異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。   作:たけぽん

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試験前なのにほとんど勉強してませんが、気にせず投稿していきたいと思います。


32. 相違

 

 

武哉が藤堂たちに出くわしていた時、ラノベコーナーでは……。

 

 

 

―――視点B――

 

「ほら夏衣君見てみて!これ、凄いでしょ!」

 

私はラノベコーナーにあるとあるポスターを指差す。

 

「わあ!龍之介の書き下ろしポスターじゃないか!しかもメイドちゃんまで!はあ……尊い……」

「でしょでしょ!これ、期間限定で貼られてるの!ぜひとも夏衣君に見せたくて!」

 

夏衣君は満面の笑みでポスターを眺めている。よきよき。

 

 

 

 

 

……そういえば、『さくら荘』を紹介してくれたのはあーちゃんだったっけ。どこかのイベントで一緒にポスターを見てた時のあーちゃんと私も、こんなふうに笑ってたな……。

初めてゲームを教えてもらった時も、徹夜でアニメ見た時も。いつの間にか私は、あーちゃんとこんなに純粋に笑いあうことが減っていたのかもしれない。

それは、私があーちゃんへの気持ちを誤魔化し始めたからに他ならない。どんなに好きでいても、彼は私の方を、私だけを見てはくれないと悟ってしまったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうかしたのしおり、そんなにこっちの方見て?」

「えっ!?い、いや、別にそんなことないって!」

 

私は何故か頬が熱くなっていることに気付いた。な、なんでだろ。これじゃまるで夏衣君を意識してるみたいじゃん!

 

「おーいしおり!おもしろそうな作品があったぞ!どうだこれはなかなかだろう?」

「……」

「お、おいしおり?」

「え?あ、いや、何でもないよ?」

 

何故かあーちゃんの方を見ることができない。見ようとするとものすごく嫌な気持ち

が湧いてくる。何か、そう、罪悪感のような気持ちが。

 

「そういえば、武哉いないね?別のコーナーに行ったのかな?」

「……。本当だね。私、見てくる」

「それなら我も……」

「いい!一人で行くから!委員長たちは待ってて!」

 

思わず怒鳴ってしまった。

 

「ど、どうしたのだしおり?何か変だぞ?」

 

何か変?誰のせいだと思ってるんだ。こっちの気も知らないで勝手に優しくして、自分だけ楽しく笑って。あーちゃんなんて……あーちゃんなんて……。

 

「うるさい!ほっといてよ!あーちゃんのバカ!大嫌い!」

 

そう言って私は走ってアニメイトを出た。

 

 

 

狸小路のアーケードを抜け、大通公園のあたりまで歩いてきた。特に行くあてもないので、その辺を行ったり来たりする。でも、もうどこを歩いていようとそんなことはどうでもよかった。周りから見たら私はふらふらしているかもしれない。

 

 

好きとはなんだろうか。恋をするとはどういうことだろうか。随分と哲学的な感じだけど、今の私にはそれがわからなくなっていた。私が昔からあーちゃんに向けていた感情は一体なんなんだろう。恋、そう信じて疑わなかった。彼は私にとって特別で、何より心の支えだったから。でもそれはただの幻想だったのかもしれない。前に望月は、ひなの気持ちに対して、時間が解決するものだと言っていた。それを聞いたとき私は心の中で望月をバカにしていた。そんなわけないだろと。でも、それはあながち間違いでも無かったのかもしれない。今、あーちゃんと夏衣君のどちらかを選べと言われたら、迷わずあーちゃんを選べるだろうか。そう自分に問いかけてみる。

情けないことに、私はすぐに答えられなかった。二人を天秤にかけていたのだ。それはつまり、私の気持ちへの答えでもあった。

そっか、私の気持ちは所詮―――

 

そんな事を考えている私には、もう周りの風景は見えていなかった。

 

「しおりいいいいいい!」

 

 

 

 

 

あーちゃんの声が聞こえた。ような気がした。実際あーちゃんが私を呼んだかはわからないけど、私は我に返った。

すぐ横からバスが走ってくる。私は道路に飛び出す寸前。確実に轢かれる。

 

 

 

 

 

あーちゃんに謝れなかった。

 

 

でも、もういいや。

 

 

私が悪いんだ。勝手に好きになって、勝手に葛藤して。

 

 

なんともくだらない人生だったなあ。

 

 

 

 

 

「しおり!」

 

誰かが私の手をひっぱり、抱き寄せる。バスはそのまま通り過ぎていく。

 

 

「しおり、大丈夫?」

「……夏衣君?」

 

私は夏衣君の腕の中にいた。彼が助けてくれたようだ。

なんだろう、凄く暖かくて、落ち着く。

私の意識はそこで消えた。

 

 

***

 

 

「……り!……夫?……しおり!」

 

 

名前を呼ばれて起き上がる。凄く体が重い。

すると、いきなり抱きしめられた。

 

「……え?夏衣君?」

「しおり!良かった……」

 

周りを見渡すとすっかり暗くなっており、私は公園のベンチにいた。

 

「ん。気付いたかしおり」

 

隣のベンチを見ると望月が座っていた。

そうだ、私、アニメイトを飛び出してずっと走ってて、つかれて。何も考えられなくなって。ふらふら歩いてたらバスに轢かれそうになって……。

 

「全く。ホントにひやひやしたぞ夏衣、助けるならもっと早くしてくれ」

「ごめん……。でも、しおりが無事でよかったよ」

 

まだ、視界がぼやけてる。でも意識ははっきりしてきた。

 

「あ、あの、夏衣君……。そろそろ、離してくれないかな」

 

このままずっと抱きしめられているとおかしくなってしまいそうだ。

 

