異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。   作:たけぽん

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今回から武哉の実力が見え隠れします。


5. 休日

 そんなこんなで、本日は晴天なり、そして本日は休日なり。今までの休日はもっぱら家で新聞やニュースをチェックしてこの世界のことを探っていた。が、しかし、変わったものは何もなかった。ならば外に出て情報を集めるべきだろう。そう思い出かける準備をしていると……家の電話が鳴った。朝の六時に電話とは非常識な。

 

「はい、望月です」

「……」

 

何だ? イタ電か? 朝から暇な奴もいたもんだな。さっさと切って出掛けよう。

 

「切りますよ」

 

一応そう言って受話器を下ろそうとすると、

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

と慌てた声がする。

 

「何か用か、ひな」

「ふぇ!? な、なんであたしだって分かったの!?」

 

 いつものリアクションだな。そりゃあ分かるでしょうよ。俺の家の電話番号を知っている人間なんて限られてくる。なんせ、ひなとその周辺の人間以外とは全く交友関係は無いし、そもそも俺の個人情報を知っているとすれば学校ぐらいしかない。つまり、間違い電話やイタ電でない限りは必然的に学校関係者ということになる。しかし、休日の六時なんて起きているかも分からない時間にはかけてこないだろう。そして、入学式のあの日、俺の電話番号を学校から聞けた人物が一人いるはずだ。おそらくは俺が不在の場合に留守電を入れるために聞いたのだろうが、その日、俺はそいつと出会っている。つまりはひなである。

 

「んで?土曜の朝6時から何の用だ?」

 

……まあ、何となくここからの展開は想像できるんですけどね。

 

「きょ、今日さ……用事とかあるかな?なかったら、その……」

 

 まあ、休日に知り合いからかかってくる電話なんて一般的にはそんなもんだよな。俺はそんな電話受けたことないけど。まあ、そんなことより聞かれたことには答えよう。んじゃあせっかくのお誘いに対しての俺の答えは、

 

「悪い。今日は出掛けるから。」

 

こっちの世界について調べる以上、一人のほうが都合が良い。ひなには悪いが断ることにした。

 

「そっか……うん、分かった。朝早くにごめんね?」

 

そう言って、ひなは電話を切った。はあ、これも解決しとかないとなあ……。

 駄女神、もといティアは、俺は“異世界行き”だと、確かにそう言った。だが転生してしばらく経っても何も起こる様子はない。具体的に言えば、世界滅亡の危機とか他次元からの来訪者とか。そういった理由から俺が導き出した答えは……

 

「日常系……だよな」

 

 そう、日常系。ラノベやアニメのジャンルの一つであり、普通の世界で普通の人間が普通の世界ならではの面倒ごとや青春ラブコメをこなしていくものである。何が言いたいかというと俺の送り込まれたこの世界は日常系の異世界である、ということである。そしてこの世界が何らかのアニメや小説の世界の一部だとしたら。

 

 ……そう思った俺がやって来たのは札幌市中央区の繁華街、狸小路のアニメイトである。そう、しばらく忘れていたがここは札幌市なのだ。中雲区から札幌駅、そして街の中心部へはJRで4駅、割と近いほうだ。そして何故、俺がアニメイトに来たかということなのだが、それは、この世界に存在しない二次元作品がこの世界と関わっているのでは?という可能性に思い至ったからである。しかも、日常系ってとこまで絞れている。多少は楽だろう。さて、さっそく取り掛かりますかね……。

 

「大体、あーちゃんが悪いんじゃない!」

「い、いや……我は別にそんなつもりじゃ……」

 

……ん? 喧嘩か? どうせ、その辺のカップルが痴話喧嘩してるんだろ。ざまぁ。そのまま別れちゃったりしたら今日のご飯6杯はいける……。

 

「我は無実だアアアアアアアア!」

 

というか、このうるさくて中二病チックなしゃべり方を俺は聞いたことがある。……それ以前にこんなしゃべり方をする奴なんて一人しかいないだろ。

 

「ん……? あそこにいるのは……」

 

やべ……。

 

「武哉アアアアア!ナイスタイミングマイフレンド!&ヘルプミイイイイイイイ!」

 

はあ、もう仕方ないなこれは……。

 

「亜季斗、TPOをわきまえてくれ、周りのお客さん困ってんだろ」

「おっとそうであったな……皆の者すまぬ!多少取り乱してしまったように見えるがこれも我の予知していた未来のひとつなのだ!安心して買い物を続けてくれたまへ!!」

 

 おいバカやめろ。なんでこいつは赤の他人だらけの環境でこんなに自信満々にしゃべれるの? 羞恥心ないの? WHERE IS YOUR 羞恥心? 羞恥心だけ日本語なのは仕様です。べ、別に羞恥心って単語がわからなかった訳じゃないぞ……。

 

「で?お前何してんの?」

 

ていうか俺の聴覚が正しければ男女の声がしたんだが……。

 

「えっ、も、望月?」

 

聞いたことのある声のほうに目をやると、女優帽に白のワンピース、巻いた髪がとても可愛らしい……え? いや、でも、まさか……でもやっぱり、

 

「……しおりか?」

「う、うん」

 

 オーマイゴットまさかの大正解。教室にいる時とは全く違う、というか真逆の見た目の赤坂しおりがそこにいた。えーと、どういうことだ? 状況を整理しよう。ここはアニメイト、そして城之内亜季斗がかなりおめかしした赤坂しおりと一緒にいる。そして先ほどの会話。なるほど。謎はすべて解けた!

