孤高剣士の歩む道   作:O.K.O

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こんにちは、O.K.Oです。
この小説を読んでいただき本当にありがとうございます。
感想があればどんどん書いてもらえると嬉しいです。

さて、第5話ですね。主人公やっと戦います。


第5話 黛(まゆずみ)の威力と出会い

エリア6から崖伝いに歩くこと数分であろうか、エリア5に到着するまでそれほど時間はかからなかった。未だに空は夕焼けによる橙色のままであり、ゲームにおいては昼と夜しか存在しなかったため、刀夜にとってその景色は新鮮そのものであった。刀夜は崖から降りようと足場や岩の突起を探す。

 

「ここから地面まで大体5メートル程か…。エリア6ほど側面は険しくないが、気をつけて降りよう」

 

そう呟きつつ丁度降りられそうな場所を見つけ、降りようとした矢先、真下でジャギィが3体ほど細長い尻尾を地面に寝かせ休んでいる様子が見えた。

 

「エリア6にある巣の見張りといったところか…丁度いい。こいつの威力がどれほどか確かめてみるか」

 

そう言いつつ刀夜は背中に掛けた黛に手をかけ、柄の感触を確かめた。

 

「あの時は頭痛のせいで気づけなかったが、黛…予想以上にしっくりくる」

 

刀夜は抜刀攻撃をするため黛から手を離し、下のジャギィ3体に気づかれないよう慎重に崖を降り始める。そうして地面とあと2メートル程のところまで降りた刀夜は1番近くにいたジャギィに狙いを定めた。

 

「さて…ひと狩り行こうか!」

 

刀夜は真下のジャギィ1体に飛びかかり抜刀攻撃を仕掛けた。太刀を抜くと同時に、黛の畳まれていた漆黒の刀身があらわになる。突然の敵の出現、それもジャギィにとって頭上という死角からの完全な不意打ちであったため、刀夜が狙いを付けたジャギィがその攻撃に対応できるはずもなかった。

 

ザシュッ…!

 

そんな音が静かなエリア5に響く。それと同時にジャギィの身体から真っ赤な鮮血が吹き出す。

 

「ギャオゥゥ…」

 

刀夜に斬られたジャギィは呻き声のような声を小さく発し、絶命した。

 

(これは…予想以上の斬れ味だ。ゲームにおける漆黒爪の斬れ味は白、流石と言わざるを得ないな…。まるで豆腐を斬ったような感触だった…。それにこの攻撃力、ジャギィと言えど一撃とはな…)

 

それは刀夜にとって初めての狩りであり、初めて他の生命を奪った瞬間でもあったのだが刀夜はそのことに対する罪悪感を感じてはいなかった。それどころか、黛の太刀としての性能を冷静に分析していた。

仲間の1体が殺され、初めて刀夜の存在に気づいた残り2体のジャギィ達は、敵討ちをしようと刀夜に襲いかかる。

 

(太刀と言えば…やはりこれだな)

 

そんな2体が襲いかかってきても刀夜は至って冷静であった。刀夜は2体を同時に倒さんと、太刀の十八番でもある気刃斬りを繰り出す。

 

ブシュッ…!

 

その気刃斬りは見事ジャギィ2体に命中し、両者とも既に冷たい地面の上で絶命していた。刀夜は3体が死んだことを確認すると黛にべっとり着いた血を振り払い、畳んで棒状にして背中に掛けた。

 

「まさかこれ程とは…。斬れ味、攻撃力共に申し分ない。武器として最高の役割を果たしてくれたな。これはこれからも期待できそうだ、ククク…」

 

刀夜は言い知れぬ高揚感に包まれていた。予想を上回る武器の性能に笑みがほころぶ。更に、刀夜は幼い頃から無力で、されるがままの暴力を受けてきた。そんな刀夜にとって、敵に暴力を振るうという行為は大きな快感であったのだ。

実は、これが刀夜が前世でMHの世界にのめりこんだ大きな理由でもあり、また黛が言っていた黒い感情もそれと同じで、自分の敵《モンスター》を蹂躙する快感のことであった。そのことに刀夜は自覚することなく、初めての狩りを終えたのだった。

 

「さて、これからどうしようか…。そろそろ暗くなってきたな。ここで野宿して、寝ている間にモンスターの餌になるわけにはいかないし…」

 

刀夜は呟く。

 

「ベースキャンプで寝泊まりするか…?いや、今俺はハンターではない。クエスト中のハンターと鉢合わせて、ギルドに報告されると後々面倒だ…」

 

ベースキャンプとはハンターズギルドに所属するハンターが、クエスト中の疲れを癒したり、そのクエストに対する支給品がギルドから届けられる場所でもある。刀夜のようなハンターではない人間が勝手に寝泊まりしていい場所ではないのだ。だが、刀夜が懸念しているのはそういうことでは無かった。

 

「問題を起こしてハンターになれない、という自体は絶対に避けたい」

 

そう、刀夜はこの世界でハンターになるつもりであった。ハンターになればギルドからの支給品を受け取れるだけでなく、狩場への移動手段も与えてくれる。凍土や火山といった過酷な環境に1人で歩いて向かうのは、流石の刀夜も気が引けた。更に、刀夜は他人との関わり合いをできるだけ避けたがっていたが、ハンターとして生きるために情報は必須である。その情報が得られるギルドには最低限所属する必要があると考えていたのだ。

 

「だが、このままここにいるわけにもいかない。それに他に行く宛もない…。とりあえずベースキャンプに向かうか。最悪、人がいても情報くらいは得られるはずだ」

 

