異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。   作:たけぽん

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今回から伏線多めです。注意しながら読むとより楽しめるかもしれません。


6. 兆し

 

 そんなこんなで、俺の土曜日は何も掴めないまま終わった。いや、とりあえず亜季斗たちと話したことで多少は掴めたといえるだろうか。亜季斗とて流石にすべての二次作品を網羅しているわけではない。だからこの世界が何らかの作品の世界である可能性もないわけじゃない。だが、よく考えると北海道の札幌が舞台なんてのは相当、絞られるし中雲市なんて街を作る必要性も感じられない。そもそも、あの駄女神がいくら駄女神だとしても死者である俺を何の意図も目的も意味もなく超マイナー作品の世界になんぞ転生させるわけがない。だからと言ってこの世界の正体のヒントにはならないか。結局、まだ情報が少ない。それが事実だ。土曜日ももう終わりそうな11時半、そんなことを考えながらベッドに横たわっていると携帯が振動した。

 

「げ……」

 

思わず声が漏れた。それは瑠璃からのLINEだった。内容は一言。

 

『少し電話しない?(笑)』

 

絶対笑ってないだろこいつ……まあ、内容はだいたい察しがつく……。

 

『おけ』

 

と返すと数秒で電話がかかってきた。

 

「もしもし」

「どういうことかな?」

 

ちょ、怖っ!なにこの冷たい声。どっから出るのこんな声……。

 

「何の話だ?……ってのは通用しないよな」

「もちろん♪」

 

おそらくはマックでの話をひなから聞いたのだろう。それで俺に真実を確認するために電話してきたのだろう。

 

「しおりとは何もないし、席を外してはいたが、あの場には亜季斗も来ていた。つまり完全な誤解だ」

 

「そんなことを聞きたいんじゃないの」

 

瑠璃は静かに、冷たく、しかしどこか怒りを感じさせる口調でそう答えてきた。

 

「なんでそれをひなに言わなかったの?なんで追いかけなかったの?」

 

それはしおりからも投げかけられた質問だった。

 

「あそこで追いかけて捕まえて話してあいつはそれを信じたか?あんなに動揺していたのに?」

 

俺はあの時と同じ回答をした。これでいいだろう。

 

「じゃあ聞くけど、あの後、ひなには言ったの?家は隣だよね?」

 

 

 予想外のカウンターが帰ってきた。そう、俺のあの回答は事が起きた直後は有効だったがそこから数時間も経過した今はもう全くの無力だったのだ。だからこそ、瑠璃はこの時間にそれを聞いたのだろう。

 

「その感じだと、言ってないんだね?」

「そう……だな」

「ひなが君をどう思ってると思う?」

 

その類の話は本日2回目なんだが。

 

「まあ、控え目に言って恋愛対象だな」

「どこを控えてるのそれ?ま、とりあえず現状把握はしているみたいだね。」

「まあ一応はな」

「もっちーは人の感情を読み取るのは得意みたいだね」

「そういうお前もこの短期間で俺をよく分析してるじゃないか」

「でもね、もっちー。君が読み取っているのは感情の表面だけで、その裏までは読めてないよ」

 

感情の裏……ねぇ。

……瑠璃のその言葉で、一瞬、忌まわしい記憶が甦ったのを、俺は気にしない。

 

 

 

 

 瑠璃との電話はそれで終わり、土日は特にそれ以上何もなく過ぎ月曜がやってきた。今日から5月になるわけで、ここら一帯の地理も把握できた。つまり、俺がひなと登校する理由はなくなっていた。それに土曜のこともあったし、今日は一人で登校、そう思っていた。

 

「あー眠い……」

 

俺がマンションのエレベーターを降りながらそんなことを呟いていると、ロビーに人影が見えた。いや、まさかね……そんなことあるわけない。

 

「お、おはよう……」

 

と思っていた時期が私にもありました。人影と声の主はひなだった。おい、どーすんのこれ。

 

「おはよ」

 

そう返し俺がロビーを出るとひなが着いてきた。というか学校に行くんだから着いてきたわけでもないか。やだ、俺ったら自意識過剰。 

 

「ちょっと、なんで先に行こうとするのさ」

 

本当に着いてきてた。なんだよ、数秒前の俺がかわいそうじゃねーか。

そして歩き出したわけだが無言。仕方ない、さっさと土曜のことを言っておくか。

 

