「っ!!」」」
再び3人は驚きに包まれるのであった。
如何でしたでしょうか?
続きは少しお待ちください。
それではまた次話で会いましょう。