異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。 作:たけぽん
数日後、風邪は完治していないけれど、あたしはなんとか学校へ行った。実行委員の仕事が心配だったからだ。
「委員長。書類できました」
「委員長。各クラスの種目参加者のリストが集まりました」
「ポスターこんな感じでいいですか?」
あたしがいないあいだも井川さんが進めてくれていたようで、作業は進んでいる。
でも、このペースだと本番に間に合わないかもしれない。やっぱり泉君の欠席が響いているのだろうか。
「沢渡、少し話がある」
基本的に委員会中は発言しない木崎先生が生徒を呼ぶなんて珍しいな。何だろう。
先生に連れられて体育館の渡り廊下までやってきた。
「実行委員の仕事が遅れているようだな」
木崎先生は怒っているわけでも悲観しているわけでもなく、冷静にそう言ってきた。
「す、すみません。あたしが休んじゃったから…」
「別に責めているわけではない。体調不良は誰にでもある」
「で、でも…」
「心配はいらない。望月が何とかすると言っていたぞ」
望月君が? 本当だろうか。悪口ではないが望月君は自発的に何かに取り組んだりするような性格じゃない。なんで急にそんなことを言い出したんだろう?
「話は以上だ。お前は自分でできる範囲で頑張ればいい」
そうは言われても、どうしたらいいのだろう。
そんな心配をしていたら、不思議なことが起こった。
泉君が学校に来たのだ。どうやら体調が治ったらしく、ものすごい速さで仕事をしてくれている。肺炎ってそんなにすぐ治るっけ?
「お疲れさま、泉君」
「ああ、お疲れ様。委員長」
「もう体調は大丈夫なの?」
泉君は少し間をあけた後、
「大丈夫です。心配をおかけしてすみません」
と答えた。
「そっか。体育祭までもう少しだけど。頑張ろうね」
「はい」
あたしが作業に戻ろうとすると、急に泉君が立ち上がり、望月君の方を見て、あたしに問いかけてきた。
「望月武哉…あいつはいつもあんな調子なのか?」
「え?あんなって?」
あんな調子ってどういうことだろう。物静かってことかな。一緒に作業してて気まずかったとか。問いかけの意味がわからないでいると
「いえ。なんでもありません。忘れてください」
そう言って、泉君はいつもの調子に戻り、また作業を始めた。
きっと、共同で作業していると色々なすれ違いがあったりするのだろう。けど、そうやってクラスのみんなが仲良くなっていくのが、学校イベントの準備の醍醐味だよね。そんなことを考えながら、あたしも作業に戻ることにした。
作業しながら周りの様子を見ていると、あたしが休む前よりも明らかに作業全体の進行が良くなっていることが分かる。
これら全てを望月君が何とかしたのだろうか。当の望月君は普通に作業をしている。
でも、委員会の雰囲気が良くなっているのは真実だ。
ああ、あたしはバカだなあ。こんなに一生懸命助けてくれた望月君を、あのときからずっと疑っていたなんて。彼の言葉を心のどこかで疑っていたなんて。
ふと、望月君と目があった。一瞬望月君が笑ったように見えたけど、多分、気のせいだろうなあ。
――――でも、あたしはいつか望月君の“本当の笑顔 ”がみたいな。
次回予告
武哉「これで体育祭準備編は終わりだ」
亜季斗「終わったのだな…。本当に終わったんだよな?この後別視点でもう一回とかないよな?」
武哉「ない。本当に終わりだ」
亜季斗「やったぞおおおお!これで次からは日常パートだな!出番が増えるぞ!イイイイイイイイヤッッッッッッホウウウウウウウウ!」
武哉「どこのプロだお前は。っとそうだった。お前に言うことがあったんだよ」
亜季斗「む?」
武哉「いつから日常パートが再開すると錯覚していた?」
亜季斗「ひょ?」
武哉「次回『開幕』」
亜季斗「哀れな我に、魂の救済を!」