そうして刀夜はベースキャンプを目指し、初めての狩場となったエリア5を後にした。刀夜が去ったあと、エリア5では3体のジャギィから流れ出た鮮血が水場に流れ込み透明な水を朱色に染めて上げていたのであった…。

 

 

 

日が完全に落ち、辺りはすっかり暗くなっていた。そんな中、刀夜はベースキャンプと思われる(・・・・)場所に到着した。

 

(テントやアイテム支給BOX、アイテム納品BOXがないだと…。それに…)

 

刀夜にとって想像していた光景と違い、そこには寝る場所も、アイテム関係のBOXも設置されていなかった。そしてそれ以上に気になったのは、刀夜の視線の先に彼に背を向け佇んでいる屈強な男がいたことである。

 

(いつかはこの世界の人と話す必要があるとは思っていたが…)

 

刀夜は思考を巡らせる。

 

(正直気はあまり進まない。だが、このまここから立ち去るわけにも行かないだろうな…。まあ、万が一があっても俺には黛がある…)

 

先程ジャギィ3体を黛で殺した刀夜ではあったが、流石に人間を斬ることには躊躇いがあった。黛を使うのは本当に万が一の時ではあるが、その覚悟もする必要があると刀夜は考える。そうして覚悟を決めた矢先、ふとある疑問が刀夜に浮かぶ。

 

(待て、それよりもそもそも日本語が通じるのか…?)

 

刀夜に浮かんだ疑問は最もなものであった。この世界の共通言語が日本語であるという保証はどこにもないのだ。そうして刀夜が佇んでいる内に、男が振り返り刀夜の存在に気づく。

 

「ん…?人がいたのか」

 

その言葉、日本語を聞き、先程までの刀夜の心配は杞憂に終わる。それと同時に男の容姿を見て刀夜は目を見開いた。

 

(あいつは…確かMH3に出てくるNPC、モガの村の村長の息子だったか。なるほどな、てことはモガの村が存在しているのか…?)

 

そうして刀夜は村長の息子と思わしき男に声をかける。

 

「あぁ、気にするな…。それよりも1つ聞きたいことがある。この近くに村はあるか?」

 

無愛想に質問する刀夜に、男は答える。

 

「ん?モガの村のことか?それならここからすぐ近くにあるぞ。この島唯一の村だから俺が知らない人はいなかったはずなんだが…お前さん、観光客には見えないがどこから来た?」

 

その男から敵意に似た感情は感じられず、純粋な疑問だと判断した刀夜は前もって用意していた返答を述べる。

 

「船に乗っていたがその船が事故にあって沈没…気づいたらこの島に漂流していた…」

 

刀夜の返答に男は納得する。

 

「なるほどな、どうりで見ない顔なわけだ。大変だったんだな…。お前さん、これからどうするつもりだった?」

 

「…今日はここで野宿、だろうな。その後に関しては…考えていない」

 

男は少し考えた素振りを見せ、刀夜に提案する。

 

「…なるほどな。…よし!そういうことならモガの村に来てみないか?」

 

「…いいのか?」

 

刀夜にとっては願ってもいない提案であったが、それと同時に出会ったばかりの刀夜にそんな提案をした男に不信感を抱く。そんな刀夜の様子に気づいたのか、男はこう続ける。

 

「まあもちろんタダで、って言うわけにはいかない。村で過ごす間はそれ相応に働いてもらう。実はな、ここに新しくベースキャンプを作ろうと思っていたんだが、どうにも人手が足りなくてな…」

 

男が困ったようにそう言うと、刀夜は利害関係が一致したその話に納得の表情を浮かべる。

 

「なるほどな。そういうことなら…手を貸そう」

 

その返答を聞き男は笑顔で刀夜に感謝を述べる。刀夜としては利害関係が一致しただけなので何故その男が自分に感謝の念を示したのかが分からなかった。

 

「よし!そうと決まれば!俺の名前はケイル=バーン、モガの村の村長ロイス=バーンが俺の父親だ。何かわからないことがあれば気軽に聞いてくれ」

 

(やはり村長の息子だったか…。名前までは知らなかったが)

 

「霧雨刀夜…霧雨は姓、名が刀夜だ」

 

「名が後ろなのか。トーヤは東洋系の人間か?」

 

恐らくこの世界において東洋の人がそういう名の付け方なのだろう。そう判断した刀夜はケイルに話を合わせる。

 

「まあ、そんなところだ…」

 

「そうかそうか!まあ、これからよろしくな!」

 

ケイルは笑顔で刀夜に右手を差し出す。それを見て刀夜はゆっくりと右手を差し出し、その手を掴み軽く握手する。刀夜は手を離したあと、一つケイルに伝えておく。

 

「ケイル…今のこの感じからして気づいているとは思うが、俺は人付き合いが苦手だ…。だからベースキャンプの設置やその他の仕事も全て俺一人でさせて欲しい…」

 

本音はできるだけ他人と関わりたくないからであったが、人付き合いが苦手なのは事実であるため嘘をついてはいなかった。刀夜にとって人間は信じられないものであり、1人で自由に過ごした方が何倍も有意義だと考えていた。そうしてケイルに告げると、次の彼の言葉に刀夜は驚嘆で柄にもなく固まってしまった。

 

「人付き合いが苦手なことは気にしなくていい。村のみんなは暖かくトーヤを歓迎してくれるはずだ。しかし、そうか…。実は最近ギルドから派遣された新人ハンターがいてな、彼と一緒に働いてもらおうかと思っていたんだが、どうしたものか…」

 

「何…?」

 




戦闘描写、難しいですね。色々考えていると時間がどんどん過ぎていきます。
そして転生後初の人間との対面、刀夜はどう生きていくのでしょうか。
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