それと少々難しいかもしれませんが、特に難しい事を考える必要はありません。
「ふわわはね、きょうからにねんせいなの」
きいて、きいてっ、とお姉さんのイシュタルのエプロンのすそをつまみながら、ぴょんぴょんととびはねる、
ふわふわふわわ 7歳。
ふわふわは漢字で書くと不破々々と書くらしいけど、
かるであ学園では色々な国籍の子供たちがいるので、初等部では無理に漢字を使う必要はないようだ。
そんなふわわは、イシュタルお姉ちゃんに、
「そうね。でも、今は料理中だから少し待っててね」
と言われていた。ふわわは、ちゃんと言われた通りにした。ふわわちゃんはよいこである。
かるであ学園の卒業生であるイシュタルお姉ちゃんや、双子の姉のエレシュキガルお姉ちゃんを見るに、
高等部、もしくは大学を卒業するころには、数ヶ国語がペラペラになっている。
おともだち同士で言葉を教え合うのだ。楽しく学べるならその方が絶対に良いに決まっている。
無理に詰め込まなくても、ゆとり多く生きて行けば自然に何とかなる良い例であった。
そんな訳で、かるであ学園は今日もゆとり教育の最前線でゆるゆるのゆるゆるである。
今日の朝ごはんはどんぐりを粉になるように挽いて、焼いて固めたスコーンと、クロワッサン。そしてコーヒー牛乳である。
驚く事に、クロワッサンも手作りである。もはやいつでも嫁に行ける腕前だ。
因みに、昼ごはんはみんな大好きオムライスをティアマトお母さんが作ってくれる予定だ。
勿論、ちゃんとオムライスの旗は用意してある。
昨日の内にエレシュキガルお姉ちゃんが作っていた。
イシュタルお姉ちゃんはここ最近、どんどん料理の腕を上げている。
これも、高等部になって、給食からお弁当になった事で、
「どうして
という、現在両親が海外旅行中の家事スキルが残念で、少々わがままな同級生の男の子に、
「全く、仕方ないわね(うきうき)」
とお弁当を作る事を承諾した事もそれなりに大きい要因だろう。
つい最近、『学園の女神』と呼ばれていて、
「私は女神なんかじゃないわ。ただの女の子よ」と宣言した美少女にお弁当を作って貰える男子に、
嫉妬ビームが飛んでいそうなものだが、実はそんなでも無い。
以前から家族ぐるみのお付き合いをしていて、男の子がふわわを自分の妹の如く肩車をしていたりする姿が知られているのは大きかった。
余談だが、美形すぎて性別があんまり良く解らない
友の恋愛サポートを欠かさない出来た友人で、恋愛シュミレーションに一人は欲しい頼れる相棒ポジションである。
さて、朝ごはんが丁寧に盛り付けられる。
ごはんを食べる前に、両手を合わせて頂きますを忘れるような事はない。
みんなで両手を合わせて頂きますを合掌した。
もちろん、食べ終わった後のごちそうさまも忘れない。
ごはんを食べた後は必ず歯を磨く。
ペットの牡牛の鳴き声で起きた後にも、歯を磨く。
ふわわはちゃんと手を洗ったり、歯を磨いたり、うがいが出来る良い子なのである。
お父さんが、仕事場に向かうのをお見送りしてから、こども達も学校へ向かう。
お母さんはその間お掃除とかを頑張ってくれている。お互いに感謝を忘れない事が夫婦仲良くの秘訣である。
因みにお父さんのお仕事は天然水の販売会社の社長さんである。とても凄いのである。
「ふわわちゃーんっ!!」
お母さんに手を振った後、家を出たふわわの元に同級生であるナーサリーライムちゃんやジャックちゃんが走ってくる。
後、少々背伸びがしたいお年頃で走っていくのが恥ずかしいのか、体力が無いのかわからないアンデルセンくんもいた。
因みに、アンデルセンくんとジャックちゃんは兄妹なのだ。
お兄さんのアンデルセンくんは将来作家になるんだと言っていて、考えたカッコいいワードを日記帳の中に書き込んでいる。
以前、ふわわも日記帳を見た事があるが、難しい外国語や、難解な言い回しが多くて良く解らなかった。
妹のジャックちゃんはブロック遊びの天才で、ブロックをバラバラにしたり組み立てたりするのがとても得意なのである。
後、プラレールやトミカのレールや道路の組み立ても上手だった。
お母さんのキアラさんにも良く褒められているようだ。
また、ナーサリーライムちゃんは絵がとても上手なので、将来アンデルセンくんが童話作家になったら絵を描いてあげるつもりらしい。
その他にも、ふわわたちのお友達や、イシュタルたちの同級生と一緒に学園の門までどんどん人が増えながら、
でも、ちゃんと歩道をはみ出ない様に交通ルールを守りながら登校した。
