レイナーレはヘヴン状態・リアス部長は判らずや
イッセーは暴走気味とすみません
一誠は再びアーシアと出会ったこと、彼女から聞いた
『
なによりも、友達になのに守れなかったこと。
リアスにあった事の次第を伝えるその顔は後悔と悔しさと怒りが見て取れるほどに辛そうであり、握り締められている拳は今にも血が垂れ落ちださんばかりに強く……強く握り締められている。
「……それでもあの子の事は諦めなさい、あの子が神側の人間である以上私たちは敵同士なの、ずっと昔から相容れないもので隙を見せれば殺される。もうあなたは生き返れないうえにグレモリーの悪魔となったことを自覚しなさい!」
それでも納得出来ないと言い寄る一誠にリアスは平手打ちでもって、堕天使と戦うことや組織を相手することになるであろう責任が一個人のものでは済まされない、他の面々にも波及することを説明しなおも諭す。
だが一誠はそれでも引き下がらない、グレモリー眷属を抜け出してでもアーシアという友人を助けるために単身赴くとまで啖呵を切ってみせるその姿勢にリアスは更に行くことを見つめられない。
「……一誠君も頑なだね」
「兵藤の良さってやつなんだろう」
リアスは自分の眷属にはどこまでも慈悲深い、悪い言い方をすれば過保護とも甘いとも言える部分があり今でも眷属である一誠が堕天使に戦いを挑むという自殺行為を止めようと懸命になっている。
だがそれすら上回るのが一誠の我欲への強さ、アーシアを助けるためならば眷属であることすら捨ててでも、勝てるとも判らない戦いに赴こうとする信念はもはや悪魔というよりも英雄やヒーローのようである。
少なくとも木場や狛はやりとりから一誠の性欲の奥底にあるリアスとはまた違った慈愛の精神を見ている、決して譲れないものとして一誠の中にあるそれは強い意志の輝きを灯しているかのようであった。
だからだろうか、朱乃が何か思い立ったかのようにリアスに語りかける。
リアス本人は語りかけられた内容に対してか、何やら渋い顔をして考え込むと共にチラリと一誠の後ろで茶菓子をつまんでいる小猫たちを見る。
何が言いたいのか理解しているのか三人は頷き、その態度にリアスは覚悟を決めたとばかりに小さくため息を吐き出す。
「私と朱乃は少し出てきるわ」
「部長! まだ話は……」
「イッセー、プロモーションの条件を詳しく話してなかったけど、ルールは知ってるわよね?」
「えっ! えっと、将棋でいうところの成りですけど、敵地に乗り込むとポーンを他の駒と交換して扱える……でした」
「そう正確に言えば『キングである私が敵地と認めた場所』でなければならない、そして今のあなたではクイーンへの変化は耐えられないでしょうけどルークやナイトになら成れるでしょうね」
話の急転換について行けていない一誠にリアスは畳み掛けるように話を続ける。
「いいイッセー
そう言い残すとリアスと朱乃は魔方陣によって何処かへと飛んでいく、取り残された一誠は改めて覚悟を決めたとばかりに深呼吸をして部室を立ち去ろうとする。
「やっぱり行くんだね、アーシアって子を助けに?」
「……あぁ、友達を助けに行くんだ。約束したんだよ、友達になるって」
「勇猛果敢を通り越して無謀だぞ? 新兵一人で堕天使とエクソシストの群れを相手に出来るとでも思ってるのか」
「それでもだ、最悪でもアーシアだけでも逃がす」
「覚悟は立派だけど無謀だ」
「じゃあどうしろってんだよ!?」
押し問答に対してさすがに苛立ちの募った一誠は二人に怒鳴ってしまう。
そんな一誠とは対照的に木場は握りこぶしを胸にドンと当て、狛は神器である刀を取り出して峰を肩に当てて実に楽しそうに微笑んでいる。
「僕らもついていくよ。部長には悪いけどやっぱり君の意見を尊重したい、なによりも個人的に堕天使だとか神父だとかは好きじゃないんだ……憎いくらいに好きじゃないんだ」
「それに連中はグレモリーの縄張りで好き勝手やってるんだ、縄張りを荒らされて簡単に引き下がるなんてこっちの腹の虫が治まらない。特にあのフリードって腐れ神父には一太刀浴びせないと気がすまん」
「……悪い」
「それに部長が言ってじゃないか『プロポーションの条件は自分が敵地と認めた場所』だって、あれは遠まわしに敵地を『教会』と認めたから行ってきなさいっていう部長なりの許可なんだよ?」
「……部長には敵わないな」
そんな男三人のやりとりを聞いていた小猫が茶菓子とお茶を楽しむのをやめてスッと立ち上がる。
「……三人では心配です」
「えっ、小猫ちゃんも来てくれるの!?」
「……心配ですから」
「ありがとう小猫ちゃん! 俺、猛烈に感動してるよ! もう楽しみでしょうがなかった写真集とかが手に入ったとき以上に感動してるよ!」
小猫がついてくると判った一誠の喜びようは男二人の顔を引きつらせる。
