「おい、ふわわ
あなた何様? ウルクの王様!! を地で行く、元祖
彼はエルキドゥを連れてレバノンの森に来ていた。
ギルガメッシュはこの日、いつもより早く目が覚めたので予定よりだいぶ早く出発する事にしたのだ。
折角なので王都の有名菓子店のクルミパイを持ってきたのだが、お目当てのふわわは寝ていた。
まだ、お日様が昇ってそんなに経っていないので当然である。
仕方ないのでギルガメッシュは起こそうとしたが、ふわわのお姉さん的ポジションになりつつあるイシュタルに止められた。
「変わったな。イシュタル」
「あなたも変わってきたわよ? ギルガメッシュ」
イシュタルと言葉を交わすギルガメッシュは、美味しそうなカラメルの匂いにつられて寄って来た小鳥やハムスターたちに、
クルミパイをちぎっては分けていた。
だいぶ、彼も変わったと言えよう。
ふわわの軟らかそうな髪をなでるイシュタルに、若干母性的何かを意識したギルガメッシュは余計な思考を追い出す様に首を振った。
それにより、たまたま、ギルガメッシュの頭に昇ろうとしていたプレーリードックの末っ子が落っこちそうになったので、
エルキドゥが踏み外した末っ子の足を支えて、もう一度ギルガメッシュの頭の上に登らせた。
今まできりかぶより高い所に登った事の無い末っ子は、初めての高さに興奮してジャンプした。
頭の上でそれなりの重さのものがとびはねるのでギルガメッシュは若干鬱陶しかったが、
まあ、仕方ないので許す事にした。英雄王は寛大で素晴らしい王様である。
そんなのんびりした空気の中に、更にお客さんがやって来た。
エレシュキガルだった。お近づきの印みたいなものなのか、おそばを持ってやって来た。
ちょっと鍋が大きいのか足がフラフラしているが、それでも彼女はしっかりとこぼす事無くおそばを持ってきた。
でも、ふわわが眠っているので仕方が無いのでどうしようかと考えていたところ、
ユキヒョウの姉妹がもの欲しそうにするのを必死に誤魔化しているのが視界に映ったので、
「仕方ないのだわ、せっかく作って来た蕎麦も伸びてしまっては美味しくないのだわ」
そう大きく独り言を言って、冥府の女主人の権能で猫舌のユキヒョウたちの為におそばを冷やすと、
綺麗に盛り分けて姉妹たちの前にドンブリをおいた。
因みに、冥府の権能、エレシュキガルの秘儀の17番。その名は『ふーふー』。
熱いものを息で冷やす御業である。
ユキヒョウの妹の方はドンブリで食べるのが苦手なようで少々お汁をこぼしていたが、
顔に付いたお汁はお姉ちゃんが舐めて綺麗にしていた。
そう言えば昔は私達もこんな時期があったかしら?
いや、顔を舐めたりしたことは無いけれど。
エレシュキガルはふとイシュタルの方を見ながらそういう事を考えていた。
そんなことは無かった気がするし、無かった気もする。
でも、良いのだ。思い出はこれまでだけのものでなく、これからのものだってあるのだから。
エアやエンリルたちもやってきて、特上の米の醸造酒やトウモロコシの蒸留酒を持って来ていたが、
ふわわにそれを飲ませてはいけないと反対する者達によって、それは叶わなかった。
それで落ち込んでいた神々に、マントヒヒのおじさんが「まあ、そういうこともあるぜよ」と煮ピーナッツをわけていた。
お酒のつまみとして凄く美味しかったので神々の気分は元に戻った。
そうこうしている間にふわわは目覚めた。
そして彼女のお腹が、ぐぅと可愛く鳴った。
でも、食べる物は全部みんなのお腹の中にあった。それは仕方ない。
ふわわはポケットを探った。だが、何も見つからなかった。
ふわわは少し悲しかった。みんなも少し悲しかった。
その時、救いの女神が現れた。
「みんな、ごはんだよっ」
ティアマトがおふくろの味がする優しいシチューが出来たのだと教えてくれた。
みんな笑顔になった。やっぱりおかあさんのシチューは美味しいね。
アプスーは無言で頷いていた。
ふわわも、イシュタルも、ギルガメッシュも他の皆もみんなお皿を空にしていた。
まだまだ、シチューは残っている。だから、こう言うのは必然だった。
「「「「「「おかわり」」」」」」
お母さんの料理はどれもおいしいよ。