「うぅ...うん」
意識が戻ってきた。
最後の記憶はアイスティーを飲んだところだ。あの後から一切の記憶が無いてか、意識もない。
重い瞼を開けると目の前には白い山があった。
「なんだこれ」
真ん中で割れているソレを掴んでどけてみる。
それは柔らかく生暖かい。全体的に白い布で覆われていて山のような形をしている。
昔触った事があったが、何なのかイマイチ思い出せない。
さらに、触った時に気づいたのだが頭からも枕とは違う感覚があった。
こちらも生暖かく、しっとりとして弾力がある。無論こちらもよく分からない。
「お?起きたね。寝起きに胸を揉みしだくって、いいセンスしてるねぇ」
「......うわっ!」
「突然驚かないでくれよ、あぁ性格は元からこっちだよ」
俺は胸を触っていたのだ。男のではなく女の胸を。それと後頭部にあったのは生足のようだ。
目の前にいる女性は長い髪を後頭部でゴムによって纏めていて、白ワイシャツに短い黒のスカート。
ワイシャツのボタンはこれでもかと湾曲し吹き飛ぶ寸前で、足元は長い黒のハイソックスだ。
顔は俺と同じ日本人顔だ。てか、見覚えが大ありだ。あの時のアイスティーを出した献血の人だ。
「なんだここ」
「気づいたよね、さすがに。まぁ説明するんだけどね、ようこそ人力継続保障機関フィニス・カルデアへ」
これから始まる事を踏まえればこんなものは序章に過ぎなかったと、この時の俺は知る由もない。
△△△△△△△△△△△△△
目覚めた彼はいきなり胸を触ってきた。まぁ男の子なのだから溜まっていたのかもしれない。よく自分でも揉むので甘んじて受けよう。
飛び起き絶叫していた彼にここに施設について説明した。突然見も知らない所に来たと言うのに、案外彼は落ち着いていて一般人なのか疑問に思う。
「何か気になる事はある?一応私の方が先輩だから、何んでも言ってきなさい」
「帰れたりは」
「しないね、無理だよ。どうしてもと言うなら、全記憶消去して貰うよ。死亡する可能性の高い手術だけどいい?」
「わかりました。ここで頑張らせていただきます」
「うん、分かればよろしい。さてといくか」
「行く?どこへ?」
「ししし、お楽しみの所だよ」
どこだろうと頭を傾げている彼の手を握り強引にある場所へ引きずっていく。
自分の部屋から出て数分歩き続ける。とある部屋の扉の前で止まる。
二回ノックをして
「入っていい?」
「はい、どうぞ。今丁度着替え」
スライドドアが開き目の前の景色は下着画像丸見えのマシュで染まる。
親指だけを上げ前に突き出し「good」と言うと、途端に顔全体が赤くなり近くにあった本を掴みあげ投げてくる。
適当に投げているのであれば避ける必要すらない。本は横を素通りし彼の額にクリーンヒットする。
「あふぇ」
「あちゃ殺っちゃったねマシュ」
「そんな...ってこの程度で死ぬわけないじゃないですか!あぁ急いでベットに」
「下着」
「こっちが先でした」
慌ただしく着替え再び眠りについた藤丸立香を抱え上げベットに横にする。
「ここは」
「すみませんでした、先輩。どこか痛いところはなかったですか?」
「いや別にないよ、ありがとう。それとごめん、覗く気は無かったんだ」
「いえ、そこは理解してます。なので」
マシュの指さした方向に立香も視線を移動させ、私の無残な姿を目撃する。
三個の薪の上に正座で座らされ、太ももの上に石の塊を五個乗せられ涙を流している私だ。
ほぼ、拷問のそれだがツンデレのマシュはこれが平常運転である。
「やはりここにいたか。急ぎたまえよ、マリーが怒ってしまうからね」
「レフ教授。すみませんでした、すっかり忘れてました。私は先輩を連れていくので後のことは任せます」
「任されてもこま......行ってしまったか。にしても......どうしたものやら」
「石をどけ...どけて」
「仕方ないか」
レフの協力により事なきを得たが、足への激痛は凄まじく説明会へ顔出しする事はできそうにないので、とりあえずロマンの所へ遊びに行くことにする。
レフとは早々に別れ唯一の空き部屋へと足を踏み入れる。
おおよそ、彼の部屋となるそこにはケーキの一口目を食べようとしている
「な、なんでここが」
「考えることは大体分かるからね...ねぇ頂戴?」
「いや、これはダメだ。僕が我慢して我慢した、そう簡単に渡さないよ」
「ならジャンケンは?」
「ダメだ。勝てるビジョンが見えないからね...これならどうだい?」
懐から取り出したのは折りたたみ式の将棋だ。基本サボり上等のロマンはこういった娯楽道具を持ち歩いていて、一緒にサボっている時に遊ぶこともある。
今回はケーキを掛け将棋をする事になっただけだ。
「いいけど、負けても文句言わないでよね」
「もちろん。男に二言はない」
二人の熱いバトルの火蓋は切って落とされた。
「まるで将棋だね」
「そんな...ちゃんと特訓してきたのに」
余裕で勝ち取ったケーキを優雅に食べる。
まぁロマンも言ってる通りそこそこ強かった。けど、所詮はそこそこだ。ゲームですら負け知らずの私程ではない。
「あ、」
「おっ立香くん、さっきぶり」
「...僕のケーキ......」
ある意味混沌の時に彼は訪れてしまう。