運だけは良いあの茜沢に転生しちまったぜ   作:暁紅

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ストーカー恐怖の逆切れ

 

「いたた...ここは......どこ?」

 

辺りを見渡し変貌した風景に驚愕を露にする。

 

倒壊し永遠と燃え続けている民家やマンション。さらに人の声は一切聞こえず人気なんて物はない。

 

空が見える事からレイシフトしたのだろうと考えた。

 

まぁ、そのへんはどうでもいいんだけど...問題はアレだよね

 

瓦礫に身が隠れていたので見つかってはいないが、視線の先には動き回っているスケルトンがいた。

 

ボロボロの布を肩から腰にかけ、手には弓や剣など多彩な武器を持っていて、数もかなりいる。

 

「まぁ、試してみるか。我が雷のままに消え去れ(アブラハダブラ)!」

 

銃弾が装填されていないリボルバー式の拳銃を懐から取り出す。

 

これは、自作の特性銃であり市場にはまず出回っていない代物である。管制室へ向かう時に持っていったのは銃であった。

 

この銃は魔力を弾丸とし放つ事ができる。ただし、その場合は威力はそこそこしか出ず火力不足なのだが、彼女は詠唱を加える事でとある効果を付与している。

 

それは『死』である。死霊魔術(ネクロマンシー)とはまた少し違う分野ではあるのだが大雑把に言えば同じである。

 

どんな生物であっても必ず訪れる『死』相手が生きてさえいれば強力な武器になるのだが、案の定スケルトンは放たれた電撃を受けてなお立っていた。

 

「やっぱり無理かー。よし逃げよう」

 

魔術回路を活性化させ身体強化の魔術を使用する。

 

足や手には青白い模様が浮かび上がり、魔術の起動が成功した事を表した。

 

その場で少しかがみ、瓦礫を砕くように瞬間的に加速しその場から離れる。

 

スケルトンはすぐに追いかけようとするが彼女の加速に追いつけるはずもなく次第に離されていく。

 

倒壊しかけのビルや一軒家の天井を伝うこと数分。スケルトン達が完全に見えなくなったところで、一軒家に忍び込み探索を開始する。

 

最悪何かしらの情報を手に入れたいと思いながら物色を始める。

 

 

 

「むむむ麦茶しかないな、でもいいか」

 

一通り物色を終わらせ最後にキッチンへと訪れ、疲れた喉を癒すために冷蔵庫を物色。見事麦茶を発見し文句をこぼしながらコップに入れ飲む。

 

倒壊などし電気は止まっているのだが、幸いな事に腐っている物はなく安心して麦茶を飲めた。

 

「なるほどね、ここは冬木市か...確か第五次聖杯戦争の場所だっけか?日付は知らんけど、聖杯が関わってるのは確定だろうね」

 

何故第五次聖杯戦争の事について知っているのかは、ロマンの部屋に侵入した際に資料を見つけたからである。

 

ちょうど出払っているタイミングを見計らい侵入した。

 

理由はエロ本だったので、ありそうな机の引き出しの二重底の下にシャーペンの芯を使い、やっとの事で取り出したのがその資料だった。

 

まぁ、つまらないので軽く見てから何事も無かったように戻したので、深く情報は知らない。

 

「......そこに、隠れているのは誰だ?」

 

長い長考をしてこの後どうしようかと考えている時だった。勘としか言えないが何者かに見られている気配を感じたのは。

 

「はっはは、まさかこの私の気配を感じ取るとは」

「いや、ほんと誰?」

 

物陰から現れたのは全身を黒い布で覆い、白い仮面をつけている不気味な男だった。

 

マジで知らねえよ。不審者にも程があるだろ。

 

「ストーカーですか?」

「す、ストーカー!この私が??そんなわけがないだろう!」

「おっ、おう」

「くっまぁいい...ここでお主には死んでもらうだけだ」

「チッ、めんどうな!」

 

男はどこからともなく銀色に輝くナイフを取り出し、投擲を行う。それも、喉、目、心臓、両足を狙った正確なコントロールで。

 

悪態をつきながら唐突な戦闘に瞬時に反応し全身を強化する。

 

肉を抉ろうとする五本のナイフを右回し蹴りで砕く。

 

「ふぅ......憤ッッ!!」

 

息を一旦整えてから瞬時に加速し懐へと飛び込む。

 

無論男も無抵抗で懐に入らせるわけもなく黒い布をはためかせる。すると、どこからともなくナイフが飛翔する。

 

飛んでくるナイフを回避するため、近場にあった机を蹴り上げ盾代わりにする。

 

ナイフが大量に机に突き刺さり、針山のようになる。

 

(右か?左か?それとも上か?)

 

男は机に姿を隠したターゲットがどこから来てもいいように全神経を尖らせ待ち構える。

 

実は男はサーヴァントでありクラスはアサシン。そのため正面戦に関しては人間に劣るところが多々あり、不意打ちが失敗した時点で勝率がガクンと落ちている。

 

致し方なしと、右手の包帯に手を伸ばし宝具の解放の準備をする。

 

のだが一向に現れる気配がない。いや、机の裏からも気配を感じない。

 

「まさか」

 

慌てて机の裏を除くとそこにはターゲットの姿はなく、後ろの壁に人一人通れるぐらいな穴が空いていた。

 

このままターゲットを逃してなるものかとその穴から外に飛び出て、感覚を頼りに追いかける。

 

 

それから数分後。物音がならなくなったのが分かると、机の盾のすぐそばにあった床下への小さな扉が開き這い出るように茜沢が出てくる。

 

「危なかったな。偶然ここに床下があって良かったよ」

 

彼女は机で盾を作った時、背後の壁を破壊しそこから逃げるのではなく、床下へと飛び込んだのだ。

 

かなり大きな賭けであったが、見事暗殺者は騙され外へ出ていった。

 

命は助かりひとまず良かったのだが、暗殺者は見事に大きな爪痕を残した。

 

「服がボロボロ...着替えなきゃ」

 

掠ったナイフや壁の破片などで服がボロボロに破れ、元から多少あった露出がより過激になっている。

 

何か着替えるものはないかとタンスを探すと出てきたのは、ジャージだけだった。きっとここに住んでいた人は何かしらの部活に所属していたのであろう。

 

サイズ的に着れなくは無かったので渋々それを着る。

 

ワンピースのした部分を破り捨てて、タンクトップのようになったところでジャージを羽織る。

 

チャックを上に上げるも、無料胸元にある爆弾がはみ出しチャックが上まで上がらないので、胸のした部分までチャックを閉める。

 

下はもちろんジャージのズボンを着る。

 

これまでお世話になった白衣を折りたたみその場に置いてから、家を後にした。

 


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