総武高校を卒業してから5年が経った。
俺は卒業式後、由比ヶ浜に涙ながらに告白されたのを断って、部室で待つ雪ノ下に告白をした。「付き合ってくれ」と差し伸べた手を雪ノ下は優しく握ってくれて「こちらこそよろしく」と返答をもらい告白に成功した。
しかし、俺と雪ノ下は遠距離恋愛になってしまった。俺は千葉の大学を卒業し晴れて社畜への道を進んでしまい、雪ノ下は東京の大学卒業後、県議を務めている父親の仕事の助手として仕事をしていた。この大学生活の4年間の間には偶に会って一緒に出掛けたりも出来たのだが…。雪ノ下が父親の仕事に就いたことで出張やらなんやらで遠距離になってしまっているのだ。今回の出張は長期間であり、今は福岡県のほうで仕事をしているらしい。
仕事と忙しさといったら雪ノ下のほうが忙しいがこっちもこっちでこき使われているので忙しい。精神的にくることもあるがそうゆうときは雪ノ下とのLINEで心を落ち着かせている。
雪ノ下とのLINEは一週間に一回と決めていた。その理由は「忙しいから」と雪ノ下が言っていたため。俺の権力無さすぎだろ。一応彼氏だよね?ま、別に彼女のほうが忙しいから別にいいんだけどさ。もうちょっと俺の我儘というかお願いというかそういったものを受け付けてもらえないかなぁ…いや別にいいんだけどね?
そして今日はその一週間に一度である雪ノ下とのLINEができる日。もう時間的にあっちからLINEがくるはずなのだが…。
『ピロンピロン♪』
規則的なリズムと共に彼女からLINEがきた。その内容は、「電話…したいのだけれど」という言葉が送られてきていた。彼女から電話がしたいという言葉は初めてで、少しはっとしてしまったが直ぐに「了解」と返信をした。
『~〜〜♪』
何度か聴いた着信音が鳴り俺はすぐに応答のボタンを押した。すると久しぶりのソプラノが聞こえる。
『もしもし?』
『もしもし…お前から電話したいなんて珍しいな。どうしたんだ?』
『い、いえ…その…理由らしい理由はないのだけれど…』
『ん?…』
弱々しく、そしてたどたどしい声音。どこか恥じらいがあるようなボソボソと、か弱い子猫の鳴き声のような声音。雪ノ下らしくないと言っちゃあれだが…不思議に思ってしまった。
だかすぐにその理由は耳元に伝わってきた。
『あのその…ただ、あなたの声が聴きたくて…』
一瞬で自分の顔が赤く、そして熱くなるのがわかった。この雪ノ下の弱々しい声を聞いて。本当にこうゆうとこがこいつのズルいんだが…。しかも無意識に言ってるであろうとこ。
『そ、そう…か。最近どうだ?そっちの仕事は…』
俺は照れ隠しのように話を変える。そうでもしないとこの胸の高鳴りは抑えたくても抑えきれないと…思ったから。
『んんっ…上手くいってるわよ。』
『そうか…それはよかった。』
そこで俺は不安を覚える。雪ノ下に彼氏ができていたら…なんて抱いちゃいけないことを思ってしまう。でも、ふざけ半分でも本気半分でも聞いてみたいと…。
『なぁ?お前、彼氏作ってない…よな?』
『……はい?』
雪ノ下の気の抜けた返事が返ってきた。すると、今度は雪ノ下が小さく笑ったあとこう問うてきた。
『もし…あなたの他に彼氏ができたらどうするの?』
『え…は?お前っ…』
まさか俺の予想とはかけ離れた返答がくるとは…てか、それどういう意味だよ。
『嘘よ。ふふっ…馬鹿ね。そんなことするはずないじゃない。』
と、雪ノ下は悪戯に成功した子供のように笑っていた。くっ…このアマ…。
『というかお前、嘘つかないんじゃなかったのかよ。』
『あら、別に嘘ついても良いと言ったのはあなたでしょ?』
『そうだったけか?』
『ええ、そうよ。』
思い返してみると、いつかそんなことを言った気がする。ぼっちは他の奴らと比べて記憶力がいいはずなんだが…あ、彼女できたからか。納得納得。
『ありがとうね。いろいろと…』
『え、あ、あぁ。こ、こちらこそ?』
『何で疑問形なるのよ…まぁいいわ。』
すると雪ノ下はふぅーとため息を吐きまるで、意を決したかのようにこう言ってきた。
『比企谷く…いえ、八幡。大好きよ』
『ちょ、おまっ…』
またこいつはズルいことをする。というか、不意打ちはズルいだろ。ズルい、あとズルい。
と、雪ノ下が俺に確認するように問うてきた。
『あなたは?』
『ふぅ…んんっ。ゆ、雪乃。あ、愛してる…』
うわっ!何だこれ…チョー恥ずかしい。穴があったら入りたいレベル。そしてそのまま埋めてもらいたいレベル。
『…ありがと。』
『お、おう。』
『それじゃ…切るわよ?』
『あ、あぁ。また一週間後な。雪乃』
『っ!…ば、ばか。』
ま、最後に反撃ができたから良しとしてやろう。