 

「ごめんな二人とも。俺は見なかったことにしてとらのあなでも行くわ。じゃな。」

「ちょちょちょっと待て望月!」

 

しおりに首根っこを掴まれて制止させられた。くるしい……。

 

「あんた勘違いしてるって! むしろどう勘違いしたか聞こうか!」

「いや、痴話喧嘩だろ?」

「ちっがーーーーーーーーう!!!!」

 

しおりの叫び声がアニメイトにこだまする。

 

 

 

 んで、俺はしおりの弁解を聞かされるために、亜季斗ともども近くのマックに入店した。ちなみに俺の注文した商品はチキンクリスプ、ハンバーガー、コーラのSサイズ。たった300円そこらでこんなに食べられるマックはやっぱり凄い。

 

「なるほど、二人は幼馴染だったのか」

「そう!だから二人で買い物とかはよくあることなの!別に特別なことじゃないの!」

 

だそうだ。まあそれにしたってそんなオシャレしてくるあたり特別じゃないとは思えないんだが。

 

「で?さっきは何で騒いでたんだ? 亜季斗」

 

黙々とビッグマックをほおばる亜季斗に尋ねてみる。

 

「むぐ!んっんん!ごほん。実はだな、今日、我がアニメイト馳せ参じたのは最近、全話視聴を終えた『さくら荘』シリーズを全巻買う目的だったのだ」

 

まじかよ……『さくら荘』シリーズって短編集ふくめ13冊だぞ?帰りどうすんだよ……あきらか荷物じゃねーか。

 

「で?今の話とさっきの状況がどう関係するんだよ?」

「それはあーちゃ……じゃなくて委員長が『さくら荘』の真のヒロインは優子だっていうのよ!どう考えても千尋先生でしょ!?」

「待ていしおり!お主は妹キャラの重要性をなんら理解しておらん!だいたいあんなものぐさ教師など……!」

「何よ!先生と空太のあの絶妙な関係が良いんじゃない!」

 

あーなるほどね。推しキャラについてのヒロインポジ争奪戦だったのね。てか教師に妹って、どっち選んでも主人公大変だな……。

 

「武哉(望月)はどう思う!?」

 

おいおい、なぜか俺に矛先が向いたぞ……めんどくせえ。

 

「あのな、ラノベの女キャラは人によって見方も思い入れも違うもんだ。そもそも他人の推しキャラを批判するのはマナー違反だからな。」

 

ちなみに俺はななみん推しである。というか、しおりって結構オタクなんだな。まあ亜季斗と幼馴染ならあり得ないことでもないか。

 

「確かに武哉の言うことも最もだな……しおり、すまぬ。我は多少言いすぎた……」

「いや、別にあーちゃんが謝ることないよ!わたしこそごめん!」

 

ふう、なんとか丸く収まったな。とそこで、

 

―― サガシニユクンダ、ソコヘ〜 ――

ん、なんだ? 着信音? 俺ガイルとは良いセンスだな。

 

「おっと!我の携帯だな!おそらくはバイト先……もとい組織からだな!少し席を外すぞ!」

 

そう言って亜季斗は外へ向かった。てかあいつバイトしてんだな。

 

「なんかごめんね望月」

 

しおりが謝ってくる。うん。その言葉、もうちょい早く聞きたかった。それにしても、

 

「しおりは亜季斗のことが好きなんだな」

 

しおりは一瞬フリーズする。だがすぐに、

 

「ななな、何い、い言ってんの!何でわわわわ私が委員長なんて!」

 

と慌てまくって怒鳴ってくる。

 

「おまえが亜季斗を好きだって分析を3つしてやる」

「いや、何で PLAY MAKER なのさ……」

「ひとつ。休日に、お前にとっては特別でもないと言っている用事にとても気合いの入った格好で来ている。メイクまでして」

「そ、それはたまたまで……」

「ふたつ。先ほどの慌て様。普通に何とも思っていないなら、あんなに感情的にはならない」

「え、えっと……」

「みっつ。亜季斗のことを学校では委員長と呼んでいるのにプライベートではあーちゃんと呼んでいる。特に意識していないなら学校で呼び方を変える必要性は薄い」

「ぐはっっ」

「以上だ。なにか間違いがあるか?」

「……ない……です。」

 

