異世界って聞いたら、普通、ファンタジーだって思うじゃん。 作:たけぽん
そして次の会議がやってきた。今回の議題はこないだのアンケートの集計と種目決めについてだろうか。まあヒラが気にすることでもないか。
「泉君遅いねー」
前の席の女子たちがそんなことを言っていた。泉って人気高いみたいだな……別に羨ましがってたりはしないが。絶対に。いや本当にマジで。本気と書いてマジだから。
しばらくすると木崎先生が入ってきた。おい、泉完全に遅刻じゃねーか。
「連絡事項が一点。泉は肺炎でしばらく休むようだ。以上」
以上って。おいマジか。真実とかいてマジか。
室内がざわめく。それはそうだ。秀才で人気も高い副委員長が長期欠席なんて非常事態だ。しかし、木崎先生は前回同様後ろで本を読み始めた。
「新しい副委員長を立てたほうが良いんじゃないか?」
上級生が発言する。そりゃそうだな。至極真っ当な意見だ。
「でもさあ、せっかくやるって言ってくれたのにそれって泉君に悪くない? それに誰か泉君の代役できるの?」
井川か。確かに、学年3位で人気もある泉の代役、しかも学年1位のひなの補佐。かなりのプレッシャーだ。俺がやってもよかったのだが、この状況で大した実績の無い俺が出ても却下されるだろう。
「だ、大丈夫!あたしが頑張りますから!泉くんがいつ戻ってきてもいいようにやりましょう!」
ひなのこんな大きな声は初めて聞いたかもしれない。
「流石、沢渡委員長!すごい責任感!頼りになるなあ……憧れちゃうなあ!」
井川はとても嬉しそうだ。泉人気もさることながら、ひなの人気も大したものだ。学力が物を言うってのはどこの世界も同じなんだな。
「それじゃあ会議を始めます!今日は最初にスローガンを決定して、その後、種目アンケートの集計をします。」
そんなこんなでアンケートで出されたスローガン候補が黒板に書き出されていく。
『文武両道! 受け継ぎし体育祭!』
いや、固すぎるだろ・・言いたいことは分かるけどさ…。
『天元突破! 終末の体育祭(ラグナロク)』
いてててててててて。書きそうな奴に心当たりがあるのが情けない…。
『リア充爆発! 俺たちの体育祭!』
おいおい随分と過激だな・・・でも少し良いかも…
『リア充抹殺! 血塗られた体育祭! M月コロス』
怖っ! 過激すぎ! てかM月って俺か!? もうちょっと穏やかに行こうよ…。
『みんな集まれ! フレンズたちの体育祭だにゃん♡』
穏やか過ぎるわ! 脳みそ溶けかけてんじゃねえか! けもフレに謝れ!
・・・・・・・・・・。
その後も良さげな物からネジ一つ抜けたような物まで20個のスローガンが出てきた。てか、ネジ一つ抜けたのが半数占めてるんだが…何だこれ、本当に進学校かよ。
「なんか、今一つパっとしないのばっかりじゃない?」
何言ってんだ井川、全部個性的だろ、主張が強すぎて使えないのばっかりだけどさ!
「そうだね…ちょっとまとめるのが大変かも…」
ひなも困惑している。
「もう私たちで一から作っちゃった方が良くない?」
それにしても井川はよく発言するな…同じクラスの泉が出られないからってことだろうか。
「それは時間もかかるし厳しいんじゃないのか?」
後ろの上級生がそう発言したが、
「でも、この中から選ぶのもねぇ?それとも何かアイデアありますか?」
井川がそう言うと上級生は黙ってしまった。井川の圧力パねえ。
「そ、それじゃあ、井川さんの言う通りに、みんなで考えましょう!」
空気が悪くなっているのを察したのか、ひなはまた大きな声でそう言った。
みんなで一から考えるのは効率が悪いとは思うが、それを言ってしまうとせっかくひなが立て直した空気を壊すことになる。俺は黙って見ていることにした。
そんなこんなでなんとかスローガンが決まった。かなり難航したな。一時間は経ったか。
「それじゃあ次は種目アンケートの集計を…」
ひながそう切り出そうとするとチャイムが鳴ってしまった。それは委員会の終了を示すものだった。
だが、スケジュール的にアンケート集計を次回に回すわけにもいかない。
「アンケート集計はあたしがやっておきますから、今日は終わりにしましょう!」
責任を感じたのかひなはすべてを引き受けるつもりらしい。
委員会の面々はホっとしたような顔をして、「沢渡さんありがとう」とか「無理しないでね」などと言っていた。まあ多分そんなことは1ミリも思ってない奴が大半だろうけどな。
外の自販で飲み物を買った俺はコンピューター室へ向かった。
中に入ると目的の人物を見つける。だが向こうは作業に集中していてこちらに気づかない。なので自販で買ったコーヒーの缶を頬に付けてやった。
「ふぇ!?何!?」
ひなは想像通りのリアクションをしてくれた。
「も、望月君!?帰ったんじゃないの?」
「流石に全校生徒分のアンケートを一人に任せて帰るわけにはいかないだろ。ほら、コーヒー飲みな。」
そう言ってひなにコーヒーを差し出す。
「ありがとう。いくらだった?」
「一生懸命働いてる委員長様から金は取れねえよ。ほら、さっさと終わらせるぞ。」
そう言ってコーヒーを強引に渡し隣の席に座る。ひなからアンケート用紙を半分くらい受け取って俺は作業を始めた。
種目アンケートはリレーや100メートル走などの定番ものから玉入れや大玉転がしなどの準備に手間のかかる種目計70種類から全校生徒に一人五種目ずつ選んでもらい上位15種目を体育祭での種目とするようになっている。つまり普通なら二人でやる作業じゃない。
まあ、しかし、やらなくてはいけない。仕事とは辞めることはあっても終わることはないと誰かが言っていたがまさにその通りだ。なんて考えながら作業を進める。なんだよ、やけにバラけてるな…めんどくせえ。
「ねえ、望月君」
その声で作業から引き戻された。
「なんだ?」
「手伝ってくれてありがとね。やっぱり望月君って優しいね」
ひなのその言葉は嘘偽りのない感謝の気持ちだった。そんな純粋な気持ちを伝えられたのはすごく久しぶりな気がする。
「気にするな。どうせほっといたらもっとたくさん仕事しなきゃいけなくなるしな」
「またそうやってひねくれたこと言う…。えへへ…」
ひなは心から嬉しそうだ。
「ほら、さっさと作業に戻るぞ」
そう言って俺は作業に意識を戻した。
それから数時間。ついに学校が閉まる時間になってしまった。作業はまだ半分しか終わっていない。
「ありがとう望月君。後は家でやるから」
「いや、それは無理だろ…二人でやってこの進み具合だぞ…」
「大丈夫!望月君のおかげで半分終わってるし!その気持ちだけで十分だよ!」
うちにパソコンが無いのが悔やまれるな…今度買おう。
そうして俺たちは帰宅した。
次回予告
武哉「実行委員の仕事って大変なんだな」
ひな「確かに。なんだか思ってたよりしんどいよね」
武哉「作者は中学、高校とぼっちだったから、リアルな委員会活動を全く知らないらしいぞ」
ひな「そ、そうなんだ・・・。でも小説だから少しくらいおかしくても大丈夫だよ!」
武哉「フォローになってないぞ・・・」
ひな「う・・・。じ、次回!『依頼』!」
武哉「お楽しみに」