異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。   作:たけぽん

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31. 調和

 

 

――視点B――

 

「というわけでこっちは俺のクラスメイト達だ」

「へえ。どうもこんにちは。伊野ヶ浜 夏衣といいます」

 

ハゲとひと悶着あった後、望月も見つかったので集合場所まで戻りみんなと合流した。伊野ヶ浜さんも休憩時間ということで一緒に来たわけだけど……。

 

「あ!さっきの監視員さん!」

 

ひなが驚いたような声を出す。

 

「ああ、君たちはさっきの。そうか武哉の知り合いだったのか」

「さっきは本当に助かりました!ありがとうございます!」

 

さっきとは何のことか分からないけど、ひなたちもこの人に助けてもらったようだ。さっき瑠璃が元気なかったのと関係しているのだろか。

 

「ところで、もっちーはこの人とどこで知り合ったの?」

「確かに。中雲高校の生徒では無いように見えるが?」

 

私も彼を学校で見たことはない。それにこのさわやかなイケメンと望月にどういう接点があるというのだろう。

 

「前に狸小路のカードショップで対戦したことがあってだな」

「あの時は楽しかったよね、まさかあのカードを使ってあんなコンボができるとは知らなかったよ」

「こっちも、夏衣のプレイングのうまさには恐れ入ったさ」

 

望月がこんなに楽しそうに喋るなんて、明日は雪でも降るんじゃなかろうか。それにしても、こんな高青年がカードオタクとは。私もあーちゃんに教えてもらったので一通りのカードゲームはできるけど、前に一回望月と対戦したときはぼこぼこにされたっけ。その望月が絶賛するんだから彼の腕前は相当なのだろう。

 

 

「ほう!貴殿もカードプレイヤーであったか!我は城之内亜季斗!そこの望月武哉の師ともいえる存在だ!」

「おい、捏造すんな。誰がお前の弟子だ」

「そうよ、委員長最近は私にも負けてばかりじゃない」

「ぐはあっ!」

 

しまった。また嫌味な事言っちゃった。あーちゃんはこの程度じゃ本当に傷ついたりはしないだろうけど、印象は悪いよね……。ああ、本当に私のバカ。

 

「まあ、それはともかくお前ら自己紹介くらいしろよ。名前知らないままだと夏衣も話しづらいだろ」

 

望月が気を利かせている……だと。やっぱりオタ友は素晴らしいわね。

 

「そうだね、えっと、あたしは沢渡ひなです。よろしくね」

「どうもよろしく」

 

ひなから始まり順に自己紹介は進んでいく。

 

 

「それじゃ、最後、しおり頼むわ」

「え?あ、うん。赤坂しおりっていいます。よろしく」

 

 

 

 

 

 

 

自己紹介は一通り終わり、私たちはさっきの売店へ行き昼ごはんを買うことにした。

順番を待っている間、隣の伊野ヶ浜さんが話しかけてきた。

 

「ねえ、赤坂さん」

「何?伊野ヶ浜さん」

「伊野ヶ浜さんはやめてよ、タメなんだし。夏衣でいいよ」

「じゃあ私もしおりでいいよ」

 

それで、何?という視線を向けると夏衣君は私の髪を見て、答えた。

 

「しおりのその髪って、『さくら荘』の赤坂龍之介に似てるよね」

 

なんと、それに気付くとは!

 

「そうなの!私赤坂龍之介の大ファンでね!原作もDVDも全部持っててね!彼にあこがれて、プログラミングも勉強してて!それから……」

 

ってしまった。龍之介の話題を振られたのが嬉しすぎてものすごい早口でまくしたててしまった。こ、これはドン引きされたんじゃ……。

 

「だよね!俺も龍之介のファンでさ!三食必ずトマトを食べてるんだ!彼の好物だからね!文化祭のメイド姿は何度見ても尊いよ!」

 

ま、まさか夏衣君も龍之介ファンだったとは!これは素晴らしい出会いだ!