しおりがうつむく。少しやりすぎたな。亜季斗も戻ってこないし。このまま沈黙ってのも困る。

 

「そういう望月はひなとどうなのさ?」

 

反撃のつもりか、しおりから話題を作ってきた。俺が動揺すると思っての話題選択だろうなこれは。まあ聞かれた以上は多少まじめに答えるか。

 

「あいつは俺のこと好きだろうな。でも俺にとっては友達以外の何でもない」

 

と、ありのまま回答すると、

 

「はああああ!?」

 

しおりはものすごく驚いてた、お前が動揺してどーすんだ。

 

「あんた、ひながあんたのこと好きだって知ってたの!?」

「まあな、言動もろもろで分かるだろ。現にお前も知ってんだろ?」

 

淡々と返すとしおりは半ば呆れた様子で、

 

「あんたってもっと鈍感だと思ってた。人の気持ちを読み取れるなんて……」

 

なんて言ってきた。まあ、自分でも人の感情には敏感なほうだと思ってる。というか“敏感にならざるを得なかった”からな。

 

「で、どうすんの?あんたは友達と思ってても、ひなはあんたのこと好きなわけだよ?」

「別にどうもしない。時間が解決する」

 

 そう。沢渡ひなが俺に抱いている感情は間違いなく恋だ。だがなぜそうなったか? 確かに第一印象や会話も要因の一つだろう。だが、一番の原因は初登校のあの日、そして今に至るまでの周りの噂や冷やかしに他ならない。つまるところ、沢渡ひなという人物が俺に向けている感情は周りによって作られたある種の勘違いでしかない。だから、しばらくすれば消えてゆくものだ。

 

「はあ、まあ他人の恋愛事情にはあまり介入しないほうがいいだろうしここでやめとくわ」

 

しおりはそこで話を切った。なので「亜季斗遅いなー」と発言しようとした。だがちょうどその時、

 

「望月君?」

 

呼ばれて振り返るとそこにはひながいた。

 

「え、なんでしおりちゃんと一緒なの? 今日は出かけるって……え?」

「いや、違うのひな。別にそういうのじゃなくて……」

 

しおり、その発言は駄目だ。正解は、亜季斗もいるよ、だ。

「ううん!いいの!ごめん邪魔しちゃって!誰にも言わないから!」

 

そう言ってひなは出口へ走っていった。

 

「ちょ、望月!追いかけなさいよ!」

「追いかけてどうする。今、捕まえて事情を説明してもあいつ信じないぞ。冷静になってからのほうがいい」

 

俺の発言に一理あると思ったのかしおりはそれ以上は何も言わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして亜季斗が戻ってきた。組織からの任務についての指示がどうとか言ってたが、つまりはバイト先からのシフトの確認かなんかだろう。

 

「それで、武哉は今日は何しにここへ来たのだ?」

 

そういやアニメイトでこの世界について探りに来たんだった。しかし、なんだかやる気が下がってきたな。なんか手っ取り早くやる方法は……ん? 待てよ……。

 

「なあ亜季斗、お前ラノベやアニメはどれくらい見てる?」

「なんだ藪からスティックに。そうだな、我は物心ついたときからオタクだったからな。例外もあるがほとんどの人気作は網羅しているぞ!」

「しおりはどうだ?」

「わたしもまあ、大抵は見てるかな。」

 

こいつは都合がいいな。こいつらに聞いて行けば答え出るんじゃないか?

 

「実はな、知り合いがネット小説を書こうとしてて、それが二次元作品に転生モノなんだが、何の作品に転生させるかで悩んでるらしいんだ。そこで二人の意見が聞きたい」

「ほう、それはなかなかに興味深いな!して、ジャンルは?」

 

流石ガチオタク、話がはやい。

 

「日常物だ。舞台は日本」

「ふむ、ならばやはりハルヒではないか?日常要素も非日常要素もあってなかなかに良い作品だと思うぞ?」

 

これでハルヒの可能性は消えたな。よかった~エンドレスエイトなんて御免だからな、ホントに。

 

「しおりはどうだ?」

「う~ん。氷菓とか?ラノベではないけど。」

 

嗚呼、さよならえるたそ……。

その後も二人に問い続けたがほとんどの作品がこの世界に存在していることが分かった。というか亜季斗の情報量はびっくりだわ……。

 




次回予告

しおり「というわけで次回予告!いよいよ私の番ね!」

武哉「そうだな……」

しおり「テンション低っ!どうしたのさ?」

武哉「今回の俺の言動、屑すぎないか?」

しおり「好意を抱いているとわかっている相手を放置したり、それは気のせいだって言ったり?」

武哉「作者は俺をどうしたいんだ……」

しおり「どうやら望月の言動は大半が伏線らしいよ?」

武哉「次回『兆し』」

しおり「ちょっと!何勝手に終わらせてんのよ!」

武哉「お楽しみに」

しおり「私の話を聞けえええ!」
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