「あ……えっと、僕たちもついていくよ?」
「止めとけ木場さん、聞こえてないだろうから」
改めて一誠の煩悩がもたらすパワーに触れた二人はこれから死地に赴こうとしているとは思えないハイテンションの一誠に突っ込む気力すら失う。
「よし! 待ってろアーシア! 四人で助けに行くからな!!」
アーシアを助けに行くという気概にあふれている一誠だが、他の三人は決してそうではない……むしろアーシアを助けに行くというよりも死地に向かう一誠を援護し最悪の場合は一誠を連れて逃げるのが仕事だ。
狛は主君であるリアス・グレモリーの縄張りで好き勝手している連中が気に食わないから斬りに、木場は過去に神父と揉め事を抱えておりその胸のうちに巣食う怒りや憎しみをぶつける為に、小猫は本当に仲間である三人の身を案じているからついていくのであってアーシアというシスターにはあまり興味などない。
あくまでも身内である一誠の為に赴く。
それが三人の暗黙の了解であり、身内の為に血を流すグレモリー眷属の結束であった。
□□□□
満月がとても輝いている真夜中、堕天使やエクソシストたちが潜んでいるであろう教会の聖堂に三人は一気に足を踏み入れる。
聖堂に飾られている彫像は頭部だけ破壊されており、実に冒涜的な風景を演出しておりそしてそこには以前一誠と狛を殺そうとしたフリードが右手に光の剣と左手に銃を携え、待ってましたと言わんばかりに不気味な笑顔を見せていた。
「いやぁこう見えて俺って強いからさ一回で悪魔なんて殺してきたんでざんす、だから二度も同じ顔に会うなんて有り得ないんですよ? それがセオリーでしたのにもうお前のせいでそれが爆発四散! だからとっととくたばれよクソ悪魔がぁぁぁ!!」
喜怒哀楽の感情をコロコロと見せたフリードは言いたいことを言い切ると引き金を引き、堕天使の光の力によって作られた光弾を四人に向けて乱射するが、四人は一斉に散り攻撃をかわすと反撃に移る。
小猫が教会の長椅子を持ち上げフリードに向かって投げ飛ばすが光の剣によってあっさりとそれは真っ二つに両断されてしまうが椅子投げの目的は一瞬でも視界を塞ぐことにある。
フリードの注意が逸れたのを感じ取った狛は姿を消し、木場は
「うわぉやるじゃんクソ悪魔ぁ!」
「君も中々やるみたいだ……少し本気を出そうか」
剣劇の最中に木場の持っている剣の刀身の色が変化していく、月光を反射していた銀色から光の全てを取り込んでしまうような黒い刀身へと変化した剣が今一度フリードの光剣とつば競り合いを起こす。
だが光剣の光は木場の黒剣に吸い取られ刀身の光が見る見るうちに弱まっていく、その様子にフリードの顔に驚愕と怒りがにじみ出る。
「
「てめぇも神器持ちか!?」
見る見る光を食われ刀身を失った光剣と銃口が木場に向けられているこの瞬間を好機と捉えた一誠はプロポーションによって
「うぉぉぉぉ! セイグリッドギア!」
『Boost!!』
「しゃらくせぇ!」
一誠の動きに気づき木場から距離を取りながら銃口を素早く合わせるもその銃身に一振りの刀が食い込む。
「やっぱり不意打ちはこうでないとなぁ!」
楽しそうに声と共に銃が切り落とされ、攻撃手段を失い不意打ちによって動きの止まったフリードの頬に
その一撃はフリードの身体を空中できりもみ回転させながら吹き飛ばし聖堂に飾られている銅像の身体に叩きつけるが一誠の拳は硬い何かに阻まれた感触を感じ取っていた。
その答え示すかのようにフリードは立ち上がるとボロボロになった光剣の柄をその場に投げ捨てる。
「……浅い、普通に斬るべきだったか?」
「ふっざけんなよょょ! クソがァァァ!! 殺す、絶対に殺す切り刻んでやるよクソ悪まがぁ!」
「そういう台詞は囲まれたこの状況でもまだ言えるのかな? こっちにはまだ光剣対策の武器があるのに?」
木場の言葉にフリードは周囲を見回し囲まれていることに気づくとあっさりと態度を豹変させると懐から閃光弾を取り出すとためらいなく起爆させ四人の目を眩ませるとさっさと逃げ出す。
その素早さは狛の鼻と耳を使った探知による追撃を光剣を投擲することで掻い潜り、そのまま逃げ切ってしまうほどに素早さで狛は追撃を諦め地面に落ちた柄だけのものを懐にしまう。
「逃げられたね、ほんと長生きしそうだよ彼」
「ご丁寧に一誠を狙って剣を投げてきやがった、面倒な奴に逃げられた」
「あんな奴とは二度と戦いたくないぜ……そんなことよりアーシアを探さないと!」
何かを嗅ぎつけた小猫が聖堂の机を引き剥がすとその下には地下室へと繋がっているであろう隠し階段が姿を現す。
「……この先に色々いるみたいです」
その言葉に一同は改めて気合を入れなおすと道なりに地下へと足を踏み入れその先の巨大な地下聖堂へとたどり着く。