「土曜のことだが、俺としおりはお前の思っているような関係じゃない。席は外していたが亜季斗もいたしな」

 

よし。完璧だ。要点を簡潔にまとめた素晴らしい文章だ。

 

「そうなんだね。うん。わかったよ。ごめんね、変な勘違いしちゃったみたいで」

 

と、ひなは納得した『ような』ことを言っていた。はあ、まあとりあえずこれで半分解決したってところか。

 

「そういえば望月君、期末テストの勉強とかしてる?」

 

今度はひなから話題だった。

 

「期末とはずいぶん先だな、まずは中間じゃないのか?」

「え?」

 

あれ、なんかおかしいこと言ったか? 期末への見通しが甘いとかそういうことか?

 

「中雲高校には中間テストはないよ?」

「え?」

 

なにそれ、楽園かよ。いや、でもたった一回のテストで一学期の成績がつくってことでもあるな。

 

「その様子だと特別点のことも知らないの?」

「特別点?」

「えっとね、中雲高校は北海道でも有数の進学校なんだけど、個人の実力を重んじる校風で、中間テストがないのは期末の難易度が高めなのと個人の学習意欲を上げるためなの。それで、期末テストで上位10人以内に入ると順位に応じて特別点がもらえて、成績や推薦で有利になったりするの。」

 

 なるほど、つまりは個人の実力によって他の生徒より進路において優位に立てるってことか。ようこそ個人実力至上主義の学校へ、ってことね。てか進学校だったのか……確かに授業のレベルは高めだったが。ったく、あの駄女神。俺がまったく授業について行けなかったらどうするつもりだったんだ……。それはそれで俺を馬鹿にしてくる駄女神の姿が目に浮かぶ……。

 

 

 

 

 

 

 

 なんて話をしながら登校し、朝のホームルームが始まった。先生は気だるげにしゃべっていたが、俺はほとんど聞かずに窓の外を見ていた。だが、突然先生のしゃべり方が変わったので俺の意識は引き戻された。

 

「あー、知ってるとは思うが来月に体育祭がある。我が校の体育祭は期末テスト同様、結果に応じて特別点が与えられる。気を引き締めて取り組むように」

 

ほう、体育祭があるのは知ってたが、そこでも特別点が入るのか……文武両道ってやつだな。

 

「んで、体育祭実行委員を各クラスから男女一人ずつ出すことになった。つーわけで一時間目の俺の授業の時間で決めてくれ。つーわけで城之内、後任せた」

 

先生は亜季斗に丸投げすると、教室の後ろで椅子に座って官能小説らしきものを読み始めた。ブックカバーくらいしろよ……。

そして一時間目。

 

「ウエッホン!では体育祭実行委員を決めて行くぞ!まずは女子から、立候補はあるか!?」

 

教室は沈黙した。おい、亜季斗かわいそうだろ。誰か発言してやれよ、俺はしないけど。

 

「ええい!ならば推薦でも構わん!適任だと思う者はおらぬか!」

 

亜季斗のやつ、やはり委員長だけあって進めるのが上手いな。なんて感心していると、一人の男子が手を挙げた。

 

「おっ!池内氏!何かね!」

 

池内と呼ばれた男子は立ちあがり発言しようとする。気のせいか近くの席の男子がそわそわしている気がする。

 

「沢渡さんがいいと思います!ほら、頭いいし!期末テストも一位は沢渡さんかD組の渋谷だって言われてるし!」

 

池内はひなを推薦してきた。そういや瑠璃がひなは入試全教科満点でトップだとか言ってたな。もしそれが本当だとして、そんなひなと競れるD組の渋谷とかいうやつすごいな。

 

「なるほど!ご意見感謝するぞ!して、沢渡氏、どうかね?」

 

亜季斗がひなに意思確認するとひなは、

 

「ふぇ!?いや、でもあたし自信ないし……」

 

とやりたくない様子だった。

 

「いや、沢渡さんならできるって!」

「行ける行ける!」

「余裕っしょ!」

 

と池内の周りの男子が発言する。あーなるほど、そういうことね。

 

「わ、分かった。やってみます……!」

 

ひなは押し切られ、女子の実行委員はひなに決まった。

 

「では次に男子の委員! 立候補はいるか!」

「「「「はい!」」」」

 