道路を横切る時は年長者が前後で黄色い旗を上に上げて、横断歩道を渡る事も忘れない。
学年が変わると、門をくぐる気持ちも新鮮になる。
学園の名前が書かれた突起の無い優しい設計の門がみんなを待っている。
スカートのプリーツはあんまり乱さないように、
白いセーラーカラーはそれほど翻さないように、
ゆったりふわふわと歩くのがここでのたしなみ。
私立かるであ学園。
ここは、ゆるふわの園。
「おはよう。まずはみんな、進級おめでとう」
1年生の頃から引き続き、担任のゲーティア先生がみんなに挨拶する。
「「「「「おはよーーうございまーーす」」」」」
「「「「「ありがとーーございまーーす」」」」」
妙に間延びした初等部特有の言い方で、こども達も先生に挨拶する。
ゲーティア先生は、赴任してきた時には真面目で融通の利かない所もあり、他の先生と衝突した事もあったような気がしたが、
今では随分と丸くなって、みんなに好かれる良い先生である。
「今日の初等部の授業は半日で、お昼からお休みだ」
やったぁ。
元々知っていたはずなのに(忘れていた者もそれなりにはいた)、喜びの声を上げる生徒たち。
実に素直で可愛らしい。
初日なので、授業も何時もに輪をかけてのんびりとした感じだ。
休み時間になる度に、休みの間の事を話したり、休み気分でのんびりしたり、やる事が色々あるのでそれで良いのかも知れない。
かくして、午前中で授業が終わり、帰りの会をして先生にまたしても間延びした声でさようならをした後、
ふわわは帰る事にした。
おともだちのアンデルセンくんたちは図書館に行くらしいので、今日は別々にお別れだ。
どうやら、ナーサリーライムちゃんの話では、司書のキングゥさんがカッコいいらしい。
なんでかはふわわにはわからないけれど、その話をしている時にはアンデルセンくんは少しムスッとしていた。
大人になれば、ムスッとしていると婚期を逃してしまうこともあるが、彼はまだ少年だ。生涯独身でいるつもりは無い。
そんな理由があって、ふわわが1人で帰っていると、突如見覚えの無い筈なのに、とても、とてもなつかしい森の中に迷い込んだ。
いや、入り込んだ。迷ってはいなかった。
ふわわにはその森の隅々までとたんに知っているような気がした。
木々の上を見ればリスたちが駆け回り、ふわわの肩に飛び乗ったり、くびすじをペロペロしたりしてきた。
ペンギンやハムスターたちもかけよってきて、ふわわの同年代の中では長い足に頬ずりをしていた。
普通に考えたら、ペンギンとハムスターが同じ環境にいる筈はないのだが、
ふわわにはそんな難しい事はわからない。
それに、むずかしいことはむりにかんがえなくてもせかいはまわるのだ。
ふわわが
ひらけたばしょで、ふわわにとてもよくにたしょうじょがねむっていた。
みためのねんれいはふわわよりもすこしおとなだった。
ふわわが、
「あなたは?」
そうきこうとしたのとどうじに、そのしょうじょもねごとでおなじことをいっていた。
もしかしたら、このせかいはふわわのゆめのなかなのかもしれないし、
むこうのふわわのゆめのなかのせかいにふわわたちがいるのかもしれない。
そんなむずかしいことをかんがえていたら、―――何時の間にかふわわは見覚えのある通学路にいた。
ふわわは先程の不思議な世界の事を難しく考える事はせず、お昼ご飯を作っているお母さんが待っているお家へ帰る事にした。
それに理由なんてない。あえて理由を言うとすればふわわのお腹が鳴ったということぐらいだ。
「ただいまー」
「ふわわちゃん、おかえりっ」
お母さんの声と、オムライスのいい匂いが家の中からふわわの方にとんできた。
ふわわは家の中に入ると、きちんと靴を揃えて置き、両手をしっかり洗ってうがいもした。
ふわわは、制服から着替えると、お母さんの美味しいオムライスを「いただきます」の挨拶を忘れずに食べる事にした。
ふわわは、オムライスの上の旗を見て目がキラキラした。
お母さんとお姉さんの合わせ技一本の勝利である。
尚、敗者はいない。みんなが勝ったっていいじゃない。ここはそういう世界である。
ふわわは、ごちそうさまの後、食べ終わったお皿をお母さんの所へ持っていくと、お母さんはふわわを褒めてくれた。
後片付けのできる子は良い子なのです。
ふわわはおひるごはんを食べると眠くなってきたので、おふとんにはいると、すやすやと眠る事にした。
ふわわは、何処かであったおともだちとどんぐりを食べる楽しい夢を見た。
難しく考えるな、寝るんだっ!!