そこには大量のエクソシストたちが壁となっており、その壁の先には十字架に貼り付けられたアーシアが弱弱しい姿を晒し、一同の到着を歓迎している堕天使が露出の多いボンテージを身に纏っている。
「レイナーレぇ!!」
アーシアの傍に立っている女の堕天使こそ、一誠を殺し、いまこうしてアーシアを苦しめている騒動の元凶である堕天使レイナーレ。
その手には強くそしてどこか優しさを感じる光を発する光玉が握られており、アーシアの息遣いは遠目から見ても弱弱しさが見て取れ顔色も真っ青になっていた。
「二人とも一誠君を行かせるよ!」
「判りました」
「行け兵藤! 道は切り開いてやる!」
光剣を携えた無数のエクソシストが襲い掛かってくるが木場の
フリードが異質な強さを持っていただけであり他のエクソシストの強さは大したものではない、アーシア目掛けて一直線に駆けていく一誠を攻撃しようとする相手を優先的に狛は切り伏せ突き殺す。
「これこそ私の求めていた力! 堕天使を癒すことの出来る唯一の堕天使として私の地位は、力は約束されたようなもの! あぁアザゼル様、シェムハザ様の愛を……寵愛を一身に受けることが出来る選ばれた堕天使になったのよ! 今まで私を馬鹿にした奴らを見返す力を得たのよ!」
レイナールは自分の傍でアーシアを助けている一誠など眼にも入っていない、手に入れた力に酔いしれている。
「アーシア、助けに来たぞ!」
「……イッセー……さん?」
弱弱しい声に慌てている一誠に対してレイナーレは心底楽しそうに告げていく。
「あぁ無駄よ、神器は魂と強く結びついているから抜かれたら死んでしまうのよ? まぁ上を騙してまで手に入れた力だもの返す気はないわ、無論証拠となる貴方達にもここで消えてもらうわよ」
「……夕麻ちゃん、大切にしようと思ったんだ。初めての彼女だから、こんな俺を好きになってくれたと思ったから」
「女を知らない初々しい子をからかうのって本当に楽しかったわ、ちょっと困った振りをしたら慌てて懸命に何かしようとするんですもの……本当につまらなかったわ。夕麻って名前も夕暮れにあなたを殺そうと思ったからよ? いっせーくん?」
一誠は怒りに震えた。
腸の底から煮えくり返る怒りに身体が熱を帯びる。
その熱に当てられるように心臓は高鳴り、左腕へと力が流れ込む。
「一誠君! その子を抱えては無理だ、僕らが殿を受け持つから下がるんだ!」
その言葉に一誠が動くのは早かった、レイナーレが光の槍を構えていたのも要因だがそれでも木場の言葉は熱を帯びた一誠の頭にもスッと入り込んできたからだ。
「悪い! これが終わったら……何か奢るからな!」
アーシアを抱きかかえたまま一誠は一目散に入ってきた入り口から地上に向けて駆け抜けていく、倍加された力の恩恵と三人が道を切り開いたのもあり瞬く間に地下聖堂から脱出する。
有象無象のエクソシストを叩き伏せた三人は改めて眼前で自分たちを見下しているレイナーレに集中する。
「随分と外道な堕天使だ……そんなに愛情が欲しいなら一誠君を切り捨てるべきじゃないと思うけど?」
「はっ! あんな乳臭くてどうしようもないのなんてこちらから願い下げよ、近づいたのも上から危険視する声があったから始末するためだったけど……どうやら上の思い過ごしのようね」
「ならアザゼルやシェムハザの目ってのは節穴だな、アレは化けるぞ……お前に対する怒りでな」
敵意のぶつけ合い、挑発のしあいである。
だが自分たちのトップを馬鹿にされたとあってか、それとも個人的な固執からかレイナーレの顔は怒りで歪み狂っていく。
「天界でも一・二を争う欠陥神器……クトネシリカとそれによって英雄にも悪魔にも八百万とか言う有象無象の神もどきにも成れない出来損ないの混ぜ物風情が……あの方たちを汚すなぁ!!」
「ほぉ詳しいのか、コイツに?」
「はっ! かつての大戦で中身を失い英雄を失って以来どうにもならない回収する価値も無い欠陥品よ……悪魔の脳みそは随分と劣っているみたいね」
自分の人生を狂わせた存在が少しだけ判った……だから狛は笑う。
「ならその欠陥品に切り刻まれて尋問される屈辱を味わえ! 堕天使ぃぃぃぃぃ!!!」
獰猛な笑みを浮かべながらレイナーレと木場・小猫・狛の三人が激突する。
地下聖堂は瞬く間に悪魔と堕天使の戦場と化す。
光を喰う剣により光は弱まり姿を消す刀による不意打ちとと純粋な怪力がレイナーレの身体を傷つける。
だがそれをレイナーレは奪った『
戦いはレイナーレが放った大量の光の槍による爆撃による噴煙で三人が姿を消すまで続いた……そう、決着は一誠につけさせるように言われているから。
さて四話にして狛の神器の名前が明かせました
英雄になろうとしている仮面の民族あたりが切りかかってきそうな設定ですが
お許しください