 池内含めた何人かの男子が手を挙げた。つまるところ、彼らがひなを推薦したのは、自分が委員になることでひなと仲良く、あわよくば付き合おうと思っていたからだ。もうあれだね、ザ・男子高校生って感じ。

 

「俺がやるって!」

「バッカ、お前より俺のほうが頭良いんだから俺だろ!」

「いや!ここは野球部期待の新人の俺がやるべきだ!」

 

おい、本当にここは進学校なのか……隣を見るとしおりがゲテモノを見るような眼で彼らのほうを見ていた。

 

「なるほど!諸君らの気持ちは分かったぞ!だがここは、沢渡氏に誰とやりたいか決めてもらおう!彼女の決定なら諸君らも文句はあるまい!」

 

亜季斗がそういうとクラスの視線がひなに集まった。

 

「えっと……その……」

 

男子たちはもうひなをガン見していた。ものすごい期待の眼差しだ。

 

「じ、じゃあ望月君……お願いできるかな?」

「へ?」

 

俺は何とも間抜けな声を出してしまった。今度は俺に視線が集まる。

 

「だ、そうだぞ武哉!どうするのだ?」

 

男子の視線が痛い……ここで譲ってあげてもいいのだが、俺は、

 

「分かった。」

 

と返事した。

 

 

 

 昼休み。購買でパンを買った俺は、駐輪場の段差に腰かけランチタイムを満喫していた。この駐輪場に来る人は少なく。先程の委員決めで教室に居づらくなった俺は八幡をリスペクトしこの場所へ来たというわけだ。

 

「さて、どうするかね……」

「何をどうするのかな?」

 

振り向くと、瑠璃が鬼のような笑みを浮かべ立っていた。てか鬼のような笑顔ってなんだよ。笑ってんの? 怒ってんの? 来年の話でもしたの?

 

「何か用か、瑠璃」

「そりゃあ、ものぐさでひねくれ者のもっちーが実行委員を引き受けた理由を聞きにきたに決まってるじゃん♪」

 

俺の印象悪すぎないですかね……。

 

「誤解を完全に解くためだ」

「なるほどね、半分しか解けなかったんだね」

 

そう、俺が実行委員を引き受けたのはひなと関わる機会を増やし、その上で、この間の誤解を解くためだ。

 

「あの子は純粋だから、そうなっちゃうよね」

 

 瑠璃は空を見上げてそうつぶやいた。

そう。沢渡ひなは純粋だ。それはもう曇り一つない純粋さなのだ。だからこそ彼女にとって自分が見たものは絶対なのだ。他人から事実を聞いても、それが無意識に作用し完全に信用できない。だからこそ今朝、彼女は納得した『ような』ことを言っていたのだ。だからこそ俺はそれを破り事実を真実にしなければならない。出来る出来ないではなく、やらなくてはいけない。じゃないと瑠璃に殺されるかもしれないし。

 

「なあ、なんでお前はひなのためにそんなに頑張るんだ?」

 

ふと思ったことを瑠璃に問いかける。

 

「そんなの、友達だからに決まってるじゃん♪」

 

そういった瑠璃の表情はこころなしか暗かった。

 

 

 ……俺の瑠璃に対する初対面の印象は、ひなと特別仲の良い女友達、メガネ女子、というごく普通のものだった。だが、こうして改めて接してみると、ひなに対して何か特別な感情を持っているようにも感じる。それが、どういうものなのかはまだハッキリしないが。まぁ、出会ってからまだ日も浅いし、あまりポッと出の俺が関わることでもないだろう。

 

 

 

さてと、そろそろ昼休みも終わりだな……。

 

「にしてもお前の観察力には参る。まさかこの場所が分かるなんてな」

 

そう言って立ち去ろうとすると瑠璃は不思議そうな表情をしながら

 

「え?ただつけてきただけだよ?」

 

と答えてきた。

聞かなかったことにしよう。そうしよう。

 

 




次回予告

藤堂「次回予告の時間だ」

武哉「うわっ!なんで先生がここに!?」

藤堂「作者に『誰も真面目に次回予告してくれないんです……』って言われてな。あーめんどくせえ」

武哉「先生こそ予告でめんどくせえとか言わないで下さいよ……」

藤堂「次回、『始動』」

武哉「ちょ、雑!一番真面目にやってないのはあんただろ!」

藤堂「次回からはシリアス路線だ、楽しみにしとけよ」
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