その後テンションが上がりまくり、私たちは列が進むのも忘れるくらい語り合っていた。

 

「次の方どうぞー」

「あ、私たちの番だね」

「何になさいますか?」

 

私たちは声をそろえて注文した。

 

「「トマトバーガーで!」」

「は、はい。トマトバーガー二つですね。少々お待ちください」

 

店の人は少し引いているようだったが、そんなことはどうでもいい。もう今はトマトと龍之介の事で頭がいっぱいだ。

 

 

***

 

――視点A――

 

「それでさ、あのときの龍之介がさ……」

「あ、それ分かる!あれはかっこ可愛いよね!まじ龍之介ラブ!って再認識した瞬間だったよ!」

 

翌日。俺と亜季斗、そしてしおりと夏衣は狸小路に来ていた。

夏衣とオタ友として親睦を深めたいというしおりの希望によるものだ。今も二人は前方で赤坂談議に興じている。推しが同じだとこんなにすぐ仲良くなれるのか。俺もななみん推しに出会いたいものだ。

 

「……」

「どうした亜季斗。今日はやけに静かだな。野菜炒めにマヨネーズでも入れたのか?」

「……ん?そうか?そんなことはないぞ!というか野菜炒めにマヨネーズだと!?それはうまそうだな!」

 

いや、相当まずかったぞ。まあ、亜季斗がマヨネ炒めで悶絶しても知ったことじゃない。もしかしたら人によってはいけるかもしれないし。

しばらく歩いていると、携帯が振動した。画面を見るとひなからのラインだった。

 

『今、時間ある?』

 

何か用事があるようだ。だが、今片手間に返信するのも失礼だろう。

 

『すまん。夜でもいいか?今出かけてる』

 

少し間をおいてから通知が来る。

 

『うん。わかった。じゃあ都合がよくなったら教えてね』

『了解』

 

ひなからのスタンプを確認してから携帯をポケットにしまう。

そろそろ目的地だ。

 

「いやあ、いつ来ても最高ねここは」

 

やってきたのはアニメイト。以前、亜季斗としおりに遭遇したところだ。本ありグッズありCDありでオタクには天国のような場所だ。もちろん俺もかなりの頻度で足を運んでいる。

 

「夏衣君こっちこっち!」

 

しおりは夏衣の手をひっぱってラノベのコーナーへ走っていく。ラノベの力ってすげー。

 

 

「……」

「亜季斗、俺らも行こうぜ。確かお前の気にいってたラノベ、新刊出てたはずだぞ」

「ん?そうだな!近所の本屋では速効で売り切れてしまったからな!ここにはあると信じよう!」

 

そう言って亜季斗は意気揚々とラノベコーナーに向かっていく。

俺も適当に見て回るか。夏休みの期間内で読み終わりそうなのがあったら買ってみよう。

 

 

 

 

 

ふむふむ。この作品はよさそうだな。異世界転生なんてありきたりなジャンルだが、主人公がチート無双するわけでもない。むしろ主人公が一番弱いのか。最弱系主人公ってのは初めて見るな。

 

よし、これにしよう。全3冊だしすぐに読めるだろう。レジに向かうついでにトレカ(TCG)コーナーに向かう。確か新しいパックが出てるはずだ。

 

 

「えーっと、これか」

 

新しいパックを見つけ、ひとつ手に取る。ほう、なかなかいい内容だ。買いだなこれは。

よし、レジに持っていこう。

 

 

「んだよこれ、ぜんぜんわかんねーなおい」

「だから事前に調べておけと言っただろう」

 

そう思っているととなりから聞きなれた声がした。俺の苦手とする人物たちの声だった。こういうときは見つからないように、ステルスヒッキーを発動させながら立ち去ろう。

 

そろり……そろり……。

 

「ん?望月じゃねーか。何してんだこんなところで?」

 

うぐっ。ステルス失敗。まさかたった三歩でばれるなんて……不覚。

 

「こんなところとか言ったらオタクにつぶされますよ?藤堂先生」

 

ものぐさで適当な藤堂先生が、昼間からアニメイトとは、どういう風の吹き回しだろうか。

 

「は?オタクにつぶされるって?んな訳ねーだろ。こちとらエリート公務員だぜ?」

「いや、まて藤堂。聞いたところによると最近のオタクの中には過激な奴らもいるらしい。公務員だろうが皇族だろうがお構いなしにつぶされるかも知れんぞ」

 

 

隣の女性が藤堂先生に忠告する。まあ、発言内容はだいたいあってるけど、あんたがそういうこと言うのかよ。

 

「木崎先生までなにやってんですか?」

「久しぶりだな望月。夏休みは満喫しているか?」

 

だから、会話のドッジボールはやめろって。何回繰り返すのこれ?

