「………はぁ?」
つい気の抜けた言葉を発してしまい驚きが隠せなかった。でもその驚きは一瞬で、すぐにこいつ何を言ってやがるという疑問へと変わっていた。意味が分からない。何故だ。待て、益々意味が分からなくなってきたぞ。
「聞こえなかったのかしら。あなたとうとう目だけでなく耳まで腐ってしまったの?それとも日本語が分からないのかしら、小学生からやり直ししたら?」
「いや、聞こえたから。まずその前に理由を説明しろよ理由を」
すると、雪ノ下は読んでいた本を開いたまま差し出してきた。
「このシーンなのだけれど…2人が愛の告白をして今日はハグの日だからハグするっていう流れになっているのだけれど、ハグの日って本当にあるのかしら?」
「そんなことを俺に聞くのか?知らねぇよ。ハグの日なんて。またどっかのリア充らが勝手につくった日なんじゃねぇの?」
全くリア充は本当に呆れる…。何かあったらすぐに記念日にしたがる。初めてデートした日や初めて彼氏の家行った日♡などというお馬鹿丸出しのことをSNSに晒し自慢するかのような行動をとる。そんなに初めてが大事なのかね。そんな初めてが記念日になるのなら、初めて黒歴史ができた日として記念日にしてほしい。というか祝日になってもいいレベル。そう、あれは俺が小学3年の頃……やっぱやめとこう…思い返すだけで目から汗が。
「んで、お前はハグの日の有無を聞いてきた…と」
「そうね。今の比企谷くんの説明で何となくは理解出来たわ。祝日ではないけど特別な日みたいなものなのね。猫の日みたいに」
「まぁ、リア充からすればの話だかな」
てか、どんだけ猫好きなの。まるで猫の日は特別みたいな言い方だが……ま、雪ノ下らしいっちゃらしいな。って、違う違う。話がそれていく。
「で…だ。そのハグの日の有無がどうやったらハグがしたいってなるんだよ?」
「え?…」
「いや何その言ってる意味が良く分からないみたいな顔。いや、だから、その、俺とハ、ハグするのとハグの日関係なくないか?」
「ハグの日だからこそよ。あ、もしかして私とハグするの嫌…だったかしら…」
「え?あ、いや…んなことは…ない、が…」
色々と困ることがあるのだ。本人の前では言えないが雪ノ下は美人という部類に入る。そんな奴とハグだなんてしたら心臓が持たない…。前までの俺だったらすぐにこの話は断っただろう…しかし、断れない、断ることが出来ない理由が俺にはあるのだ。それは……
「それに…私達、こ、恋人…同士でしょ?恋人同士なのだからハグぐらいして当然なんじゃないかしら?」
そう。恋人同士なのだ。所謂、俺が嫌うリア充である。いや、嫌っていたリア充になってしまったのである。2週間ほど前に雪ノ下の方から告白してきてそれを俺がOKしたのだ。何故そんなことになったのかは話が長くなるので割愛する…。
「確かにな?俺達は恋人同士だ。ハグするのも普通のこと…だとは思うんだが、場所だよ場所。こんな部室で依頼人が入ってきたらどうするんだよ」
「あなた、人の目を気にするの?人の目気にしてたら恋愛なんて上手くいかないものだと思うのだけれど」
「そう、言われてもな…」
「それに、ハグはストレスが緩和されるといった効果もあるらしいし、アメリカ人なんてハグが挨拶でしょ?…ダメ…かしら?」
「っ!?………」
まさかの上目遣いでお願いされるとは…一体誰から教わったんだよ。しかし…こんな美少女に上目遣いなんてされたら断ることなんて出来ないし、彼女の頼みだし…。
「はぁ…分かった。しよう、ハグ」
「もう…最初から素直にそう言えばいいのに、本当に馬鹿な人」
「本当そこら辺お前、姉に似てるよな」
そして俺は雪ノ下に近づき、雪ノ下も俺に近づく…。雪ノ下の背中に両手を周し、俺の背中に雪ノ下の両手が周り終えたところで……
ガララッ……
「邪魔するぞー。比企谷、君に用があ……て来たんだが…」
「あっ……」
「あっ……」
「せ、せ…青春の馬鹿野郎ーーーっっ!!」ガララッ…ピシャンッ!
行ってしまった…うわ、これ次平塚先生に会うとき強烈な腹パンを喰らいそうだ…。本当に、誰が貰ってやれよ…
「ははっ…」
「ふふっ…」
ま、こうゆうのも俺達らしいっちゃらしいな。それより……
偶にはこうゆう日があっても良いんじゃないかと、さっきは馬鹿丸出しな奴らと言ったが、゙初めでが記念日になるのも悪くはないのかもしれない。
そんなことを思いながら俺は雪ノ下にハグをした…。
こいつとの初めてをもっと作るために…。