「ああ、ごめんごめん」

「全く、無事でよかったな。もう夜だしさっさと帰ろうぜ」

 

望月はそう言ってベンチから立つ。

 

「……あれ?」

「亜季斗なら、バイトの時間だから先に行ったぞ」

「……そう」

 

あーちゃんは、いないのか。

 

 

 

 

そっか。

 

 

 

 

 

――視点A――

 

「全く、どこ行ったんだしおりの奴」

 

しおりを探し始めてから大分時間がたった。いまだにしおりは見つからない。どうやら自体は思っていたより深刻なようだ。

俺は携帯を取り出し、さっき急いで作ったグループラインを開き、文をうつ。

 

『見つからない。そっちはどうだ?』

『こっちも見つからん。伊野ヶ浜氏はどうだ?』

 

しばらく待つが、夏衣から返事は無い。

 

『伊野ヶ浜氏!どうした?』

『落ち着け亜季斗。多分ラインに気付いていないだけだ。夏衣。見たら返事してくれ』

『うむ。そうだな。取りあえず一度集合しよう』

 

 

やれやれ、という言葉がふさわしい状況だ。亜季斗から聞いた状況としおりが一切の連絡に応じないところからしていなくなった理由は明白だが、それを亜季斗たちに言ってもこの事態は変わらない。

まったく、サポートしろと脅迫までしてきたやつが何してんだか。

 

「これは夏休み終わったら、マック奢りだな」

 

外も大分暗くなってきた。早く見つけないとヘンな奴に絡まれたりしかねない。俺は少し足をはやめて集合場所へ向かう。

 

 

 

***

 

「おお、武哉!どうだった?」

「いや、見つからなかった」

「そうか、我も道行く人に聞きはしたのだが、有益な情報は無かった」

 

亜季斗も息が上がっている。そうとう走り回ったのだろう。

 

「なあ、亜季斗。お前にとってしおりはどんな存在なんだ?」

「なんだ、こんな時に」

こんな時だから聞いてるんだ。とも言えないので目で訴えかける。

根負けしたのか、亜季斗は答えた。

 

「しおりと我は、昔から家が隣で幼稚園も小学校も中学も同じだった。必然的に一緒に遊ぶことも多かった。世間一般で言うところの幼馴染だ」

「それだけか?」

「他に何を言えと言うのだ」

 

やっぱり、こいつにはしおりへの恋愛感情は無いようだ。いや、無いと言い切るには少し難しいか。自覚は無いだろうが今の亜季斗はイライラしている。さっきのしおりからの拒絶は亜季斗にとっては少なからずダメージだったようだ。

 

「じゃあ、もうひとつ聞くが」

「なんだ?手短にしてくれよ?」

「中雲高校に進学すると言いだしたのはお前か?しおりか?」

 

 

沈黙。まあ、俺も聞いて必ず答えてくれるとは思っていない。だが、今後の事を考えれば、この問いかけは重要だ。

 

「……我だ」

「じゃあ、しおりは?」

「それがよくわからんのだ。しおりなら理数系でもっと別の道があったはずだ。だが、我が中雲に推薦が決まった時、あいつは急に進路を変えたのだ」

「そうか」

「ひょっとしたら我は、しおりの可能性を潰してしまったのだろうか」

 

何と鈍い奴だ。リア充爆発とか言ってるこいつが一番爆発するべきだな。しおりが進路変更した理由なんて俺じゃなくてもわかる。亜季斗を追いかけるために決まってる。だが、それは俺が伝えるべきことじゃない。

 

「中雲高校は道有数の進学校だ。理数だけで進学するよりも可能性は広がってる。実際こないだのテストでお前も自分が予想以上に出来るとわかっただろ?」

 

俺にはこれくらいしか言えないな。

亜季斗は無言だ。こんなにおとなしいこいつは初めて見た。

 

「それにしても、夏衣のやつ遅いな」

「……そうだな。もう10分は経過しているのだが……」

 

俺たちは当たりを見渡す。すると、俺の視界には向こう側から信号の方に歩いて行く黒髪の人物の姿が見えた。

 

「おい、あれしおりじゃないか?」

「何!?……本当だ、よかった……」

 

やれやれ、やっと見つかったか。

と、安心していたのもつかの間。俺はまずいことに気付いた。しおりは信号が赤なのに気付いていない。車が行きかう道路に向かって直進している。

 

「おい、亜季斗。このままじゃやばい」

 

 

亜季斗も事態に気付いていたようだ。しおりの方へ走りだす。だが、しおりがいるのは俺たちのいる場所と道路をはさんで向かい側。走っても道路は渡れない。大声で呼んでも、今のしおりには聞こえないかもしれない。

 

そうこうしているうちにしおりは歩道から出る寸前だ。

 

「しおりいいいいいい!!」

 

亜季斗が叫ぶと同時に、大きなバスが通り過ぎていった。

 

「そんな……しおり……」

 

亜季斗がひざから崩れおちる。

バスが通り過ぎた後、俺たちの視界に入ったのは、しおりと、それを抱きしめている夏衣だった。

 

 

 

 

 




次回予告

武哉「次回予告の時間だ」

月島「よう、面白そうなことやってんじゃねえか」

武哉「またあんたか、出番が無くて暇なのか?」

月島「あ?喧嘩売ってんのか?……と言いたいところだが、お前もその程度か」

武哉「というと?」

月島「作者はどうやら俺の出番を既に考えているようだぜ」

武哉「ナ、ナンダッテー」

月島「そういうことだ。俺の活躍を楽しみにしてな」

武哉「なんか前もそんなセリフ聞いたぞ……」

月島「次回、『約束』」

武哉「このコーナーって基本次回予告して無いよな……まあ、お楽しみに」

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