異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。   作:たけぽん

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なんでもするとは言ってない。


体育祭本番編
14. 開幕


 

――――― 記憶 ―――――

 

 

 

誰かに認めてほしかった。必要とされたかった。

 

 

役に立たない人間を世界は排除しようとするから。

 

 

だから俺は力を手に入れた。

 

 

そこには平和が広がっていた。誰もが俺を必要としてくれた。

 

 

だが、いつからか俺の力は疎まれた。

 

 

特質的な力を世界は認めなかった。

 

 

だから、力を使うことをやめた。

 

 

そこには平和があったが、俺は少し違和感を抱いた。

 

 

その世界から俺が消えたとき。俺は安堵した。

 

 

だが、新しい世界は再び俺に力を求めた。

 

 

俺は迷った。

 

 

力を使うか 使わないか。

 

 

結局俺は選んでしまった。

 

 

 

―――それは正しい選択だったのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ものすごい不快感に襲われ目を覚ます。すっかり見慣れた部屋の風景を確認し俺は安堵した。

 

「はあ…またか」

 

 ここ最近、具体的に言うと、渋谷と話した日から俺は悪夢を見るようになっていた。内容は覚えていないが、とても嫌な夢だったことだけははっきり覚えている。

嫌な汗をシャワーで流し、朝食と身支度を済ませる。これが望月武哉としての俺の朝だ。

机の上の財布と携帯をポケットに入れる。ふと、近くにあったカレンダーを見る。

基本的に俺のカレンダーには予定などは記入されていない。だが、今日の欄にはしっかりと予定が書かれていた。

 

「行くか」

 

そう呟き、俺は家を出た。

 

 

 

 

 

 

「好機は熟考することによってしばしば消滅する」

 

 プブリウス・シュルスという人の言葉である。簡単に言うと、考えすぎるとチャンスを失うという意味だ。だが良く考えてほしい。考えすぎるとチャンスを逃すということは、逆説的にチャンスを掴んだ人間はたいして考えていないということではないか。だからこそ、チャンスを掴んだ芸能人なんかはネットで炎上したり、リア充は些細なことで喧嘩して別れたりするのだ。このように、対して考えずに動くことは一時は栄光を掴めるが、その後で身を滅ぼすことになるのだ。人間は考える葦だというのなら、ろくに考えないでチャンスを掴む者は人間ではない。チャンスを逃しやすい者こそ、真に人間だと言えるのだ。

だからこそ、派手なイベントで好成績を収める奴なんてのはろくな奴じゃない。むしろ派手なイベントという好機を逃す者こそが人間なのだ。

つまり、何が言いたいかと言うと

 

「体育祭、めんどくせえ…」

 

 

 

 

 6月某日。第64回中雲高校体育祭の日であり、俺にとっては地獄の日だ。

大半の生徒は特別点を得るために一生懸命に取り組むのだろうが、特別点なんてものに興味の無い俺としては本当に地獄だ。しかも、今日に限って太陽サンサン、キュアサニーでも出てきそうな快晴だ。全く、なぜ体育祭は自由参加じゃないんだ…。

 

『間もなく開会式が始まります。生徒の皆さんはグラウンドに集まってください』

アナウンス御苦労様。誰がやってるかは知らんが。

生徒がグラウンドに集まってきた。といっても俺は競技で使う備品の最終チェックのためにすでにグラウンドにいるのだが。実行委員なんて引き受けるんじゃなかった。

 

「望月君、そっちはどう?」

 

ひなも体育祭はあまり好きではないはずだが、実行委員長という肩書があるため頑張って準備していた。

 

「こっちは問題無いぞ」

「そっか。それじゃあみなさん。今日まで準備お疲れさまでした。そして、今日は選手として、実行委員として頑張りましょう!」

 

ひなの言葉に実行委員の面々は「おー」だの「ウェーイ」だの返事した。

ああ、本当に始まってしまうのか、まじで帰りてえ。

 

「望月」

 

呼ばれたので振り返る。

 

「なんだ、泉」

 

学業優秀、スポーツ万能の副委員長が俺に話しかけてくるなんて普通は無いことだろう。普通は。

 

「例の約束は覚えているな?」

「ああ。体育祭が無事に終わればパソコンのデータはお前の前で消すよ」

「ならいい。」

 

 と言っても体育祭本番で泉たちができる妨害なんて無いだろうがな。

体育祭はクラス対抗なので、グラウンドをクラスの数で割りブルーシートを敷き座席を示している。一年B組は体育館倉庫の前を座席としている。グラウンドの中で数少ない日陰をとれたのは不幸中の幸いってやつだな。

 

