異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。   作:たけぽん

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期末テスト編
18. 試験


 

「期末テストまで後2週間ってことでテスト範囲を配布するぞー。前から回してくれ」

 

 体育祭も終わり、本格的に夏になってきた7月のある日。藤堂先生の言葉は生徒たちに重くのしかかる。夏休みという楽園の前の大きな壁、期末テストが近づいてきた。

特に、体育祭で特別点が獲得できなかった生徒にとっては一学期最後のチャンスである。

しかも中間テストが無いため範囲は一学期全体。かなりの難易度だ。

 

「それじゃあしっかり勉強しとけよー」

「起立、礼」

 

帰りのホームルームが終わるとひながこちらへやってきた。

 

「望月君、その……もうすぐテストだね」

「そうだな。後2週間だ」

 

ひなは何だか落ち着かない様子だ。まるで告白の前のような感じだが、流石に教室でそんな大胆なことはしないだろう。となると要件は多分あれだろう。

 

「勉強会、したほうがいいかもな」

「え……う、うん、そうだね!」

 

テスト前に勉強会とは、青春学園物の風物詩だな。別にテストで高得点を取りたい訳でもないが、この暑い中、家に一人で居るのも退屈だ。

 

「じゃあ、場所どうしようか?」

「そうだな、確かテスト前は図書館の開放時間が延びるらしいしそこでいいんじゃないか」

 

この学校の図書館はかなり大きく、何と二階建てだ。ラノベなんかも置いてあり、俺もたまに利用している。エアコンもあるし、勉強にはもってこいの環境だ。

 

というわけで図書館にやってきた。結構人がいたが、なんとか席を確保できた。

 

「じゃあ、始めよっか」

「そうだな。でも具体的に何すればいいんだ?」

 

今まで真面目にテスト勉強なんてしたことが無いのでそこのところが良く分からない。

 

「そうだね……。望月君、入試の点数はどのくらい?」

 

入試の点数と言われても、俺は入試なんて受けてないから分からない。だが、なんて説明すればいいんだろう。

 

「えっと……忘れちまった」

「そっか。じゃあちょっと携帯出してくれる?」

 

 

言われる通り携帯を出す。

 

「学校のホームページから、生徒の個人ページに飛んで、成績照会ってところを見たら載ってるよ」

 

そんなシステムがあったとは。個人ページを開いてみると、時間割やこないだの体育祭の特別点なんかが表示されていた。便利だな。

 

「えっと、これが入試の得点らしい」

 

ひなに画面見せる。

 

「どれどれ……へえ、結構点数高いね。特に国語」

 

そうなのか。画面を見てみると国語は90点で、後は70点前後だった。まあ、確かに前の世界の高校の試験はこんなもんだったかな。

 

「なるほど……とすると数学が低いな」

「じゃあ数学からやって、最後に国語だね。あたしの問題集コピーしてあげるよ」

 

そう言ってひなはコピー機の方へ向かっていった。

 

入試を受けてないのに点数が存在するのはおそらくティアの仕業だろう。初めてあの駄女神に感謝したような気がする。いや、初めてでも無いか。

 

「おまたせー。とりあえず範囲分コピーしてきたから練習問題やってみよ?」

「了解した」

 

さっそく問題に取り掛かる。なるほど、進学校だけあって難しいな。だが、最初のほうは理解できるな。

 

「ねえ、望月君」

半分くらいまで進んだところで、ひなが話しかけてきた。

 

「なんだ?」

「望月君、塾とか行ってる?」

「いや、生まれてから一度も学校以外で勉強を教わったことは無いな。それがどうかしたか?」

 

するとひなは一枚のチラシを差し出してきた。

 

「これ、あたしが通ってる塾なんだ。今はテスト前で忙しいんだけど、よかったら夏期講習に来ない?」

 

塾か、ひなが通っているということはかなり名の知れた塾なのだろう。昔から進研ゼミも塾も縁が無かったし、かなり新鮮ではあるな。

 

「テスト終わったら考えてみるよ」

「そっか。じゃあこのチラシ渡しとくね」

 

そして10分後、練習問題を解き終わり、ひなに採点してもらった。

 

「えっと、意外に点数いいね」

「意外だったか……」

「い、いや、そうじゃなくて!望月君って授業中は寝てることが多いから、そういう意味でだよ」

 

そんなに目立っていたのか。確かに藤堂先生の授業で寝てるのを注意されたとき、なんだかざわざわしていた気もするな。

 

「とりあえず、望月君の苦手な範囲は分かったから、そこを中心にやっていこうか」

 

たったこれだけの練習問題で俺の苦手が分かるのか。流石は学年1位だな。

 

「……ん?」

「どうしたの?」

「いや、何でも無い」

 

何でも無くは無いが大したことでもないので俺は勉強に意識を戻した。

 

 

 

そして、放課後のひなとの勉強会は続き、金曜日を迎えた。

帰りのホームルームも終わり、いつも通り図書室で勉強を始めようとした、その時。

 

「武哉ァァァァア!こんな所に居たのか!探したぞ!」

おい、何でこいつはいつもいつも公共の場で俺の名を叫ぶんだ。周囲の視線が痛い……。

 

「亜季斗、図書館では静かにって小学校で言われなかったか?」

「おっと、すまぬ。お前を見つけてついテンションが上がってしまってな!」

 

こいつ、俺の事好きすぎるだろ。腐女子にカップリングとかされてないよな?大丈夫だよな?