 

「……普通ですね。じゃあ俺はもう行くんで、デート楽しんで行ってくださいね」

「待て望月。何を勘違いしている。私が藤堂とデートなどするわけないだろう」

「まったくだ。なんで俺が木崎なんかと」

 

いや、そう言う割には息、あってんじゃん。

もう面倒極まりないので俺は適当に相槌して立ち去ろうとした。

 

「おいまてや望月」

 

が、逃げ切れなかった。藤堂先生はがっちり俺の腕を掴んでいる。凄く痛い。加減しやがれものぐさ教師。と心の中で悪態をついておく。

 

「なんですか、俺も一緒に来てるやつらがいるんでこのくらいで勘弁してくださいよ」

「お前、こういうカードゲームに詳しいよな?どれがいいのか教えろ。二学期の内申高くしてやるから」

 

 

いや、まったくもって意味がわからん。何?藤堂先生オタクに目覚めたの?やめときなって。半端な気持ちで入ってくるなよ、デュエルの世界によぉ!

 

「藤堂。説明を省きすぎだ。あとそれは職権乱用だぞ」

 

ナイスです木崎先生。

 

「あ?めんどくせーな……。つまりあれだ、俺の甥っ子がもうすぐ誕生日なんだよ」

「プレゼントってことですか」

「その通り。だが、私たちはこういうジャンルに疎くてな。悩んでいたところだ」

「いや、別に木崎先生がついてくる必要はなかったんじゃないですか?」

 

木崎先生は少し沈黙したあと、再び話し出した。

 

「私にもいろいろあってな。これ以上は禁則事項だ」

 

あんた絶対オタク文化に疎くないだろ。絶対ハルヒ読んでるだろ。

まあ、このままだと延々茶番に付き合わされること間違いない。ササッと終わらせてしまおう。

 

「そうですね。初心者ならこのセットを3つ買えば簡単に始められます」

「同じの3つだと!?ぼったくりじゃねーか!」

「それはお客様相談室にでも言ってください」

「それで?他には何を買えばいいんだ?」

 

 

……その後10分くらい、俺は先生たちにアドバイスを続けた。スリーブは2重程度にしておけとかもっといろいろ選びたいなら上の階のカード屋に行けとかとにかく今までで一番と言えるほどの長文を喋っていた。

 

「……ってところですかね」

「お、おう。全くわからんがとりあえず何を買えばいいかはわかったぜ……」

「望月。お前がこんなに饒舌だとは知らなかったし知らなければ良かった……」

 

二人とも頭がパンクしているようだ。いつぞやの勉強会の時の亜季斗たちを彷彿とさせるな。

 

「それじゃあ、俺はこれで。甥っ子さん喜ぶといいですね」

「……」

「……」

 

二人は「ああ」とも「おう」とも言わずに少し驚いたように俺を見ている。

 

「なんですか?」

「いや、お前がそういう事を言うとは思わなくてな」

「だな、てっきり『はあ……やれやれ』とか言うとばかり思ってた」

 

いや、あんたら絶対オタクだろ。

 

「別にいいでしょうが、俺が何と言おうと。それじゃあ、俺はこれで」

「おーう。また二学期な。宿題忘れんなよー」

「夏休みだからといってハメをはずさないように」

 

最後だけ教師らしかったな。

 

 

***

 

「アリガトウゴザイマシター」

 

レジを通し、亜季斗たちのいるラノベコーナーへ行ってみるとあいつらの姿は無かった。

仕方ないので亜季斗に電話する。

 

『もしもし、武哉か!?』

 

亜季斗はたったワンコールで電話にでた。だが、その息は荒い。電話越しに車の音が聞こえるので、どうやら外を走っているらしい。一体何やってんだ?

 

「ああ、俺だ。お前ら今どこに――」

『しおりがいなくなってしまった!いま伊野ヶ浜氏と手分けして探している!お前も来い!』

「わかった。すぐ行く」

 

そこで亜季斗は電話を切った。

 

 

『やれやれ』とはこういう時に言うものなんですよ、藤堂先生。

 

 

 

 

 

 

 

 




次回予告

武哉「久しぶりの次回予告だ」

ひな「このコーナーお休みにするんじゃ無かったの?」

武哉「作者もいろいろ考えてはいるが、さすがにキャラ紹介を毎回つけるのも大変らしい」

ひな「怠惰だね……」

武哉「だな」

ひな「とりあえず予告しよっか」

武哉「知っての通り夏休み編の目的はしおりと亜季斗の仲を深めさせることだ。それを中心に視点を切り替えながら話が展開されていく」

ひな「でも、切り替えが多い気もするけど?」

武哉「そこが話のキーポイントらしいぞ」

ひな「へえ……楽しみだね!」

武哉「次回はしおりと亜季斗の関係に何やら不吉な予感が!って作者が言ってたぞ」

ひな「ええ、それ不安だなあ。なんとかしてよ、望月君?」

武哉「次回、『相違』」
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