「ふはははははは!どうした武哉!戦いを前にそんな顔をしていては勝利の女神はほほ笑まんぞ!」

「委員長うるさい。ただでさえ暑いんだから自重して」

 

 しおりと亜季斗のやり取りはいつも通りだな。二人とも運動は得意ではないはずだがそれでも、いつもよりテンションが高そうだ。祭りの空気ってやつか。

それはさておき、暑い…水がほしい…。

 

「どこ行くのよ望月」

「まだ時間あるし、飲み物買ってくる」

 

 

体育館の前の自販機でポカリにしようかいろはすにしようか熟考していると、近くで声がした。とりあえずアクエリアスを買って声のほうへ近づいてみる。

 

「いいか高松!今日の体育祭、俺がお前より多く特別点をとったら俺と付き合ってもらうぜ!」

 

なんと、告白の現場だったようだ。しかも今、高松って言った?

 

「残念だけど、私は負けないよ。だから君と付き合う未来はナッシングだね♪」

 

やっぱりお前か、瑠璃。

しかし、どういう経緯かは知らないが告白の現場に他人が居ていいわけもない。立ち去ろう。

と思ったら、運悪く落ちていた空き缶を蹴飛ばしてしまった。清掃員とジャック仕事しろ。

 

「だれだ!」

 

気付かれますよねそりゃあ。

仕方ないので正体をあらわす。

 

「いやすまんな瑠璃、別に誰にも言わないから安心してくれ」

 

瑠璃に告白していた男子が一瞬もの凄く驚いたような顔をしていた。

 

「なんだ、もっちーか。脅かさないでよもう♪」

 

またもや男子が驚いた顔をする。

 

「る、瑠璃にもっちーだとぉ!き、貴様何者だ!俺の高松とそんなに親しげにしやがって!」

 

どうやらあらぬ勘違いをされたようだ。さっさと誤解を解いておこう。

 

「おーい安藤!開会式始まるぞ!」

 

どうやら目の前の男子が呼ばれたのだろう。ってさっさと誤解解かねえと。

 

「今行く!おい、お前、名前は?」

 

「望月だけど…」

 

「そうか、言っとくがな望月、お前に高松は渡さないからな!」

 

そう言って安藤とやらは走っていった。おい、話聞けよ。木崎先生といい、この学校デュエリスト多すぎだろ。

 

「いやあごめんねもっちー。変なことに巻き込んじゃって」

「ホントだよマジで。で、さっきの誰?」

「同じ陸上部の先輩。悪い人じゃないんだけど、ちょっとズレてる人でね」

「さっきの様子だと告白されたのはこれが一回目じゃないみたいだな」

 

告白という場なのに緊張感もないし、そもそも二人とも慣れている風に見えた。

 

「まあね。きっかけは私が100メートル走で彼の記録を抜いちゃったからなんだけど。それからなにか競うことがあるたび、あんな感じかな」

 

ってことは全部勝ったのか。瑠璃が凄いのか安藤先輩が弱いのかは知らんが、まあ恋心を抱くには十分なエピソードだろう。

 

「でも、悪い人じゃなさそうだぞ?お前に勝負を挑むってことは運動もできるほうだと思うし、容姿もいいほうだ。優良物件じゃないか」

「まあ、そうかもね…」

 

なんとなく察しがついたので俺はそれ以上聞かないことにした。

 

 

 

「ではこれより、第64回中雲高校体育祭を開催します」

 

 校長の言葉によって地獄の体育祭、略して地獄祭が始まった。あれ、体育要素消えちゃったな。そんなことを考えていると木崎先生が壇上に上がった。まあ一応、実行委員の監視役なので役割があるのだろう。手に持ったメガホンと本人との違和感が凄い。

 

「体育祭は基本的に各クラス対抗で行われ、競技の勝敗や順位による点数でクラスの順位が決まる。そして、全校生徒の中から総合的に優秀だった生徒に学校の判断で特別点が与えられる。また、上位3位に入ったクラスの中から一人ずつ、最もクラスに貢献したものにも特別点が与えられる。個人技はもちろん、集団での立ち回りなども評価の対象となる。また、競技においての選手交代は基本認めていない。やむをえない場合は担任に申請すること。以上」

 

まあ大体は体育祭前から伝えられていたことの確認だった。

はあ、帰りたい…。

 

 




次回予告

武哉「ついに始まったな体育祭」

瑠璃「やっとだね」

武哉「そして次回は高松瑠璃と陸上部の先輩の恋の行方に進展が!」

瑠璃「ない」

武哉「次回、『恋と陸上はラブハリケーン』」

瑠璃「だからないって」

武哉「少しくらいノッってくれてもいいんじゃないか」

瑠璃「改めて次回、『面倒』」

武哉「ラブハリケーンのほうが面白そう…。お楽しみに」
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