 

「委員長、TPOって知らないの?一緒にいる私も恥ずかしいからやめて」

 

そういう割にはいつも自分から一緒に行動してますよね、しおりさん。やべ、なんか睨まれてんだけど。嫉妬ってやつ? モテる男はつらいなあ(棒)

 

「城之内くんとしおりちゃんも勉強しにきたの?」

 

ひなのおかげで話が進む。仮にひながいなかったらグダグダだったろうな。

 

「そうなの、そろそろ勉強したほうがいいかなと思ってさ」

 

範囲が配られた時点で勉強始めるのが普通じゃないのか……。まあ、俺もひなに誘われなきゃやって無いだろうし人の事は言えんよな。

 

「じゃあ、一緒にやる?」

「え、いや、でも私たちお邪魔じゃない?ねえ、望月?」

 

ひなの気持ちを知っているしおりからすれば、二人で勉強しているところに水を差すのは気が引けるのだろう。だからと言って俺に聞かれても、どうしろと言うんだ。

 

「え?別に邪魔なんかじゃないよ?ねえ、望月君?」

 

 対するひなはこういう時に限ってものすごく鈍感だった。チョロインとか言ってすみませんでした。しかも決定権を俺に回してきた。どっちを選んでも面倒なことになりそうだな。

 

「亜季斗、お前はどうしたいんだ?俺に話しかけてきたのは、一緒に勉強しようってことだったんじゃないのか?」

 

パスをパス。サッカー選手顔負けの華麗なパス回しで、俺は回避した。

 

「ま、まあそうだな!互いに協力し合い試練を乗り越える、それが仲間というものだからな!」

 

さいで。まあそういうわけで亜季斗としおりも勉強会に参加することになった。

 

「それじゃあ、二人の入試結果を見せてもらってもいい?」

 

俺の時と同じように、入試結果から得意科目と苦手科目を判別するやり方だな。

 

「えっと……」

「う、うむ……」

 

なんだか二人は気が進まないようだが、そんなに悪い点数なのか? いや、でもここは進学校なんだし、そんなに悪いなら合格しないはずだよな?

 

「わ、我は推薦入学なのでな!」

「え?この学校は推薦でも一応試験するはずだったと思うけど……」

 

推薦でも試験があることもそうだが、亜季斗が推薦だったのも驚いた。いや、亜季斗の委員長としての活動から考えればそうでもないか。

 

「「これです……」」

 

二人とも観念したのか、個人ページを見せてきた。

 

「これは……」

 

ヒドいな。ほとんどが40点前後。しおりに関しては理数は高得点だが、あとは壊滅的だ。この学校の合格ラインどうなってんだよ。

 

「も、望月!なに呆れた顔してんのよ!どうせあんただってこんなもんでしょ!」

「そ、そうだぞ!お前も点数を見せるがいい!」

 

言われた通り個人ページを見せる。

 

「そんな……望月が私より頭いいなんて……」

「国語以外20点ぐらいだと思っていたのに……」

 

おい、失礼すぎるだろ。ていうか国語以外20点だったら絶対合格して無いだろ……。まあ、そもそも試験受けてないんだけど。

 

「今日だけだと時間足りない……かな」

 

ひなは遠慮がちだ。その優しさ、多分切れ味抜群だろうな。スターバーストストリーム!くらい。

 

「まあ、とりあえず出来るとこまでやろうぜ」

 

 一応助け船を出しておく。そうして、勉強会は始まった。全てが壊滅的な亜季斗はひなが基礎から教え、文系が壊滅的なしおりには俺が教えることになった。ていうか、俺も数学途中なんだけど……。

 

「望月に勉強を教わるなんて……。屈辱だわ」

「本当に失礼だな。おい、そこ接続詞、間違ってるぞ。『しかし、ゲームしよう』ってどんな状況だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、図書館の閉館時間が近づいてきた。

 

「今日はここまでだね」

「……」

「……」

 

信じられるか? これ、寝てるんだぜ?

 

「おい、二人とも起きろ。図書館閉まるぞ」

 

二人の肩を叩いて起こす。

 

「お、終わったの……?」

「ぐ、グハっ……。数式が目の前を飛んでいる……」

 

なあにこれえ。こいつらはどれだけ勉強に耐性が無いんだ。

 

「だ、大丈夫?二人とも」

「う、うん。ひなのおかげで理解はできたから」

 

お前に教えてたのは俺だろうが。あくまで俺にお礼はしたくないんですね。

 

「じゃあ、また月曜日にやるってことでいいかな?」

「ま、待ってくださいひな様!月曜まで今日の内容を覚えてる自信がありません!」

 

しおりのキャラが崩壊している。勉強って怖いな。

 

「でも、明日は学校開いてないし……」

「誰かの家とかは?」

 

おい、まじか。明日もやるのか。流石に明日は休みたかったんだが……。

 

「あたしの家は、親が休みたいだろうし、無理かなあ」

「うちも、パソコンの線とか散らかってるしし、望月が来るのは嫌だし」

「わ、我の家も、狭いので無理だ……」

 

 視線が俺に向く。見るな、そんな目で俺を見るなあ!

俺の家は無駄に広いし、俺以外誰もいない。散らかってもいないし、家に入れたくない人もいない。条件はクリアしている。え、でも本当にやるの? しかし、断るための理由も無い。八方塞がりってやつか……。

 

「……分かった。うちでやろう。ただし、午後からにしてくれ。午前中は寝たい。」

「決まりね!じゃあ昼から望月の家で!」

 

 




次回予告

武哉「もう期末テストの時期か」

ひな「そうだね!」

武哉「あの二人はテスト大丈夫なのだろうか」

ひな「大丈夫だよ!私がみんなにしっかり教えるから!」

武哉「テストを楽に乗り越える超能力とかないものかね」

ひな「ダメだよズルしちゃ!」

武哉「というか全く異世界要素が出てこないからここが異世界ってことも忘れそうになる」

ひな「望月くん、何の話?」

武哉「次回、『自宅』」

ひな「ねえってば!」
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