異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。 作:たけぽん
そんなこんなで午後の種目が始まった。
最初の種目は借り人競争。昼飯のすぐ後の競技なんてまっぴらごめんだが、じゃんけんで負けてのだから仕方ない。あの時チョキを出していれば…。
「ひと組目、準備しろー」
しかも最初の列とかマジでついてない……。
しかも不幸なことに、またもや安藤と同じ組である。もう作為的な何かを感じるよ……。
「望月!次も勝たせてもらうぞ!」
面倒なので適当に会釈しておく。安藤はまだ何か言っていたが聞かないことにした。
そしてスタート。トラックの途中でお題のカードを引き、その内容に属した人を座席から連れてゴールするのが借り人競争だ。
さて、お題は……。
『眼鏡をかけた女の子』
おい、なんだこれは。なぜ眼鏡? いやそれよりなぜ女子限定?
眼鏡だけなら亜季斗を連れていったのだが……。
俺の連れていける人物で、眼鏡、そして女子。一択じゃねーか。よりにも寄って安藤と同じ組でとは、つくづく不幸だ。
座席まで行って目的の人物を見つける。
「まさか私だとはねー」
「すまんな瑠璃。他に該当者を知らなくてな」
座席から瑠璃を連れ出しゴールへ走る。結果は3位。またもや平均だ。
だが、問題はそこでは無い。
「望月ぃい!またお前は高松と……!」
こうなることは確定的に明らかだった。いや、でも知らない人連れていけないじゃん?
安藤を適当にかわし、俺たちは座席に戻った。
「本当にお前にご執心だな。あの先輩」
「本当にね。どこがそんなにいいのやら」
「運動もできて、容姿の整った女子が好かれるのは当然だろ」
「へー。じゃあもっちーも私のこと好きなの?」
何を言ってるんだこいつは。よくもまあ思ってないことを堂々と聞けるよな。図太い。
「あくまで一般論だ。それにお前はそんなこと聞かなくても分かるだろ」
「そうだね。もっちーは良くも悪くも変り者だからね♪」
俺からすればこの学校の人間はどいつも変わった奴だがな。
それから、棒倒しを終えた俺は実行委員の仕事として備品を片付けていた。体育祭も競技は残りわずかだ。なんか馬鹿でかい電光掲示板があるんだけど、何に使うのこれ? まあいいや。
えっと。たしかこれは体育館倉庫だったな。カラーコーンを持って歩いていると、何やらうちのクラスが騒がしい。
「すまん高松。足をひねっちまって」
たしかあれは、野球部期待の新人だったか。あいつは確か、二人三脚で瑠璃と組んでいたはずだ。
「仕方ないよ、運動すれば怪我だってするって」
「でも瑠璃ちゃん、どうするの?」
「確かやむを得ない場合は先生に申請すれば代役を立てられるんじゃなかった?」
そういえばそんなルールもあったな。しおりの奴、よく覚えてたな。
「でもよぉ、急に高松と走ってついていける奴なんているのかよ?」
池内の言うことももっともだ。野球部期待の新人も、瑠璃のスピードに合わせるのには苦労していた。結局、瑠璃が合わせることでなんとかなってはいたが。
「代役なら適任がいるよ♪」
瑠璃には策があるようだ。
「で、どうしてこうなった」
何故か俺は瑠璃と一緒に二人三脚のために待機していた。もう一度言おう。どうしてこうなった。
「仕方ないじゃん。背丈的にももっちーが適任だったし」
「それはそうだが……」
仕方ない。適当に終わらせるか……。
足を結んでスタートラインでバトンを待つ。っておい、またか。
「よう望月、これが最後の勝負だな!高松の目の前でお前を葬ってやるぜ!」
安藤。今日何回こいつと走るんだ俺は。
これで3回目だな。そんなに多くなかったわ。
「安藤先輩、悪いけど私は負けないよ?」
「ふん。悪いがそれは無理だな高松!なぜなら、お前のパートナーである望月は凡人程度の実力しかないからだ!そんな奴をパートナーにしたのが運の尽きだったな!体育祭が終わったら俺のパートナーになってもらうぜ!」
散々な言われようだな。まあ気にはしてないが。瑠璃も瑠璃で、なんでこんな終盤まで自信たっぷりなんだ。トッポかよ。
「ねえもっちー」
「なんだ」
「安藤先輩に負けたらさっきもっちーに口説かれたこと、ひなに言っちゃうよ?」
なんて奴だ。やはり天才か……。別に口説いたわけではないが、借り人競争の後の発言は軽率だったか。瑠璃の事だから携帯で録音とかしててもおかしくない。
「……善処する」
「頼んだよ♪」
バトンを持った組が近づいてくる。なので俺は最後に瑠璃に話しかけた。
「最初から本気でいいぞ」
バトンが渡った。
「嘘だろ!?」
観客席から驚きの声が上がる。
二人三脚とは、文字通り二人で三本の脚で走る競技だ。基本的に背丈や体格の近いものが組むのが理想とされている。だが、この男女混合二人三脚ではそれを揃えるのは難しい。つまり、必要とされるのは二人の連携だ。
能力が高い者と低い者が組む場合、低いほうに合わせるのが暗黙の了解だ。しかし、これは俺個人の見解だが、低いほうが高いほうに合わせる方法もいくつかある。その中の一つは、相手の動き、考え、そして感情を読むことだ。それができれば低いほうの能力はある程度向上する。
そして、俺にはそれを可能にするだけの『力』がある。
最初のコーナーを通過した時点で俺たちは2位。安藤たちが1位だ。
「瑠璃、スピードを上げてくれ」
「了解♪」
見ていた限り、安藤はコーナーが得意なタイプだ。コーナーで安藤と競っても勝つのは不可能だ。だが、瑠璃は直線が得意だ。ならば、勝つために取れる手は一つ。直線で瑠璃にトップスピードに乗ってもらうことだ。
そして、俺たちは二人三脚とは思えないスピードで安藤組を抜き去り、1位でゴールした。
「よくやったぞ武哉ァ!さすが我が見込んだ男!すばらしい働きだ!」
お前は最初、ものすごく不安そうにしてただろ、亜季斗。
「なんだよ望月!お前足速かったのか!?」
別に足が速いわけじゃない。単に速い奴に合わせることが出来るだけだ。パートナーが瑠璃じゃなかったらこうは行かない。だが、それを言っていいのだろうか。
池内からの問いに答えられないでいると、
「ごめんねもっちー。私が引っ張りすぎちゃって。足痛くない?」
瑠璃が助け船を出してくれた。
とりあえず瑠璃が凄いということでその場はおさまった。
次回予告
ひな「二人とも、二人三脚すごかったね!」
瑠璃「もっちーの主人公補正のおかげだね♪」
武哉「補正ゆーな。主人公特有のユニークスキルだ。二刀流みたいなもんだ」
ひな「そのスキルの使い手は、ファンからチート扱いされてたような…」
瑠璃「結局主人公補正だね」
武哉「べ、別にいーじゃん!俺だって主人公なんだから、補正くらいあっても!」
瑠璃「メタい話はこれくらいにして予告しようか」
ひな「次回、『閉幕』」
武哉「お楽しみに」