映画。
それはアクション、ホラー、SF…あとは、恋愛……。様々なジャンルがある。
よくホラー映画などで恋愛している者から死んだりいなくなったりするのが定番だ。つまり、恋愛していない者は生き続ける。そんな非リア充はフィクションの世界、作り物の世界でも生き続けるのだからノンフィクション、現実の世界ならもっと生き続けられる。この事から非リア充は映画の世界でも現実の世界でもリア充より優れている…ということになる。非リアマジ最強。ついでに言うとぼっちマジ最強。
「比企谷くーん…怖い〜!」
「いや、雪ノ下さんこんなの怖くないでしょ。それと離れてください…」
「えー嫌だー!」
「ちょ、ほんとに勘弁…」
と、いうわけで今雪ノ下さんといる。何がというわけで…だよ。なんでこんな状況になったのか自分でもよく理解していないのだが簡単に説明するとこういったことがあったのだ。
突然メールで、家に至急来てください。と雪ノ下に呼ばれ、家に行ったら俺が部室に忘れた本をわざわざ渡してくれた。そこで紅茶でも飲む?と言われ喉も渇いていたこともあったし断る理由がないなと思い有難く紅茶を飲みながら雪ノ下に借りた本を読んでいた。それだけなら良かった。しかし、そこでインターホンが鳴り、なんと魔王の登場。なんだかんだあって今ホラー映画を見ている。
ていうか、そうやって腕に抱きつかれると…二つのお山がアレでアレがアレで…て、なっちゃうからやめていただきたいんですが。
「本当にやめてくださいよ…」
「離してほしいなら…陽乃って呼んで♪」
「呼ばないですから。離してください」
「えーーーっ…仕方ないなー」
なんとか離してくれたが、この人は本当に苦手だ。雪ノ下さんに関しては特に苦手。
と、背後から何やら視線を感じた。寒い!何これ…絶対零度ですか?
「何イチャイチャしているの?」
「いやどう見たらイチャついてるように見えるんだよ…」
「はぁ…姉さんも、もう帰ってちょうだい」
「えー…比企谷くんはお姉さんが居ても良いよね?」
「いやそこで俺に振らないでくださいよ…」
「姉さん…お願い」
そう雪ノ下が小さく呟くと、雪ノ下さんはしょうがないなーと言って立ち上がり荷物を持ち雪ノ下のそばに行くと雪ノ下の耳元で何かを言った。その言葉を聞いた雪ノ下は、ぽんっと音を立てるかのように顔が桜色になった。
その後雪ノ下さんはじゃあねーと手を振りながら玄関から出ていった…。雪ノ下さん…なんて言ったんだろうか。ま、俺が気にすることではないか。
「行った…な。」
「んんっ。そ、そうね…」
「というかあの人、本当に台風みたいな人だな。」
そう言うと雪ノ下は確かにそうね…と応えた。あんな台風、到来したら為す術もないが…。
「…紅茶、いる?」
「ん、あ、もう無くなってたか。じゃあ、頼む」
こんな会話、まるで夫婦みたいだと馬鹿な考えをしてしまう。雪ノ下と夫婦なんてありえないことだが。
そんなことを思いながら空のティーカップを渡そうと雪ノ下の手がティーカップに触れた瞬間、テレビから女性の悲鳴が聞こえ、何だと思いテレビ画面の方を向くとよくあるホラー映画のオチで幽霊の顔がどアップで映るところをドンピシャのタイミングで観てしまい、うぉっ!と、びっくりして体が仰け反った。雪ノ下もびっくりしたのか俺の服を掴み、そのお陰でバランスを崩す。しかし手に持っているティーカップを落とすわけにもいかない。
て、これまずいんじゃ…と思っているのも束の間、時すでに遅くそのままティーカップを落としてしまい俺が雪ノ下の方に倒れ込んでしまった。結果、2人とも倒れてしまい、ティーカップがガシャンと割れる音がした。
「す、すまん!雪ノ下!怪我はないか…?」
このままじゃいかんと思い顔を上げると、俺と雪ノ下の顔がゼロ距離に近い距離になる。
「……………」
互いに、そのままの状態で固まってしまった。
マシュマロのように白い肌、真珠のように涼しく見開いた瞳、柔らかい細い影のような睫毛、筋の通った形のいい鼻梁、そして、恥ずかしそうに揺れる小さな唇。
慌てて上体を後ろに倒して雪ノ下から距離を取った。
もう一度、謝ろうとした次の瞬間、雪ノ下は俺の胸ぐらを掴みぐいっと引っ張ってきた。俺は咄嗟に雪ノ下に手が当たらないよう床にドンっと手をつけた。所謂、床ドンというやつである。
「ちょ、危ないだろ…」
「あらごめんなさい。でもあなた、私が傷つくことは決してさせないって分かってたから…ふふっ。」
そう悪戯に微笑む雪ノ下を見て、自分が顔から火が出るような思いをした。自分の身体か熱くなっているのが確認しなくてもわかるぐらいに。
「それとあなた、さっき鼻の下伸ばしてたでしょ」
「さっきっていつだよ。そんな覚えないし。」
「姉さんとあなたがイチャついていたときよ。」
「イチャついてねぇし…あ、もしかして嫉妬したのか?」
と、雪ノ下に反撃するかのように俺も悪戯に笑いながら言った。いつも通り、罵倒したくるのかと思いきや、雪ノ下はみるみる頬を紅潮させ、ち、違うわよ…と小さな声で呟いた。
いや、そんな表情されるとこっちもこっちで恥ずかしくなるんですが。
「んんっ。ひ、比企谷くん。」
「な、なんだよ…」
「も、もう少しそ、その…距離を、近づけてもいいかしら?」
上目遣いで言ったその言葉はまた俺の顔を熱くさせる。誰からそんなテクニック教えてもらったんだよ。…考えてみると、ちょっと心当たりがありすぎて怖い…。
すると雪ノ下は俺の胸ぐらから手を離し、今度は俺の右胸をギュッと掴んだ。
「ちょ、雪ノ下さん?まだ了承していないんですけど…」
「まだ…なのね?まだということは了承する気はあったということになるから別にいいでしょ?」
くっ…こいつ俺みたいなこと言いやがって。こいつもこいつで捻デレなんじゃないかと偶に本気で思うときがある。
と、雪ノ下は弱々しくこう言った。
「もう少し…いえ、ずっとこのままで…いさせて。」
「はぁ…はいはい。勝手にしろ。」
「何かしら。その態度…」
「別にいいだろ…」
俺は今、何故こうなったのかよく理解していないが、悪い気はしない。雪ノ下さんがあのとき雪ノ下に何と言ったかなんて本当にどうでも良くなるぐらいに…俺はこの状況を許している。その時点で頭ん中のどっかで嬉しいという感情があるのかもしれない。他にも様々な感情があるのかもしれない。そんな感情を楽しみながら、この状況を楽しみながら…俺もこのまま。ずっとこのままでいいとそう感じた。
「本当に素直じゃないわね。」
「そう言うお前もな。というかお前、本当は嫉妬してたんじゃないのか?」
「…バカ、ボケナス、八幡…」
「…お前は俺を何回照れさせれば気が済むんだ。」
「そう言うあなたもね。」